息抜きに作中の異世界(VR)に入る、そして   作:haru970

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本日二話目です!

お気に入りとアンケートのご協力して頂き、誠にありがとうございます!


メ○パ二状態は物理攻撃では解除できない

 俺、村上一男(むらかみかずお)

 

 あ…ありのまま今起こった事を話すぜ?!

 

『開発にかかわっていたゲームに入ったらNPCが人間染みていて、かつての俺の趣味満載のRORI巨乳で隠れ仲間キャラの加入条件を満たしたらドラ〇エ風のARテロップが流れた。』

 

 頭が、どうにかなりそうだった…

 いわゆる『メダパ〇』状態だ。

 

 ほら、『ステータス』にもちゃんと『混乱』って────

 

「のぅ? お主さっきから何をブツブツ言っておるのじゃ────いひゃいいひゃいいひゃいいひゃいいひゃいいひゃいいひゃい?!」

「うん、夢じゃないな。」

「ぬぐぅぅぅ! そこは自分の頬をつねるところのではないかえ、この無礼者?!」

 

 と言うかこいつのほっぺ、モチモチしているな。

 俺が『魔王シィタ』の頬っぺたから手を放すと少し赤くなった自分の頬を涙目でさすりながら俺を睨む。

 

 ここはこいつ、『魔王シィタ』の王座の間。

 もっとマクロに言えばかつて俺が開発者として手掛けたVRMMOゲーム、『ファルディア・オンライン』の中。

 

【魔王シィタが仲間になりたそうにこちらを見ています、歓迎しますか? Y/N】

 

 そしてこれがさっきから点滅している『交流』のAR表示。

 

「おい、何か言わぬか?」

 

『魔王シィタ』が赤と緑色のオッドアイでプックリと頬を膨らませながら俺を見上げる。

 

 う~~~~~ん。

 若いころの俺に感謝だ、目の保養になる。

 

 特に胸が。

 

「な?! どどどどどどどこを見ておるのだ貴様?! と言うか勇者でもない貴様がなぜここにおるのだ?! というかなぜ攻撃もしておらんのに混乱などしておるのだ?!」

「あ、えっとすみません。 道に迷っちゃいまして。」

 

裏技(ワープゾーン)を使いました』なんて言えないのでスッゲェ雑な言い訳が出た。

 しかもリアルでの腰の低い調子で返してしまったよ。

 

「……はぇ? なんじゃ、迷子かえ?」

「あ、はい。」

 

 これを聞いた『魔王シィタ』はカラカラと口を大きく開けて笑い始める。

 

 ……あ、八重歯もあったなそういえば。

 どれだけ盛ったんだよ昔の俺。

 

「魔王城の王座まで来て『迷子』とはのぅ! ヌシは面白い奴じゃ!」

「あ、それは良かったです。 出来れば外に出たいのですが。」

「ぬ? ここまで来て帰るのかえ?」

「え~と、()()()まだ残しているので。」

「ふむ、冒険者か。 通りでここまで迷子でこられたわけじゃ。 ユニークスキル持ちかえ?」

 

『外で仕事が待っている』とオブラートに言ったつもりが変な解釈をしてくれてよかった。

 と言うか『ユニークスキル』とはなんぞや?

『ファルディア・オンライン』にそんなものあったっけ?

 もしや『特殊能力』のことか?

 

 分からん、ここは誤魔化すか。

 

「あ、俺のLck()は高いほうですから。」

「ほう、よほどの強運じゃな?」

 

 ……(ちょっと)ポンコツで良かった。

 

 てかなんで俺は自分のキャラの前で用心してんだ?

