ユミルが可愛いかどうかなんて愚問だろう。彼女は可愛くて美しい!ただそれだけのことさ

漫画は五年くらい前から見てません。アニメも2期の最後までしか......

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ユミル「私でヌケるかって聞いてんだよ」

「ユミル、おいユミル!」

 

 誰かの焦ったような声が私の目を覚ました。目をこすりながら声のする方を向くと、見覚えのある男がこちらを心配そうに見つめている。何をそんなに焦っているのか。そう聞くと、男は何故か安心したように息を吐いた。

 

「よかった。寝てただけか」

 

 よく見ると男の額には少し汗が滲んでいる。

 

「こんなとこで寝てると風邪引くぞ」

 

 そういうと、男はこちらに腕を差し出した。

 このとき私は漸く状況を理解した。照明の消えた夜の食堂で寝ていたのだ。周りにはほかに誰もおらず一人。たしかにこれなら男が起こしに来てもおかしくはない。少しだけ心が弾んだ。

 

「ほら、送ってやる」

 

 その腕を掴むと、男らしい強い力に引き寄せられた。しかし、いかんせん時間が悪かった。いつもなら力の関係は逆のはずだろうが、起きたばかりの私は足がもたつき、自分の体も支えられずに男の胸に抱きしめられた。体温が上がるのを感じる。

 

「すまないっ......‼︎」

 

 男はまた焦りながら私を体から引き離した。私は気持ちを隠して強い言葉で男を非難するが、不思議なことに、私の胸は引き裂かれたように痛みに悲鳴をあげている。

 

「おい、顔色が悪いぞ」

 

 私の顔を覗き込むとそう言った。やはり彼は何も分かっていない。

 

「部屋に連れて行くから乗れ」

 

 大きな体を屈ませて、背をこちらに向ける。これではおぶられてしまうではないか。

 一人で歩ける。そう言うと男はため息を吐き、立ち上がると私に近づいた。息が届くほど顔は近い。

 

「顔が赤い、まさかね——」

 

 続く言葉は言わせなかった。まさか、彼が私の心情を言い当てることなどできるはずもないが、その可能性を考えると怖くて仕方がなかった。

 

「しょうがねぇな」

 

 男が呆れたように言う。次の瞬間、私の体が浮いた。いや、浮いたというのは少し違うかもしれない。私の体を浮遊感が襲ったのだ。

 

「こうでもしねぇと、意地でも一人で寝室に向かうつもりだったろ?」

 

 私の体を二本の逞しい腕が支えている。というか持ち上げている。

 

「おい何やってんだ!」

 

「何っておい、これは横抱きだろ」

 

「そうじゃないこれはお姫様抱っこだ! って違う、早く降ろせ!」

 

 抱えられたまま私は身悶える。そうでもしないと血管だか心でもはち切れてしまいそうだった。

 

「おい静かにしろ、みんなもう寝てるんだぞ」

 

 だが男は冷静だった。まさかこの男は女を抱く(お姫様抱っこ)ことが普通だとでも言うのだろうか。

 私は反抗心でもう少しだけ喚くことにした。それが逆効果になるなんて沸騰寸前のこの頭では考えられなかった。

 

「寝室に向かうからな」

 

 みんなに迷惑をかけるわけにもいかない。仕方なく声を抑えて黙り込む。それで静かになるはずだったのに、私だけに、自分の鼓動がやかましく聞こえていた。

 

 

 ●

 

 

 私の寝室まではもう一直線。降ろせと言うが、男は話を聞かずにズカズカと寝室に向かう。ここに来るまでにすでに何人かに見られている。茹で蛸のような私の顔を、誰か冷やして欲しいものだ。

 扉が開くような音が聞こえてきた。向かう方向の逆に視線を送ると、通り過ぎた寝室から知り合いの訓練兵がこちらを覗いている。一人だけじゃない、見渡す限り全ての寝室から顔が覗き込んでいる。

