息抜きに作中の異世界(VR)に入る、そして 作:haru970
楽しんでいただければ幸いです。
「あー、ここがバグ原因かぁー。 ったく、こんな初歩的な無限ループ共同プログラミングならまだしも自分のコードでかよ。」
カタカタカタカタ。
薄暗いオフィスの中、眠気が襲う頭をぬるいコーヒーを飲んでカフェインをさらに摂取品がキーボードを打っていく。
「おーい、イチオくん! クライアントから問い合わせが来ているぞー!」
またかよ。
俺の名は『イチオ』じゃなくて『
年下とはいえ、仮にも会社の上司だ。
「なんすか部長?」
「なんだかサーバーの調子が悪いそうだ。 見てやってくれないか?」
「サーバーですか? 俺、
「────ほかの奴らは別件のプロジェクトで数日間徹夜していたんだ。 とてもじゃないが外に出せる状態じゃない。」
それ、俺も入っているんですが?
「その反面、お前はまだ調子いいほうだから見に行ってくれ。 電話越しに訊いた話だが電源を切るのを忘れて、ほかのサーバーの邪魔になっているだけだ。」
それなら自分で行けよ! こちとらアンタの残した無限ループバグを潰してんだよ!
『若いから』ってだけで、あとに会社入ってきて昇進しやがって!
課長と夜な夜なナにかしてんのは分かってんだよ!
事務所の壁が薄いの分かっているだろうが?!
「あ、はい。 わかりました。」
煮えてくる怒りを鎮めて、俺はパソコンを休止状態にしてからカバンに入れて出かける用意をしてドアを開けるとスーツ姿の青年女性が立っていた。
「あら! えっと……イチくんだっけ?」
「あ、課長。 すみません、少し出かけてきます。」
「あらご苦労さまです。」
それを最後に俺は同僚の実に二日ぶりの日光に当たって、体がそれでビタミンDを汗と共に生成していくのを────ってクッソ熱い。
やっぱインドア派に空調無しの真夏は堪える。
ん? そういや自己紹介がまだだな。
俺は『
歳は……………………………………………………………………………………………………………………………
中学生の時にドラゴン〇ールの『ナメック星編』がまだ生放送されていたとだけ言おう。
皆、オラに力を与えてくれ。
いかん、ボーっとし過ぎていつの間にか目的地まで来た。
あれだ。
『い、今起きたことをそのまま(以下略』の奴みたいだった。
「すみませーん、サーバーの調子が悪いと────」
「────ああ、話は聞いています。 こちらです。」
とっとと具合見て、会社に戻ってデバグして帰ろう。
社交辞令をそれとなく交わしながらそんなことを考え、連れてこられたのは一昔前の少しホコリ臭いサーバールーム。
その中にポツンと一台だけ棚から外して椅子の上にあった。
「これですね? 一旦自分のパソコンと繋げて様子をみますね?」
「ええ、お願いします。」
ん? 俺、このサーバーに見覚えが……
いや、今は仕事だ────
「────ってあれ? これってゲームのデータ?」
サーバーと接続すると見覚えのある情報がポップアップしてくる。
これまた一昔前のVRタイプゲームだ。
「ああ、これは先日倉庫を片付けているときに見つけてね? 使えるかなと思って若い者が
なんつー不用心な。
もしこれにマルウェアやウィルスが入っていたら他のサーバーともどもアウトだったぞ。
「本社の新作ベータが始まるから『サーバー数台空けとけ』って言われて。 でも今年の予算に新しいのが買えなくて、古い機材があるか見ていたんだ。」
「あー、じゃあこのサーバーは要るんですね? 分かりました、任せてください。」
そこからサーバールームに俺一人だけが残され、パソコンからはゲームのファンタジーっぽい効果音が流れる。
いやー、このBGM懐かしいな。
「って俺が開発していたゲームかよ?!」
なんてこった。
前の会社でプログラマーやっていたデータに出会えるなんて……黒歴史以外、何でもない。
「うわぁ、しかも半年間ぐらい作動って……どこが『この間』だ。」
そう言いながらも、俺は疲れていたのか少し若いころの思い出に浸る。
夢とアイデアがあって就職したての頃はキラキラしていたな~。
空調の効いた部屋の中にパソコンの冷却ファンとBGMだけが流れ、チラリと『ログインしますか?』という画面を横目で見た。
「………………………ちょっとだけ良いだろ。」
サーバーが動いていたことと、ゲームのデータがそのままあったことにちょっとした興味本位で俺はVRヘッドギアを繋げる。
ちなみに機種を持っているのはデバグ用にだ。
ソフトウェアにもよるが、たまにVRインターフェースでしか作業できない
「さて、ログインしてみますか。」
ヘッドギアを装着して、VR独自の感覚に考えと体を預ける。
『ようこそ、ファルディアオンラインへ! アナタ様は選ばれた勇者ですか? Y/N』
うっわ、古い!
