京浜第3シェルターのアイツ   作:FD一枚ケルベロス

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真・女神転生要素や偽典女神転生
他シリーズの要素が含まれています


いまからあなたはデビルバスターです

 

 山陰地方、島根県に存在する大山に連なる山峰の麓。

 その地方の一角で、青年は頭を下げられていた。

 

「本当に、本当にありがとうございました!」

 

「気にしないでいいよ。コレも仕事みたいなもんだからね」

 

 懸命に頭を下げる少女――十代半ばのどこか子犬っぽさを思わせる少女。

 それが青年――ヒデトの今回の協力者だった。

 

「とはいえ、結構悪魔の種類も多くて手持ちも増えたけど、ここらへんはどこもこんななのか?」

 

「はい。この辺りは出雲の国ですから」

 

 ヒデトにそう応える少女はこの地方に生まれた異能者の末裔の一人だった。

 島根県東部。

 山陰道から連なるこの地方は古代において出雲の国と呼ばれていた。

 八束水臣津野命(やつかみずおみつぬのみこと)曰く。

 

 ――八雲立つ出雲の国は、狭い布のような国であることよ。最初に国を小さく作ってしまった。それ故、作って縫いつけよう――

 

 と告げて、自らを解き束ねて三身(化身)の綱を用いて、四つの地方より土地をかき集めて八雲の国は始まりよりも繕い膨れ上がった。

 国引き神話に語られるまさしく神造の土地である。

 故に四種の産土が入り混じり、古来よりも混在した霊力が宿り、近代における外来の知識に第二次世界大戦後より混入された一神教の信仰から怪奇な悪魔が出没する土壌を得てしまった。

 それ故にここで発生する異界は最低でも5種類の悪魔、最悪十種類を超える悪魔が一つの異界に出現し、綿密な調査と対策装備を固めて挑むデビルハンターたちの過酷な壁となっていた。

 

 人は悪魔よりもずっと弱いのだから。

 

 少女も残り少ない――逃げた、あるいは死んだ地元の異能者たちの中でも数少ない生き残りであり、僅かな物資を苦心して、封鎖し続ける異界からこぼれ出る悪魔と戦い続けていた。

 日々目減りしていくリソース。

 日に日に力を増していく悪魔の気配。

 知覚する力がないゆえに昨日と今日も変わらないと思い込んでいる常人たちの不理解。

 悪魔を倒し、残されて得たドロップアイテムも自分たちの手に負えないものばかり。

 

 地方零細なりに文献を調べ呪い師の知恵を持ち寄っても、必要とされる器具や施設、それらを伝えてきたとされる一族はメシア教の一派によって根絶やしにされ、施設は悪魔信仰という名目で焚書され、あるいは根願寺に禁忌指定されて没収されていた。

 残ったのは本当に力も知恵も血も残ってない出涸らしばかり。

 せめてなにかの足しになればとガイア連合派出所に持ち込んでも思った以上の金額にもならず、支出よりも上回ることはない。

 コネクションさえあればもう少し便宜を図って貰えると噂に聞くも、厄介ばかりで実りがない地方に彼らはこない。

 来てもくれてもずっと先、本当にくるかもわからない。

 せめて一昔前のようにダークサマナーでも来てくれれば、この貧弱な体でも貢いで便宜を図ってもらうという手もあった。

 いや、事実そういう手管もよくあることだったのだという。

 

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 ダークサマナーと呼ばれる非道の手段、非正規を用いたずる賢い外法師たちはその多くが意外なことに、我々とあまり変わらない血筋だ。

 才能がない、家がない、一般人からたまたま覚醒した、あるいは才能の兆しを見つけられ、引きずり込まれた。

 

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 ガイア連合が現れ、レベル測定と呼ばれる言葉と共に誕生した観念によって打ちのめされた者たちは多い。

 いや目をそらしていたものを突きつけられたというべきか。

 力の限界、才能の限界は以前から存在していた。

 だがそれを乗り越える、あるいは誤魔化すのに何を使うか。

 修行では出来ないならば、悪魔と契約する。

 年齢を誤魔化すために、病気を克服するために吸血鬼になる、その血清を打つ。

 天使と契約し、洗礼を受けて生まれ変わる。

 悪魔と交配し、その血と肉を混じらせて、人としての器を捨てる。

 よくある話だ。おぞましいことに、悲しいことによくある話なのだ。

 

 努力を用いても夢が叶うとは限らない。

 努力を用いても伸ばせるのは才能の壁まで。

 測定器を用いて観測された自分の限界に、少女も早々に壁を知った。

 

