京浜第3シェルターのアイツ 作:FD一枚ケルベロス
序
プロジェクト・イカロス。
この記録はこれから世界を巡り、今後のために収集された記録ログである。
世界は既存法則から逸脱し、終末と呼ばれる段階へと移行するだろう。
これは我々ガイア連合及び日本神話に系譜される神々たち及びアメリカ情報機関ブラックハンド及び陸上自衛隊霊的防衛組織全体の共同認識である。
世界は滅ぶ。
間違いなく、人類はこれより半減し、人間は霊長類の座から転落するだろう。
人類は覚醒したもの――覚醒者と覚醒出来なかった――愚者へと分類されることになる。
今やこの世界は貧弱な人間とそれを嘲笑する邪神たちの策謀によって壊滅しつつある。
米国の旧支配者召喚。
世界の半分を焼き尽くさんと放たれたICBMとそれに搭載された悪魔召喚プログラム搭載の地獄門開通処置。
跋扈する悪魔たちと無差別に災厄を撒き散らす魔人共。
後に召喚され現れた魔王プルートと正体不明の機械兵器群。
大洪水に備えて建造され続ける神の船と三対の狂った大天使。
私たち人類がこの星を支配していた時代は終わる。
古き神々は地の底から蘇り、至高天としての座を我々人類は転げ落ちる。いやそんなものは元からなかったのかもしれない。覚醒者と愚者の力の差を考えれば、我々は無自覚な奴隷でしかなかったのだ。悪魔という主君にして、我々はこれからの時代を生きることになる。
これはそんな時代の到来に抗った虚しい記録になるだろう。
蝋の翼を持って天へと向かったイカロス、その物語を残した記録者のように。
意味のないものを少しでも意味があるものとするために。
これはそんな旅路の中で収集した参加者たちの証言であり、その大半が戦略的・戦術的に価値がないものとして判断されつつも、次世代ガイア連合構成員たちへの学習教材として転用されることになるだろう。
人が人があるために。
信仰のなき時代の旧人類のプロファイルデータとして。
この文書はアメノトリフネに同行し、私自身が直接聞くことが出来た証言を、時系列ごとにまとめたものである。当然、証言者の主観的な記憶、個人の信念に基づいて思想、多くの事実誤認や曖昧な点、不正確な情報、私自身の編集による意図せぬ誤解となりえる情報。
これらが含まれていることを閲覧者には十分に留意してもらいたい。
この記録情報は、ガイア連合の非ブラックカード保有者である私が行っているため、おそらく多くの知られざる真実があるのだろう。
私も知らない情報が多くあり、正確な記録、正しき価値の高いログを、電霊たちが収集記録している。
あくまでも比較されるための情報であり、この記録情報を取ることによって与えられる報酬。
そのためだけに私は参加している。
政府での仕事を失い、コンピューター技師としてガイア連合に就職した父には遺書になりえる記述が多く含まれているため、あえて無編集で父に渡して貰えるように契約を行った。
悪魔召喚プログラムを手に入れても、自分は彼らほどの力がなく、途中で死ぬだろう。
だがそれでも、いや、例え途中で命尽きてもこの記録した情報は無駄にはならない。
誰かが受け継いでくれる、彼らが、私たちが歩んだこの旅路に意味があったのだと一人でも思ってくれるのならば意味はあったのだ。
旅路の半分、最終目的地へと旅立つ前のガイア連合山梨支部で、今私はこの記録を編集している。
証言ログに関しては既に上層部へと提出した。
辿り着くまでのそのギリギリまで私は編集を続けるだろう。
私はこの国には生きては帰れないだろう。
私は彼らと共に魔界へ往く。
あの二人の希望を見届けるために。
そのために私はこの記録を書き連ね続ける。
それだけが私に出来る運命への反抗だと信じて。
彼らの生きた証を、彼らの残した声を、その希望と絶望を、形なきものたちへ託した祈りを、誰かに伝え繋げていくために。
――――私たちはまだ絶望なんてしていない。
出航準備
参加を決めた時?
