京浜第3シェルターのアイツ 作:FD一枚ケルベロス
アンティクトンは発動した。
世界から色を無くす■物主の力は、既に周囲の文明の痕跡すらも消し飛ばし、ただただ広い荒野を生み出していた。
さながら罪を犯し、追放されたアベルの放たれた荒野のように。
草はなく、命はなく、石ころすらも砂として、敷き詰められていたレンガすらも溶けて黒ずんだ大地。
――誰も死んでいない。
楽園から追放されたアダムとイブの末裔が三人。
生きている。
楽園から追放されたカイン、血を啜りたる吸血鬼の末裔を模した造魔。
生きている。
人に従い共に生きることを選んだ猟犬も、己が意思で天から降りた降天使もまた生きている。
当然分かっていた結果だ。
アンティクトンは万能魔法攻撃。
すなわち
これまで何度も放ち、その度に凌がれていたのだ。
幾ら
レベルが二周りも上でも、溜め込んだマガツヒの歴然とした差があっても、ここまで縛られれば届かない。
否、ここまでされたが故に彼らは戦えている。
ここまでするからこそ人は悪魔と戦えている。
―― 燃え上がろうぜ、オレたちが走り抜けるだけのコープスパーティーだ! ――
―― 救われぬ救われぬ、一切衆生の救済こそが我が本願である ――
―― この世界は仮面舞踏会、利用されるだけでは面白くあるまい? ――
それぞれの選択を選び、自らはあらゆる命を刈り取ってでも力を身に着け、相応しき戦士を探し求めた。
強くなるために。
戦いを楽しむために。
魔人共を全て討ち果たし、自らを招いた【ヤツ】をも殺す。
だが。
(負けか)
手に握っていた最後のカポーテが粉々に散った。
アンティクトンが反射されたダメージだ。
速度以外全て、攻撃も、防御力も、全てが見る影もなく弱体化している。
ダメージも限界。
風が吹けば倒れてしまいそうだと考えてしまったのは、意識を持ってから初めてだった。
思わずしゃれこうべを震わせて笑ってしまう。
何故負けたのか、負けるのか、考える。
敗因――最初のヤマタノオロチの威嚇*1に、イメージを焼き付けられた。
あそこで下げられた自らの剣の威力が囚われてしまった。*2
その後に使ったアンティクトンの威力は下がっていなかった。
つまりあれは物理攻撃にしか効果がなかったのだということ。
しかし、それも使ったアンティクトンを反射されて、それから魔法の威力も下がった。
(ふむ? もしや剣の威力はそれなりに戻っていたのか)
ふと気づく。
そういえば冥界破などの時は、思っていたよりも深手を負わせていたということを。*3
ということは。
敗因――自分の剣を信じられなかった。
(なんということだ)
俄然とする。
なんということだろう、己が剣士でありながら自らの剣を信じなかったとは。
これは負けてもしょうがあるまい、むしろ死ぬべきだろう。いやこれから滅びるのだが。
腹でも切りたくなる、いや、骨しかないから背骨を割るべきか?
(となると)
敗因――最適を選べなかった。
おそらくするべきは、二つ。
・赤のカポーテ→冥界破あるいは血のアンダルシア*4→冥界破の連打で、
・挑発→挑発→冥界破あるいは血のアンダルシアで有効打を与えて、その勢いで再度
何故選べなかったのか。
剣を信じられなかったのが前提、だがしかし。
(あそこで外したからか)
赤髪の
次に放つべきだった刃が遅れ――そこで追撃してきたならば、それらの首を刎ねられただろう。
しかし、それはなかった。
あのデビルバスターたちは態勢を整えることを選んだ。
流れを掴めなかった。否、掴まなかった。
彼は、勝率を選んだ。
なんたることか。
あの金髪の騎士王でさえ勢いに酔いしれて、奇跡の逆転を選んだというのに。
だから
しかし、彼らはそうではない。
―― デカジャの石 ――
この死に体の自分を相手にして、
―― メディアハン ――
今もなお同じ手順で、
―― テトラカーン ――
それも決して逃げ腰ではない距離で態勢を整えている。
―― フォッグブレス ――
確実な勝利を。
―― デクンダの石 ――
勝つという理念の元に導かれた動きがあり、だからこそこんな瞬く程度の悠長な思考が出来ている。
楽しい反省会ができている。
いくつかは自らが負けた理由がわかった。もはや活かせぬだろうが、それでも意味のある成長だ。次はこうはなるまいという成長は大事だ。