 ここで私は諦めた。明日起きた頃には噂が流れているだろうと。

 

 

 

 男に抱えられながら自分の寝室に入る。男は私をベッドに横たわせると、なんとベッドの端に座り部屋に居続けた。

 

「なんでまだいるんだよ」

 

 そう聞くと、男はお前が寝るまではいる。などとふざけたことを言った。こっちは同じ部屋にいるだけで落ち着かないと言うのに。

 

「私が寝ればお前も寝るのか?」

 

 今度は軽く頷かれた。その動作ですら、私にすればとてつもない破壊力を持っている。

 

「じゃあ私は寝ない」

 

 どうしてかと聞かれた。

 

「だって、ミーミルと一緒にいたいから」

 

 どうしてなのか、自分でもわからない。どうして私が彼を好きになってしまったのか。それは一生わかる気がしなかった。でも、私は彼のことが好きだ。それだけは間違いない。

 

 私の思い人——ミーミルの顔が驚きに染まった。やはり迷惑だっただろうか、好意のない人に好意を向けられるのは。

 私は情緒不安定なのかもしれない。深夜だからか、それとも二人きりでハイになっているのか。

 

「私はミーミルが好きだ」

 

 横になりながら言うのは格好悪いかもしれない。だが、言いたい事は言えた。それだけでなぜか涙がこぼれそうになる。やはり私は情緒不安定だ。

 

「急だったか?」

 

 聞いてもミーミルは答えるどころか、動くことすらしない。男っぽい私に好かれるのは気持ち悪かっただろうか。

 

「すまない、さっき酒を飲んだんだ。忘れてくれもう寝る」

 

 何も言わないミーミルに痺れを切らしてしまった。

 足元に座っていたミーミルの腰を強く蹴ると、彼は漸く動き出した。ミーミルはそのまま部屋を出て行く。

 もう、私からは涙しか出なかった。

 

 

 ☆

 

 

 次の日、寝室から出ると扉の前にミーミルが立っていた。今となっては正直言って気まずい。だから気づかなかったフリでもして逃げようとしたが、それは彼が私の腕を掴んだことで失敗した。

 

「なんだよ」

 

「寝れたか?」

 

 この男は本当に昨日のことを忘れてくれたのかもしれない。

 

「あと、昨日のことなんだが、俺って意外にかっこよかったりするか?」

 

 前言撤回。忘れてなどいなかった。それどころか傷心中の私を冷やかしにでも来たのだろうか。

 今度は怒りで顔が赤くなりそうだった。

 

「えっと、まあ、なんていうか、夜また来るわ」

 

 いや、はっきり言って今、顔が赤くなった。

 

「ま、待ってる」

 

 心臓は昨日からずっと強い鼓動をやめていない。

 離れて行く背中を見て、きゅん。と体が疼いた。

 

 

 


 

 

 

 戦闘訓練はかなりキツい。一歩間違えれば死ぬし、もっと言えば暑い日差しに照らされるからだ。汗で服は張り付くから、鬱陶しくて仕方ない。

 俺の訓練のペアは男で、正直言っていい匂いとは言えない。が、おそらくそれはお互い様だ。

 

 訓練が終わると教官の前に訓練兵全員が並ぶ。もちろんそこには俺も、ユミルも並んでいた。いつも思うが、前にいるユミルは女性にしては身長が高い。かという俺もかなり高い方で、彼女よりも十センチは大きいだろう。

 

 ・・・・・なんというか、この身長差だと俺の鼻の高さの位置にユミルの頭がある。いや、だからと言ってナニというわけではない。決して、いい匂いがするから心臓が強く鳴り響くのではない。断じてない。

 そのはずだったのに、今日は違った。前に並ぶユミルからは甘い匂いがする。いつもと同じ匂いのはずなのに。俺は必死に口息で匂いを嗅がないようにした。嗅いでしまえば、俺の理性が吹っ飛ぶから。

