京浜第3シェルターのアイツ 作:FD一枚ケルベロス
水が上から下へと落ちるように。
戦いの趨勢は決まっていた。
≪溶け落ちよ、フォッグブレス!!≫
| フォッグブレス | 特殊補助(神経相性) | 敵全体の命中・回避・攻撃一段階ダウン*1 |
天使パワーがむせ返りながら、全体を弱体化させる強力なスキルを発動させる。
複数回命中すれば戦いが決まる、それほどの理不尽な強スキル。
事実、数を頼みにするような軍勢であればこれを使い続けるだけで烏合の衆となるほどの。
≪スクカジャ≫
≪タルカジャ≫
≪マカラカーン≫
≪メディア≫
「ダメージを一手減らしてくれるなら御の字だ、全快」
| スクカジャ | 補助(天啓)魔法 | 味方全体の命中・回避率を上げる*2 |
| タルカジャ | 補助(天啓)魔法 | 味方全体の攻撃力を上げる*3 |
| マカラカーン | 補助(天啓)魔法 | 味方全体に魔法を反射する結界を1ターン展開する |
| メディア | 回復(祝福)魔法 | 味方全体のHPを小回復 |
巨人と幻魔が下げられた命中率と攻撃力を即座に建て戻し、天津神が魔法を反射する結界を構築、妖精が残っていた傷と体力を癒やす。
ヒデトが銃を抜き、彼らを視認出来る位置にてブレスを吐き続ける天使へと引き金を引いた。
≪がぼっ≫
「守護天使様!?」
マカラカーンに、属性を切り変えて聖書COMPを起動させようとしてまごついていたテンプルナイトが声を上げる。
「おのれよくも!」
| ギロチンカット | 物理スキル | 敵単体に剣相性ダメージ+PALYZE |
人体をまるごと両断せんばかりの刃、それをヒデトが受け止め――【PALYZE!】
ヒデトの体が、硬直した。
――【PALYZE状態】 行動不能、敵攻撃を回避不能、毎ターンSP6.25%ずつ減少*4――
装着していた護符ヒランヤは、BIND・STONE・CLOZE以外を打ち消すことは出来ない。
(通った!)
麻痺が入った手応えにテンプルナイトの頬が釣り上がる。
(邪悪なる悪魔使いめ! 貴様の指示がなければ悪魔なぞなにもしないだろう!)
ガイア連合の屠った戦士共を思い出す。
シキガミと呼ばれる人造悪魔を従える連中、その中でも下位であったがテンプルナイトはそれを異界にて葬っていた。
彼らの大半はシキガミと呼ばれる悪魔に守られ、その主が倒れると同時に士気が崩壊か、激情にて我を忘れていた。
極僅かに自らも戦い、物理スキルや魔法などといった奇跡を使うものもいたが。
手の内を変え、状態異常にて心身を乱されれば、その余裕は引き剥がされていた。
我々とは戦いの速度が違う。
まるで一手一手ごとに待ち合わせるようなゆったりとした動きか。
あるいはがむしゃらにスキルを連打し、ゴリ押しで潰しにくるようなものか。
(貴方も同じだ、所詮力と速度だけの悪魔使い! 真の戦士にはならない)
戦闘の興奮に、かつて少年兵だった頃からの教化された人間性を僅かに浮かび上がらせながら。
鋭く腰を落とし、回転するようにヒデトの首へとテンプルナイトの刃が翻り――ヒデトの掲げた機械式の義手から、チカチカと点滅していたのをみた。
(なんだ? なにかモニターに)
「う、あああああああああああ!!」
声を上げて、視界から外れていた少女が何かを投げた。
瓶詰めされた薬瓶が、麻痺したヒデトの頭にぶつかり、割れた。
ディスパラライズ。
故に首を跳ね飛ばす刃を、目をそらすことなく睨んでいたヒデトが首筋を裂かれながらも、踏み込んだテンプルナイトに靴底を叩きつける。
撃打。
くの字をもって吹き飛び、胃液と共に喀血する神の戦士が、さらに撫で斬りに両断される。
左腕が肩から吹き飛んだ。
首筋から鮮血を撒き散らしながらも、動きを止めない悪魔使いによって。
そして、攻撃魔法を使いあぐねていた天使が、物理スキルへと切り変えて。
それを万全の肉体で受け止めながら、仲魔たちが反撃し、回復を行う。
これにて。
水が上から下へと落ちるように。
戦いの趨勢は決まっていた。
・
・
・
天使は地に落ちた。
テンプルナイトが瀕死で倒れ伏している。
ヒデトと仲魔たちは血に汚れながらも、万全に立っている。
それだけ見ればまるで数の暴力で押し負けたように。いや、流れだけを見ればその通り。
ただ手数の数で負けた。
強者が数の差に敗北した。
(だけど、そんなんじゃない)
あの忌まわしい、恐ろしい天使が地に墜落している事実に、今すぐにでも止めを刺しに行きたいのをヒデトが押し留め、そして周囲を警戒しているルサールカや、悪魔たちの動きに少女は学習していた。