 

「よし! 私自らが外へ連れ行こうぞ! 光栄に思うが良い!」

「ハハァー! ありがたき幸せ!」

「フハハハハハハハハハハハハハハ! 分かっておるではないか!」

 

 畏まってテレビからの見よう見まねの西洋風お辞儀に『魔王シィタ』が胸を張って高らかに笑う。

 

 眼福じゃ~。

 

「ではついて……はて? そういえばお主の名を聞いておらんかったわ。」

「ああ、申し訳遅れました。 自分、『イチオ』と言います。」

「私は『魔王シィタ』じゃ。 ではついてこいイチオとやら!」

「ハハァー!」

「フハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

 またも満足そうに『魔王シィタ』が笑ってテクテクと歩き出す。

 チョロいし眼福だし今日は意外といい日になりそうだ。

 ゲームだけど。

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

「ゼェ……ゼェ……ゼェ……」

「フ、フハッハッハ……よ、よくぞ生きて出られたイチオ。」

 

 俺と『魔王シィタ』は二人とも息を切らせながら『魔王シィタの城』の門の外へと出た。

 

 マジ疲れた。

 

 何せ裏技(ワープゾーン)はもともとデバッグ用に作られたので一方通行。

 帰るには『■■(開発者)権限』を使えば一発なのだが、自分の関わったマップデザインを直に見たいと思った昔の俺を殴りたい。

 

 そもそもこの城は初心者ではなく、熟練の大人数パーティを前提に創った奴だ。

 中は迷宮でたくさんのトラップに、配置されたゴーレムやアンデッドやガーゴイルやらの数が尋常じゃない。

 

『魔王シィタ』が一緒に居たからか、モンスターは襲ってこず俺たちを無視していた。

 あと幸いしたのが『侵入』じゃなくて『脱出』だったのもあったか?

 

「ふぅ、ありがとうございます『魔王シィタ』。 では。」

「ウム。」

 

 気を取り直して俺は町へと歩き出すと、後ろから不意に声が聞こえてきた。

 

 「さて、王座にて勇者が現れるのをおとなしく待つか。」

 

 ……………………………え?

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

「ぬ?」

 

 俺は思わず振り返る。

 

「なんじゃ、イチオとやら?」

 

 何か言いたいのか、俺の口は半開きになったところで自分の行動に疑問を持った。

 そもそも目の前の『魔王シィタ』はゲームのキャラクターだ。

 それもVRMMOタイプの。

 開発が終わっていない、『ソロ(非オンライン)モード』の。

 

「君は、どれぐらい待っているんだ?」

 

 気付けば、そんなことを俺は口走っていた。

 相手がキャラクターと分かっていても、なぜか聞かずにはいられなかった。

 

「どれぐらいじゃと? はて……もう()()()の事じゃ。 私は『魔王』で、()()()()()()()()()()()()()()()使()()じゃからな。」

 

【魔王シィタが仲間になりたそうにこちらを見ています、歓迎しますか? Y/N】

 

「なぁに、勇者を待ちわびることなど『魔王稼業』の一環じゃ。」

 

 彼女が『勇者』と呼ぶ者は決して現れない。

 

「なんじゃイチオ、どこか変に感じるのかえ? あ! もしかして私の『()()()』が勇者に傷がつくと思うてか? フハハハハハ! 甘い! 勇者がどれだけ束になってかかってきても負ける気はせんわ!」

 

『勇者』が現れる筈が無いんだ。

 この『ファルディア・オンライン』には……

 PC(勇者)訪れ(ログインす)る事はないんだ。

 

「じゃがお主のような若輩者が迷い込むとは思わなんだな……面倒じゃが、少し警備を考え直すか?」

「なぁ、『魔王シィタ』。」

「ん? まだいたのか。 ほれ、早う行かぬか。 でなければ冒険者ギルドの調査隊が来るぞえ────?」

「────『()()()()()()』。」

 

 俺がその言葉を言うと『魔王シィタ』の体がピクリと少しだけ反応した。

 

【魔王シィタが仲間になりたそうにこちらを見ています、歓迎しますか? Y/N】

 

 Y/N(イエスかノー)だって?

 

『イエス』だ。

 

 久しぶりに浮き上がる気持ちの中、俺はそう強く念じて、戸惑う『魔王シィタ』の手を取った。

 

「あ、その、ふぇ?」

「『()()()()()()()()()()()()?』」

 

 選択(ユーザー)コマンドを俺は力強く、自分でも良く分からない気持ちのまま言葉をを伝えると、『魔王シィタ』の目が泳いだ。

 

「は、え? 私がか? 正気か? 魔族だぞ?」

 

【魔王シィタが仲間になりたそうにこちらを見ています、歓迎しますか? Y/N】

 

 イエス。

 

「ああ。」

「だが私は『魔王』で……お前は『人族』だぞ?」

 

【魔王シィタを歓迎しますか? 選択後、後戻りはできません。 Y/N】

 

 イエス。

 

「それでもだ。」

「………………いいのか?」

 

【本当に魔王シィタを歓迎しますか?  Y/N】

 

 イエス!

