渇に注いで、満たされる。
(※終始、R-15程度の性描写が続きますので、苦手な方はご注意下さい。最後までは致しておりません。)
【※設定の濃いオリジナルキャラが登場します。お手数ですが、作品をご覧頂く前に、シリーズ全体のあらすじ概要をご確認下さい。】
燃え滾る蒼
触れられる度に動揺し、微かな驚きの声を上げるも、すずなに抵抗する気は起こらなかった。箇所に感じる甘い痺れと、彼の口元から仄かに芳る、日本酒の匂いが鼻先をふわりと擽り、酔いしれるように、じわじわ、と思考を奪っていく。
ふと、何も感じなくなったことに気づき、閉じていた眼を、そっと開けた。すぐ眼前に、藍がかかった長い睫毛に縁取られ、艶やかな熱を含んだ蒼の瞳が、甘い響きの吐息の音と共に、自分の様子を心配そうに見ているのが、視界に映る。
視線に捕らえられたように完全に言葉を失い、一寸の沈黙の後、その蒼さが段々、視界全体に広がっていくのと同時に、また、反射的に眼を閉じた。
そんな姿を確認した瞬間、義勇は、彼女の顔を包み込むように大きな左手を添え、こうすることが当たり前かのように、潤う薄紅の唇に自身の唇を、今度はより深く、熱く、重ね合わせた。
───柔く、甘く、心地好い……至福というのは、こういうことを言うのだろうか……
初めての接吻の感触に酔いしれて、薄れていく理性の中、義勇は少しだけ眼を開け、名残惜し気にゆっくりと唇を離してから、彼女の様子を伺った。
情を交わした者との愛撫は、こんなにも幸福で、満ち足りた想いに溢れるものなのかと、胸が締め付けられる。
一方、先程から自身に起きている現状が信じられず、顔を耳まで紅色に染め、すずなは完全に放心していた。想定を超えた事態が続いたことで、思考が彼方に飛び、恍惚とも言える表情を浮かべている。重ねられたばかりの、弾力のある砂糖菓子のような小さな唇が、濡れたように艶めき、微かに震えていた。
非常に動揺しているようではあったが、自分を怖がり、抵抗する気配は感じないように、義勇には思えた。受け入れてくれたと思って良いのか……
「…す、まない……嫌なら、噛んで逃げてくれ。」
顔を彼女の耳元に近づけ、囁くように伺いを立てた刹那、再び湧き出した渦に呑まれ、また首元の髪を掻き包むように、左手ですずなの後頭部を支えながら、今度は勢い強く、彼女の唇を奪った。
身体の奥底からじわじわと沁み込んでくる、狂おしい衝動に合わせ、角度を変えながら食するように繰り返し口挟み、自らの舌を彼女の歯間に割り入れ、小さく柔い舌に絡め、吸い、味わっていく。
「う…ふあ…ん……」
急に押し入ってきた、大きな熱い舌を受け入れ切れず発せられた、艶のあるすずなの悲鳴、微かな酒の匂い、自身の口内に伝い交じる、花蜜のようなほんのりとした甘い味が、義勇の思考を彼方へ飛ばした。
彼女の小さく並んだ歯列、滑らかな上顎の内側を舌先でなぞる度に、口内に湧き出てくる甘い液と、自身の唾液が交わり、波打つ音色が、静かに、響く。
「う…はあっ……」
暫し、互いの口内を揺蕩い続け、名残惜しそうに、義勇はゆっくりと唇を離す。粘のある水の糸が、二人の口元を繋げた。すずなは息を上げながら、けほっ、と軽く咳き込み、義勇は繋がった糸ごと、口元をぺろりと舐め込む。
頬を薄紅に染め、困惑と高揚の入り混じる、蕩けるような表情を浮かべながら、艶やかな視線を向けてくる、彼女の瞳は涙で覆われ、熱のこもった朱の光が揺らめいていた。
そんな扇情的な光景が視界に映った瞬間、義勇の中で、何かが、完全に壊れた。脳裏に僅かに残っていた理性が、火花のように弾け飛ぶと同時に、華奢な体を包んでいる彼女の浴衣の帯を、シュルッ、という衣擦れの音と共に引き解き、緩んだ襟元の隙間に左手を差し入れ、白い肌を覆っている布地を、もどかしげに背中の方へずり下げた。
