京浜第3シェルターのアイツ   作:FD一枚ケルベロス

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セツニキたちのスキル、設定描写などは
【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録 より
参考にしています


メガテンの世界へようこそ


エデンの楽園は

 

 砂が舞う、血塗られた赤い砂が渦を巻いて舞い上がる。

 血の如く真紅に染まったナイル川が砂塵の嵐に、黒影の羽ばたきと共に荒れ狂う落雷が空を引き裂いていく。

 エジプトの大地が震え、空が怯えるようにざわめいていく。

 

「これは……!」

 

 この気配をユダは、あの日、あの時エジプトのいた全ての民が忘れるわけがなかった。

 

 あの忌まわしき喇叭の魔人が撃墜された日。

 

 それとまったく同じ空なのだから。

 

「ふぃー、ようやく来たか」

 

「ゴキゴキ」

 

「お前らそんな頭よくねえだろ」

 

 ゆっくりと肩を回し、首を回し、あるいは咥えた栄養ドリンクを流し込むように開ける彼ら。

 無感情な見られるだけで背筋に氷柱が突き刺さったような目に、獣じみた口元のセツニキ。

 誰も彼も違いはあるものの獰猛な笑みの彼らに、付き従っていた絶世の美女(シキガミ)たちが装備を展開していく。

 

「まさかお前たち!?」

 

 ユダは気付いた。

 先程のセツニキの発言、そして今進行形でパニックになり逃げ出そうとしている難民たちの様子に。

 

「そういうことだ」

 

 なんて鈍い奴だとセツニキは呆れる。

 

 悪魔には生体マグネタイトが必要不可欠だ。

 

 広大なエジプトだが、メシアン共とエジプト神共の潰し合いで多くの範囲が汚染され、多くの人間が死んだ。

 GP上昇前の平和ボケしていた時代から比べれば半分も残っていないし、三割か、二割も残っていればいいところだ。

 そんな中で土地から得られる霊脈のエネルギーだけでは、現世の肉体を維持するためのマグネタイトはいずれ枯渇する。

 ガイア連合の持つ時間加速や電脳異界などの牧場がない以上、強大な悪魔であればあるほど消耗は激しくなるし、餓えは襲ってくる。

 

 飢えを満たすためには、他の悪魔を食らうか――

 

「羽付き共が逃げた以上、他に食えるものはないだろ?」

 

 

 ()()()()()()()()()()

 

 

「私たちを餌にしたのか!!」

 

「一々探すのは面倒だろ?」

 

 

「倒せば問題ないしな」

 

 

「は?」

 

 おいおい、まさか本当に難民を全員見捨てるとでも思ってたのか?

 

 契約書は消えてしまったが文面は残っている。なんらこいつら相手には強制力のない口約束だが、約束は約束だ。

 だが契約したクレオパトラも用意されておらず、その対価となるものも持ってこない礼儀知らずに従うのも問題だった。

 だから数を減らす――という口での言葉で多少騒がせて、感情を興奮させた。

 

 DARK悪魔はそういう絶望と混乱をした生体マグネタイトが大好物のカス共だからな。

 

 だからおびき寄せる餌にした。

 ここまでの混乱は、いい薬だ。舐められた分の代価ぐらいだ。

 

「さっさと船載せろ、巻き添えで死ぬぞ」

 

 接岸させた無人のタンカー船はタラップを出している。

 乗せれば最低限の人数は回収できるだろう。

 引きずり出すのに役目は終わった。

 多少口減らしで減らしてしまっても構わないが、戦場になれば0か100になる。

 この感じる気配からして減らす被害調整するのは手間だ。

 

「……ッ、気をつけろ! 奴は火を吸収する! 我々のどの呪詛も通じなかった、異常なまでにタフで」

 

「そうか。なら目で見て確認する」

 

 ノイズはいらん。

 概念レベルが足りてないだけで俺達の攻撃ならいとも容易く貫けることなんてありふれている。

 それでも固いなら修羅勢御用達の貫通の性質を乗せて殴ればいい。

 同じ、チンピラ(セト)でも耐性が違うことぐらいは、星祭*1で飽きるほどある。

 だからこの”眼”で見て確認をする。そのほうが速いし、間違えない。

 