 

 くどいなこのシステム通知は!

 誰だよ開発者は?!

 あ、俺もその一人か。

 

【最後の確認です。 魔王シィタを仲間にしますか? Y/N】

 

 イエス!

 

「当たり前()のクラッカー。」

「なんなのだそれは?」

 

 ピコーン♪

 

【魔王シィタが仲間になりました! 

 経験値を会得しました! 

 イチオ のレベルが上がりました!

『運命を覆す者(仮)』 の称号を手に入れました!】

 

「うお?!」

「ひゃわ?!」

 

 急にポンポンと出てくる通知に俺がびっくりすると『魔王シィタ』が俺にびっくりした。

 

 おおおおお。

 称号か……『運命を覆す者(仮)』?

(仮)ってなんだよオイ。

 まるでテニスコートのネットに当たったテニスボール気分だよオイ。

 

「だが当面の目的が出来たな。」

「お? 何じゃイチオ?」

「まずは宿だ。」

「ややややややややや宿じゃと?!」

 

 ん? なんか『魔王シィタ』の様子が変だぞ?

 急にモジモジしたり赤くなったりで大変だな。

 これがポケモ〇だったら即Bボタンを押しているところだ。

 

「どうした? もしかしてこのまま野宿する気か?」

「はぇ?」

 

 俺はごめんだぞ、地面に野宿なんて。

 会社で寝袋はまだ我慢できるが痛覚も再現されるVRMMOでは嫌だ。

 と言うかさっさと『宿(セーブポイント)』に行って────

 

「────あ。」

「ど、どうしたのじゃ?」

 

 そういやサーバーの電源切っても大丈夫か?

 

 これが『シングルプレイヤー』用のゲームならまだしも、『VRMMO』として作られたものだ。

 つまり今まで稼働していた分のデータ保存はRAM(ランダムアクセスメモリ)にしか留まっていない可能性が高い。

 もし二台目があったら……

 

「いや、今はよそう。 とりあえず近くの町に行って宿を取るぞ。」

「あいわかった。 では『決戦のドレス』から着替えるとするかの。」

 

『魔王シィタ』の横の宙に穴のようなものが開き、中をごそごそと────

 

「これ、バカモノ! こっちを見るでないわ! あっちを向かんか?!」

「すみませんでした!」

 

 俺は反射的に180度体を『魔王シィタ』から────って何やってんだか。

 

『ファルディア・オンライン』は15才以上対象のゲーム、つまりは良くて(?)モザイクタイプだ。

 

 ……だがまぁ、背後から聞こえてくる衣類のこする音とかは妄想を膨らませるには十分だったのは不定しない。

 

「待たせたの、イチオ!」

「お、おう────ッ。」

 

 俺がくるりと『魔王シィタ』に振り向くとさっきまでの軍服っぽいドレスから、ファンタジーでよく見るそこそこの貴族などが着るドレスに着替えていた。

 

 ……うん、サイズ(身長)の割に別のサイズも大きく見えてファンタジー最高だな。

 

「コレを羽織っとけ。」

 

 そう言って初心者装備のマントを渡す。

 

「む? なぜじゃ?」

「なんか気分的に罪深いから。 俺が。」

「????????????????」

 

 俺が再度頼むと『魔王シィタ』が渋々とマントを首に回してドレスの大部分が隠れたのを確認してから移動を開始しながら他愛ない話にさっきの事をそれとなく聞く。

 

「ふふん! さっきのは収納魔法じゃ! なんと、私のは家一個分はモノが入るのだぞ!」

「へぇー、凄いですねぇ。」

「そうであろう?!」

 

 胸を張ったどや顔をの『魔王シィタ』に相打ちをしながらふと考える。

 

 そういや俺の『ストレージ』はどうなるんだろう?