普段なら笑っているけどこれ、俺も関わったんだよな~。
あの時は情熱で燃えていたなぁ~。
『ようこそ、ファルディア・オンラインへ! アナタ様は選ばれた勇者ですか? Y/N』
おっと、時間をかけすぎて選択肢がまた出たか。
ここで
『私はエクセリア、この世界の女神です! お待ちしておりました■■様! ではこれからファルディア・オンラインで活躍する貴方様の人物を思い浮かべてください!』
おっと、
セリフが少しバグったけど、無事キャラメイクに進んだな。
おおおおお。
久しぶりに見たぞ、男女を自由に選べる選択なんて。
少し前まで普通にできたけど、リアルとオンラインを使った詐欺とかあってユーザーの性別しか選べなくなったんだよなぁ~。
ま、ここは普通に男っしょ。 俺自身はTSに興味ねぇし。
種はいろいろあるんだな。
定番のヒューマン、エルフ、ドワーフ、獣人、竜人、吸血鬼、なんでもござれだ。
……よし、ここは
やるなら『周りがYOEEE!』だ。
フハハハハ、ゲームの中に入れたら好き放題やろう。
歳は見栄を張って『十五歳』と。
…………………若すぎか?
名前は……『
『エラーが発生しました。 正式な名前を入れてください。』
は?
まさかの『漢字非対応』かよ。
フォントちゃんとしろよ、オンラインゲームとして開発してたんだから。
カタカナなら行けるか?
『エラーが発生しました。 その名前は既に登録されています。 正式な名前を入れてください。』
うお、マジか。
まさか俺の前キャラがまだ入っていたとは。
……『イチオ』でいいかこのさい。
『来て頂いてありがとうございます イチオ 様! 今、ファルディアの世界にはかつてない危機が迫っております!』
『世界の危機』と言うか、『機材が要るからデータ
いや、『世界の危機』になるか一応?
『ほかのプレイヤーやキャラクターと一緒に力を合わせ、この至難を乗り越えてください! 神のご加護があらんことを……』
オンラインというか、『
と言うか『女神』って自分を紹介したのに、神官っぽいことを言うとは笑えるぜ。
……若かったな俺も。
微笑みを浮かべる(自称)女神のエクセリアから光があふれ出して、視界一面が真っ白になって本格的にゲームが作動したのか意識が次第に薄れていく。
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
「ん……」
顔に風が当たる感覚に目を開けると草原の上に大の字で寝ころんでいた。
「あれ? 『始まりの村』じゃないだと?」
『ファルディア・オンライン』はその名の通り、MMOとしての前提に作られた。
よって新参プレイヤーなどの為にチュートリアルの村でスタートする筈なんだが……
「
まるで魔法の詠唱のように唱えるとAR表示のように視界の右下にアイコンが何個か出てくる。
一般ユーザーの『日記』、『地図』、『キャラ管理』、『ステータス』、『魔法』、『スキル』、『特殊能力』、『ストレージ』、『交流』、『ログ』、『ゲーム設定』と言った項目。
そしてさらに『
うん、『デバッグ』や『データ消去』もちゃんと入っているな。
『ステータス』は……
うん、レベル1でHP、MP、各能力値は初期設定。
種族もちゃんと『神族』……………………………………………………………
あれ?
なんだこの『仮:人族』と『真:神族』は?
こんなのあったっけ?
あ、でも確か『鑑定』のスキルとかあったと思うからそれの対策用として誰かがプログラムしたのか?
さて『魔法』は……空欄か。
『スキル』も同じ。
『特殊能力』には意外なことに『
……見覚えがないが、ひょっとして種族か開発者権限に影響されているのか?
