京浜第3シェルターのアイツ   作:FD一枚ケルベロス

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おまたせしました

後半部分もかなりかけてるので 近日投下します


はい/いいえ

 

 

 

 いたいよぉ。

 

 ――立ち上がれ。

 

 くるしひ。

 

 ――剣を握り直せ。

 

 たすけて。

 

 ――聖剣を奪い返せ。

 

 おとうさん。

 

 ――聖剣を奪い返せ!

 

 おかあさん。

 

 ――奪い返せ、奪い返せ、奪い返せうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせうばいかえせ。

 

 いやだ、いやだ、いやだ、もういやだ。

 

 声がする。声が響く。声が責め立てる。

 何も見えない。

 何も聞こえない真っ暗闇の中で、少女が目を閉じて、耳をふさいでいる。

 うずくまる少女(アルトリア)の内側から、壊れんばかりに声がする。

 手足を無理やり動かして、震える子鹿のような足を立ち上がらせようと、衝動がする。

 それは使命感にも似た、いや、違う。そんな綺麗なものじゃない。

 怒りだ。

 身勝手な怒りだ。

 

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 こんな汚いものが自分の中にあったのか、という驚き。

 こんなものであるべきだという自分の中の納得。

 

 思えば、アルトリア・エヴァンスの人生は光に満ちていた。

 

 産まれた時から親に祝福されていた。

 優しく、端正でかつ、聡明で優れた両親がいた。

 誰から見ても理想の王子様としかいいようがない父様に。

 誰から見ても幻想の王女様としかいいようがない母様に。

 二人に抱きしめらればどんな時だって笑顔になれた。

 日本にいた時はたくさんの物語に囲まれていた。父の趣味というべき映像作品に目を輝かせて、母の趣味だろう人形やたくさんの着飾る趣味でちょっとお人形にされて目を回しそうになって。でも着こなして、くるりと回って見せたらいつもの整った顔を崩して手が痛くなりそうなぐらいパチパチと褒めてくれて。

 義姉のバーヴァンシーが造ってくれた靴を履いて、お出かけするのが好きだった。

 血の繋がっていない、どころかシキガミっていう造り物の、悪魔? という存在だと教えられたけど、何も関係なかった。

 そんなの自分の大好きなお姉ちゃんだということと比べれば何の価値があるだろうか。

 お父さんのカヴォスだって抱きつくとふわふわのタオルみたいで、どんなお人形よりも気持ちよくて何度も抱きしめて乗せてもらって、幼稚園にいった。友達がみんな羨ましがるのが嬉しかった、カヴォスのかっこよさを知ってくれるのがそれよりも好きだった。

 日本にいる時は幸せだった。

 

 それからイギリスにきて、少しだけ変わった。

 

 実は父様と母様は悪魔と戦える凄く強いかっこいい人で。

 実はパーヴァン・シーもそのための道具で。

 カヴォスもそのための猟犬であるということを知って

 

 お父さんは日本に帰ってもいいといったが、父様がいれば何も怖くなんてなかった。

 母様もいるのに、誰もがみんな慕ってるのに、私だけ帰るなんて出来なかった。

 ここにいなきゃいけないという予感がしたから。

 

 そして、あの日。

 

 お爺ちゃんとお婆ちゃんのいる集落を襲ってきた悪魔の群れ、お父さんとお母さんがいない時を、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 私は守られていたけれど、イギリスの皆を守らなきゃと思った。

 お父さんとお母さんの子供だから。

 二人の様になりたいと思ってた、木の棒を振り回して、騎士になりたいなんて遊んで言っていた時のように。

 

 そしたら妖精さんがどこかから現れてくれたんだ。

 

「貴方こそ救世主」

 

 キラキラと輝くオーロラのような羽根を輝かせた湖の貴婦人が聖剣をくれた。

 

「貴方こそアーサー王」

 

 それはピカピカの宝石のような剣で。

 

「イギリスの危機に蘇る約束の王」

 

 私は聖剣を手に入れた。

 

 私の運命が始まった。

 

 それからは夢のような日々だった。

 悪魔を倒し、フォモール神族を成敗し、皆を守る誉れ高い日々。

 どんな悪魔だって怖くなんてない、聖剣の一振りでばらばらに砕けて、真っ赤な血も砕けて消える。なんて脆い。

 どんな敵だって怖くない。この一振りに砕け散るばかり、なんて弱い。蛮族共以下の下等生物共。

 だから楽しかった。

 だから夢のようだった。

 父が、たまにする悲しそうな顔だけが不思議だった。

 もっと頑張れば褒めてくれると思って、たくさん殺した、たくさん倒した、そしたらもっと褒めてくれると思って頑張った。

 

 なのにあの悪魔は。

 あの魔人は、私の夢を砕いてしまった。

 

 夢から覚めた。

 