「え……?!」
小さく驚きの声を上げたすずなだったが、彼の耳には入っていない。露になった形の良い鎖骨、細い肩、小振りの水蜜桃のような二つの乳房が目に入った瞬間、義勇は釘付けになり、見とれてしまった。
青白い月明かりに照らされた、触れると消えてしまうのでは、と思うくらいに透けた、真珠の彫刻のように、きめ細やかでほっそりとした美しい肢体を、思わずじっと眺め、息が止まる。既に薄紅色に染まっているであろう、自身の頬が、段々と熱くなっていくのが判った。
一方、生まれて初めて若い大人の男性、しかも、ずっと慕い焦がれていた人に、自分の裸体を見られているという状況に、すずなは羞恥心に耐え切れないでいた。
顔から火が出そうな勢いで、初めて義勇に少し抵抗し、固い腕の中でもがき、隙のある右へ隠すように上体を反らす。
が、そんな仕草が、今の義勇の瞳には大変可愛らしく映り、反って劣情を煽った。目元に血流が雪崩込み、細い肩を支えていた左手に力がこもり、強引に彼女の体勢を元に戻す。
口元が、ふっ、と僅かに歪むように微笑んだ瞬間、眼前の白い首筋や胸元に吸い寄せられるように、唇を何度も落とし、艶かしく舌を這わせた。
柔くしっとりした肌を、優しく愛でるように舐め上げながら、未だ筋力のある左腕で、華奢な身体をしっかりと支える。
「や、待っ…てく…う…んあんっ……」
舌や唇を動かす度に発する愛らしい嬌声、慣れない快楽に身を震わせる反面、必死に自分の背中に掴まってくるすずなが、義勇にはいとおしくて堪らなかった。触れ合った素肌から、全身にじんわりと伝わってくる温もり、彼女が纏う優しい空気が、心の扉を容易く開かせる。
───可愛い…愛しい…もっと悦ばせたい…もっと欲しい……もっと満たしたい……
生まれて初めて湧き続ける情欲に任せるように、義勇は自身の体重をかけながら、完全に身体の力が抜けている、すずなの右腕を掴んだ。そのまま、ゆっくりと押し流し、柔らかい布団の上に、とすっ、と組み倒す。
急に視界が反転し、瞳に映った天井の木目に驚き、不安そうに目元を泳がせる彼女を安心させようと、再び額に優しく口付けた後、しっとりした弾力のある膨らみに、顔を押し当てた。
右側は啄みながら舐めほぐし、もう片方は、闘いで研磨された傷跡の残る、骨張った左手で大事そうに包み、長い指で優しく揉み上げていく。
「や…待っ……!!…みおか…さ…うぁ…んっ……」
癖の強い、義勇の艶やかな黒髪が、視界の全てを占拠し、日本酒と石鹸混じりの“彼”の香りが、絶えず鼻先を擽る。熱く、柔く、ざらり、とした感触が、自分の乳房の敏感な部分で、絶えず艶かしく動き続けている。
そんな経験したことの無い、甘い痺れと熱い快楽が全身を貫く、今の事態がどういうことなのか、特殊で厳格な家柄の箱入り娘だったすずなには、把握できる余裕も知識もなかった。
長年、ずっと慕い続け、信頼する彼の熱い温もりが全身に伝わり、たまらなく心地好くて、逃げることなど出来なかった。
次第に、自身の嬌声に恥じらい、手の甲で口元を塞いでいるのか、籠るような吐息混じりの音色が響き始めた。
細い首を振る度になびく、亜麻色の長い髪の動きに煽られるように、次第に膨らんでいく欲情の渦に、義勇は支配されていった。形の良い膨らみの先端に咲く、小さな梅蕾までを口内に含み、舌先で愛撫していく。
「…う…ふぁあっ……?!」
「…声…抑えなくて…いい……聴きたい……」
いつもの自分はどこかに消えたように、するり、と欲情に溢れた本音が零れ、掠れ響く。底無しの愛欲の沼に沈んでいくように、深く、深く、溺れていった……
はぁっ…はぁっ…、と激しく息を荒げ、義勇は、片腕で自分の体を支えながら、改めて、すずなの顔を覗き込んだ。涙を滲ませた焦点の合っていない朱の瞳が、自分に問うように揺らめいている。