ああ、プロジェクト・イカロスの発表と希望者募集を聞いた時さ。俺はその場で参加に立候補したさ。
迷わなかったって? そうだな、自分のキャラからすると迷うわけがないと答えるべきだろう。
だが本音を言えば迷わなかった自分にびっくりしていたよ。
なんだ、意外だって? ああ、そうだな。自分のキャラらしくはないさ。
だがそれも俺だからな。
だけどこれであの二人の役に立てると思ったんだよ。正確に言えばヒデトさんのだな。
あの人にはとても感謝している。他の連中、特にうちの取り巻きたちには嫌われてるけどな。
ああ、ついさっきも言われたんだろう? 変なことを吹き込まれた俺の目を覚まして欲しいってな。
何度言っても信じてくれないんだ。
小牟への説得も本当に骨が折れた。
(深々と大きな体躯を屈めてため息を吐くレイジ氏、普段は頼れる戦士としての顔しか見せない彼の貴重な一面だった)
ガイア連合でも実力と危機感を持っている人間はいないわけじゃない。
数は少なかったが、確かにいて、その殆どが既に渡航して戦っている。不味いと気付いて、特にメシア勢力とやりあってるのさ。
だけどそれ以外はこの国に留まっている。ガイア連合の古参の大半は国内にいたままだ。
日本は安全だし、与えられたシェルターさえあればこれからの危機にも生き延びられる。それはまあ間違いないだろう、ショタオジもいるしな。
意外かもしれないが、俺たちの、特に古参でも新参でもそんなやる気があるわけじゃないんだ。
驚いたか? いや確かに、他の霊的組織から見れば桁違いに強いように見えるだろう。実際戦えば相手にならない。子供と大人、それ以上の力の差があるさ。
いらないっていっても付きまとってる、自称俺の味方っていう連中にもそれがわかってる。
「まるで神様扱いだ」
高級油揚げを気軽に奉納されて喜んでる小牟なんて可愛いものさ。変に煽てられて浮つきそうになってる度に拳骨落としてるがな。
俺たちには力がある。そいつは間違いない。
だけど力と意思が両立するかといわれればNOだ。
俺や承太郎さん、ハムネキたちと比べて他の奴らはそんなに強くない。ガイア連合の一員たちにもパワーバランスは歪なのさ。
外から見ればどれも山にしか見えないで、それが富士山なのかエレベストなのか海中に沈んでる氷山の一角なのか、わからない。
小規模驚異用に外部で設定されたDレベルってあるだろ?
あれはカットしておけ、国外にいけばあんなもの役に立たない。戦うレベルはそんな小さな目で見てたら危機感が足りなくて死ぬことになる。
と、脱線したな。インタビューなんて初めてだから何を言っていいのか、まあいいや、問題があれば編集してくれ。
そうだな、これからの話をしよう。
今建造が進んでるアメノトリフネ、あいつの性能は凄い。
普段海外との往路に使っている船と比べれば中型船だが、機動性とレーダーなどの戦闘向けの性能だけは詰め込んでいると聞いた。
レッドスプライト号……米軍と日本が共同計画で進んでいた次世代型調査船、開発凍結されていたやつの再設計モデルらしい。
もしかしたら電磁障壁も突き破れるかもな。ああいや、こっちの話だ。別につっこむわけじゃない。そいつは多分終わったことだ。
俺たちはこいつに乗って国外に出る。今や飛行機なんて天使の餌食だからな。安全に移動するならこれしかない。
海洋神の加護もあるし、下手な嵐にも乗り切れるはずだ。
問題は出没してくる悪魔なり、ちょっかいを掛けてくるだろう連中だが、まあそのための追加装備を俺の式神にも準備している。海中探索用の簡易式神も開発されてたのを搭載するはずだ。
あとは乗り込む戦闘要員、俺たちも海上、海中戦の訓練をしている。お前もそうだろ? まあ前線は俺たちの出番だ。
だけどな、それがまずかった。いや必須だからしょうがないんだが、想定外だった。
俺たちが海に出て訓練をしている。
そんなことだけで、ガイア連合が海外に出る。いや、正確に言えば俺が出ることがバレた。
森羅って知ってるか? 今はガイア連合に吸収された小さな護国組織だ。
そこで祀ってる氏神が大層自慢気にべらべらと喋ったらしい。
自分の氏子が、悪しき海外の化生共を討つ!
