京浜第3シェルターのアイツ 作:FD一枚ケルベロス
ロンドン。
かつての英国の首都にして霧が立ち込める都市。
アメリカ核基地を支配下においたメシア教共による各国ICBM攻撃によって核の炎に飲み込まれ、崩落した。
立ち込める放射能に、ICBMに搭載された悪魔召喚プログラムによって出没した悪魔共による蹂躙。
ロンドンは死都と化し、首都としての価値を失い廃棄された。
この都市に訪れたのは四条翔と共にデモニカ部隊を率い、生存者たちの救出活動をした時だった。
それからは来るはずがなかった。
こんな決戦都市として用意するまでは。
「アーサー、偵察部隊から連絡が入りました。見えたそうです」
「早いな。やつはまっすぐこちらに? ロンドンを迂回してくるなんて悪夢は止めてほしいね」
「ブレーキも効きそうにない大所帯ですもの。その心配はいらないでしょう」
ロンドン王立公園の一つ、ハイドパーク。
奇跡的に放射能残量も少ないこの幅広い土地で、アーサーたちは陣形を展開していた。
自軍全員に対毒装備のアミュレットやガスマスクなどを装備し、それ以外にも治療を行える悪魔や道具を用意している。
それ以外にも耐毒用に調整、一時的な処置を施された英傑悪魔たちが起動を開始しており、既に動けるものたちは少しでも作戦成功率を上げんと忙しなく駆け回っていた。
「それにしても本当に悪魔が少ない……悪魔に放射能が有効だなんて」
「ICBMを打ち込まれてその広まったMAGと拡大したGPで大量の悪魔が発生した。だけど、悪魔にとって放射能は決して無害じゃないのさ」*1
「瘴気のようなものなのに?」
「もしかしたら魔界の環境は悪魔に心地いいものじゃないのかもしれないね」
斬新な解釈を行う妻に苦笑して、ガイア技術部と妻が直々に設計してくれたアームターミナルを起動。
搭載したアプリを起動させる。
モルガンが作ってくれたアミュレットはしっかりと放射能を毒扱いして遮断してくれているが、まだ無視出来ない放射線量が残っていることを検知している。
「真・女神転生1から2に至るまで、外の世界は環境破壊によって生存不可能領域が広がり……約束の地、あの完全環境施設を持つミレニアムへと人々は集まっていった」
「?」
「そして、救世主は誕生した……か。大破壊を防いでも次に洪水が起こるか、それなら……」
「お父様!」
考察に沈んでいたアーサーに再度揺さぶるように、アルトリアの声がかけられた。
カヴォスを側に連れて、常にない甲冑姿に身を包んでる。
普段の軽快な機動性を重視したものではなく、対物反射特性を宿した霊的複合甲冑【ウィガール】だ。
モルガンとそしてアーサーが指示し、着せた防具だ。
「なんだいアルトリア。新しい鎧の着心地が悪いとか? それなら我慢してくれ、僕用のものを慌てて調整しただけだからね」
アーサーが着ている鎧は普段のものに加えて対物耐性を付与し、揚羽蝶を思わせるマントを羽織っている。
アゲハのマント*2
ほぼ飾りにしかならないだろうが、一応マハザンも習得しているマタドール対策の装備だった。
「それならお父様が着ればよかったでしょうに。いえ、そんなことより私が前に出てはいけないとはどういうことですか!?」
「事前のミーティング通りだ。アルトリア、君は他の皆と一緒に取り巻きを削ること。決して前に出るな」
「何故です! 私がやらないと!!」
「必中技を持っていない、それが理由だ」
「!!」
「四条さんは命をかけて重要な情報を伝えてくれた。これがなかったら間違いなく全滅していた」
軍勢を分断する要塞計画への指示、重要な戦力になる英傑悪魔の運用と打ち合わせ、モルガンを含む魔法傾向の戦力の抜粋。
それらの時間を除いて、アーサーは繰り返し、四条とデモニカ部隊が送信してくれた魔人マタドールとの動画を見直していた。
物理無効の仲魔に対して――物理貫通付与の物理スキル。
テトラカーンを展開すれば――マハザンのノックバック。
デカジャをぶつければカポーテの振り直しで音速を超え直す*3。
こっちの攻撃だけが当たらず、相手の攻撃だけが命中し、砂上の城の如く誰もが砕け散らされ、悲鳴と怒号に染まっていた。
その光景の中で四条の声だけがしっかりと残っていた。
『奴の動きを見ろアーサー』
防御反射するグレイマンが、ただの一撃で瀕死寸前まで砕かれる。おそらく魂砕撃*6。
『あいつの回避、おかしくないか?』
捧魂の法*7にて強化されたヴァルキリーが、マタドールに追いすがる。
音速を超える攻防の中で剣を受け止め、スキルも使わない剣に回復魔法で完全構築された肉体は十分受け止めて。