突然始まった情事に不安で堪らないだろうに、自分に全てを委ね、身体を預けてくる、この愛い人を、これ以上、これから、どうしたら良いのか ────
うなじ付近に舌先で触れた瞬間、すずなの全身に震えるような衝撃が貫き、反射的に少し仰け反った。刹那、彼女の顎下の付け根に浮かぶ、紐状の赤黒い痣が、義勇の蒼の瞳に映った。
皮肉にも、敢えて白い肌に目立つよう刻まれた、刻印のような痛々しい有り様に、驚いて唇を離す。彼女の背負う痛みを、改めて俊敏に感じ取った。
以前、蝶屋敷で自害しようとした時のものかと、瞬時に察したが、やたら細く、独特な編み様の紐で締め上げたような跡に、“何か”が過る。脳天を殴られたような衝撃で、義勇は我に返り、青ざめた。
「…これは…まさか、あの……」
──この痣を付けた、“物”は……
すずなの様子を見ると、とうとう見られてしまったこと、自身が後ろめたくて堪らないかのように、必死に顔を背け、何も言わず辛そうに目を瞑っている。どうやら、自分の後ろ暗い部分の全てが、義勇に知られたことを察したようだった。
「…………。」
おそらく、これが一番、彼女が口にしたくないことだったのだと思った義勇は、非常に申し訳なくなり、ひどい罪悪感に苛まれた。
心から詫びるような思いで、首筋の付近にそっと唇を当て、少し躊躇いながら、痣の上をなぞるように舌を小さく動かし、優しく労るように舐め始める。
「えっ!! ひゃ…あっ……」
予想外の行為に、また驚きと甘い刺激に耐え切れず、すずなは小さな悲鳴を上げながら、また軽く仰け反った。
彼の熱い舌先が、忌まわしい首元で動いているという奇妙な状況に狼狽え、何故、こんなことをするのだろうと、改めて激しく動揺する。が、舌の動きが、先程の情事よりも優しく柔らかなことから、段々、自分の哀しい気持ちを慰め、埋め直そうとしてくれているような、優しい“気”が、じわり、と滲み伝わり、温かく嬉しい気持ちで締め付けられ、泣きたくなった。
次第に、刺激に慣れてきたのか、少し余裕が出たことで、大きな犬に首もとを舐められ、じゃれつかれるような心地好い擽りに変わってきたことで、すずなは軽やかな笑い声を上げる。
「…ふふっ…あは…くすぐった…いです。冨岡さ…ん……」
細い指で涙を拭きながら、義勇の方に顔を向けると、少し安心したような表情をしていた。しかし、瞳の色が、先程までの艶のある蒼から、少し涼やかな紺碧に変化していた。彼の異変を感じたすずなは、真顔に戻り、言葉を飲む。
左腕で彼女の体を、再びいとおしげに抱きしめ、戸惑いの色を浮かべる顔や、乱れた髪を優しく指で撫でながら、義勇は、哀しい瞳で優しく微笑んでいた。それは、先程まで激流の如く、自分を求めていた男性とは違い、いつもの穏やかな彼だったので、すずなは困惑する。
「…と…みお…か…さん……?」
月明かりに反射し、蜜蝋色に変化しながら煌めく長い髪は散り乱れ、胸元だけでなく下肢部分や、すらり、と伸びた白い足まで、あられもなくはだけさせたまま、すずなは、か細い声で問いた。
『どうして、急に…?』と、様々な意味合いで言わんばかりに、不安そうに見上げる彼女を見つめ、義勇は、喉奥から振り絞るように、掠れた低い声を溢し出す。
「…す…まなかった……もう…止める。」
「…………?」
「…こんなことを、して…おいて、この先…どうすれば…いいのかわからない……本当に、申し訳ない……」
真っ白で柔い雪原の上に、紅色の小さな花びらを幾つも散らせた、愛しい人の上半身を、乱れた彼女の浴衣を手に取り、義勇は被い隠した。
【おまけ噺】
R-18の境目が今一つわからないので、いやこれは16歳でもヤバいだろう、と判断されましたら指摘して下さい。なんとか書き切りましたが、濡れ場って難しいですね……(爆)