しかし、ここは違う。ここはただの平和な世界。毎日が同じなんじゃないかと思うほどの平和な世界での、別世界で戦乙女として戦った少女のお話である。
曰く、世界は平和である。
しかし、自分が知ってる世界など極わずかでしかなく、世界のどこかでは戦争、紛争が起こっている。
だが少なくとも、俺の生活は平和そのものである。朝起きて、学校に通い、授業を受けて、家に帰る。そんなことの繰り返しだ。
──キーンコーンカーンコーン……
「今日の授業はここで終わりよ。みんな、ちゃんと課題やってきなさいよ〜」
授業の終わりを告げるチャイムに気づいて、テレサ先生が終わりの挨拶を済ませて教室から出ていった。
「次は移動教室か……ん?」
時間割を確認していると、隣人が目に入った。机に突っ伏してそれはそれは気持ちよさそうに寝息を立てている。
さしずめ、前の時間の授業も寝ていたのだろう。というか、起きて授業を受けていることの方があまり見ない。
「はぁ……キアナ、起きろ〜。次は移動教室だぞ〜」
キアナ、そう呼ばれた少女の体を揺さぶると眠たげに起き上がった。
綺麗な白髪を腰まで伸ばし、三つ編みにして二本に分けている。見た目と性格も相まって、男女問わず人気が高い。
「んっ……まだ眠い……」
「また夜までゲームしてたのか?」
「だってなかなかボスが倒せなかったんだもん」
「もうすぐテストなんだから程々にしとけよ」
「うげぇ、やだなぁ。赤点とったらまたママに怒られちゃう」
また、ということは以前も赤点取ったらしい。まぁ、ほとんどの授業を寝てサボってたらそうなるだろうが。
「そうだ!また勉強教えてよ!」
「……それで真面目に勉強したことないだろ」
──キーンコーンカーンコーン……
「やっと昼休みだ〜!」
四時間目の授業が終わり、お腹がすく昼休みとなった。他の生徒は弁当を広げたり学食に行ったりと、思い思いの行動をしている。
俺もリュックから弁当を取り出して「いただきます」と、箸を取った。
「わぁ、そのお弁当美味しそう」
早速手をつけようとしたところ、キアナがヨダレを垂らしながらこちらを羨ましそうに見ていた。
「……自分の弁当があるだろ」
「そうなんだけど、お腹すいて早弁しちゃったからもう食べちゃって」
あまりの計画性の無さに思わずため息が出てしまう。
「ねぇ、ちょっとだけちょうだい?」
「……太るぞ」
一体どれだけ食べればこの子は満たされるのか。この子の胃袋はブラックホールにでもなってるのだろうか。
「むぅ、女の子にそんなこと言ったらモテないぞ」
「はいはい……」
このまま言い合っても埒が明かない。そして何より、クラスメイトの視線が痛い。
仕方ない。箸で玉子焼きを取ると、キアナの前に差し出した。
「ほれ」
「ありがと。あ〜ん」
キアナは眩しいような笑みを見せると、差し出した玉子焼きを口に頬張った。
口の中で咬み崩していくと、ゴクンと飲み込んだ。
「うん、美味しい!これあんたが作ったの?」
「そうだけど」
「すご〜い!これはもっと食べたくなる……」
キアナは再びジュルリ、とヨダレを垂らした。目をキラキラ輝かせてこちらを見ている。
「そんなに腹減ってるなら学食行けよ」
「お金ないんだもん。前使っちゃったから……」
「……はぁ」
やはり、計画性のない奴だ。確かバイトをしていたはずだが、それでも足りないくらい使ってしまっているのだろうか。
仕方ない、とばかりに財布を取り出すと、野口さんが描かれた紙切れを一枚取りだした。
「ほれ、これでなんか食ってこいよ」
「いいの!?」
「ああ」
このままじゃ俺の弁当を全部食べられかねんからな。
「だけど、後でちゃんと返せよ」
「分かってるって。ありがとね〜!」
キアナはお札を受け取ると、走って去っていった。
全く、騒がしいやつだ。
五時間目、体育の授業。
