京浜第3シェルターのアイツ 作:FD一枚ケルベロス
偽典、20XX(携帯版)、デビルコロシアム、旧約1・2などの詳細データを知らない前提で幾つかの会話などが構成されています
ようやく束縛の解けた体を持ち上げてため息を吐く。
「まったくデタラメだな……メガテンらしいといえばメガテンらしいが」
ゴロゴロと転がる死屍累々(死んでない)。
市街地よりやや離れた閑散道、そこで追いついた手配犯である魔女とフィネガンとの戦いの結果がこれだった。
各支部と派出所からの情報連携、そしてトラポート*1などを駆使した高速移動で転生者でも戦い慣れた連中と式神による混成チームだったのだが。
「まさか戦いもせずに即座に離脱に入るとは」
トラフーリ*2を即座に使用、なんら躊躇いもなくあの魔女とフィネガンは距離を取ったのだ。
日頃からこちら転生者に勝ち目がないと逃げに入る奴らは多いが、それにも勝るとも劣らない即座の逃げ足にむしろ惚れ惚れするほどだった。
さぞかし日頃から逃げることに慣れているのだろう。
…………いや、あれだけのレベルがあるのに国内で逃げるほどの悪魔がそう出るものか?
ともかく。
それで、囲んで袋叩きする前に俺たちは距離を取られた。
念の為ルナトラップ*3を身につけていた奴も用意していたが、いかんせん希少なスキルであり、先手が取れなければ意味がない。
結果的に複数人ずつ、連続した戦いになったのだが……
「レベル格差で状態異常も耐えられると思っていたが、効く時は効くものだ」
精神系全般の対策をしていた奴らは無事だったが、魅了や幸福などの片方だけの耐性だった奴は
(ダメージの発生するシバブーといい、複合効果のあるマリンカリンといい、あれは……)
「全く見事にやられたみたいだね」
つい先程まで気配もなかった場所から声がした。
「最悪逃げ切られるぐらいは考えてたけど、少し予想外だな」
聞き慣れた声に、傍で自分を守ろうとして抱きついた式神を抱えながら振り向く。
そこには十代半ばにも満たないだろう少年が岩の上に座っていた。
思わずちっちぇなとか言いそうなその外見を、転生者の男は知っていた。
神主、通称ショタオジと言われる星神神社のデビルサマナー。
「ショタオジか。分身か?」
「いや、今回は本体だよ」
そういう少年の後ろからするりとネコ耳を生やした美少女にしか見えない悪魔――ネコマタが出てきた。
≪にゃ、にゃ。情けない奴らだにゃ。やっぱり泣いたり笑ったり出来ないぐらいに修行させるべきだったんじゃないかなにゃ?≫
クスクスとネコマタが嘲るように嗤い。
≪主の判断に口を挟むな≫
≪ニャ!?≫
耳元から囁かれた声にピィンと背筋を伸ばした。
そのネコマタの足元の影が僅かに波紋を起こしていた。
「オンギョウキまで出して、今回は本気だな」
「まあね」
パチンと指を鳴らし、転がっていた連中の体が光に包まれて、のろのろと起き上がる。
まあどちらにしても神主なら使っても不思議ではない。
そんな色んな意味での信頼があった。
「ちょっと気になる情報を聞いて、想定レベルを上げてきたわ」
「……気になる情報?」
「うん。例の魔女って奴に強奪された祭具もそうなんだけど、調査の結果やっぱり先に手を出したのは
「やはりか」
あの魔女とフィネガンは、こちらの襲撃に関しても出来るだけ人死は避けていた。
まあこちらの装備とさんざん
「襲った理由は?」
「クソッタレの邪神だよ。オールドメイド*6って知ってる? あれでいきなり外から攻撃してきて、結果的に誰も知らない下手人と、襲われた被害者が残されたわけさ」
「あのスキル実在してたのかよ」
オールドメイド。
ペルソナ2罰で登場する、ジョーカーと呼ばれる怪人あるいはそれになった奴が使うスキルだ。
その効果は
ジョーカー様してないやつだろうがくっつくし、原作仕様ならアナライズしてもわからねえやつじゃねえか。
「はっはっは、最近は先祖の悪魔とかが目覚めて共存してたのもあって普通に通しちゃったみたいだよ」
「やばい、やばくない? 笑い事じゃなくない?」
「大丈夫、もう結界を改修した。喰らう憑依は避けられないけど、それを付けたまま支部に入る事は出来ないよ」
「早い、さすがショタオジ」
「褒めるのはいいけど、休みをください」
「ダメです」
「だよーなー」
いつもの問答をしつつも、他の連中がわーぎゃーいいながら、自分たちの式神を蘇生したり、それに抱き締められている光景を見つつ、彼は声を出した。
「一回だけならうちの支部にも侵入出来ただろう虎の子を使うほどの、やばい案件だったってことか?」
「いや、あの邪神だからイケルと思ったからやったんじゃないかな。彼もそういってた」
「これだからうーにゃー野郎が!!」
敵も味方もどちらでも自由自在、なんなら自分同士で殺し合いすらも楽しんでやる最悪の糞邪神。
メガテン知識以外にもCOC知識などで散々理解している性根だが、現実にやられると溜まったもんじゃない。
(クトゥグア呼び出して焼き尽くしてやろうか、いやあれメガテンだと確か出てなかったな*7。イカ邪神はいるくせに)
「で、なにをそんなことをしてまで妨害した祭具って?」
「あ~…………」
「?」
珍しく、神主が顔を渋くする。
人の心がない。永遠のショタ。人の心がわからない。鬼畜外道。童貞。72時間働けますか? お前だけだよ! 日本最強異能者などなど、あらゆる尊敬恐怖畏敬を向けられているショタオジ。
星神神社の神主にして珍しく、当たってほしくねえなーという顔を浮かべて、呟いた。
「ざっくりつけておいた式神から情報は手に入れたけど、魔女の魔法って
「ああ。ダメージを与えるシバブーもそうだが、魅了・幸福を併発するマリンカリンを使っていた」
「……真1と2はどうだった?」
今回の追跡にわざわざ指名で食い込まれたかなり重度の
「いや、確か違ったと思う。そも幸福ならハピルマで分かれたはずだし」
「僕たちが知らないとしたら、あとはNINE……はそこそこやってたやつがいるか」
「スタンドアローン版なら俺もやってた、スキル多すぎだが」
「となると、あとは携帯版と、偽典と」
「原作小説と、それが元になった真がつかない方の1と2だ。ん?」
なんか思い出したような……
額に手を当てて、体感記憶にして五十年以上の記憶を探り――神主の言葉がそれを中断させた。
「奪われた祭具はおそらくピラーだ」
「ピラー……? 皮むきじゃないよな、ピラーというt――?!」
思い出す。
その言葉の理解して、彼は青ざめた。
かつてこの世界がメガテン世界だと言われた時に匹敵するほどの青ざめを。
ショタオジは少しだけ嫌なそうな顔を浮かべて、ぐるりと肩を回し、告げた。
「魔界の門が開く」
「
1/18 ※ピラーの本数など修正しました