タイムカプセルを掘り起こす話。

1 / 1
タイムカプセル

 ボクが小学生の時、タイムカプセルが流行っていた。

 埋められてから何年経ったか分からないけど、ある日そのことを思い出して皆にメールを送った。

 当時、ボクはクラスの中心なんてことは無くて、教室の端っこにいるよくイジメられていた存在だった。

 上履きを隠されたり、体操服をゴミ箱に捨てられたり、落書きされたり、無視されたり、殴られたり蹴られたり、一通りイジメに分類される物は受けてきた。

 でも、少し他の小学生とズレていたというのは自覚していたから嫌われるのも当たり前だったのかもしれないと今ではちょっと思う。

 それはそうとして、イジメてきた連中がどんな顔をするのか楽しみに待っておこう。

 その時はもうじきやってくる。

 

 

 

 ある日、仕事終わりに携帯を確認すると一件のメールが届いていた。

 知らないアドレスからだが重要かもしれないと、とりあえず開く。

 件名を見た時点で見なくてよかったかもしれないが。

 

「突然のメールで悪いけど久しぶり。連絡先が知れた人全員に送ってるからあまり関わりなかったらごめん。小学生の時、タイムカプセル埋めたの覚えてる?今度掘りに行きたいっていう人の都合のいい日程を合わせて行く日を決めたいから掘り起こしたいって人は連絡ください」

 

 胡散臭いな、こういうの流行ってるのか?そう思い気に止めることなくゴミ箱に送ろうとしたが指が止まる。

 そういえば、そんなことがあったかもしれないな。

 小学生の時なんて10年以上も昔のこと鮮明に覚えているわけじゃないが、薄っすらと思い出した。

 当時の友人関係も中学、高校、社会人と経由してすっかりなくなっている。

 タイムカプセルを掘り起こしたところで何があるかと言われたらどうせ大したものは入っていないだろうし時間の無駄ではあるかもしれないが、コネを作るのは大切なことだ。

 大半は大学生をやってそうな気がするがもし、小学校の奴らが有名な大手に所属ひていたりすれば今後の人生コネを得て生きやすくなるかもしれないからな。

 まあ、確率としては低いだろうが顔を見ておくのも悪くない。

 そう考えると、利用できるものは利用するという考えだけは昔から変わっていないな。そう考えた俺はそのメールに返信を送っていた。

 

 

 

 繰り返し同じ夢を見た。

 誰かが木の下で待っているそんな夢。

 何度も見るうちに目覚めた時の記憶が鮮明になっていき、誰かは分からないけれど、そこが何処かだけは分かった。

 昔小学生の時に遊んでいた学校近くの裏山だ。

 何故、今頃になってそんな場所が夢に出てくるのだろう。

 県外の高校に進学して地元を離れそれ以降戻っていないのに。

 あまりにも同じ夢を見るものだから同じ講義を受ける友達に相談してみたら、小学校の友達も同じ夢を見てるかもよ?なんて言われた。

 確かにいろんな人が一つの夢を見たなんて話もたまに聞くしそんなことがあるかもしれない。

 そう考え私は高校まで一緒だった親友にLINEしてみることにした。

 相手も同じ大学生で昼休みということもあって既読はすぐに付いた。

 結果からいえばその子にはそんな夢は見てないと言われたけど、他の子にも聞いてみると言ってくれた。

 小学生の頃からの付き合いを今もまだ続けているというのはコミュニケーション能力が高い。

 まあ私なんかと友達になるほどだから納得ではある。

 それから数日して知らないアドレスからメールが届いた。

 

「突然のメールで悪いけど久しぶり。連絡先が知れた人全員に送ってるからあまり関わりなかったらごめん。小学生の時、タイムカプセル埋めたの覚えてる?今度掘りに行きたいっていう人の都合のいい日程を合わせて行く日を決めたいから掘り起こしたいって人は連絡ください」

 

 誰からのメールなのかは分からないけれど、あの子が連絡していった結果そんなことを思い出した人がいたのだろう。

 思い返せば小学生の上級生位のとき何年生かは忘れたけれどタイムカプセルが流行っていた気がする。

 私自身流されやすいタイプだったから埋めたかもしれないし埋めてないかもしれない。

 もし、埋めていたとしたらそれはきっと黒歴史だし誰かに見られてメールでこんな感じのこと書いてたんだねとか言われたら死にたくなる。

 正直地元に帰るのはめんどくさい気持ちもあるけれど、埋めていたとしたら絶対に回収したい。

 数日ほど悩んだけれど結局行くことにした。

 

 

 

 期末講義の為に勉強をしているとLINEが鳴った。

 最近変な夢を見てないか、と。

 生憎近頃僕は熟睡できているので返答に困ることは無かった。

 しかし、何故中学生の時の同級生に突然LINEを飛ばしてきたのか少し興味が湧いた。

 興味が湧いたからには聞くしかないと思い尋ねてみるとすぐに返信がきた。

 なんでも小学生の頃遊んでいた裏山に誰かがいる夢を繰り返し見たということ。

 確かにあそこは小学生の時皆がよく遊んでいた記憶がある。

 僕も確か誰かと遊んでいたような気がする。

 その誰かが誰なのかは分からないけど。

 なるほどつまり小学生の頃遊んでいた場所だから誰か似た夢を見てないかという安直な考えだったということだ。

 でも、面白い。

 もしその夢が本当になるなら一体誰が待っていて何が起こるのかとても楽しみだ。

 今度地元に帰る機会があれば顔を出してみようか。

 そう思っていた矢先にメールが回ってきた。

 