なんてな、頭が赤紙届けられて万歳合唱かよ。
自慢するわけじゃないが、これでも色んな所で活動してきたし、それなりに縁故を繋いできた。慕われている自覚もあったし、俺も衰退した異能者の家の生まれだ。
だからといって出る前にせめて子種をくれとか言うのはどうなんだ。
土下座すればなんでも認めるわけじゃないんだぞ。
必死なのはわかるが、人間としてのモラルも持って欲しい。別に死ぬつもりなんかないんだが。
まったく狩人ニキは上手くやったもんだ。ショタオジたちにだけ話を通して、さっさか渡米したからな。
俺たちは崇められたいわけじゃないんだ。
ただ取引をしたい。人間なんだ、神様じゃない。崇められるだけでなんでもしていい神々共とはアライメントが違う。
だから、あんなことをしたあいつらは俺からすれば自業自得だろうさ。
まあともかくこれから頼む。
一緒に旅する仲だからな、戦友として頑張ろう。
兵器準備
ああ、構わないとも。
十分程度だが、食事しながらでも構わないかな? すまないね、デブは一食でも抜いたら死んでしまうのだよ。
おっとここは笑うところだとも。
(恰幅のいい男性は、薄汚れた白衣も気にならないほど快活した笑顔を浮かべる)
しかし、あれだね。今回の仕事はかなりくたびれたよ。
なんせモノがモノだ。
推定敵性レベルが70前後だからね。
おっとここは笑えないところだぞ。私も笑えないが。
しかも強度はLV50ぐらいの怪獣と八連打しても最後まで持つぐらいの耐久性が欲しい。といわれてね。
君たちは何と戦うつもりなんだ? と言ってしまったよ。
ティアマット*1とヒドラ八体*2とかと答えられた時、久々に胃痛を覚えたね。
青ざめたな。うむ、彼が推定している敵の規模はそれだ。
おそらく、いや本当におそらくであって欲しいのだがまあ言われた通りに我々も要求に答えようと努力をしている。
とはいえLV70超えなんてものは見たこともなければ戦ったこともない。
銃火器にしたってどれだけの破壊力がいるかも想像しか出来ない。
だから我々にしても高レベルの悪魔のデータ、そして実用データが欲しいのだよ。
今後のためにも。
そのような今後がこないことを願いたいが、それは叶わぬだろうからな。
評判
情報? ああ、こちらにもしっかり漏れ聞こえていたさ。
というかかなり大きく募集が掛かってたからな、当然だろ。
かなり色めき立っていたな。
連合でこんな募集、それもカード持ちじゃないやつでも参加者を募るなんて計画は滅多になかった。
しかも報酬はでかい。目の色変えるさ、装備も用意されるっていうんだぜ?
参加しない奴のほうが馬鹿さ。
……なーんて考えなしの連中は言ってやがるがね。
(都内に存在するガイア連合支部、その中でもまとめ役として頭角を表しつつある青年は冷めた顔つきでノンアルコール飲料を口にしていた)
狂信派閥を一掃するための計画じゃねえかなって俺は踏んでるよ。
忠義を示す、恩義を返すなんて血気立ってやがるやつもいるしな。少しでも冷静に考えれば生きて帰れそうにない、外から聞こえてくる惨劇に比べりゃあマシな日本から飛び出て外で仕事だ? カニ漁船かよってよ。
それでもその少しの冷静さもないやつが世の中多い。かなり飛びついてんだろ? ダークサマナー狩りで点数稼ぎをしていた奴も稼げる相手が殆ど見かけなくなったから焦ってやがんのさ。自主的にガイア連合に反対してる、いやその邪魔になりそうな人間を消したりして媚び売ったりとかよ。まったくクソだぜ。
あん? オザワのやつがそれだって? ちげーよ、そういうのは黒札反対主義者の仕事じゃねえ。
狂信者共のほうだろうさ。
まったく、恐ろしく感じるぜ。
人間あんな極端になれるもんかよってな。
ま、俺はダチ共がいるからいけないが頑張れよ。
……英語もできねえし。
(デモニカスーツでの応用機能で、会話だけならどこでも翻訳出来ることを彼は失念していたようだ)
反発
はい、全てはガイア連合のためなのです。
だっておかしいじゃないですか。
レイジ様は我々日本の守護者、護国の誉れたるガイア連合の烈士なのですよ?