 ―― ザンダイン ――

 

「ん」

 

 視界の奥で、わずかに空間がたわんだ。

 のを目で認識するよりも早く”陰陽結界”を張った。

 

 窓ガラスが数百枚一斉に叩き割れたかのような轟音が響き渡る。

 

「権能か」

 

 視界の端で現地民たちが息を止めてうずくまり、あるいは昏倒し、息どころか心臓まで止まっているのもちらほら混じっているのを認識するが。

 それよりも僅かに頬に痒みがあった。

 指でなぞると、僅かに血が滲んでいた。

 

 ”陰陽結界”はゲーム的な説明をするなら100ダメージを肩代わりする身代わり人形に近い。

 磨き上げた<アイテム使用(霊符・呪符)>*2で何百枚と展開する事で今の攻撃を防いだ。

 もちろんバフ扱いでは無いのでデカジャで解かれる事は無いし、破壊されずに残っていれば使い回せる便利な【防壁】*3だ。

 だからセツニキは普段から好んで使うし、枚数を多めに使えば同じ修羅勢の一撃でも防ぎ切る(例外多数)。

 だというのに、突破された。

 たとえかすり傷だろうが、傷を負ったということはそれだけの威力があったというわけで。

 

「やるじゃねえか」

 

 <ハイリジェネレート>*4の作用で瞬く間に治癒。

 あと五秒もせずに接敵するだろう悪魔を見て、<清浄の祈り(柏手)>を高々と打ち鳴らした。

 数百名以上の感覚失調を文字通り打ち払いながら、セツニキは弾けるように跳んだ。

 

「飛ばせ、ムラサキ」

 

「はい!」

 

 ムラサキの力――<転移(テレポート)>で空間跳躍。

 

 国から国へと飛ばすのは”縁”を結んでのマヨヒガが必要だが、それは()()()()()()()()()()()()()()()()

 だが、視界の中、高々数十キロ程度ならば十二分に射程範囲。

 セツニキ含めた転生者たちと、その(シキガミ)たちが砂塵渦巻く空に出現する。

 

 その中央にいるのは彼らにとって見慣れた黒龍。

 

 

     \カカカッ/

種族魔王セトLV90(/96) 属性 EVIL

 

 セツニキの”瞳”が、その強さを読み取る。

 

「随分と太ってんな」

 

 感じるレベル、見慣れたドラゴンっぽいチンピラの姿にボコボコと見慣れないものがある。

 腹から、鱗から盛り上がる無数の髑髏、髑髏、髑髏、苦悶に歪んだ顔。

 その獣の顔に見覚えが、いや、思い出すのも面倒だから知識から検索――ヒット。

 

(エジプト神)共を食い殺したか」

 

 奴らのマグネタイトを取り込んで、スライムのように混ざり、融合している。

 この現世にありえざるまあまあ高いレベルはそのためで、まだ消化しきれていないのか。

 

(ん?)

 

 僅かに、違和感。

 浮かび上がっている顔の中に一つ女の顔、反応も妙だ。

 

 ()()()()()()()()()……

 

 

「GYASYAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」

 

 


 Press Turn Battle          Press Turn Battle                Press Turn Battle    


 

―――【セトは息着く暇もなき闘争(プレスターンバトル)を選択!】―――

―――【もっとも最先端なる潰し合いに持ち込もうとする】―――

 


 Press Turn Battle   ERROR    Press Turn Battle    ERROR   


 

 

「付き合うかよ」

 

 セツニキたちは、それを拒絶する!