 祖先はイヌガミと化した悪魔と交配し少女の一族に力と悪魔の血を与えたという。

 南総里見八犬伝における伏姫伝承に基づき、第二次世界大戦後に根絶やしにされた本家から逃れた末裔は報復のために自分の飼っていた霊犬に血を飲ませ、自らを畜生腹にしてまで子を生み落とし、死ぬまでに十人の子を産み落として、魔の力を得た一族を繋げたという。

 そのために少女はここでは強いほうだ。

 レベルもまだ二十にも満たない身で5まで上がった。

 いずれは大成すると、獣混じりの血筋を誉れと屈託もなく褒めてくれた恩師も、可愛がってくれた爺たちも、いない。

 全員死んだ。

 そして、いつか自分も死ぬ。

 死んで記録になり、そのニュースなどをもって不理解な一般人たちが避難してられるだけの日数を稼げるかな。

 ガイア連合の派出所から非紹介者に許された回復薬(きずぐすり)を三個、弱点の火炎相性を出来る限り対策して、異界に突撃するしかない。

 それしか故郷の命を延命させる方法がなかった。

 掲示板で愚痴を出したのは正直遺書みたいな気持ちだった。

 

 それを救ってくれたのがヒデトだった。

 

(本当に奇跡みたい)

 

 心の底から感謝を捧げて、少女は思い返す。

 その奇跡みたいな出会いのことを。

 

 

 

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 たまたまガイア連合の派出所で少女を目撃し、掲示板での会話から連絡をとってくれた彼は少女から話を聞き、異界の攻略を乗り出してくれた。

 右腕が見たこともない機械式の義手で、管も使わずに悪魔を使役する悪魔召喚師(デビルサマナー)

 腰にプラズマソード――ヤクザから巻き上げたとか言ってたが信じられない(*1)――ガンホルダーに日本だと所持が許されてないはずの大型マグナム(デザートイーグル)――これも巻き上げたとかいってたけど、東京のヤクザって一体……(*2

 さらに今は外してるけど、全身を覆うように纏っていたマント――賭博場で当てたとかってどういうことなの?(*3)マスク――米軍の流出品らしいガスマスクに、あと今も付けている小手と具足とあとアーマー。

 ついでに首から六芒星の飾りのついた確かヒランヤっていうアクセを下げている。

 物凄い重装備だった。

 現場につくなり、キュインンと音を立てて稼働する右腕の義手とフル装備も相まって。

 

「え、SFかなにかです?」

 

 といっちゃった少女はしょうがないと思う。

 

 けれど、そんな彼のおかげで異界は崩壊した。

 案内役であり、補助係――体質的に火炎が弱点だけど、呪殺が通じない特質持ちの少女と共に攻略したのだ。

 悪魔を恐ろしい強さで蹴散らし、時には交渉……信じられないことに、腕の義手を操作しながら、悪魔と会話してみせたのだ!

 魔石などで取引を行い、時には目の前で仲魔にしてみせて、腕の義手に格納していき、時には魔法も使わずに、コンピューター操作で悪魔を退去!(マイティクイット) する信じられない光景ばかりだった。

 

「COMPにはそういう戦い方もあるんだ(*4)、エレメント操作ぐらいならプログラムで出来るけど、俺は魔法が使えないからな」

 

 という彼は見たこともない装備もあって、おそらくガイア連合の戦士なんだろう。

 彼らはみんな様々な戦い方をすると聞いている。

 そういって異界の中を進んでいき、マグマの煮えたぎるダメージゾーンに関しては、取り出した白く輝く光のような衣を今までつけていたマント代わりに纏うとびっくりするほど熱を感じず、むしろ涼しいぐらいに抑えてしまった。

 おかげで拍子抜けするぐらいにあっさり奥に進めていってしまった。

 

「さすが――の衣だな、――界よりはここらへんは大した勢いでもなかったけど」

 

「?」

 

 なんか気になることを言っていた気がするけど、周囲に恐る恐る警戒をしていた少女の耳には入らなかった。

 そうやってダークゾーンも慎重に突破、夜目と闇の中の感知に長ける少女が手を握り、誘導する形で乗り越えた。

 

「帰り道にはオートパイロットで戻れそうだ」

 

「オートパイロット?」

 

「COMPの機能の一つだ。セットした箇所に自動的に誘導、その位置まで進める。三次元的な登録だから迷わない(*5)」

 

