ピッチの王様とエリアの騎士   作:現魅 永純

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最終話『レアルの騎士』

 

 

 

 

 ───球蹴りの何が面白いのか?

 

 サッカーに限った話ではないが、スポーツの話をしていると煽りを込められた表現で問い掛けられる時がある。

 人々の生活を豊かにする訳ではなく、平和を必ず齎す訳でもなく。ただ独立した競技の一つに莫大な金が動くという事に遺憾を覚えるのは、人によっては仕方のない事だ。

 仮に煽り抜きに面白さを追求しているのだとしても、それに納得のいく答えを返すのは非常に難しいと言う他ないだろう。

 

 90分という長い時間を掛けてもスコアレス(0-0)で終える事が珍しくない。

 点の取り合いを好むのであればバスケの方がスピーディー。明確な勝敗を望むのであれば卓球やバレーの方が良い。細分化された役割の動きに注目したいのであれば野球が最適だ。

 サッカーのどこが面白いのか。

 

 結論から言えば、どこを面白いと感じるかに寄る。

 面白い・楽しい等は所詮感情だ。事象から受理した個人の主観に過ぎず、そこに万人への正解を求めるのは酷な要求だろう。

 問い掛けるのであれば、問う方は『その人にとっての面白さ』というのを前提として考えるべきだ。

 

 個人レベルの意見であれば、歴史的なスーパーゴールが生まれた瞬間をリアルタイムで観た時───これは決まると思ったシュートを寸前で防いだ瞬間───相手に触れさせない美しいパスワーク───等々。千差万別の答えが出る。経験者か未経験かによっても違いがあるだろう。

 要は琴線に触れる瞬間があるかないかだ。キッカケは何でもいい。1試合のハイライトでも、スーパープレー集でも、ネットでの話題でも。上記の意見が毎試合必ずしも起こる訳ではないが、だからこそ目の当たりにした時の盛り上がりは一線を画す。

 

 ───前置きが長くなったが、()の考えはこうだ。

 その面白さを体感出来るキッカケになれたら、このスポーツを愛するものとして喜ばしい。

 

 カンプ・ノウが、バルセロナが、カタルーニャが───スペインが揺れている。今世界で最も人の熱意が集まる場所はここだと断言できる。

 きっと、()()()()が訪れている人は多いだろう。

 

 楽しみ方は自分次第。

 105m×68mというピッチを駆け、90分間という時間を尽くしても尚スコアが動きにくいサッカーという競技。

 さあ。存分に堪能しよう。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 ディフェンスラインから組み立てられる高度なティキタカ。

 スペースがあれば押し上げ、無くともリズミカルなパスワークで中盤を支配する。2失点を経てなおバルセロナは気圧される事なく高い技術を存分に発揮し、圧巻のポゼッションでレアル・マドリード陣地を翻弄していた。

 後半からはアタッキングサードへの侵入が著しく増し、フィニッシュへと持っていく意識が強まる事でレアル・マドリードにカウンターチャンスを与える事なく支配率を上げていた。

 

 得意とするカウンターを披露出来てはいないが、レアル・マドリードにチャンスが無い訳ではない。

 バルセロナほど優れたパスワークとは言い難いが、銀河系軍団と言われるだけあり一人一人の能力は相応に高い。危うい場面は見られるものの、失う事なく前線へと送る回数はバルセロナに劣っていなかった。

 

 一回の攻撃が明確なチャンスとなる応酬。キーパーのセービングやディフェンスの優れた判断でネットを揺らす事はなかったが、もう一歩という所まで踏み込む繰り返し。いつスコアが動いても可笑しくない。

 

 ───動いたのは後半31分。ハーフライン際でのFKが起点となった。

 レアル・マドリードのファールによって得たバルセロナのFK。当然だがハーフライン際からでは直接狙えるような距離では無い。ファール直後は素早いリスタートを警戒したものの、バルセロナはゆっくりと場を整えていた。

 CBを含めた選手たちがレアル・マドリードのペナルティエリア付近に並び、セットプレーで合わせようという姿勢。よくあるシチュエーションではあるが、空中戦では間違いなくレアル・マドリードに分がある。

 

 助走を始めたキッカーに合わせそれぞれのマーク相手へと対応したが───なんとキッカーはボールを後方斜めに柔く押し出す。FKの位置にいた選手は一人だけのため、タイミングをズラしてきたのはレアル・マドリードにとって想定外の動きだった。