 

 


 Freedom    Chaotic Battle           Chaotic    


 

―――【セツニキたちは戦い方に縛られないつもりはない】―――

―――【ごちゃ混ぜの流儀無き殺し合い(カオティックバトル)が始まる!】―――

 


 Freedom     Chaotic Battle          Freedom   


 

      \カカカッ/

種族悪魔人間*5ナナシ(セツニキ)Lv99*6属性■A■K-E■.■AW(ヒーホー)

 

     \カカカッ/

種族大地人<男鹿ニキ>Lv97*7属性 LIGHT-EX.CHAOS

 

     \カカカッ/

種族神人<蛮ニキ>Lv96*8属性NEUTRAL-CHAOS

 

     \カカカッ/

種族顕現者<誠一郎ニキ>Lv94*9属性NEUTRAL-NEUTRAL

 

 

「さっさと死ね」

 

 

 

 ◆

 

 

 

 虚空を駆ける。

 MAGを用いた虚空の足場を補助に、事前に全員には簡易的な浮遊と重力軽減の霊符を配ってある。

 高レベルの転生者(修羅)ならば当然身につけている跳躍を用いれば3次元の動きが可能になり、<縮地>を用いて即座に距離を詰める。

 

 が。

 

ダークブレス補助魔法5Tの間、味方全体の全属性耐性LVが上昇する*10

 

 当然、こっちに気づいたセトが黒い煙を吐き出す。

 あれは防御用の結界か。

 ”目”で解析――理解――耐性なしから半減、無効化までに近づく概念の相性変更。

 小細工が。

 

 ――【概念破壊】!*11

 

 その幻想(ダークブレス)をぶち殺す!

 

「!」

 

 纏った黒い瘴気(オーラ)が即座に破壊されたセトが羽ばたく。 

 

「まあまあか?」

 

 手応えからレベルは下だが、手応えから換算。

 今のダークブレスは【概念破壊】の<マジックブレイク>と<デカジャ>が通用した。

 俺達の<貫通>を含ませれば問題なくぶち抜ける程度の紙耐性だが。

 

終わる世界攻撃魔法敵全体に万能中ダメージ+ラクンダ効果*12

 

「GAAAAAAAAA!!!!」

 

 セトの破滅の波動。

 発せられた万能属性の性質を含ませた波動が周囲の空気を、舞い上がっている砂塵をさらに分子レベルまで粉々に風化させていく。

 これは防御弱体化の概念付きか。

 

「近づけまいと必死だな、チンピラ」

 

 無論、それだけで足を止めるような俺達ではない。

 精々トラックに撥ねられた程度のダメージを無視して、距離を詰める。

 既に相対距離は300メートルを割っている。

 

 とっくに射程距離だ。

 

 

 ――<オート・ランダマイザ>――*13

 

 ――<殺意の領域>――*14

 

 

「ッ!!」

 

 殺意の領域とオート・ランダマイザのオーラを開放。セトの動きを縛る。

 さすがに高位悪魔、即座に精神崩壊までとはいかなかったし、恐怖も刺さらなかったようだが。

 

「判断が遅い」

 

 手に<ソウルドレイン>*15で造った剣を形成し、()()()

 オート弱体を被せたのに合わせて突貫した男鹿ニキに、その身体で隠れるような位置に回り込む。

 繰り出すのはノーモーションの突き。

 

「射殺せ──〝神殺鎗(かみしにのやり)〟」

 

 音速の五百倍、とまではさすがにいかないが。

 音速を超える速度でソウルドレインが伸びる。魔力で生み出したソウルドレインは空気抵抗を無視し重力の影響がない。そもそも重量もないしな。

 突貫した男鹿ニキの脇をすり抜けて、直撃。

 とっさに首をねじったのか頭部には当たらなかったが、その鱗には穴を開けた。

 

「デブって動きが鈍ったんじゃないか?」

 

 以前倒した分霊は少なくとも回避運動は取った。

 しかし、これはそれすらも取らずに直撃したことから鈍さがわかる。

 

 んでもって。

 ――【存在吸収(レベルドレイン)*16

 

「GUぉおお!?」

 

 原作の、神殺鎗よろしく毒ではないが、ソウルドレインの先端に【存在吸収】を重ねた。

 存在吸収(レベルドレイン)は、ソウルドレインから進化したスキルだ。

 進化したからといって存在吸収しか使えなくなったわけではなく、必要に応じて使い分けることが出来る。

 そして、同じスキルツリーであり発展型であるからこそ、その中間であることも出来る。

 例えば小指程度の存在吸収の刃先を、ソウルドレインの刀身で打ち出し――刺さった場所から存在吸収に転換。

 そのデバフ効果だけを与えるとかな。

 

