"日間一位を取らなきゃ出られない部屋"
深く考えずに入ってしまった部屋で、彼は孤独と苦悩にさいなまれる。そのストレスのせいか、部屋の不思議な力のせいか……彼はオ○ニーをきっかけに、チ○コという話し相手を手に入れる。
ほの暗く、明かりがほとんど入らない部屋。
そこにあるのはシングルベッドに机、椅子、そして電源のついたパソコン。あとはゴミ箱、他ティッシュなどの小物が数点。
こんな場所では、人目を気にする事はない。ゆえに、人間の飾らない素の状態があらわれる。
「…………ウッ…………ふぅ…………」
俺も例外ではない。
「スッキリしたぁ……さてティッシュティッシュ」
今日も今日とて、一人でもくもくとオ○ニーの後始末をする。これまで何回もしているはずだが、不思議と臭いか染み着かない。
【なぁ
「分かってるよ、そうせかすな。時間はたっぷりあるんじゃないか」
先ほど一仕事おえた
だが、そんなのに注目している場合ではないのだ。俺は今、こう見えても生きるか死ぬかの大問題に直面していて……。
ああ待ってくれ。違うんだ。俺は決してデタラメを話しているんじゃない。確かに下半身を丸出しでチ○コと会話していたりするが、まだそこまでおかしくはない。本当だ。
俺は長い間――一ヶ月か一年か分からないが、とにかくずっとこの部屋から出られずにいる。俺以外には誰もいない。両親も、姉も、友達も誰ひとり、ずっと顔を合わせていない。
何故か? そこには込み入った事情があるのだ。どうか聞いて欲しい。
きっかけは、このパソコンに映っている、一つの小説投稿サイトだった。
……覚えている限りの、過去の経緯は……
――
俺の名前は
ただ、自分で言うのもなんだが、俺には一つ困ったところがある。先ほど話した小説投稿サイト、俺もそこを利用しており、執筆もしている次第なのだが……。
『あーもう、またランキングに入る気配なしかよ……。目ぇ腐ってんじゃねえの皆』
そう、評価や順位に執着してしまうのである。それが多少のクセなら自分でも気にしなかったと思うが、事あるごとにイライラし、顔も知らない読者層に憎悪まで抱くとなると、我ながら感心しないなと思うところだ。
『クソッタレ最悪だわ。上位の奴ら全員死ねばいいのに。俺を崇めろ俺を』
そう毒づいてベッドに寝転がり、投稿サイトにつなげていたスマホの画面を切り替える。見たいものは特にない。ただ例のサイトが不愉快で、やたらめったら指を動かす。
『あっ』
そんな時、間違ってバナー広告を踏んでしまった。内容も見ないうちから画面が変わり、俺はじれったくてさっさとバックキーを押そうとする。
しかし、表示された広告の見出しを見て、ふと手が止まった。
"☆☆ 日間ランキング一位を目指せ! あなたはそれまで出られない!? ☆☆"
「……あん?」
日間ランキング。それは俺にとって、投稿サイトでたびたび見ていたものだった。サイト内で一定期間、高い評価を得た作品が百位まで表示される。俺は下位に入ったり入らなかったりで、一位になった経験はない。
その一位を取らないと、出られない……?
気になって先を読み進めてみる。すると、ふだん利用している投稿サイトのリンクと共に、次のような文面が続いていた。
☆☆このゲームは、不思議な部屋から一歩も出ずに、××(投稿サイト名)様のサイトで日間一位を目指すというものです! 参加するとあなたは下のような空間へと飛ばされてしまいます↓↓☆☆
1 広さは十畳。備品はベッドに机、椅子、パソコンとなります。出口や窓はいっさい取りつけられておりません!