 押し出されたボールはキーパーの下へと転がっていく。弧を描いて放たれたボールはペナルティエリア内左側。タイミングをズラされた影響で最終ラインが不揃いになり、オフサイドに掛からずSBの動き出しを許してしまう。

 

 折り返されるボールに反応したCFがそのまま押し込みバルセロナは1点を返した。間違いなくデザインされていたFK。バルセロナの()()()セットプレーに、カンプノウは湧き上がる。

 ATを含めれば15分は間違いなくあるだろう。同点どころか逆転も見える時間帯での得点は勢いに乗るのに充分な要素だった。

 

 そこからは、バルセロナが支配する時間が増えてきた。

 レアル・マドリードは1点差を守ろうと守備意識が芽生えた事でアタッキングサードへの侵入が低下し、ボールを回す自由を与えてしまっている。

 逃げ切る目的ならば攻撃陣を交代してCBの投入も一つの選択だが、レアル・マドリードは既にこの時点で交代枠を3枚使い切ってしまっていた。

 今いる面子で守り切るしかなく、まだフィールドに立つ逢沢 駆もまた、懸命にディフェンスへと走る。

 

 

「……っ、は……はっ……」

 

 

 カンプノウの圧力。前半から行われていた前線守備のハードプレス。後半からの守りへの意識からエリア付近まで戻る動き。

 カウンターも狙いつつピッチ内を縦横無尽に駆け巡っており、走行距離はチーム内でもトップ。16歳の選手に与えるには大きすぎる負担だが、彼は決してサボる事なく役割を全うする。

 

 その献身は、画面越しにも伝わるほど。

 マドリディスタ、そしてどちらのサポーターとも言えない観戦者。その多くに、感銘を与える。

 頑張れ、逃げ切れ、勝て、追いつかれるな、前に止まってもいい、負けるな、守り切ってくれ───様々な言葉が画面越しに放たれる。レアル・マドリードの勝利を応援する。

 

 そんな中で、逢沢 駆を身近で見続けてきた人物達は違う。

 日本の地で朝早くの時間から試合を見守る彼の兄。ピッチ内を広く映す画面の中で駆の動きだけを観ている逢沢 傑は、ふと笑みを溢した。

 

 

「楽しそうだな」

 

 

 体力も絶え絶え。いつ脚を攣ってもおかしく無い。思考する余裕も無くなってきているだろう。

 汗を垂れ流し、必死の形相。疲れと勝利への執念ばかりが溢れる時間帯。選手達が楽しそうなどと感じ取れる様な場面は全く映し出されていない。

 それでも傑は断じた。駆はこの状況を楽しんでいると。

 

 

「牽引はいらない。お前の全力を、本能を。世界にぶつけろ」

 

 

 日本人としての誇りとか、欧州とアジアを繋げる足掛かりとか。

 そんな意識は取っ払って、『逢沢 駆』を世界に魅せつけろと、傑は呟く。

 画面越しの言葉。届くはずも無い。

 だが画面が切り替わり僅かにアップで映し出された駆は、その呟きを受け止めたかの様に笑みを溢した。

 

 

 スコアは2-1でレアル・マドリード優勢のまま、ATに差し掛かる。加算された時間は4分。バルセロナは前がかりに、レアル・マドリードは全員が自陣まで引き下がって守りに入る。

 この時間帯になると確実性の無いミドルは躊躇いがちになり、後半40分以降は殆どバルセロナがボールを保有する形になっていた。

 守備への集中は体力以上に精神を磨耗する。そこを突こうとバルセロナは躍起になっていた。

 

 その躍起は、徐々に焦りへと変貌していく。

 このままいけば1点差で試合が終わり勝者はレアル・マドリード。カンプノウでダービーマッチの敗戦はサポーターからの失意を間近に受ける事になる。

 

 それだけは避けねばと、得点への意識を強めていくバルセロナの選手達。流石というべきか、どれだけ焦りを孕もうとも足下の技術に乱れは生まれない。

 シュートを放つ場面では必ず枠内に飛ばす。それも容易にキャッチが出来ない威力で確実に。

 それでもレアル・マドリードの守備は堅く、ネットを揺らす事は無い。

 

 試合時間が進む。

 ATに突入して1分が経過。

 エリア内、ゴール正面から僅かに右。コースが開けた場所でバルセロナのCFは完璧な体勢でシュートモーションに入る。

 