「殴るぜ」

 

 ――物理ギガプレ/物理プレロマ――*17

 ――気合――*18

 ――怪力乱神――*19

 

「染まれ」

 

 ――毒の使い手/猛毒使い――*20

 ――状態異常貫通――*21

 ――毒針――*22

 ――状態異常追撃――*23

 ――複合感染―― BLOCK!*24

 ――オーバーフロー ―― POISON OUT!*25

 

 

「燃えますように!」

 

 ――火炎ギガプレ/火炎プレロマ――*26

 ――アギダイン―― DRAIN!*27

 ――トリスアギオン(金 焔)――*28

 

 男鹿ニキがぶん殴り、蛮ニキが毒針からのお得意のバステ祭りをぶちこみ、誠一郎ニキがうっかり火炎吸収されていた。

 

「なにしてんの誠一郎ニキ!」

 

「ごめーん!!」 

 

 デフォルトで混ぜてるだろう<貫通>の術式では、このセトの耐性(火炎吸収)は抜けなかったようだ。

 さらに各自のシキガミからの攻撃にフォローが入る。

 

≪アナライズ結果を転送しますわ≫

 

     \カカカッ/

種族魔王セトLV90 属性 EVIL

相性耐性銃撃弱点 火炎吸収 BS無効

 

 

 各自の属性攻撃(ノック)を踏まえて、ムラサキ及び複数からの<ハイ・アナライズ>の結果が共有される。

 

(蛮ニキも毒以外刺さってない、火炎は吸収で固定か)

 

 瞬くほどの速度もいらずに、思考を浮かべるもなく判断。

 下層ではなく現実の、半終末環境下とはいえ地上でこれだけの悪魔が出てくるのには驚きだが。

 

「この程度の理不尽なら慣れてんだよ」

 

 男鹿ニキの<鬼神楽>に殴りつけられ、蛮ニキの<ベノンザッパー>に削られているセトを見て、呼気を漏らす。

 今回は”ウヌス”*29もないから蛮ニキも普通に殴れてるな。

 誠一郎ニキは<貫く闘気>*30を混ぜながらぶち込むことに決めたようだ。”嫁”たちも今更この程度の脅威に慣れている、回復を飛ばし、弱点の銃撃をメインに鼻面を叩いている。

 

デクンダ補助魔法味方全体の能力低下を解除する*31

 

 セトが解除魔法を唱えた。

 まとわりついていた黒紫のオーラ(ランダマイザ+挑発)を解除する。

 どうやらこのままだとやばいと、耐えられない程度の強さのようだ。

 

終わる世界攻撃魔法敵全体に万能中ダメージ+ラクンダ効果*32

 

「GxuOOOOOOOOOOォォオ!!」

 

「またかよ」

 

 滅びの波動。

 先ほどと同様の代わり映えしない万能攻撃に、陰陽結界で相殺する。

 が、少し貫通する。治ったばかりの傷が、また少し血が吹き出した。

 

(威力を上げてきたか?)

 

 セツニキはハイリジェネートで間に合う程度の傷だが、他の皆にはややきついダメージだ。

 俺達が殴る間に、”嫁”たちが回復を飛ばす。

 

「GAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

「ゴジラみてえな声あげんじゃねえよ」

 

 あちこちに傷と火傷を負って叫ぶセトの巨体に、ソウルドレイン込みの<空間殺法>・<地獄突き>を叩き込む。

 めちゃくちゃに振り回される尻尾も牙も、修羅勢ならばあくびをしながら避けられる。

 眠たい攻撃を当然寝るわけもなく表面を駆け抜けながら、引き裂き、最後にその顔面に<モータルジハード>をぶちこむ。

 

「ゴォ、が!!?」

 

 さすがに固く、首は吹き飛ばせなかったが。

 

 砂嵐の神だというくせに、制御を失ったように錐揉みする。

 上空千数百メートルの高さから転落していく――そこに、俺達の追撃、追撃、追撃。

 慣れた作業の追い込みを行う。

 