2 パソコンでアクセスできるサイトは、件の投稿サイト様のみとなります。閲覧、執筆ともに自由ですが、規約は例外なく適用されますのでご了承ください。
3 生物をのぞき、部屋の中ではありとあらゆる物質をゼロから発生させられます。しかし、完成度は参加者様の想像力に依存しますのでご注意ください。
4 生理的な心配は無用! 食事、睡眠、排泄および衛生面などの状態は自動的にベストが維持されます。しかも老化さえ予防! いくらでも脱出に専念してください。
5 現実での時間の経過も無問題!参加者様がゲームをクリアした瞬間に、参加する前の時間に戻されます。
6 ※ゲームをクリアした瞬間に、部屋の中での記憶は全てリセットされます。
『はっ、アホくさ……』
思わずつぶやいた。そんな空間が実在するはずがない。おおかた人気取りのノウハウでも書いてあるか、さもなければイタズラのサイトだろう。
ページの最下部には、"参加しますか?"という問いと共にボタンが設けられている。脇には小さく今までの参加者数まで表示されていた。その数、三桁ほど。
『この内の何人が出られたんだ~? もし百人越えで一位を取り合ったらヤバいじゃんね』
俺はてんで信じていなかった。デタラメに決まってる。そう思ってほんの冷やかしのつもりで、参加のボタンを押したのだ。
その瞬間。
***
『……?』
まばたきもしない内に、俺は薄暗いこの部屋の中に立っていた。扉も窓もない。あるのは机、椅子、パソコン、そしてベッドのみ。サイトの説明にあった通りだ。
まさか、と思って先ほどまで見ていたサイトを確認しようとするが、肝心のスマホがなかった。これでは確認はおろか電話もできない。
あわててパソコンの方へ飛びつく。すでに電源のついている画面には、例の投稿サイトのトップが表示されていた。
祈るような気持ちで検索エンジンを探す。警察か、それとも家族や友達のSNSにでもつながれば、連絡して助けを呼べる。連絡さえつながれば……。
……しかし、どういうわけかいくら移動しようとしても表示は変化しなかった。反応があったのは、投稿サイト内での諸機能のみ。ユーザーページはふだん使っている俺のものになっており、閲覧記録やお気に入りもそのままになっている。
……利用できるだけのページを、意味もなくグルグルと見続け、どのくらいの時が経っただろう。奇妙な事に、そのパソコンの画面に表示されるあらゆる時間は文字化けしてしまっていた。
パソコンを眺めて座り込み、しばらく呆けて、ようやく俺は奇怪な現象の中にいるのだと理解した。
脱出できるとしたら、本当にあのサイトで日間一位を取るしかないのだ……。
それから、いくつかのSSを投稿し続けた。しばらくのうちは快適だった。トイレに行きたくもならないし、腹も減らない。眠くもならず、風呂に入らなくとも不潔になる気配はなかった。想像するだけでティッシュやゴミ箱などの日用品はいくらでも出現し、消費したり壊れたりするとといつの間にかどこかに消えている。
何より、ただひたすら投稿サイトを利用し続ける事ができるのだ。とりあえずは自分の知っているお気に入りを、見よう見まねで書いてみた。
……とはいえ、物事は思うようにはいかない。実際にやってみると分かるが、イメージを文章に落としこむのは難しいし、相手に伝わるかの段階で齟齬が起きてしまう。
そうでなくとも、まず読者の好みや気分、投稿する時間帯などで容赦なく評価は変わっていくのだ。さらに二次創作の場合ならば原作選びも重要になってくる。
人気が出る要素ならいくつも思いつく。要素だけなら。しかしどう組み合わせたら作品の人気がつくのか、どのような部分が受けたのか、あるいは反感を買ったのか。自分だけでモニタリングして改善するのは難しい。これよりかは、薬品や回路を条件通りに組み合わせる理科の実験の方が簡単ではないかと思う。
更新頻度も頑張ってはみた。しかし作風が偏りすぎれば低評価をぶちこまれ、感想がついたと思えば批判がきたり展開の強要がきたり、自己陶酔したような自分語りだったりと……。
住民も決して公平に評価するロボットではない。具体的な目標を持って、改めてそれを思い知った。
時たまランキングに引っかかったりするものの、五十位より下だったり、十位ていどだったり、三十位に転落したりなどなかなか頂点は取れない。なにしろ百分の一だ。
ネタに詰まった作品や批判がひどい作品は切り捨てた。なにしろ一位を取らなければ出られないのだ。下手に何度かランキングに乗る分、さまざまな批判が殺到するのをこらえ、読者には型どおりの謝罪をし、日に日に重くなる気持ちをこられて新作を考える。
そんな事ばかりをいつまでも独りで続けていると、おのずと心はすさんでいくのだ。
『"つまらない"~……? いやーほならね、君がやってみろっちゅう話でしょ~? 私はそう言いたいぃ~もう……』
ある日、ついに冷たい感想を目にして机に崩れ落ちた。一度崩れると精神はまたたくまに沈みがちになっていく。
"ここの設定まちがってません? 公式は××ですよ"
(黙れ。何も違わない。私は何も間違えない)
"いやに難しいテーマのように見えますが、上手くあつかえるといいですね。応援してます"
(難しいってのはあなたの感想ですよね? なんだろう、上から目線やめてもらっていいですか?)