 ───その瞬間に、駆は感じ取った。

 ディフェンスとしてのカバーリングが要らない。攻撃意識が高まった事によるバルセロナDF陣の最終ラインの乱れ。

 シュートが決まる可能性を過らせながらも、ここ一番のカウンターチャンスも予感し、身体の向きをバルセロナ陣地へと変える。

 

 走り出す。声を出す余裕はなく、視線だけを強くフルトワへと向ける。

 彼はキャッチし損ねていたが、駆の視線を感じ取ったのだろう。溢れたボールを拾う事なく、前線へとそのまま蹴り出した。

 流石はレアル・マドリードの守護神と言うべきか。半ばクリアした様な形のため精度は欠いているものの、駆の動きを大まかに把握して方向を定めており、しっかりとカウンターを演出している。

 

 駆は放たれたボールを僅かな時間だけ視野にいれ、着地点を予知し自身の速さを合わせる。周囲の状況を把握しつつ、自らの脚を止めないスピードで。

 CBが一人逆サイドから向かってきている。このままならば追いつくのはエリア付近。この状況で必要になるのは繊細なトラップではなく、スピードを落とさずスペースに転がすトラップ。駆の得意分野だ。

 

 着地点に入り込む瞬間だけ視線を後ろに向け、ボールを視界に入れる。天性の集中力でボールの軌道を見極め、インステップで押し出す様に触れた。

 

 

(よし……!)

 

 

 疲労が溜まっても尚、その動きは乱れなかった。広大なスペースに転がったボールを見つめ、スピードを上げようと前のめりになり。

 このまま独走───と、上がっていた片脚を地に着けようとした瞬間、駆の重心が後ろに逸れる。

 

 否、()()()()()()

 

 

「───ッ、ぅ」

 

 

 強い力で自身の意思とは逆方向に引っ張られ、駆は呆気なく尻を地面に着いた。

 逆サイドにいたCBとは別のもう一人のCBが背後から手を掛けたのだろう。駆がそう認識すると同時に鋭く笛が鳴る。

 

 音の元を辿れば主審が胸ポケットに指を掛けている姿。取り出されたのはイエローカード。

 ハーフラインを超えているカウンターを明確に潰したのだ。カード対象である事は当たり前と言える。

 しかしレアル・マドリードのピッチ内選手、及びベンチからの抗議が止まらない。主審はリスタートをする様に指示しているが、今のはレッドカードの対象ではないかとキャプテンのフォドリッチが強く主張している。

 

 今のプレーはDOGSO*1に該当しかねない。キャプテンである選手が主張するのも当然と言える。

 ただ、駆からすると完璧なジャッジと思う他はなかった。

 

 

(GKとの1対1になる前に逆サイドのCBが追いついていたし……ハーフラインを超えた直後の戦術的ファールだ。審判によってはレッド対象にするかもしれないけど、イエローカードなのも納得出来る)

 

 

 苦い笑みを浮かべつつ、その判断を瞬時にやってのけた相手に感嘆する。恐らくレアル・マドリードの抗議が時間遅延になる可能性も考えているだろう。その分の時間が試合を延長させるだろうという事も。

 ならば駆がやるべきは抗議への加担ではない。

 

 

「『フォドリッチさん』」

 

 

 抗議を続けるキャプテンに声を掛け、視線を向けてきた彼に言葉ではなくジェスチャーを返す。

 彼だけに向けたものでは無い。この光景を観ている全ての人に伝わる様に。

 

 冷静な表情を保ったまま両手を胸元まで上げ、弾ませる様に手首だけを動かす。落ち着けというジェスチャーだ。

 判定が覆ってレッドになる可能性は決して0ではない。キャプテンという立場である以上、責任を負って主張を続けるのは当たり前。

 しかしファールを受けた当の駆が「正当な判断(ジャッジ)である」と示したなら、これ以上の抗議は藪蛇だ。相手の狙い通り、止まった時間がそのまま試合に加算された挙句に遅延行為でカードを貰いかねない。

 

 ならばこのファール後の行動は、あくまでも正当な時間の使い方にすべきだ。駆のジェスチャーを受け、フォドリッチは味方に指示を出す。

 疲労の影響で余計な体力を使いたく無い気持ちもあるのだろうが、16歳の新人とは思えない風格。献身で必死でプレーは熱く、判断は極めて冷静に。

 その立ち振る舞いは観る人をますます魅了し、ファンを増やしていく。

 

 

(多分止まった時間全部って訳じゃ無いけど少しは加算されるよね……。この位置からのフリーキックだと時間を使ったところでバルサはある程度の()()()をする。攻めるならサイドから……中への切り込みかクロスかによって行動を───ああもう頭疲れてきた───リスタートしてる───)