それが外へと往くなどありえません。
せめて我々も共にと志願しましたが、門前払い。明らかにおかしいです。
しかもガイア連合の貴重な資材に船まで貸し与えられたのが、所属もしていないただの男と女。名前も聞いたことがない風来人共です。
我々は調べました。
すると出てきました。彼の悪行が。
彼はガイア連合の名を偽証して、その名誉と信頼を踏み躙っていたのです。
――それはあくまでも誤解、外部に寄るレッテルだと判明していますが?
そんなもの幾らでも誤魔化せます。
この世界には洗脳も暗示もあるんですよ。
その証拠に彼はたった半月前までカードの一つも持っていなかったじゃないですか。後ろ暗いことがあるダークサマナーだったに違いありません。
なんらかの手口でガイア連合に取り入って、搾取をしようとしている。
いえ、レイジ様と始めとした連合の方々を外に連れ出して拉致への手引をしようとしているに違いないのです! 騙されてはいけません!
――だから暗殺をしようと。車でつっこんだ、と?
奴は化け物です!
何故車で死なない! 受け止めて破壊までした! 銃弾も打ち込んだのに、防ぐなんて! 悪魔だ! 悪魔が化けています!!
騙されてはいけません!! 奴を追放し、今すぐ消さないと大変なことになります!
――貴方がたが起こしたテロで、危うく一般人の死傷者が出るところでしたがそれに関しては。
才能がない羊たちなど、皆様方に比べたら塵芥では?
大丈夫です。私たちは証拠など残していません、あなた方に迷惑をかけることはしておりませんから。
我々には殉教の覚悟があります。
どうぞご迷惑になるようでしたら消してくださいませ。
ただあの悪魔だけは決して目を離さぬように……
信託
ああ、覚えているよ。
男女二人組で、しかも片方が物凄い美人だったからな。忘れようにも忘れられないもんだ。
エライごつい装備で、あーデモニカスーツっていったか? それを着けてたな。
白魔術をかじってたおかげでピクシーでの偵察が俺は出来てな、異界を見つけては連合に報告して、その金でぼちぼち生活してたんだよ。
Dレベルで9もあれば生活には困らない。
だからまいったね、そんな自分が見つけた異界に行きたいなんて尋ねられた時はよ。
測定器で両方ともレベルを振り切ってて、これはヤバいなんて思って、逆らったら殺されるって思った。
ところがあくまでも場所とルートを教えて欲しいなんて言われて、金まで渡されたんだぜ。
信じられるか? 人間の会話してたんだ。
なんで驚いてるって? そりゃあお前さん、こっちの業界の連中で会話なんて出来るわけ無いだろ。
交渉はあくまでも対等な力関係のみ。そうでなけりゃあ搾取か圧迫だよ。
俺はそこそこ賢いからな。
自分に戦う才能がない、出来ても妖精とのお喋りが出来る、その程度だとわかった途端住処を固定するのはやめた。
今でこそ霊能組織なんて連合にペコペコしてるがな、ダークサマナー狩りなんてなんで直ぐに出来たと思う?
ノウハウがあるからだよ、ノウハウ。
地元に根づいた家柄があって、気に入らない奴は家ごと放火、一家まるごと消すなんて慣れたものだったのさ。
異能なんてあっても車で轢かれりゃあ死ぬし、寝てる間に二酸化炭素を充満させられればお陀仏。
取り込めないような奴は消したり、追い払ったり、やりたい放題さ。
んな考えと行動してたらそりゃあ頭もいかれてやがるさ。
俺のあくまでも経験則だが、悪魔に関わるやつは悪魔に近づいていく。
肉体が悪魔になるとか、そのMAGを吸収して影響を受けるとか、そういうことだけじゃねえぜ?
悪魔の言葉と考え方を理解するために、それに共感して、あるいは同意しながらいつのまにかズレていくのさ。
悪魔なんてどこまでもいっても人間とは違う存在だ。
騙したり、そんな気がなくても食い違いが起きて、そのすり合わせのために必死こいて考えるのはいつだって人間のほうだ。
そうやって考えを理解して、同じスタンスになって、それにあった行動ができるようになって、そいつは人間なのか?