 いや、思い出せば口息で耐え忍んでいたのは今日だけじゃない。昨日もその前も、ずっと、俺はユミルの匂いに、こ、興奮。していたのかもしれない。

 

 

 

 その夜、俺は食堂で一人寝るユミルを見つけた。起こしてみると、目をこすりながら眠そうな顔のまま彼女はこちらを向いた。そういえば寝起きの顔は見たことがなかった。いつもより鋭い視線だが、俺にはそれが愛しい。

 体を起してやろうと手を出すと、ユミルは素直に手を掴んだ。意外にも女の子らしく柔らかい手に驚きながらも、掴まれた腕を引っ張った。すると、ユミルは足がもたついたのかこちらに倒れ込んでくる。俺はそれを咄嗟に胸で受け止めた。そのときだ、俺には感じたことのない衝撃が襲った。

 ユミルの手はたしかに柔らかかった。ずっと握っていて、離したくないほどに。しかし、それはその柔らかさを圧倒的に凌駕していた。

 今は言わないでおこう。思い出すだけで頭がぼーっとしてしまう。

 すぐに体から引き離すと、体調の悪そうなユミルに対して俺は大博打に出た。下心満載の俺はユミルの前で屈んで背中を差し出したのだ。しかし、それに彼女は乗ることがなかった。それでも、たしかに彼女の顔は赤く、熱っぽい。さっきのはふざけていたとはいえ、どうしても早く寝かせてやりたかった。

 だから俺はユミルを抱っこした。軽い体に衝撃を与えないよう、静かに歩いた。途中、かなりの人に見られたが、寝室にはたどり着いたのだ。

 

 ベッドに寝かせると、俺はベッドの端にちょこんと座った。このとき俺は、正直言ってユミルの部屋の匂いにくらくらしていた。たしかに女性らしいものはないが、部屋に充満する匂いはユミルの匂いそのもの。俺には限界が近づいていた。

 ユミルは俺を揶揄いたかったのだろうか。それは、明日聞くことにした。

 

 

 ♦︎

 

 

 そして、今日もユミルの頭の匂いに興奮しつつ、夜を迎えた。ユミルの寝室に向かう足は、緊張で震えている。

 急がば回れとは言うが、俺の感情、理性、本能が突っ込めと叫んでいたので就寝時刻になると共にユミルの寝室の扉を叩いた。入れ、と中から聞こえてくると、俺はドアノブを捻り部屋に入った。

 

 なんといえば良かったのだろうか、中に入るとそこには、髪を解いたユミルがいた。見た事は何度かある。がしかし、今日は色気を感じる。

 

「ユミル」

 

「なんだよミーミル」

 

 声をかけると彼女は俺の名前を呼んだ。天国に行くのかと勘違いしてしまうところだったが、気をたしかに。

 ユミルの前まで行くと、そこで俺は床に座る。ひんやりするが、俺の熱い体を冷やすにはちょうどいい。

 

「好きだ」

 

 簡単に言えば、俺はユミルが好きだ。もっと複雑に言えば、スタイルや顔、匂いや性格など全てが俺の心を強く惹きつける。

 明かりのないこの部屋でも、彼女の顔が赤くなるのがよくわかる。

 俺はユミルのそういうギャップも好きなのだ。

 

「私でヌケるか?」

 

「え」

 

「私でヌケるかって聞いてんだよ。私を抱けるか? 私でイクことができるのか?」

 

 この質問に俺は、自信満々で即答することができる。

 

「今日は一緒に寝よう」

 

 すでに彼女の体温で暖かくなっていたベッドに入る。。。

 

 今日は、昨日見れなかったユミルの寝顔が見れた。それ以外にも、初めてみる表情がいくつもあった。

 未だに激しい動悸が治らない。俺らはお互いを好きすぎるみたいだ。

 

 

 

 






深夜テンションで書きました。
でもユミルが可愛くて美しいのは事実だ!
ミーミルっていうのは北欧神話の巨人の名前から取りました。


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