誤解から始まる英雄譚〜クズで弱っちい俺が何故か周りに最強認定されているんだが?〜   作:くろひつじ

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第四話:巨人殺し

 

■視点変更:冒険者■

 

 長年冒険者をやってきた俺だが、今日はとんでもねぇもんを見ちまった。

 かつては仲間たちと一緒に魔王軍とも戦ったことがあるが、あんな奴は生まれて初めてだぜ。

 

 今日戦ったオーガは、魔法で強化した俺の両手剣の一撃を受け切りやがった。

 ドラゴンの尻尾を斬り落とした実績がある一撃だ。そう簡単に受け切れるわけがねぇ。

 アレはきっと特別な個体だったんだろう。

 

 しかし驚くべきはそこじゃない。

 そのオーガと、魔法で強化もされていないただの人間が普通の剣で斬りあってやがったってところだ。

 

 砂煙のせいで良く見えなかったが、そいつはオーガの巨石のような拳を何度も防ぎきっていた。

 その時は無駄に時間をかけているように思ったが、今ならはっきりと分かる。

 あいつはオーガの注意を自分に向ける為にわざと正面から斬りあっていたんだ。

 その証拠に仲間の嬢ちゃんの合図と同時に、巨大なオーガの首をあっさりと斬り落としやがった。

 そこから更に嬢ちゃんの魔法でダメ押しだ。あの油断の無さには背筋が凍ったぜ。

 

 オーガ相手にあそこまで冷静に立ち回るなんて、一級冒険者なんて呼ばれてる俺達だって難しい。

 あいつはいったいどんな死線を潜り抜けてきたんだろうな。

 

 渓谷の入り口に戻っても、あいつは自慢するわけでもなく淡々としていやがった。

 あいつにとってはオーガを一人で倒すなんて当たり前の事なんだろう。

 俺もかなり強い方だって思ってたけど、世界ってのは広いもんだな。

 あんな化け物がいるなんて聞いたことも無かったぜ。

 

 名前はジェイドって言ったか。傭兵をやっているらしい。

 モンスター相手でさえあの実力だ。本業の実力はどれほどのモノか、想像も出来ねぇな。

 聞けば昨日の戦争にも参加していたらしい。

 参戦した『隣国の兵士』の殆どが戦死したって聞いたが、それも恐らくはジェイドの仕業だろう。

『国の紋章入りの長剣』を使ってたし、まず間違いない。

 こんな化け物を敵に回した奴らを哀れに思うぜ。

 

 ただ、そんな英雄も女がらみに関しちゃ疎いらしい。

 一緒に居た嬢ちゃん、アレは確実にジェイドに惚れてる。

 あんなに可愛くて胸もデカい女の子に惚れられてるってのに、あの野郎まったく顔色を変えなかったぜ。

 アレには周りの連中も苦笑いしてた。

 あいつはもしかしたら剣にしか興味がないのかもしれないってな。

 

 

■視点変更:ジェイド■

 

 ネフィーさんが積極的過ぎて理性さんがお亡くなりになりかけた。

 大質量兵器のダイレクトアタックはかなり強烈だ。

 だってふやんって潰れるんだぜアレ。

 全身の肌触りもスベスベでモチっとしてんだぜ。

 しかも妙に甘い香りとセットだし。

 息子が反応しちゃって隠すのが大変だったわ。

 

 しかしあれって誘ってるんだろうか。それとも天然なんだろうか。

 誘ってるんならすぐにでも食べてしまいたいんだが、違った時が気まずいなんてもんじゃない。

 結局ムラムラするのに手を出せないっていう生殺し状態な訳だ。

 性欲が溜まって仕方がない。

 

 という事で、今夜にでも一人でこっそりゴソゴソするか、なんて思ってたんだが。

 

「我らが巨人殺し(オーガキラー)に乾杯!」

「最強の傭兵、ジェイドに乾杯!」

 

 なぜ俺はむさ苦しい男どもに囲まれて酒を飲んでいるんだろう。

 いや、ただ酒に釣られた俺が悪いんだけど。

 

「おう、昼間はありがとよ。助かったぜ」

「あんたは冒険者の……」

「グレイだ。よろしくな」

 

 右手を差し出されたから握手を返す。

 うわ、ゴッツイな。さすがは冒険者だ。

 

「まさかあのオーガを一人で倒せる奴がいるなんてな」

「いや、俺は自分の役割を果たしただけだ」

 

 逃げ回って足の親指斬っただけなんだってば。

 ネフィーがとどめ指したの見てたろ。

 

「役割……なるほどな。やっぱりお前は誰かの依頼であの場所にいた訳か」

 

 は? いや、何言ってんだこいつ。

 

「お前レベルの奴を雇うとなると国の貴族かね。いや、詳しくは聞かねぇよ。命の恩人にそれは野暮ってもんだ」

 

 えーと。ドヤ顔してるとこ悪いんだが、全く持って見当違いだぞ。

 そもそも貴族に雇ってもらってるなら戦場の最前線なんて危ないところに行かねぇよ。

 

「ともあれ、借り一つだ。何かあったら俺を頼ってくれ。お前には必要ないかも知れねぇけどよ」

「そうか。ならその時はよろしく頼む」

「よっしゃ! じゃあ飲み直すとするか!」

 

 言いながら持っていた二つの酒瓶の内一つを俺に渡し、ぐいっとラッパ飲みする。

 これ相当度数高い酒だが、そんな飲み方して大丈夫かコイツ。

 まさか酒好きって噂のドワーフ族の血が混じってたりしないよな?

 あいつらも筋肉質な体格らしいし。あぁでも背が小さいんだっけか。

 

 何てことを考えていると、後ろからトントンと肩を叩かれた。

 思わず振り返ると、後頭部をぐいっと引き寄せられて前のめりになった。

 顔がぽふん、むにゃんと何かに包まれる。

 

 うおっ!? なんだ!? 何も見えねぇ!?

 でも顔中が柔らかくてめっちゃ良い匂いする!

 

 この匂いはまさか……ネフィーか!?

 ていう事は、今俺の顔どころか頭全体を包んでるのは!?

 

「きさまどのー。とても格好良かったぞー!」

「むぐ! むぐぐ!」

 

 やっぱり! 声が上からするし、これネフィーの胸だ!

 ちょ、ネフィーさん、めっちゃ嬉しいけど息ができない!

 あと明らかに酔っ払ってんだろお前!

 

「我のことを助けてくれたし、オーガは一人で倒してしまうし……きさまどのは凄いなー!」

 

 やっべぇ、このままだと死ぬけど離れる気になれない。

 もう一生ここに居たい。ネフィーの胸の谷間に住みたい。

 いっそこのまま短い人生を終えてしまうのも……

 

 いや! やっぱりだめだ!

 最高の死に方ではあるけど、さすがに童貞のまま死にたくはない!

 ここは最大級の意思を振り絞って、一気に離れる!

 

「ぷはっ……ネフィー、そういうのは二人の時に……」

「……くぅ、くぅ」

 

 え、うそ。まさか寝てる?

 ここまでしておいて、まさかの寝落ち?

 

 ……はぁ。仕方ない、宿まで運ぶか。

 

 新鮮なオカズもできたし、夜のゴソゴソが捗りそうだ。

 

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