"いまいち人気でない感じですが、私は好きですよ"
(ふはは、媚びろ~媚びろ~~!! 俺は天才だ!! 天才は何でも出来るんだあぁ~!!)
反応の一つ一つに神経を逆立て、あるいは狂喜し、不安定な内心を徐々にコントロールできなくなってくる。実際に読者に言い返してしまわないように必死だった。もしアカウントが消されれば、脱出の糸口がとぎれてしまう。
ほどなくして俺は描写を発作的に残虐にし、ベッドを何発もなぐり、時にはパソコンの画面に唾を吐いてうさ晴らしするようになった。言ってしまえば本性が出たというところだろう。
イライラが爆発し、"私が日間一位になれないのはどう考えてもお前らが悪い!"というタイトルを思いついたが、さすがにボツにした。だってその原作よく知らないし。
ひどい時には、俺の想像力でもってデ○ノートを造りだし、並みいる累計作者たちを殺そうとまで考えた。しかしアカウント名はともかく本名も顔も知らないので、あえなく断念。まあ死神も出てこなかったし、ありゃ偽物だな。どうやら身近に触れているものでないと再現も不出来になるらしい。
ひどい日々をくり返し……それからまた時が経った、ある日の事。
『……ん?』
惰性で執筆していた時、ふと下を見てある事に気づいた。ズボンの下の股間が、隆々と盛り上がっているのだ。
ずっと座っていたせいで血液が集中してしまったそれを見て、ある事が思い当たる。
『あー、そういやそんな余裕まるで無かったなー……』
俺も平凡な男子高校生である。それなりの頻度で欲求の処理はしていた。しかしこの部屋に落ちて以来、全くそんな気にはなれず執筆の事ばかり考えていたのだ。
『…………』
いざ意識しだすと、とたんに腰の奥からムラムラがわき起こる。そしてパソコンの画面に目を移し、作品のジャンルをある方面に絞る。
年齢制限がもうけられた、いわゆるR18作品である。何をかくそう、俺のアカウントは制限に引っかからないように年齢を高く設定していたのだ。
手元のティッシュを確認し、あらためて部屋をキョロキョロと見回す。誰もいないのを確かめ、俺は履きっぱなしだったズボンをパンツごとずり下ろした――。
***
「ふぅ……」
いやぁ、オ○ニーってのは素晴らしいね。憎しみもいら立ちもキレイさっぱり消えてなくなる。男子の青春はオ○ニーがなければ始まらない。俺はそう思うよ、うん。
なんて考えながら、後始末も終えて下半身を丸出しで執筆にもどろうとした時だった。
【先にパンツ履けよ。風邪ひくぞ】
『分かってるって~……ん?』
たしなめてくる声に自然に答えてから、俺はハッとした。今の声はいったい誰だ? この部屋にはずっと、俺しかいないはずなに……。
そぞろに冷や汗をかき、席を立ってあたりを見回す。やっぱり誰もいない、いつもと変わらない風景。しかし確かに聞こえたのだ。野太い男性の声が……。
【おい聞いてるのか。パンツ履け、ズボンも履け】
『……う、うわっ、うわああああっ!!』
俺は情けない声をあげてひっくり返った。この不思議な部屋の影響か、はたまた頭がとうとうおかしくなってしまったのか。
俺が聞いた野太い声の主は、俺の股間に生まれてから片時も離れなかった相棒……。
そう、チ○コだったのだ。
――
……とまぁ、長くなってしまったが、これが俺の身に起こった重大な事件のあらましというワケだ。
「しかし色々やったよな……。手探りで投稿していた頃がなつかしいよ」