『見えない攻撃がある』
放射線状に空間が波立ち、映像を撮る四条たちもダメージを受けたのが解る。
『3,いや、4発! 威力にばらつきがあるが、無効は、出来なかった!』
血に溢れる音が交る。
画像がひび割れて、それでも砕け散らなかったのは頭とカメラだけを守った四条の献身だった。
『ギミックを看破しろ! 鍵は命中、いや、必中だ! 反撃は出来ない!』
仲魔が砕け散る。
魔人の笑い声が響く。串刺しに、魔法を封じられたものたちがバラバラにされる。
音すら置き去りにする速度で、四条は銃撃をばらまきながら、声を上げ続ける。
最後の最後まで。
『勝てアーサー! 魔人を倒せ!!』
真正面から迫る魔人に抗いながら残した。
『俺達の世界を頼む!』
そして、映像は途絶えた
「
アーサーの前世の記憶は真4Fの発売後までしか残っていない。
魔人マタドールがソシャゲーのD2に実装されたかどうかは覚えていない、前世の記憶といってもはや体験上では二十年以上前の過去。
メガテニストだって@ウィキを脳内に仕込んでるわけじゃない。
だがそれでもここまでクソ仕様のスキルがあるとしたら、 D2*8としか考えられない。IMAGINE? 馬鹿め、奴は死んだわ。
(あのセガ運営が何を考えて積んだのかわからないが、おそらく物理回避をトリガーに発動するパッシブスキルだ。常識的に考えればMPかHPの消費があるはずだが*9最悪それすらもない可能性があるし、打ち止めまで躱させるのは現実的じゃない)
真3の人修羅反撃か、ペルソナ1の反撃状態グッドステータス路線の可能性があるか。
手書きのノート片手に悪魔合体プランを考えたり、アバチュ1の鬼畜混沌王てめえムドかハマで死ぬ儚い存在だったろボケナス!! と喚きながら仲間とスキルの組み立てを考えた遠い記憶のメガテニストあるあるな脳味噌をフル回転させながら、現実的な推測を告げる。
「間違いなく真っ当な悪魔じゃない、下手をすればこちらの全滅もありえる」
「そ、そんな! 父上が負けるわけが」
「この世界に無敵の存在なんていない」
アルトリアが絶句する。
彼女にとって父と母は偉大な存在だった。
どんな時でも自分を守ってくれる。強く、悪魔が出てきても苦戦した姿も見たことがない。
だからこそここまで一度として弱音を言ったことがない頼もしい背中しか見たことがなかった。
「もちろんそれは魔人においても例外じゃない。僕らは勝つつもりだ」
ニコリと微笑んでアルトリアの頭を撫でるアーサーはいつもどおりの父だった。
「だが、それでも万が一はある。だからこそアルトリア、君には二陣と共に下がっていてくれ。カヴォス、僕がいなくてもアルトリアを最後まで守りきれ」
「はい、マスター」
「お父様!!」
「そして
アルトリアの目が大きく見開かれる。
縋り付く自分よりも、アーサーは違う誰かのことを見ていた。
側に立つモルガンも夫の言葉に口を挟まずに頷いていた。
自分を頼らずに、外からやってきた男を勝利の鍵と見ていた。
自分よりも騎士王として相応しい振る舞いをする男が異国のものへと後を託す。
「ぁ、ああああああああああ!!」
アルトリアが声を上げて、飛び出す。
「お嬢様!!」
犬型のカヴォスが慌ててそれを追いかけて、モルガンの指示を受けてバーヴァンシーも追う。
泣きながら離れる愛する娘を、父親と母親はあえて追わずに見送っていた。
「嫌われたかなぁ」
「散々脅すからです。娘の傷跡に成りたい年頃ですか」
「いやいや最後の別れの時ぐらい悪い思い出のほうが振り切りやすいと思ってさ」
「まったく。男というものは無駄にカッコつけるものだな。これで死ぬつもりといったら折檻ものだぞ」
「死ぬつもりはない。アルトリアを玉座からただの女の子に戻して、白無垢姿を見るまではね。意地でも生き延びるさ」
「死なせはせんさ。私は魔女モルガンだぞ、死ぬような運命の摂理捻じ曲げて不死身の緑の騎士にしてやろう」
「おーおっかない。正直そんな魔女なんて似合わないよね、モルガンは」
「……どうせロールプレイですよー、もぉ」
「ごめんごめん」
夫婦の会話。
笑いながら、惜しみながら、お互いの目線を変えながら、娘の父親と母親たちは武器を手に取り。
「それじゃ」
空を見上げながら、騎士と魔女へと変わる。
赤い風が吹いていた。
そして、真紅の死が舞い降りた。
「貴公は我が渇望を満たしてくれるかね」
\カカカッ/
| 種族 | 魔人 | マタドール | LV87 | 属性NEUTRAL-CHAOS |
| 相性耐性 | 氷結反射 物理・銃・破魔・呪殺耐性 即死無効 |