オオヤマツミの異界探索で少女は知った。
この世界の本当の戦いを。
何一つ命の保証がない、怯えながら、必死にリソースを削りながら、通じる怪物を打ち払いながら進む失うだけの戦いではない。
悪魔の力を。
道具の使い方を。
仲魔との連携を。
仲間との協力を。
人が使える武器と道具の有効さを。
かき集めた知識の必要性を。
何故か虱潰しに埋めるマップの意味不明さを。
スキルとステータスだけではない強さ。
戦術と選択と大胆さと慎重さを
彼の戦い方は、仲魔の動きは、迷い一つもなく、相手の動き一つ一つに食い込むように、最速だった。
臨機応変と言うレベルではない。
動き止めずに、手数を即座に切り変えて、意思疎通しながら、同じことを繰り返しながら、同じ場所に一度たりともいない。
筆舌にし難い、だけどなんとなく理解し始めていた。
少女は高揚していた。
眠る力に、前進する覚悟が宿り、震えていた足がいつの間にか止まっていた。
それが唯一神が恐れていた彼の、<観測の力>としての片鱗。
人の力そのもの。
かつての世界において激減し、それこそ
「ぐ、ぁ」
テンプルナイトが、改造された肉体の限界に達しながらも動く。
「!! ヒデトさん!」
「まだ動くか、メシア教というのは随分と俺の知る奴よりも頑丈だな。パズスのやり口には似てるが」
「……我が信仰に、主の力は、決して陰らず!」
ヒデトの語る悪魔の名に、僅かに疑念が浮かぶが、それを信仰心でスキャナーズは振り払い、立ち上がった。
「我が守護天使よ!! 我が生命、我が主に、その信仰を届け給え!!」
血を吐き、両手を広げて、テンプルナイトは叫んだ。
「リカーム・ドラ!!」
| リカーム・ドラ | 回復(奇跡)魔法 | 味方全体のHP・MPを回復させ、蘇生する。発動者は死亡する |
殉教の輝き。
とっさに少女と仲魔たちを下げて、様子を見ていたヒデトの前で、テンプルナイトが輝きながら、そのそばの天使が癒えていく。
≪ふぅ、はははっはあ!!≫
天使パワーが翼を広げて、その傷一つない翼を掲げて、笑う。
両手を広げて、十字を思わせる体勢のまま、絶命した己の戦士だったものを見て――微笑んだ。
≪さすがは我が神の戦士、よくやりました! その忠誠、信仰心、私は誇らしくなります! 感謝しますよ!≫
ケラケラと決して攻撃が届かない距離まで飛んで、天使が笑う。
「おまえ、おまえぇ!! 自分のせいでその人が死んだのが悲しくないのか!!」
≪? 悲しむ、なにをです?≫
その眼下、塵芥のような蟻の叫びに、天使は小首をかしげた。
≪天の御遣いたる私のために命を捧げたのです。その名誉にさぞ満足でしょう≫
「おまえええええええええええええええ!!」
≪ハハハハハ!≫
高笑いを上げながら天使が翼を翻す。
その背に、少女が怒りの唸り声を上げ。
当然のように備えていたヒデトが、決して逃すことのない
≪ぐぺっ≫
天使が奇妙な音を上げた。
≪あぺ?≫
中空にて、天使の翼がねじまがり、首が歪んだ。
「なんだ?」
「えっ」
≪い、ぁ≫
まるで重力を無視したかのように、空中に固定された天使が、手足がねじ曲がる。
首がねじ曲がり、激痛と血しぶきを上げながら、ぐるぐると、玩具のようにひっくり返り。
≪ぃ、あ、ぃ、あ≫
それは飛行生物だった。
それは一見蟻のようだったが、触覚は短く。
それは人間のような皮膚と目、鋭い鉤爪の付いた左右二対の手を備え。
それは蝙蝠のような羽毛の翼を広げていた。
≪ぃあ! ぃあ! ぃあ! ぃあ! ぃあ!≫
| アルカナ | ビヤーキー | LV42 | 属性?????? |
| 相性耐性 | 神聖・暗黒・神経・精神無効 万能半減・全てに強い*5 |
「」
呼吸が止まった。
言葉では言い表せない恐怖に、少女の精神が凍結し、心臓が、流れる血の停止に合わせて止まっていく。
勝てる、勝てないの領域ではなく。
それは存在してはいけないものだった。
この場の全員で挑んでも勝てるかなんて、アナライズ出来なくても理解出来る。
恐怖に。
少女は、その命と共に意識を喪失させかけ。
「切りたくなかったが、出さないとまずいか」
右腕を翳し、幾重にも起動承認を行い、オリジナルの悪魔召喚プログラムが。
「コール」
―SUMMON――
膨大な、溜め込んまれていたMAGとマッカを触媒に、今再び決戦の力を開放する。
本来国家を賭してなお呼び起こせるか未知数の神格が顕現する。