だがこうして考えて、考えて、気づく。
最終的に負けた理由はたった一つ。
アンティクトン。
これさえ使わなければ今もまだ戦えた。
「
最後まで心踊る戦いが、きっと。
「
| 魔法攻撃 | 敵全体に耐性を無視した風属性の魔法攻撃で特大ダメージを与える*5 |
あったのだ。
・
・
・
アルトリアが振り抜いた風王結界が、マタドールを打ち砕いた。
「これで!」
砂塵を引き裂き、確かに直撃したのを見ている。
【
本来、英傑悪魔――必殺霊的連合防衛兵器壱拾弐号アルケイデスに持たせていた剣だが、この剣を握りしめると不思議と力が湧いてくる。
聖剣エクスカリバーとはまた違う奮い立つ力。
(勇気が湧いてくる)
負けるな。
頑張れ。
そんな声が蘇生されてから、ううん、覚醒してから聞こえる気がする。
妖精さんたちの声かと思ったけど、彼女たちのようにはっきりと姿が現れるわけじゃない。
ただ。
音が聞こえる。
音楽が聞こえる、心臓の音に乗って、湧き上がってくるような音楽が。
この優しく熱い気持ちがあるからこそ倒せたのだ。
「やりました、お嬢さま!」
「しゃあ! 終わったぁ!」
「うんっ」
久しぶりの人語を発するカヴォスとバーヴァンシーの声に振り返り、アルトリアは笑みを浮かべる。
「気を抜くな!!」
聞き覚えのないほど大きな声。
弾かれたように前を振り向く。
「なにっ、マタドールは倒し」
ごきゅるっ
――
・・・げる
「え」
身体が再生する。
背骨がねじれながら生えて、肋骨がわなわなと震えながら伸び揃い、失ったはずの右手と共に一体化した奇妙な杖が掌から突き出す。
足が踊る、剥き出しの骨盤が痙攣したように音を奏でて、顎まで再生させられた部分が、赤黒い火を噴き出す。
「ふざ」
濁った絶叫が炎と共に溢れ出す。
手足が踊る、人形のように踊る、踊らされて、それは、彼はこう叫んだ。
「ざざげるなああああああああああああああああああああああ!!!!?」
マタドールが再生した!!*8
――血のアンダルシア――*9
この一撃は全員に対して
――血のアンダルシア――*10
この斬撃はアルトリアに対して
――血のアンダルシア――*11
この斬撃はアルトリアに対して
――カバー!
ヒデトがアルトリアを庇う!
アリトリア以外全員が血を撒き散らした!
――カバー!
ロザンナがアルトリアを庇う!
――カバー!
デカラビアがアルトリアを庇う!
音よりも早く、世界が切り刻まれた。
(なに、が、起きて――)
だが、アルトリアはまだ生きている。
誰も彼もがとっさにアルトリアを庇った。子供である彼女を庇った。
それを理解できないほど彼女は幼くなくて。
(まず、い――)
意識が加速する。
スローモーションのように、コマ送りで、目の前に迫る
その伸びた杖のような刃は血に濡れていて、血を吸いながら力を増していくのがわかる。
顎までしかなかった頭が再生し、左側の半ばまで戻りつつあった眼窩は、眼光のない炎が涙のようにこぼれている。
次の一撃は耐えられない。*12
生き残るためには、今この瞬間倒すしかない。
それも限られたこの
選択の余地はない
――どうやって?
目が、意識が、横を見る。
そこだ、そこにある
――自分を庇って、死にかけているヒデトの手を見る。
正確にはその手に握る聖剣を見た。
取り戻せ
――エクスカリバーならば、あの
我らが栄光を! さあ早く!
トドメを差して、その
騎士の将たる誉れを、王の決断を!
みんなを守るために、私は――
「大丈夫だ」
ヒデトは言った。
死にかけながら、聖剣を握りしめながら、"食いしばって"私を守るようにいった。
誰よりも、傷つきながらも、彼は前だけを見ていた。
「
大人の言葉だった。
「下がってろ」
目が覚めた。
「ううん、下がるのはヒデト
彼よりも前に踏み出す。
彼が止めるよりも早く、前に、マタドールに向かって。
わかる。
わずかな言葉を交わせた時間は、距離があったからじゃない。
目の前の憎かった敵が、赦せないはずだった悪魔が、抵抗していたからだって。
「私は!!」
こいつのことは決して赦せない、倒すしかない。倒さないといけない。
「アルトリア・エヴァンス!」
だけど。
「魔人マタドール、お前を倒す」
こんなことをされる理由なんてない!