「GU-RUるるぅぅぅうう!!」

 

 ――<ランダマイザ>――*33

 

 セトが吠える。

 弱体化のオーラを撒き散らしながら、必死に打ち込まれる攻撃を軽減しようと耐えている。

 

(下層よりはまだマシだが、まあ深部の雑魚ぐらいか)

 

 アホみたいな耐久性だが、それだけ。

 この分なら地上の魔人とやらも大したことがないな。

 例の動画の魔人相手には、メガテン主人公がえらい苦戦してたが修羅勢ならば同等以上に動ける。

 

 魔人ぐらいはさっさとこっちで狩っておけばよかったか。

 そう考え事をしながら、セツニキは呪符を引き抜いき、空へとばらまき。

 

 

 

 

「もう致死圏だぞ?」

 

 

 

 ――龍の反応―― *34

 ――デクンダ――

 ――ウアス――

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ッ――」

                       ゴシャリ

 セトの身体が()()()()

 そして羽ばたき、掻き消えた。

 先ほどまで比べて比較にならない機動速度(龍の反応)で、音速より速く鋭く――地上を切り裂いた。

 爆砕。

 砂塵が、核爆発のように舞い上がる。

 視界全面の全ての砂が、数万トンを超える膨大な質量として巻き上がった。

 

<妬みの重圧>専用魔法敵全体に万能特大ダメージ

術者のHP現在値が小さいほどダメージが上がる*35

 

 魔王の殺意を乗せて、触れる全てを喰らい尽くす破滅となる。 

 

「全員固まれ!!」

 

(こいつ、三味線引いてやがった!)

 

 セツニキの意識が瞬く間に切り替わる。

 舞い上げた術符を操作、陰陽結界――否、足りぬ! 追加で引き抜いた霊符を交えて張る。

 

金剛大結界(ダイヤモンドスクトゥム)!」

 

 自らの持ち得る最高硬度結界――世界樹や生命の樹を始めとする高位植物系素材にイワナガ産のダイヤモンドを霊的に混ぜ、〝永遠〟等の石言葉を持つ鉱石をインクに使った最高級霊符でのみ張れる大型結界。

 その一撃は深部の化け物相手にでも防ぎ切る強度で。

 

 ――デ■ジャ――

 

 舞い上がる粉塵の中に輝いた眼光一つで砕け散った

 

(”概念破壊”だと!?)

 

 結界で防ぎ、反撃するはずだった全員が押し流される。

 

「がっ!?」

 

 当たりどころの悪い誰かの手足が吹き飛んだ。

 

簒奪の野心パッシブ味方に「魔王」「竜王」がいる場合、自分は魔法攻撃でも確率でクリティカルが発生するようになる*36

 

「ガードしろ!!」

 

 男鹿ニキがとっさに砂塵を殴り返し、相殺する。

 だがそれも一部だけ、それ以外の視界全てが物理的な粉塵で埋め尽くされ、霊視に切り替えるも。

 

(セトの権能か! 視えねえ!)

 

 そのMAGで染め上げられた砂粒一つ一つがカーテンのように視界を阻害する。

 

「上に! ムラサキ!」

 

 即座に飛び上がり、濃い砂塵から距離を取りながら己の式神に念話。

 ムラサキなら縁を辿り、影響のない範囲に転移で飛ばせる。

 

≪皆が……!? 即死、位置をかえ≫ 

 

「ムラサキ?」

 

≪ぜんめ――ゴシャッ≫

 

 ”(パス)”が途絶えた。

 

「ムラサキ? ムラサキ!」

 

「来るぞ……セツニキ!」

 

 爆音。

 視界の端、黒ずんだ太陽の照らし付ける方角から砂塵を引き裂いて砂煙が噴き上がった。

 太陽を覆い隠すほどの土煙。

 最低限の周囲への警戒を保ちながら、目を向けて。

 

 

 ()()()

 

 

 ゾワリ。

 霊感(カン)が背後を向かせた。

 

 ――疾風――*37

 ――空間転移――*38

 

 目と鼻の先に、黒い竜がいた。

 顎を開いて、音すら立てずに迫っいた。

 