 

 

 小さく呼吸を繰り返す。

 自らの鼓動がやけに大きく聞こえる。

 試合が止まって回す余裕のできた思考は上手く纏まらず、情報処理能力は状況把握だけに使われていた。

 

 脳も、身体も、疲労が溜まっている。

 それでも感覚は鋭くなっていて、思考は追いついていないのに脚だけは動く。

 

 駆の想定通り、リスタート時にバルセロナは最終ラインを高めの位置に設定していた。ショートパスで繋いで来た時にハイプレスで即座にカウンターを出来るように。またレアル・マドリード全体の選手の疲労度から、よーいドンの勝負であれば間違いなく先に奪えるという確信があったから。

 だがそれはレアル・マドリードも同じく考えること。バルセロナの前線の位置から繋ぎやすいショートパスの選択肢を予め把握しており、乱れないパスワークから右SBへ預ける事に成功し、アタッキングサード深くへと持ち運んでいく。

 

 

(最終地点は……!)

 

 

 そして感じ取る、己が動くべき位置。身長も体格もピッチ内では誰より劣る駆はオフ・ザ・ボールで勝負する。

 一瞬でも迷えば前に入られて競り負けるだろう。周囲の状況を目に映し、本能が囁く方へと動き出す。

 

 位置はペナルティエリアの僅かに内側。混雑するゴールエリアからは離れ、ペナルティマークの左側に最終地点を定め、マークに対応させない為にステップワークでタイミングをズラす。

 競り合いが不利な駆の取れる最善のポジショニング。此処に出せと、強く目で訴る。

 

 ストライカーという自負。得点を決められる自信。ゴールへの執着。ここぞという勝負での責任。

 其処には“引力”があった。パスを引き寄せる、絶大な信頼を覚えさせる存在感。

 

 斯くしてパスは出された───が。

 追い縋っていたDFがクロスの直前に脚を出し、ボールは軌道を変えて飛んでいく。

 大まかな方向は変化していないが、本来のコースよりもマイナス方向に。それも弾かれた影響でグラウンダーではなく高めの軌道。

 

 ダイレクトで撃つのは難しいボールの動きだ。駆の位置からするとまず身体の向きを変える必要がある為、これならばボールをトラップしてやり直すのが建設的と言える。

 焦って撃てばカウンターを喰らう結果になりかねない。収めて渡せと、周囲も声を上げている。

 

 

「───」

 

 

 駆の嗅覚が外れたのか。

 或いは駆の嗅覚を、相手が上回ったのか。

 

 

(……()()()!)

 

 

 ()()()()()()()()()()()最終地点。

 混雑しているエリアから外れた位置で、尚且つピッチ内の全員が最初にトラップを想定するシチュエーション。それが穴を作り出し難いバルセロナのディフェンス戦術を相手に突ける隙が生まれる瞬間だ。

 理屈ではなく、本能でそれを察する。

 

 この瞬間、【真っ白な空間(エンプティ・ゾーン)】が完成した。

 誰にも阻まれる事のない、駆だけの世界。

 

 右脚を浮かせ、地に着く左脚を踏み締める。

 片脚の力で素早くバックステップし、両脚が地面から離れている間に身体を反転。

 右脚を軸に体幹を整え、左脚は慣性に従いつつ力の方向を()へ。

 軸にした右の膝を僅かに折り曲げ、足裏のスパイクに力を伝え地面を強く蹴る。

 

 空中に浮き、背中が地面に向く。

 天に向いていた左脚が下がっていく。入れ替わるように、ジャンプに使われた右脚が頭の高さを追い越して振るわれた。

 

 ゴールの位置は培ってきたFWとしての感覚が把握している。此処で必要になるのは正確なミート。

 空中に身を漂わせても尚、天性の集中力は損なう事なくボールに向けられている。

 

 カウンターを喰らうリスクを理解しても、恐れる事なく、迷う事なく、シュートを選択。

 この想定外の行動にブロックという選択を取ることが出来ず、バルセロナDFはオーバーヘッドで放たれたボールを見送る事しかできなかった。

 

 

「……───っ」

 

 

 左脚と臀部がほぼ同時に地面に着いた衝撃に息を溢しながら、ボールの行方を追う。

 威力はそこそこ、コースは奇跡的なまでに完璧だった。ボールは弧を描いて右上隅へと突き進み、ポストを掠ってネットを揺らした。

 