「英雄だ!!」
―― 英雄の叫び ――
≪だったら、私も!》 ――勝利への誓い ――
――英雄譚が語られる!
世界に、彼女の勝利を導く勇気が奏でられる!
アルトリアが<
――彼女の時間が加速される!
世界に、彼女の行動を妨げるものは許されない!
≪負けるな!≫
妖精の導きによってアーサーが参戦する!
「手を貸して」
妖精の導きによってモルガンが参戦する!
―― 英雄の証 ――
アルトリアの全能力が
「みんな!!」
「アルトリア!」
――
「アルトリア!」
――
「
三重の祈りと魂が、原理から適用へと
「
| ジンテーゼ | 敵単体に風属性の超特大ダメージ*13 |
託された黄金の剣風が、縛られた呪縛の骸を消滅させた。
しゅん、しゅんと風を切る。
とん、と地面に何かが突き刺さる。
マタドールの手から伸びていた杖。
それが赤い衣のような、戦士たちの血の上に刺さっていた。
「……勝った?」
――見事――
そんな声がしたのはきっと風の気の所為だったに違いない。
「かった」
――がんばったね――
そんな声が聞こえたのは、この胸の鼓動からに違いない。
「勝ったぁあああああああああああ!!!」
「やったな!」
「大丈夫、アルトリア!?」
歓声が上がった。
英雄たちの絶叫と喜びの声と色んな想いが高く高く響き渡った。
敵全体にタル・ンダ四回分 ラク・カジャ七回分の能力変化を与える
風王結界※Fate
アルトリア・ランサー(オルタ)が所持する宝具
セイバーとして現界した時は剣を覆い尽くすだけの風の鞘であったが
嵐の王(ワイルドハント)としての性質を得た時、純粋なる暴風を振るう宝具と化した
Fate/Grand Orderおいては魔力放出と併用することによって場を薙ぎ払う攻勢として扱う
このFateもまた創作の、転生者たちの前世にしか存在しない創作(幻想)であるが
目覚めし英雄としての原型は、その幻想を、魂と共に探求する使い手として発現した
風は旅人を導く、風来人のように。ところででっぱいになるんですか?
エクスカリバーを超える威力を持つヘラクレスの大剣。
エヴァンズ一族にモルゴースの魔術書と共に伝わっていた魔剣に冠せられた名称。
アーサー王伝説の一つ、アーサー王の最初の武勲においてのみ登場する後付の伝説であり
実在のヘラクレスが振るったという裏付けはないものの
アーサーとモルガンはFGOマテリアルにおける神話礼装という隠喩を込めて仕掛けを施したが
この魔剣自体の由来はあまりにも古い起源のため判明していない
ただ伝わっていた魔術書の一説に「竜の力を託す、英雄■の剣」と書かれていたが
メガテンにおける竜の殆どが転生者と比べれば弱く儚い幻想に過ぎない
モルガンもアーサーもそれに宿る、守護者の声は届かなかった。悪魔には聞こえないために
物理貫通を得る。
自身の最大HPが50%増加する。命中率が20%増加する。
自身のHPが80%以下のとき、受けるダメージが30%減少、与えるダメージを30%増加し、自身が受ける攻撃のクリティカル率を50%減少させる。
自身が死亡するとき、一度だけHPが500回復して踏みとどまる。
自ターン開始時、自身が与えるダメージが25%増加する。(最大100%まで)
無敵の不死者は、常に強敵を求めて戦いを挑む。そして深手を負えばいつだって変身する
それでこそ闘争の鬼というのだろう? 戦え! もっと戦うがいいさ!! アハハッハハ!!!
英雄を殺せ
英雄を殺せ!
英雄を殺せ!!!
風王鉄槌(ストライク・エア)※Fate
アルトリア・(セイバー)が所持する対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1個
聖剣を覆い隠す風の鞘にして聖剣を開放した時に纏う黄金状態の一撃は
聖剣の光そのものを圧縮した縛鎖全断(オーバーロード)として放たれる
風を運び、探求の心を燃やす探索者の英雄が纏う風は
かつて英雄だった誰かの叫びと証、そしてこの島を見守る幻想の妖精のおせっかいを運んでくれたのだろうか
幻想は蘇る
人の想いは必ず輝く
がんばったね、彼の子どもたち