体育の授業は、バスケだった。男女にグループが分けられ、練習や試合をやる、と言った感じだ。
「なぁ」
端っこで一人立ち尽くしていると、クラスメイトの一人が話しかけてきた。馬が合い、比較的仲が良いクラスメイトだ。
「なんだ?」
「いやさ、アレ見てみ」
こいつが指さした先は女子の方のコートだった。そこには、バスケットボールをドリブルしながらコート内を縦横無尽に駆け回るキアナの姿があった。
動く度に彼女の胸が揺れ、その様子に男子のほとんどの視線が吸い寄せられ、『おぉ……』と感嘆の声を漏らしていた。
「いやぁ、眼福ですなぁ」
「それ、本人に知られたら蹴られるぞ」
「我々の業界ではご褒美です!」
だめだこりゃ。
こいつは生粋の変態だ。
「いいよなぁお前。あんな可愛い子と家が隣とか」
「たまたまだよ。それに、あいつの中身を知ったら幻滅するぞ」
あいつの手料理を初めて食べた日はほんとに死ぬかと思った。ジャ〇アンといい勝負じゃないかってくらいだった。
「そんなところも含めて可愛いんじゃないか。分かってないなぁ……」
わかってないのはお前だ、と心の中でツッコミをいれておいた。
「てか、お前らって付き合ってないの?」
「なんでそうなる」
「いやだって、毎日あんなに仲良さそうにしてたら誰だってそう思うって」
「んなわけないだろ。俺とアイツはただの隣人。それ以上でもそれ以下でもないよ」
「……なら拙者が貰っても問題はござらんと」
何メモしてんだこいつ。あとその口調古すぎだろいつの時代のオタクだよ。
「勝手にしろ」
「…………こんなこと言っといてあれだけど、本当にいいのか?」
先程までのおちゃらけた態度から一変、突如真面目なトーンに変わった。なんなんだ?
「っというと?」
「いんや、そんなんで後で後悔しないのかなって」
「後悔?俺が?」
なぜ俺が後悔するのだ。それだとまるで俺がキアナを好きみたいじゃないか。
「過去を変えることは出来ないが、未来はその手で変えることができるぞ」
「それ、誰の言葉だ?」
「拙者だ」
「何かっこいいこと言ってんだ、バカ」
「やっと学校終わった〜!」
「お前はほとんど寝てただろうが」
「てへっ」
舌を出して可愛くやってももはや見慣れた俺には効かない。
「ねぇねぇ、帰りなんか食べていこうよ!」
「お前昼あれだけ食べてまだ足らないのか?」
「うん……もうお腹ぺこぺこ……」
腹ぺこキャラが過ぎる……なぜそんなに食べても太らないんだ?腹ぺこキャラは太らないバフでもついているのだろうか。
「……分かったよ。それで、何を食うんだ?」
「えっとね〜、コンビニのチキンが食べたい気分かな」
そういえばこいつ、金がなかったんじゃなかったのか?
もしや、俺に払わせるつもりなのだろうか……まぁいいか。後で耳を揃えてきっちり返してもらおう。
「はむっ……ん〜、美味しい〜!」
結局、俺が払わさせられた。全くこいつは……少しは遠慮ということを知らないのだろうか。
キアナは手に持ったチキンをそれはそれは美味しそうにかじりついている。
「あれ、食べないの?食べないなら私が貰っちゃうよ?」
「食べるから平然と盗ろうとするな」
ほんとに底なしの胃袋だな。大食い大会にでも出たらぶっちぎりで優勝するんじゃないか?
それにしても、何故俺はこいつに平然と奢っているんだ?
隣人だから?
知り合いだから?
それとも──だから?
「……んなわけないか……」
「ん?なんか言った?」
「いや、なんでもないよ」
全く、勘違いも甚だしいもんだ。
ノリと勢いだけで書いた息抜き。適当なのは許して。
あれだけ酷な運命を背負わされてるんだから二次創作くらい平和な世界でいさせてあげてくれ……みたいな感じです。
基本的に続きませんが好評なら続編書くかも。だけど完全に見切り発車なのでクオリティは期待すんなよ。