魔人マタドールが、悪魔の軍勢共を置き去りに、そこに佇んでいた。
\カカカッ/
| 種族 | 超人 | アーサー・エヴァンス | LV66 | 属性NEUTRAL-LAW |
| 相性耐性 | 物理に強い 魔力に強い 破魔・呪殺無効 |
「メノラーならないぞ、帰れ!」
\カカカッ/
| 種族 | 顕現者 | モルガン・エヴァンス | LV64 | 属性NEUTRAL-CHAOS |
| 相性耐性 | 物理無効 電撃吸収 破魔に強い 神経・精神・魔力・呪殺反射 |
「テムズ川の下水なら好きなだけ飲みなさい」
人外の、転生者たちですらも恐れ慄く超高位悪魔の出現に対しても、二人は涼やかに罵倒した。
覚悟は決めていた。
英霊たちの姿を模した英傑悪魔たちよりもソウルを持って屈することなく睨み付ける。
そんな素晴らしい振る舞いに、マタドールは風穴の空いたハットを被り直して歯をかち鳴らす。
「言葉は不要か」
風が吹いた。
錆臭い風が清々しいほどに吹き荒れた。
「貴公らの命、貰い受ける」
「ここがお前の終着点だ」
「悪夢に溺れて溺死しろ」
英国の明日を決める闘争が始まった。
・
・
・
大地が震えた。
「?!」
「な、なに!?」
アルトリアとパーヴァンシーが振り返る。
そこには悪夢のような光景が広がっていた。
先程まで青天だった空に暗雲が立ち込め、クラスター爆弾でも落ちたように土煙が断続的に上がっている。
「え」
轟音。
軍用トラックが千切れた紙切れのように舞い上がっていた。
人間だったのか悪魔だったのかもわからない残骸が濁った音を響かせて、周囲に落ちた。
爆発音と落雷の暴力的な音と衝撃が休む隙もなく襲いかかって、アルトリアは思わず尻もちを付いていた。
付いた手が柔らかいものに触れた。
「え」
赤かった。
汚いものだった。
それが千切れた人間の手の断片だと理解するのに数秒かかった。
「お、お父さん、お母さん?」
あそこにいたのは誰だったのか。
自分の両親が居た場所だと思い出すのに、とてつもない時間がかかって。
その間に周囲に残っていた建造物が三つ、硝子でも砕いたように粉砕されていた。
轟音。
覚醒者として高められたアルトリアの視力は見た。
土煙を貫いて、直線を描いて吹き飛ばされた英傑ジークフリートが数百メートル先のビル壁に叩きつけられる。
その横から『α・コスモス』*10を構えたアキレウスが迫り、
それと同時にとても美しい巨剣を構えたヘラクレスがマタドールに斬撃を叩き込む。
マタドールの左腕がカポーテと共に千切れ飛ぶ。
入った! そう歓喜を覚えて「見事」 左腕を犠牲に致命打を凌いだマタドールがサーベルをヘラクレスの巨体に突きつけていた。
―― 魂砕撃 ――
ヘラクレスの巨躯が感電したように震えて。
―― 血のアンダルシア ――
十二発の衝撃が食いしばりも許さずに爆散させる。*12
その余波が、もくもくと立ち上っていた土煙も同時に吹き散らし。
「デカジャ!!」
血塗れのモルガンの魔法が、マタドールの力を高めていた補助効果を消失させる。
―― ダークエナジー ――
アーサーが血反吐を吐きながら攻撃・魔力を高めながら、踏み込む。
それをマタドールはカチンと歯を鳴らし。
「ここで
上を見た。
落下する自分の左手を噛んで、
| 赤のカポーテ | 特殊補助 | マタドール専用スキル。自身の命中・回避を最大段階まで上昇させる |
―― 連撃斬・極 ――
マタドールは風と化した。
空間すらも叩き割る刃を、避けて、受けて、避けて避けて避けて避けて、受けて、耐えて、避けて、アーサーの十六の斬打を半ば以上避け切る。
そして。
| 血のアンダルシア | パッシブ | 消費MP - | マタドール専用スキル。 敵の物理攻撃を回避したとき、次の連動効果が発動する。 「敵全体に4回、クリティカル率50%の物理属性ダメージを与える」 このスキルは反撃効果の発動を無視する。最大練度の場合物理回避率が自動上昇する |
血飛沫が広がった。
悪夢が起こった。
アルトリアはそれを直視した。
父と母が死ぬ。
彼女は絶叫し、力を求める。
王の力を。
魔人を倒す力を。
欲した。
王の物語が開幕の喇叭を鳴らした。
プレイヤーは悪魔召喚アプリを手に入れたデビルダウンローダー(D×2)として人類存亡をかけた戦いを繰り広げる
現在超高性能悪魔同士によるインフレが始まっており、先に殺す初手圧殺か、凌いで虐殺し尽くす世紀末バトルと化している
ようこそ、これを乗り越えさえすれば貴方は救世主だ。
できればね?