 一昔前のRPG仕様だから同じものであれば999個分入るし、『■■(開発者)権限』もあって課金者のみ許されているサイズリミットも拡張されているから実質上∞じゃね?

 

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 町の門番と社交辞令のあいさつを交わしながら、『魔王シィタ』を背負いながら門をくぐる。

 

 途中で『魔王シィタ』がやれ疲れただの、歩くのは飽きただの、やっぱり翼を出して飛ぼうと言い出したり。

 そう言えば忘れていたぜ、黒歴史(属性満載)

 

 ふ、悲しいかな。

 

「もどれイチオ! 先ほどの無礼者は私をお前の娘ごときと勘違いしておったぞ! 良いか皆の衆よ?! わt────ムグっ?!

「これ食っとけ。」

 

 俺は『ストレージ』と繋がっているポーチからみっともなくジタバタ暴れ始める『魔王シィタ』の口にアップルパイ(回復アイテム)を放り込む。

 

 初心者装備の中では貴重なHPとMPを同時に回復させるアイテムだが、町のNPCに背中のこいつが『魔王シィタ』と分かってしまえばどうなるかわからない。

 

 少なくともシステム上は『人族』と対立している『魔族』だから衛兵所に連れて行かれるだろうな。

 しかも衛兵所は犯罪をしたユーザーも連れて行かれるからログアウトも出来なかった仕様のはずだ。

 冗談じゃない。

 

「ハムハムハムハムハム……なんだこの食物はイチオ?! 甘酸っぱくてふんわりとした生地……私はこんな物を食したことがないぞ?!」

「さようですか。」

「これは何というのだイチオ?!」

「アップルパイだよ。 すみませーん! 部屋をひt────二つ貸してください。」

 

 そう俺は門番に発行された短期滞在用の身分証明書を宿屋の店主のドワーフ尋ねると彼がギロリと怖い目を向ける。

 

「兄ちゃん、まさか()をほっぽってどっか行くんじゃねぇだろうな?」

「む、こ奴もか?! 良いかよく聞け、私は────ハグッ?!」

「あー、娘じゃなくて妹です。 生き別れの。 見ての通りちょっと()()()なんで部屋を別々に頼んでもいいですか?」

「モグモグモグモグモグモグ。」

「そうかい……二室で一泊16ゴールドだ。 朝食もサービス追加するんなら合計20ゴールドだよ。」

 

 人(?)一人背負いながら俺は朝食付きの金を出すと、店主がカギを二つ出して二階を指さす。

 

「カギに書かれた部屋の番号だアンタらの部屋だ。 隣同士で部屋の中に鍵付きのドレッサーもあるが貴重品はいない間は身に持っていたほうが良いぞ、責任取れねぇからな。」

「ありがとうございます。」

「あと朝になって朝食が出来たら声をかけて欲しいか? 起こして欲しくなかったら別に構わんが、飯が冷めても文句は言えんぞ。」

「あ、自分で起きますので。 大丈夫です。」

「オイお前! アップルパイは出るか?!」

「あ? ……朝食後のデザートに出るが?」

「なら私は起こしてほしい!」

「へいへい。」

 

 …………

 ………

 ……

 …

 

 さて。

『魔王シィタ』には疲れたと言い聞かして部屋で大人しくしろと言ったし、『ログアウト』しますか。

 

 リアルでも久しぶりの感触のベッドに身を預けて『ゲーム設定』の項目の『ログアウト』を念じた。

 

『ようこそ■■様、ログアウトされますか? Y/N』

 

 Yes(ハイ)で。

 

『大変お疲れさまでした! では良い夢を……』

 

 …………………

 ………………

 ……………

 …………

 ………

 ……

 …

 

「フゥ~。」

 

 俺はVRヘッドギアを取ると、今までヘッドフォンをしていた耳が空調の効いた空気に当たって少しヒリヒリした。

 

 俺は稼働中のサーバーに目を移す。

 さて、このサーバーを貸してもらえないだろうか個々の人たちに話をつけるか。

 

 ……あと念には念を入れてUPS(無停電電源装置)と移動手段な。

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