 というテクノロジーがあるから、帰り道はいらないらしい。

 一度さえ乗り越えれば帰りは怖くないと、いたれりつくせりで本当にガイア連合って凄い。

 

 

 そんなこんなで異界の一番奥、最奥にいた悪魔へと辿りついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 其は土くれであった。

 其は人が意思を見出したもの。

 其は山であった。

 其は人が恐れを抱いたもの。

 其は権威であった。

 其は人が崇め見上げたもの。

 すなわち大いなる山の神である。

 

種族国津神オオヤマツミLV27属性LIGHT-CHAOS

相性耐性破魔に強い 呪殺に強い

 

 

≪ゔぉゔぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!≫

 

「く、国津神!? 神が、こんなところに?!」

 

 本来なれば伏して、目を合わせることも許されない強大なる神。

 ここまでの道中で飛躍的に力が増して、LV10まで跳ね上がった少女を持ってしても桁違いの強さ。

 

「ひ、ぁ、あ……」

 

 狂い、山そのものが人の形を模したと思える巨像の神に、足が震えて、ソウルが震えて縮む。

 神とは祀るものであっても立ち向かえるものではない。

 人が山へと抱く畏敬そのもの。

 異能者として悪魔と戦っていた少女にして、それはペタンと腰を落としかけて。

 

「破魔・呪殺耐性、全体的に弱点はない……氷結、電撃、衝撃に確か抵抗があるタイプだったな」

 

 ガツンと冷たい腕がそれを支えて、後ろへと優しく下げた。

 

「え」

 

 だがヒデトは――青年は目を細め、マスクを付け直し、ブヴォンとプラズマソードのスイッチを入れた。

 歩みに恐怖はなく。

 歩みに侮りはなく。

 自然体で仲魔を呼び出して、狂いのたうつ狂い神へと刃を向ける。

 

≪ゆずざぶ! ゆずざぶ! おのれおのれおのれおのれ、ぼゔぉわれるがいい!! 羽つきどもよぉおお!!≫

 

「理由は知らんが、お前が暴れていることで苦しんでる人がいるんだ」

 

 慣れた仕草で、それよりも遥かに強大な山の神を滅ぼした青年は告げた。

 

「倒させてもらう」

 

 

 

 

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 

 

 そして、ヒデトとその仲魔たちは神を倒してしまった。

 悪魔と一緒に剣を叩きつけて、神様相手に生身で戦ってだ。

 そうして大きく広がっていた異界は暴走が静まって、この分ならあと数日と立たずに消えてしまうだろう。

 救われたんだ。

 

「ふふっ」

 

 思い出し笑い。

 

「?」

 

「いえ、人間って捨てたものじゃないんだな」

 

 人間が剣を銃を手に、悪魔と一緒に神様を懲らしめてしまう。

 本来なら不敬にも程があるのに、たまらないぐらいに愉快だった。

 

 その顛末も含めて、クスクスと少女が笑った。

 

 子供のような笑顔だった。

 お腹を抱えて笑って、悪魔の気配もしない野原に転がって高校生にも成れなかった少女はお天道様を見上げながら笑っていた。

 

「まったく子供みたいだな」

 

「子供でーす!」

 

「それもそうか」

 

 無邪気に笑う少女に、大人になってしまった青年は穏やかに微笑んだ。

 

 

「あれ?」

 

「どうした」

 

「いえ、なにか空に大きな鳥が――」

 

 

 太陽に向かって指差す。

 その太陽を背に、何かが天を舞っていた。

 神々しく、神聖に、輝く雷をほとばしらせて。

 

 

 

 

破魔の雷光スキル敵前列に破魔相性中ダメージ+即死

 

 

 浄化の雷撃が大地を焦がし尽くした。

 自然なる命を浄化しながら。

 

 

 

 天使は正しく悪魔を滅ぼす微笑みを浮かべた。

 

 

 

*1
女神異聞録ペルソナにおいてヤクザが所持してる

*2
ガイヤーズなんてヤクザの一種だと勘違いしてる

*3
旧約Ⅱにおいてマント類は全てコードブレイカー景品

*4
偽典女神転生においてはコンピューター戦闘技能がある

*5
旧約女神転生IIのみで採用されたシステム、その最中には悪魔とも遭遇しない





旧約Ⅱにおいて主人公と魔女の装備は八種類
武器

ガン

防具
兜(ヘルメット)
仮面(マスク)
鎧(アーマー)
小手(ガントレット)
具足(ブーツ)
マント
全てデータが乗ります
さらに真シリーズとの合流によりアクセサリーが解禁されています
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