 ―― パワーチャージ ――

 ―― ウアス ――

 ―― カバー ――

 

 男鹿ニキが庇った。

 

 ―― 食いしばり ――

 ―― 猛反撃 ――

 

 左半身が噛み千切られながらも、セトに男鹿ニキが右拳を叩き込む。

 お互いに血を撒き散らしながらも、即座に飛ばした<メディアラハン>で回復する。

 

「頭が、廻りやがる!」

 

「悪魔だろ! もう少しアホでいてくれねえかなぁ!」

 

「出し惜しみはもうなしだ! 封殺するぞ!」

 

 意味のわからない物理攻撃――即死の特性か? 再生までする権能に、もはや油断は出来ない。

 ガチガチに備えていたはずの嫁たちが食い殺された。

 切れたパスの位置からして、即死すると同時に地下深くか、遠く離れた場所まで死体を吹き飛ばされている。あるいは喰われた。

 あのトカゲの腹をかっさばいて、取り戻す必要がある。

 

「切り札を一枚切るぞ」

 

 周囲をニキたちが警戒する中、セツニキが無数の霊符を空へと舞い上げる。

 奴の特性、このエジプトという大地が奴の聖域であるならば。

 

「領域」

 

 ひっくり返す。

 

「展開」

 

 両手を重ね、右手の()()を逆さに変える。

 

 上を下に。

 右は左。

 天は地。

 こぼれ落ちる水は空へと登り、羽ばたく鳥は地へと落ちる。

 

 生は死、死は始まり、命は終わり、順序は逆転する。 

 


【 魔 天 降 臨 】


 

「!!」

 

 セトの舞い上がる空が、黒く染まっていく。

 太陽は黒く染まり、空を赤く染める。

 

「GUるるるぅう……」

 

 セトの支配する命無き砂漠は緑生い茂る森へと姿を変え、水無き枯れた川に水が湧き上がっていく。

 死する大地が再生していく。

 領域内の全ての概念がひっくり返っていく。

 

 これぞ【魔天降臨】

 

 人間相手ならば”攻守が逆転する程度の術(天命反転)”だが、悪魔という情報生命体。

 すなわちそれに囚われた神もまたしかりだ。

 

「ネタバラシはなしだ」

 

 俺達は、もうお前を侮ってはいない。

 かつて下層でしばき倒した高位分霊(チンピラ)なら余裕で通じたが、この三味線ドラゴン相手は油断も隙もありゃしない。

 

 下手な情報を出して看破される前に、ぶちころ――

 

 

 

 

 

「つまらん芸だな」

 

 

 

 

デカジャ*39

 

 

 領域が消滅した。

 今までの結界と同じように。

 

「あ?」

 

 概念破壊?

 いやまて、これは俺の領域! まさかセトが、俺よりも格上の霊格だとでも?!

 

「デカジャは全ての結界を破壊する」

 

 響き渡るような声が聞こえた。

 今までの爬虫類じみた声ではなく、人の言語で。

 

「貴様らの概念強度など関係ない」

 

 それも……”日本語”だった。

 

「これ以上の芸がないなら」

 

 世界を滅ぼし得る大悪魔が、黒き竜が伝えた。

 

「死ね」

 

 

 淡々と――荒れ狂う砂と風が、彼らに襲いかかった。

 

『てめえが死ね!!』

 

 転生者たちは、修羅たちはそれに立ち向かった。

 

 

 

 

 

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

 

 

 

 そして。

 

 日本のガイア連合に報告が入った。

 エジプトに派遣したオカルト船の反応途絶。

 そして。

 ガイア連合岩手支部を主な拠り所にしている黒札。

 セッツァー、男鹿ニキ、蛮ニキ、誠一郎ニキ。

 彼らの式神と岩手支部長・愛宕。

 

 全員の消息不明が確認された。

 

 

 それは、修羅勢と呼ばれるものたちが地上の悪魔に敗れ去った事実を告げるものだった。

 

 

 

 

 

*1
星神神社の地下にある修練場を指す※【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録

 上層 中層 下層 深層に分かれており、段階を超えるごとに魔界に近づき、強力な悪魔が降臨してくる。もはや魔界に等しく、深層であれば魔界深部同然だろうと出てくる上位悪魔共を見てここを鍛錬場にしている修羅勢は判断している――本当に?