まぁいいや、とりあえずはこの草原から移動しよう。
ちょっとの休憩だし、別にもうちょっとでもいいだろ。
まずは設定で『マップ』を表示……って俺のキャラが見えたり聞こえたりする範囲内だけ表示されるか。
しかもマップは俺の周り以外が真っ白。
「メンドクサ、ここは『
そこで俺はAR表示の操作を止めた。
「────いや、ここは俺の周りを見えるように『デバッグ』、と。」
なんてことはない、体が若くなった影響か柄にもなくワクワクしていた自分がいた。
そのまま俺はオッサン現代の着ていた服装から初心者装備に着替えて歩き出す。
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
「なんじゃこりゃ。」
俺が歩いて十分ほどで町らしき集落へと着いて、興奮した。
「へいいらっしゃい! 見てってくれー!」
「今日は西のほうに行かねぇか?」
「ばぁか、そっちは魔物が出るって話だぜ?」
目の前には
「うっひょー! いつの間にAIが実地されたんだ?!」
いや、誰だって興奮するだろう?
自分の開発したゲームのNPCが人みたいに振る舞う場面を見たらさ?
……………………………と言うことはまさか
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
「フハハハハハ! よく来たな貴様! 私が『混沌の魔王シィタ』じゃ! さぁ選べ! 私の下について世界の半分を手に入れるか、この私と戦うか!」
目の前の王座で立ち上がっていたのは小柄な魔族の女性。
その長く赤がかかった長い髪をツインテールにし、幼さを残す顔で『ふふん!』と組んだ両腕は、その身長とは裏腹に大きな胸をさらに主張させていた。
「やっぱりいたよコンチクショウめぇぇぇぇぇぇ!」
そんな彼女、『魔王シィタ』を自称する前で俺は頭を抱えて叫んでいた。
ちなみにここまでは徒歩ではなく
ちまちま道中のモンスターとか戦うなんて御免だ。
難易度がハンパない設定の筈だし。
「……って誰じゃ貴様、勇者ではないのかえ?」
俺の黒歴史に一つの前に、襲ってくる頭痛を物理的に抑えるかのように頭を抱えてその場でうつむいた。
「……のぅ。」
『魔王シィタ』は『魔王』と名乗り、古典的な『魔王』として振る舞うが実はラスボスやクエストボスなどではない。
実はと言うと、ある手順を踏むと仲間になってくれる『裏仲間NPC』なのだ。
「のぅのぅ。」
『オンラインゲームなのに?』と聞くかもしれないがその通りだ。
この『ファルディア・オンライン』では特殊なNPCを仲間として連れていける。
「のぅのぅのぅ。」
だがそうなると同じユーザーが特殊なNPCを何人も連れまわって行くこととなる。
それを打破する為の処置が『昼夜サイクル』。
と言うか『思考ルーチン』。
多少の運が絡むがNPCたちにも『事情がある』感を出すため、必ずしも仲間になるわけではない。
ぶっちゃけその『運』とは課金ユーザーたちを優先的に選ぶ仕組みで────
「いい加減なにか言ってはどうじゃ?!」
「どぅわ?!」
目の前に『魔王シィタ』がドアップで覗き込んだことに俺は間抜けな声を出し、揺れる胸を見てしまう。
「私を無視するでない! よく見ろ!」
「よく見ていますぅぅぅぅぅぅ?! と言うかマジ
「ふぇ?! な、何を……」
ああそうだよ!
こいつをプログラミングしたのは俺だよ!
若き頃の黒歴史だよ!
「そ、そんな……急に言われても……」
「だって見ろよ! このくりっとしたオッドアイの瞳に柔らかそうなふわふわの猫毛のツインテールに自分のことを意識した背伸びしたがる態度に小さな冠から出てくるアホ毛を!」
「なななななななななななななななななななななななな?!」
俺も若かったんだよ!
若さゆえの過ちだよ!
あ、思い出したらなんか涙が出てきた。
しかも条件が『戦闘をプレイヤーから始めない、反撃しない』とトリガーワードがまさか────
「────『
ピコーン♪
「────ん?」
通知音に俺がハッとするとAR表示の『交流』に何かが出ていた。
【魔王シィタが仲間になりたそうにこちらを見ています、歓迎しますか? Y/N】
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」
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