無意味な夢。
「殺せ」
そう言うと、老輩の男は扉を閉めた。
老輩な男は次に、目の前の青年の空っぽの机の中にペンでX²-y……など数学の問題を書いていく。すると青年が
「書かなくていいですよ。分からないので」
とおもむろに答えた。老輩の男は数瞬考え、問題を手で強引に消し「X」と書き、それを青年の胸に「移した」。
するとXの文字が歪み、10.9.8.7......と、カウントダウンが始まった。
青年は諦めたように上を見上げ、老輩の男は次の男の席へ向かった。
「起きろって!授業始まるぞ!」
目を覚ますと、そこは大学の講義室のような場所。
目の前には「27」とだけ書かれた和紙。ぶらりと現れた女教師が、そこにハンコを推していく。
「優秀者には「」を……」
フラフラと次から次へとハンコを押していく女。
気が付くと、随分とメカメカしい場所に立っていた。そこには俺以外の奴らもいた。
「なぁなぁ!早く行こうぜ!コンサート始まっちゃうぞ!」
1人の太った男がそう言うと、嬉しげに道を走っていく。何も知らないまま、俺達もあとを着き、走る。
道の途中には、道幅縦横1人ぐらいの狭い門や、そこをくぐった後のジャングルなど、まるで冒険をしているようだった。
そして最後に到着した所は、コンサート会場のような所だった。
あの太った男の言う通り、コンサートが始まるのだろうか。そんなことを考えていると、コンサートが始まった。
煮えたぎるマグマのように熱いコンサートだった。曲の内容はいまいち覚えていない。
気が付くと、「あの」講義室に居た。
今回はモーニングコールはなかった。
また同じように「27」と書かれた和紙。いったいどういう意味なんだろうか。そんなことを考えているうちに、また女教師がぶらりぶらりと現れ、「優秀者には「」を……」「優秀者には「」を……」と呟きながらハンコを押されていく。
次に気が付いたのは、また同じようなメカメカしい通路だった。
操られるように、道なりに進んでいく。
またあの門だ。
しかし、今度は開ける前に開けられた。
そこには、水泳帽を被った男の子がいた。
「「授業」の帰りかい?」と何故か無意識に聞くと、フルフルと首を横に振る。
先に通し、後に続く。
また様々な道を通り、最後には大きな閉鎖的空間にプールがあった。皆その中に入り、「先生」から授業を受ける。
いったいなんの授業だ?
何もわからなかった。
既に2度、同じ経験をした。この講義室に来るのは3度目だが。
「優秀者には……」
またふらりふらりと現れた女教師に、
「あの、「」をください」
そう答えると、女はびっくりしたような顔をして、次に笑顔になった。
「27」の数字の下に「64」というハンコを押され、それだけで次へ行ってしまった。
「…………」
単なる思い付きだった。自分が「優秀者」だという自覚なんてなかったし、貰えるなんて思ってなかったし、「」の内容すらわかってなかった。そしてこの「64」の意味も。
27
64
ふむ。
27
×64
ーーーー
108
162
ーーーー
1728
「…………はぁ」
筆算ぐらいは出来る。縦に並べられた数字で勝手に筆算してしまったが、いいのだろうか。別にいいか。
何故か俺だけ講義室から出された。
なんだって俺だけ。筆算したからだろうか。
「おめでとうございます!優秀者様!」
「貴方はこれから人間としてここに住むことを許されました!」
「他の方は残念でしたが」
「まぁ人間ではありませんのでいいでしょう!」
捲し立てる女教師に呆然としていると、ぐいぐいとショッピングモールのホールのようなところに引っ張りだされた。
「では、良い人間生活を!」
そう言うと、女は消えた。
周りを見渡すと、ちらほらと人がいる。ショッピングモールの1階に当たるだろう部分であるのに、吹き抜けがある。覗き込んでみれば、そこは雲。
「酸欠とかにならないのかなぁ」
と抜けたことを考えていると、違和感が込上げる。
先程までの講義室はなんだったのだろうか。
コンサート。
プール。
優秀者。
64。
人間として。
残念。
考えても仕方ない。まずは行動だ。よく分からんこの「天空都市」について知らなければ。
明らかに異常なこの都市について。
まずは何処か店に入ってみることにした。金も何も持っていないが。
そこは香水、言わばコロンを売っている店だった。そこの少女に、ここまでの道筋を聞いてみたら、最初は「?」とした態度だった少女がハッとした顔をした。
「やっぱりおかしいですよね!?ココ!」
良かった。同じ感性の人が居た。
店仕舞いし、とにかくここについて調べる事にした。
とはいっても、何からするべきか。とりあえず聞き込みをする。
有益な情報は手に入らなかった。道中スーパーアームだとか最新鋭の銃だとかを売っている店があったが、あれはなんなのだろうか。どこに需要が?軍でもいるのだろうか。
「友達のレレのお店にも聞きに行ったけど、なんも知らないって……」
まずここの人々はなんなんだ?
優秀者とやらだろうか。なぜこの異常な世界を認知していないのだろうか。なぜこの少女は認知出来たのか。
道中説明を何回かしたが、みな首を傾げるばかりだった。
本当にただの無意味な夢