*2
ドラッグホルダー※200X

味方1人を対象とする消費型アイテムを1つをいつでも使用できる。

1ターンに1回のみ

その個数制限の霊符・呪符に限り無制限に枚数指定なしで使用可能になったもの

前世から磨き上げた、己が権能と称する練度まで極めている

*3
防壁※D2 “防壁”は効果中、受けたダメージの全てを防壁が優先して身代わりになる【結界系】

*4
行動する度にHPを少し回復する※SH2

*5
※基本システム

己がダイモン(守護存在)をも取り込み、自らが定義する自我を維持し続ける存在

通常の方法でレベルアップは出来ず、他者の悪魔を喰らい続けて

加速度的に成長し続ける究極の魔道の道を進むもの

*6
ガイア連合基準

*7
ガイア連合基準

*8
ガイア連合基準

*9
ガイア連合基準

*10
※NINE

*11
※【カオ転三次】最速で出会った俺らのガイア連合活動記録より

テトラ・マカラブレイクとオリジナルのスキル・マジックブレイク、デカジャ、貫通の統合品

自身より弱い概念の”権能”(スキル含む)を破壊し、なかったことにする

*12
※DDSAT2

*13
戦闘開始と同時に敵全体の全能力を低下

*14
広範囲に恐怖のBS及び挑発効果

*15
※真4

敵単体から万能属性でHP・MPを吸収する ニヤリ時威力上昇

ナナシ(セッツァー)はこれを手元に留めて、武器として扱える

*16
ソウルドレインに対象のバフ、ステ吸収の追加※オリジナルスキル

*17
所持者の物理攻撃ダメージを増加/大幅に増加する

*18
次に行う物理攻撃のダメージを二倍強になる

*19
敵単体に物理大ダメージ

(最大適正・権能(スキルLV MAX)によりダメージが増加

*20
※真V 所持者が付与した毒ダメージが増加/大幅に増加する

(最大適正・権能(スキルLV MAX)により格上以上でも毒・猛毒の付与が可能

*21
※オリジナル

所持者の与える状態異常付与は、対象の耐性を無視して付与される

ただし相手の概念強度に左右される 同格以上であれば……

*22
※オリジナル 全状態異常+特殊な毒込みの違法品(毒は行動終了後にダメージを受ける)

*23
※オリジナル 対象が状態異常時、与ダメージが増加する

*24
※オリジナル 状態異常の付与に成功時、他の状態異常を併発させるパッシブスキル

*25
※オリジナル 掛かっている状態異常の効果を濃縮、瞬時に効果を発揮する

 (最大適正・権能(スキルLV MAX)によりBSダメージが増加、

*26
所持者の火炎攻撃ダメージを増加/大幅に増加する

*27
敵単体に魔法攻撃 火炎大ダメージ

*28
※真V

敵単体に大威力の火炎属性攻撃。相性を無視して貫通する

(最大適正・権能(スキルLV MAX)により火炎ダメージが増加

*29
権威と繁栄を意味するセトが持つ杖、ウアス杖の先端は二股になっており、古くからある蛇避けの杖でもあるため蛇神を本霊とする蛮ニキにはメタ装備

*30
※真V 自身に次行う攻撃のダメージが増加し、相性を無視して貫通するチャージ効果を付与する

*31
※DDSAT2

*32
※DDSAT2

*33
※DSJ 敵全体の全能力を低下

*34
<龍の反応>※4F パッシブ

 自分の命中・回避率が上昇、効果大

 二段階上昇スクカジャ状態が維持される(二段低下で打ち消し)

*35
※DDSAT

*36
※真VV

*37
※NINE 移動速度が二倍になる

*38
※NINE 経路がないエリアへ、通常の速度で移動できる

*39
※偽典

敵味方の能力変化を解除する

敵味方の結界効果を無効する(破壊の歌と同効果)





川ぽちゃ
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