極大の神雷が、全てを消し飛ばした。
天地が引き裂かれる、
・
・
・
神星ローマ帝国
「ッ、あんだ?」
「どうした、ゼウス」
天使共と戦いも一区切り、ふとした談話の中で突然虚空を見上げた狂雷。
その顔は相棒たる少年にして始めて見るほどに険しく、そして、ゆっくりと目を見開く。
「うっそだろ、ハハハ!! やりやがった、どこのどいつだ! いや、なんかわからねえが懐かしいなぁおい!」
「? なにが?」
「どこかの奴がオレを呼んだ。
それは歓喜だった。
・
・
・
??? 米国
「この鳴動、まさか、あの方が言った通り……」
「バカな、この世界にあれほどのものがいるはずが!」
「愚か者! 我々と一時とはいえ翼を共にした奴の気配を忘れるものか」
本来ならば対立しているはずの三枚の翼。
大天使と呼ばれるものたちが、その支配化たる修道会にて、祈るように手を組み合わせる。
「奴を消さねばならぬ、我らが計画のために」
「主よ、我々に力を!」
「奴を、消し去る!! 今度こそ! 信者たちを動かせ、神の敵を討つのだ!」
それは恐怖だった。
・
・
・
??? 日本
「?」
ピクンと小柄な少女が背筋を震わせて、天井を見上げた。
「……代表?」
側に仕える修道女が、手に抱えていた膨大な書類を落とさぬように気をつけながら、声をかける。
「どうかされましたか? やはり日頃の激務で体調を崩されたのでは」
「いえ、大丈夫です。……<アドナキエル>、感じましたか?」
パンと手を叩き、少女の側に光が集った。
白髪金眼の見惚れるほどの端正な美少年。
それこそ少女――メシア教日本支部の代表の守護天使。
その姿こそ見慣れたものの、顔色はひどく青ざめ、汗ばんでいる。
「ああ……恐ろしい気配がした、一瞬だが」
「場所は?」
「遠い、おそらく西のほうだが――触れないほうがいい、私の天敵だ。今回ばかりは壁にもならないだろう」
「!? そんなアドナキエル様が……」
「どこの神話体系か、アナライズ出来ますか? それとガイア連合に連絡を、おそらく彼らの――」
そこまでいいかけて、代表たる少女がふいに片目から涙が流れた。
「ッ!」
「代表!?」
慌てて修道女がその体を支える。
その中でもブツブツと言葉にならない言葉が漏れ出して、同時にそのもう片方の目から血涙が流れ。
「――人を集めなさい、連絡があります」
「?」
「早く!! 事は一刻を争います!」
「は、はい!!」
修道女が駆け出し、守護天使は困惑した顔で少女を見る。
彼女はぼたぼたと流れる血を床に流したまま、笑みと引きつった顔をしていた。
「なにかが起こる、心の底から震え上がるほどの恐怖が……それとも歓喜か、主よ、貴方の御心は」
それは困惑だった。
・
・
・
??? インド
「――タイタス?」
インドの山奥、誰も来ぬ未踏破の秘境にて。
もはや終わり続ける世界に、微睡んでいた老人……否、男が目を見開いた。
「ユピテル」
声が響く。
幾重にも重ねた、神格を、絶大なるものにして、深淵にて彷徨い惑う旅人の声が。
「ハスター、クトゥルフを撃退せし雷なるもの。それを使役するか、カダス・マンドラの元型に等しき器を」
胸元に手を当てる。
数万年ぶりの迷い、息を吸い、嘲笑い続ける邪神の狙いに、思考を巡らせて。
スワーミ・チャンドラプトラは、その腰を上げた。
それは希望だった。
・
・
・
??????
「わははははは! すごいすごい!!」
「なんだこれは! なんだこいつは!」
「うー! にゃー! 楽しくなってきましたね!」
「誰か知ってるー?」 「知らないな」 「知りたいな」 「気になる」 「アレフではないみたいだ」 「観測者も知らないといっている」
「ならば」 「ならばならば!」 「ならならならなら!!」
「「「「「我々のダンスを楽しんでもらおう!」」」」」
それは狂喜だった。
・
・
・
星神神社 日本
「仕事が終わらないんだけどおおおおおおおおおおおおお!!」
神主はブラック労働を続けていた。
それは絶望だった。終りが見えない意味で。
・
・
・
世界は激震した。
ただ一人の観測者が、世界を揺るがす。
それはほんの少しの天秤の揺れ。
なれどもそれは正史より――混沌よりもなお、秩序よりも、中庸へ。
歴史が変わることを、今はまだ誰も知らなかった。
新 約 女 神 転 生
デ ジ タ ル デ ビ ル ス ト ー リ ー
他の三次創作の方なども参考にしつつ
独自路線でIF世界線へと入っていきます
目指せ終末回避!