 

 

 スーペルゴラッソと呼ぶべき衝撃的なゴール。クレが9割を超える観客席は静まり返る。10万人近い観客がいるとは思えないほどの静けさ。

 僅かばかりのアウェイ席で立ち上がるマドリディスタの歓声が良く聴こえる程に、バルセロナサポーターには畏怖の感情だけが漂っていた。

 

 

「……っ、っ、は───」

 

 

 息を詰まらせる。

 息を整える。

 立ち上がり、そして。

 

 

「──────ッッ!!」

 

 

 昂る心に従い、言葉にならない咆哮を上げる。

 味方に抱きつかれ、言葉を交わしながら、ユニフォームの背に刻まれている『KAKERU』という名前をカメラへと向けた。

 日本人の若きストライカーの名前が、世界へと発信される。

 

 ATに突入してからのゴールで2点差だ。レアル・マドリードの勝利は約束されたようなものだが、下手にパフォーマンスで長引かせれば主審判断で過分にタイムを追加される可能性もある。

 レアル・マドリードの選手達は笑顔を浮かべつつ自陣のポジションに戻ろうとしていた。

 

 

(……ああ、これだけのバルセロナサポーターが居る中で、あんなにも声援を送ってくれてたんだ)

 

 

 そんな中で昂りが落ち着いてきた駆は、この静寂の中で歓喜を見せる観客席の一角、アウェイ席へと視線を向けながら、考えに耽る。

 ピッチ上の選手と同じくらい敵意に囲まれながら、レアル・マドリードの為に声援を上げてくれた彼らへの感謝と敬意を、どう伝えるべきか。

 

 

 それは、衝動的なパフォーマンスだった。

 彼らへの敬意を示そうと、ふと思い浮かんだ行動。

 

 

 アウェイ席の前へと歩き、立ち止まる。

 ピッチ上の選手、ベンチの選手や監督、観客席のサポーター達。この会場の視線を一身に受けながら、万感の笑みを浮かべた駆は片膝を折る。

 片膝立ちになりながら、左胸のエンブレムに右手を添えた。【エリアの騎士】という己の在り方から想起し、敬意を表した姿勢。

 

 さながら、騎士の忠誠が如く。

 

 ───この日、この時、この瞬間。

 逢沢 駆に、ある異名が付けられた。

 これから先、彼を示す様々な呼び方の中で、最も長く愛されることになる唯一無二の名称。

 カンプ・ノウという王国でバルセロナを下し、マドリディスタへと誓いを交わすその姿に因んで、こう呼ばれる事になる。

 

 

 【レアルの騎士】と。

 

 

 

 

 

 

 

*1
『Denying an Obvious Goal Scoring Opportunity』の略語。意味は『決定的な得点機会の阻止』





 完 結 !

 週一投稿から月一投稿へと切り替わり、3年半という連載の末に完結まで執筆できた事、大変喜ばしく思います。
 完走した感想としましては……スポーツものの二次小説って難しいですね!?

 モチベーションが高まって満足のいく文に出来たなと思う部分もありましたが、90分という試合時間を体感させるというのはほぼ不可能に近くダイジェストになりがちで……鮮明なプレー描写も他の場面となるだけ重ならないように四苦八苦していました。
 ファンタジー作品と違ってある程度は現実基準にする必要がありましたし、会話文も出せるタイミングに限りがあったので、スポーツものを小説形式で執筆するとかなり縛りが強いなぁという印象です。


 取り敢えずは完結となりましたが、主に掲示板形式で今後も投稿は続けるつもりです。月一という意識がなくなるので完全な不定期となりますが、見掛けたら気まぐれに閲覧して頂けると嬉しく思います。
 差し当たって次の内容はwiki風プロフィール(駆・傑・セブン)の予定です。現役の間の所属チーム、得点記録や個人受賞なんかを全て載せる形になりますが、特殊タグの表形式に苦戦した場合は『【日本人初参戦】エル・クラシコを見守ろう【逢沢 駆】』に変わるかもしれません。



 ハーメルンのサイトに慣れている方はお気付きかと思いますが、今話最後の方に出ている文字色が違う【レアルの騎士】はタップorクリックして頂けると挿絵が表示される様になっています。
 知人に依頼して描いてもらったレアル・マドリードのユニフォームを着た駆くんとなります。
 
【挿絵表示】

 上記からも見れますので、是非。


 長々とした後書きで失礼しました。
 ではまた!!




完結ブーストを密かに期待しています
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