 これまでどんなに痛くても、回復魔法で治る傷が痛くてたまらない。

 今までどんなに苦しいなんて思ってたことが、比べ物にならないほど痛い、苦しい。

 本当に苦痛を知った。

 涙が止まらない。

 怖くてたまらない。

 ぶるぶると震える手が、痙攣が収まらなくて、涙も鼻水も止まらなくて、喉が痛くて、たまらない。

 

「こわいよぉ」

 

 外が怖い。

 音がする、戦ってる音がする、耳を抑えても聞こえてるぐらいに戦いの音がする。

 

「いやだよぉ」

 

 世界が怖い。

 臭いがする、血の臭いが、人が死んでる気持ち悪い臭いが、口を抑えてもじくじく刺さってくる。

 

 ――身体を寄越せ。

 

 目を閉じると、体の内側から声がする。

 

 ――身体を寄越せ。

 

 耳を閉じても、声が聞こえてくるんだ。

 

 ――全部寄越せ、我が使ってやる。

 

 何度も何度も、声がする。

 今まで私を、あたしを使っていた声が、意思が、響いてくる。

 

 ――お前の苦しみも、不安も、何もかも、我に委ねよ。

 

 ――我こそが、本当のお前、あるべき貴様の姿。

 

 空気が唸っている。

 地面が揺れている。

 誰かが嘲笑う声がする、誰か見下してきている気がする。

 ちっぽけなあたしを、無価値だと教えてくれるような視線を。

 

 

 ――我こそが 救 世 主(アーサー王) なのだから。

 

 

 偉大な声がする。

 そうだ、救世主というなら、もういいや。

 外は怖い、お父さんも、お母さんも、きっと救世主なら。

 

 ――古き王(ユーサー)は礎になった

 

 ――魔女(モルガン)は我を産み落とした

 

 声がする。

 淡々とした声が。

 

 ――もう十分だ。

 

 まって。

 父様は、母様は、どうなるの。

 十分だってなに。

 返事はない、返事はない、だけど、あたしはわかってしまった。

 

 ――あの二人こそ、救世の礎。

 

 ――我が救い、築き上げる永遠の王国の先駆け。

 

 ――我という伝説の始まり。

 

 それは。

 これは。

 

「いやだ」

 

 それは救わない。

 

「絶対に、いやだ」

 

 これは救わない。

 誰も、救わない。

 

 ――願いは託された、退け。聖剣を奪い返す。

 

 手が伸びる。

 真っ暗な闇を引きちぎって立ち上がろうとする、手をあたしは押さえつける。

 

「ふざけ、ないで」

 

 ふざけるな。

 ふざ、ける、な!

 

 父様を、母様を。

 違う。

 お父さんとお母さんを馬鹿にするな。

 

 お父さんとお母さんは礎なんかじゃない。

 生贄なんかじゃない。

 お父さんは、あたしをいつだって応援してくれた。守ってくれた。

 お母さんは、わたしをいつだって抱きしめてくれた。手を握ってくれた。

 王様なんて知らない。

 魔女なんて知らない。

 

「お前なんて知らない!」

 

 心臓が鳴る。

 心臓が割れそうなぐらいに痛い。

 中の誰かが怒り狂ってる。

 喚くわ、騒ぐな、動くな、従え、跪け、お辞儀しろなんて言っている。

 知らない。

 知るもんか!

 

 ――お前は我だ! 我に寄越せ! お前は怖いのだろう、お前は不安なのだろう! 力が欲しくないのか!

 

 うるさい。

 

 ――我はアーサー王! 我は、この国の、神なり! 全てを救う約束の――

 

「うるさい!!」

 

 心臓を殴りつける。

 自分で自分の心臓をぶんなぐって、声を止めた。

 

「わたし、は!」

 

 手を握る。

 

「私はアーサー王なんかじゃない!」

 

 胸を掴んで、叫ぶ。

 

「私はアルトリア・エヴァンス! アーサー・エヴァンスとモルガン・エヴァンスの娘! 愛され、育って、二人を、皆を護りたい! ただの、女の子だ!!!」

 

 叫んだ。

 自分を叫んだ。

 

 

 

 ―― ふざけ(       バ キ ィ ン ッ )?!なんだ?!お前は!?

         気高き別れを選択せし旅人よ ――

 

 

 

 

 

      ―― ならば、ここより先は畏れも不安も汝の光 ――

 

 温かな声だった。

 熱く、滾る、偉大な声が、した。

 自分に流れる血が熱く輝いて。

 

 

      ―― 汝、王道を照らす輝ける星よ ――

 

 

 そして。

 

 

      ―― 目覚めよ ――

 

 

 

 アルトリア・エヴァンスは覚醒した。

 

 





導師の覚醒条件リスト
・PC本人の死亡
・PTの全滅
・内面への旅における自己との暗い面との対決


 己が恐怖と向き合い、選んだ貴方は何にだって成れる
 挑め、夢を、幻想を現実にするために

 走れ、我が子孫
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