俺だって気を抜けば頭妖精かヒーホーになるだろうさ。
だから驚いたよ。
あんだけ強い奴が、見かけだけでも人間らしい会話をしたのをさ。
そんで二人共異界に向かっていって、なんとなく心配になったのさ。
別に普段から誰が死んだり消えたり食われたりなんて気にはしない。んなもんこの世界ではありふれたことだからな。俺だって全然気にしない。デビルハンターなんてそういう生き方をしてる、自業自得さ。あるいはまあそういう運命だったんだろう。俺にこんな才能があったようにしょうがないことだって。
だけど久しぶりに人間らしい言葉と会話をしちまってちょっとだけ心配になったんだ。
ガイア連合の紹介だったし、どんだけ馬鹿げた力があるんだろう。んな好奇心をもっちまったんだ。
それで異界まで見に行っちまったんだ。自分では慎重なつもりでな。
――それでどうしたんですか?
滅茶苦茶後悔したさ。
一歩踏み込んだら、途端に別の場所にきちまってた。ワープしたんだ。
そういう異界もあるって知識を思い出したのも後の祭り、周囲は妖精なんかじゃあ太刀打ち出来ない悪魔だらけ。
こりゃあ死んだと思って、神様は助けてくれそうにないから仏様に祈った。
そこであいつらがきてくれたんだ。
あの二人はびっくりするほど強かった。
目にも止まらない動きっていうか、いや、悪魔のほうは多分音ぐらい早かったんだろうか。風が吹き荒れて、俺は伏せながら見てた。
怪獣みたいにでかい悪魔が、プロ野球ばりのスイングで手を振り回すんだ。びびるどころかもう死んだと思った。
それをあいつは避けながら剣で切りつけて、女のほうは的確に足を攻撃していた。
シキガミっていったか? 見たこともないような悪魔が数体、凄い速度で動き回っていながら、連携してたんだ。協力というか連携、陣形を取ったりとか、とにかく誰かの動きが、次の動きになるみたいで。やばかった。
俺が指輪で購入していたアガシオンなんかよりもめちゃくちゃ強い動きで、本当に腰を抜かしたな。
で、その悪魔がぶっと倒されたあとに、二人が俺を見たんだよ。
俺はぎゅぅっと心臓が潰されたような気がして、今度こそ死んだと思った。なんだったら異界に入ったときよりも絶望感があった。
だってよ、普通仲間でもないデビルハンターの手の内なんて見たら殺されても文句言えないんだぜ?
弱点、ああ、相性っていったか。鬼に豆とか、イワシの頭とか、そういう弱点はあるんだ。
異能者の中には氷には強いのに火に触れただけで大やけどになったり、そんな変な法則がある。
悪魔を使えるサマナーって呼ばれる奴らはとにかく何を持っているか秘密にする。
伝承さえ調べれば弱点がわかっちまうし、手の内もわかったら対策をされるからな。
せめて楽に殺してくれって言ったよ。
そしたら、あいつキョトンとした顔で 「神経魔法でも喰らったのか? ロザンナ、パトラを頼む」 「そうね、あとお腹空いたからなんかいいところで食べにいきましょ」 なんてのんきに言ってたんだ。
そのあと? 俺がこうして生きてるみたいに殺されなかったよ。
なんでか地元の穴場ラーメン食いにいって、銭湯に浸かってきたけどな。
あーいや、ロザンナちゃんがニンニクの匂いついたまま戻るの嫌だって言ってたんだ。理由思い出したが、その時俺思わず笑ったんだよなあ。
だって今さっきまで悪魔ぶっ殺して、血飛沫浴びてたような奴が、ニンニクの臭いって。
笑うだろ?
でもまあそんなのが人間じゃねえかな。
あの二人は今どうしてんだ? あーいや言えないならいいんだ、生きてはいんだろ? ならいいさ。
こっちに寄ることがあったら電話をしてくれって言っといてくれないか。
あそこのラーメンの裏メニュー、まだ教えてなかったってよ。
時系列は曖昧です
次回こそイギリスに到着します