「突然のメールで悪いけど久しぶり。連絡先が知れた人全員に送ってるからあまり関わりなかったらごめん。小学生の時、タイムカプセル埋めたの覚えてる?今度掘りに行きたいっていう人の都合のいい日程を合わせて行く日を決めたいから掘り起こしたいって人は連絡ください」

 

 これを読んでなるほどタイムカプセルか、と思った。

 非科学的ではあるけれど誰かの想いが呼び起こされて夢を見せた可能性もある。

 それに、もしかしたら僕自身もタイムカプセルを埋めていてその当時遊んでいた友人の名前も書いていたりするかもしれない。

 僕はノータイムで行くよと返信した。

 今日集まったのは期待はずれの連中だけだった。

 現実はそう甘くない、わかっちゃいるけど一人くらいはコネを作れそうなやつがいてもいいだろ。

 内心愚痴りながらも社会人の俺は笑顔で対応する。

 やあ、久しぶりだね。調子はどうだい?なんてな。

 学生諸君は暇でいいよな、どうせろくに講義も受けずに遊び呆けているんだろう。

 そう考えたらそもそもこういうのに来るのはよっぽどのことがない限りろくでもない奴らしかいないじゃないか。俺自身の馬鹿さを呪いたい。

 

 

 

 今日集まったのはまさかの私含めて三人だった。

 そもそもメールを送ってきた子が来てないのは一体どういうことなの。

 みんなに聞いてくれた友達は忙しいとのことだったけど他に殆ど来ないとは思わなかった。

 こんなに少ないのなら別に今日ここに来なければよかった。

 名前を聞いて思い出した胡散臭い笑顔の元いじめっ子と何を考えているかよくわからない男。

 話す話題もないからはやく掘り起こして帰ることにしよう。

 

 

 

 今日集まった物好きは僕含めた三人。

 タイムカプセルを掘り起こすならちょうどいい人数だと思う。

 組み合わせ的にも会話は弾まないだろうし。

 一つ困るのは彼が苦手なタイプであることくらいだ。

 今は違うと思いたいが暴力を振るわれると面倒だ。

 はやくその夢にいた人物とやらを探すのとタイムカプセルを回収したい。

 タイムカプセルが埋まっているという場所にやってきた。

 一本の大木の下だ。

 随分とありがちな場所に隠したもんだな。

 男がシャベルを持ってきた点だけは褒めてやろう。

 シャベルを奪い取りさっさと掘り起こしてタイムカプセルの中に弱みになりそうなものがないか見てやる。

 掘り出して暫くすると硬いものに当たった。

 これか、と思い手で引っ張りだす。

 それは無駄に重かった。

 引っ張り出してそれを見たとき俺は全て思い出した。

 

 

 

 夢で見た木の下に誰か待っているというわけではなかった。

 じゃああの夢は一体何だったんだろう。

 タイムカプセルに初恋の人の名前でも書いていてその人の姿を思い浮かべていたとか……それだとしたらここの二人にも見せるわけにはいかない。

 タイムカプセルを掘り起こしに来たというのにシャベルを持ってきていないことに気づいた。

 運良く一人が持ってきていたけれどそれはいじめっ子が奪って掘り始めてしまった。

 真夏の真っ昼間ということもありセミの鳴き声や暑さが鬱陶しい。

 いじめっ子が悪い笑みを浮かべて掘っていると何か見つけたのかシャベルを投げ捨てて素手で何かを掴みあげた。

 タイムカプセルが見つかったのかと駆け寄ろうとすると彼は口をパクパクとさせて青ざめた顔で手に掴んでいたソレを落とした。

 彼の手から落ちたそれは私の足元に転がってきた。

 それはボールのようなものだった。

 そして私はかつてそれを見ていた。

 

 

 

 持ってきたシャベルを奪われた。

 これだから横暴な人間は嫌いなんだ。

 だけど、シャベルで掘るのも疲れるだろうし彼に任せることにしよう。

 タイムカプセルが見つかるまであたりを見回してみる。

 例の夢の人物がいるかもしれないから。

 結果的にいえばその人物は見つかった。ただ、僕が見つけたわけではない。

 その人物を見つけたのは彼だった。

 叫び声が聞こえ、彼らの方を向くと彼女の足元に転がっているものが見えた。

 二人が言葉らしい言葉を発せずソレから目を離せずにいた。

 ソレをみて僕はその夢で見たという人物の正体に納得した。

 そして昔誰とよく遊んでいたか思い出すことになった。

 

 

 

 音が近づいてきた。

 もうすぐ彼らがやってくる。

 ボクを見てどんな表情を浮かべるのか楽しみだ。

 学校近くの裏山で一本だけ周りの木と離れた場所に植えられた大木の下。

 そこに埋まっている。

 一瞬光が入り込んだあと僕のある方を覗き込む顔が見えた。

 皆は10年ほど歳をとったけど面影が残っている。

 彼らの青ざめた表情がそれはとても滑稽で、愚かで、マヌケで、腹立たしくて、でもほんのちょっぴり哀しかった。

 

 


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。