男性操縦者の理解者達は許さない   作:しおんの書棚

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第一章 罪
織斑千冬


 千冬が和成と出会ったのは、とあるホテルの一室だった。

 一夏がISを起動した関係で多忙を極める中、一斉検査で新たに見つかった和成。

 

 一夏はまだいい、千冬と束という後ろ盾がある。だが、彼には何も無い。それどころか、これでもかと言うほど研究所送りしやすい状況は不味過ぎる。

 

 加えて千冬には負い目があった、和成がそんな環境に置かれたのは弟である一夏が原因。なんとしても彼を守るために此処を訪れた千冬は説明を始める。

 

「私は織斑千冬、IS学園の教員だ」

「初めまして織斑先生、僕は崎守和成と申します。

 それでIS学園の教員である織斑先生が此処に来たと言う事は……、いきなり研究所送りだけは避けられたと受け取っても?」

「ああ、崎守を守るためにもIS学園に入学してもらう」

 

 和成の問いに聡いと感じた千冬、そして和成はさらに続けた。

 

「織斑先生は織斑一夏君の姉だそうですが、彼を贔屓しないと誓えますか? 最低限平等の扱いをすると約束して欲しいんです。

 

 僕には何の後ろ盾も無く、織斑先生や学園関係者・政府の腹積り一つで終わってしまう。しかも姉まで人質に取られているんです」

 

 ここで千冬は一度目の過ちを犯す。

 

「ああ、私は身内だからと贔屓しない事を約束しよう」

 

 一夏を信じて、そう誓ってしまったのだ。

 

◇◆◇

 

「一夏に聞きました、自分の意思でISに触れたと。

 

 なのに巻き込まれた僕は訓練機の専用機化にも関わらず、彼は第三世代の新造専用機。

 最低限平等に貴女はできた筈です、私と同じ様に訓練機を専用機化して与えれば。その後、操縦レベルを見て、どちらに第三世代機を渡すか判断するのが適切な対応です。

 

 しかも訓練環境無しで、一週間後にクラス代表決定戦と言う名のISバトル。ご自分でISの危険性を説いておきながら何故そうなるのですか?

 

 それに結果を出し続けるしかない僕と、負けてもいい一夏を一緒にされては困ります」

 

 千冬は政府の意向から一夏に与えた第三世代専用機という二度目の過ち、ただ経験になると深く考えずに三度目の過ちを犯した。

 

◇◆◇

 

 クラス代表対抗戦襲撃事件。

 和成は千冬の指示に従い生徒を避難させると穴が空いたままのシールドバリアから素早くアリーナへ進入、それは消耗し切った一夏と鈴を逃すためだった。

 

 防御特化の打鉄を駆使して無人機をなんとか抑え、二人に逃げるよう伝えるも一夏が反発。そうこうしている内に、いつの間にか消えた箒が放送室から吠えると無人機は声の主に砲撃しようとした。

 

 咄嗟に砲撃から箒を守ろうと和成が無人機の腕を無理矢理逸らす、その隙を突いて一夏の零落白夜とセシリアの狙撃で無人機は沈黙した。

 

 問題はその後の処罰。一夏・箒・鈴は当然だったが、二人を退避させられなかったとして和成も一緒に処罰した。

 これが身を挺して三人を守った和成に対する四度目の過ちだ。

 

◇◆◇

 

 学年別タッグトーナメントにおけるVTシステム事件。

 ラウラが組んだのは箒……ではなく過酷な研鑽を続けていた和成だった。和成に手を出すなと告げるラウラ、当初は和成もそれに従った。

 

 だが、優しい和成が残り者同士のパートナーとはいえピンチを見過ごせる訳が無い。結果としてはラウラが三対一となる行動をとって、シャルロットのパイルバンカーの餌食になる。

 

 そして起動するVTシステム、シールドエネルギーは和成>シャルロット>>>>一夏。

 しかし退避命令を無視した一夏とエネルギーを譲渡するという危険を冒したシャルロットをおいて、和成が逃げられる訳も無い。

 

 已む無く和成が囮を行い、零落白夜でVTシステムを倒すことに辛うじて成功する。しかし待っていたのはまたしても処罰、五度目の過ちだった。

 

◇◆◇

 

 銀の福音暴走事件。

 先発に一夏と箒、フォローとして和成とセシリアという作戦だった。そしてご存知の様に一夏は密漁船を庇い、箒をも庇って重症を負う。

 

 そこに到着した和成は殿となり、セシリアを一夏達の護衛に。和成は孤軍奮闘して銀の福音を長時間に渡り足止めするも遂に被弾、海へと消えた。

 

 一夏と和成を除く専用機持ちは独断で出撃、一度は銀の福音を下すもセカンドシフトで劣勢に。そこへ同じくセカンドシフトした和成が割って入り、再び硬直状態へと持ち込んだ。

 そして現れる真打、セカンドシフトした白式・雪羅を纏った一夏が和成の協力もあって撃破に成功する。

 

 だが、和成は一夏と違って重症のままだったため、その後昏倒。療養後復帰したが、千冬は機密故に事実を知らせる訳にもいかず操縦ミスによる物として処理した。

 

 これが六度目。

 

 以降も事ある度に和成は誰かを守り続けるが、結果として処罰を受けるばかり。

 千冬は学園の秩序を守るため処罰を繰り返したが、その結果として和成は“村において正しいとされる行い”を咎められ続けるという理不尽極まりない扱い。

 

 結局のところ、和成より保身に走ったのが千冬。彼女は一度として表では泥を被らなかったのだから、そう思われて当然だった。


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