【なに浸ってるんだ。まだ部屋からは出られていないんだぞ。次のネタは考えてるのか?】
「そう心配するなって。大丈夫大丈夫……」
ズボンを履いてからも、チ○コは父親のように口うるさく催促してくる。……正直、大丈夫とは言ったものの自信はなくなりつつあった。マイページに残る、今まで切り捨ててきた拙作たちを見るとつい悲痛な気分になる。いつか日の目を見るかもしれないと未練がましく残し、放置してきたエタ小説の数々。
俺の価値はしょせんこんなものか。面白いと思って書いていても他人は歯牙にもかけず、ゴミのようにそこらに打ち捨て、埋もれれば忘れ去っていく。
果たして俺はいつまで正気を保てているだろうか……。
「っ!!」
まとわりつく不安を、頬をたたいて追っ払う。とにかく俺は一位を取らなきゃダメなんだ。現実に帰って、それで……。
「……ちゃんと考えてるさ。性欲が暴走しがちな主人公がな、ヒロインと冒険の旅に出るんだ。しょっちゅう顕現しようとする淫棒をごまかしながら戦う、エロギャグ冒険物語だ」
【大丈夫なのか……?】
「弱気になるなって! 投稿してみなきゃ分からんから、とりあえずは書き溜め、書き溜め!」
気がかりそうにするチ○コへ、俺は精いっぱいに明るい顔をする。今まで何度も失敗し、本当は胸がつぶれるような思いだが、書くしかないのだ。このとうに見飽きたパソコンを使って、読者を喜ばせなきゃいけない。
のろのろと、逃げる救いの糸をつかもうとするように、意識をつなぎとめてキーをタイプする。
今度こそは大丈夫。きっと出られる。絶対に帰れる。頭の中で念仏のようにとなえ、投稿の準備をした。
――
……駄目だった。
開始直後には注目されたものの、けっきょく一位には届かずに評価はゆるやかに下降していった。他に人気な作品はいくつもある。
その作品たちが邪魔をする。憎い。憎い。憎い。
【……まあそう気を落とすな。とりあえずキリのいい所で終わって、次を作ればいいじゃないか】
机に突っ伏していた俺を、チ○コがなぐさめてくる。しかしこの傷心の状態にあっては、どんな言葉も神経を逆なでするだけだ。
「……お前はいいよな。毎日黙って小便と射精をしてればいいんだから」
【…………ん?】
知らず知らず、当てつけの言葉が出ていた。それでもチ○コは平然と言い返してくる。
【そりゃあ、俺は泌尿器および性器の役割をまっとうするしかないからな。というか、小便はともかく射精は九割がたお前のせいだろう】
「はいはい俺のせい俺のせい。オ○ニーしか脳がない無能ですみませんねぇー。ケッ」
ふてくされ、プイとそっぽを向く。本当は憎まれ口なぞ叩きたくない。むしろ泣きたい気分なのだ。それでも口からはひねくれた言葉が次々と飛び出していく。
「……だいたい、読者連中が無能の評価を下すから俺は無能になるんだよ。ただ黙って高評価をよこすだけの事が、なんで出来ないんだ」
【…………】
「あーあ、正当な評価をしない読者のせいで俺は永遠にこの部屋を出られないんだぁ。不幸だなぁ、不幸だよ。読者が悪いよ読者がー」
いくら言っても、少しも楽にならない文句をただただ垂れ流す。本音も確かに混じってる。しかしどうしても、憎悪を逃がすために敢えて戯れ言を言いたくなる時があるのだ。
現実を認めるのは、時に何よりも辛いのだから。
机に顔をつけたまま、指の一本も動かさずにグズグズと泣いた。それを見かねてか、チ○コは遠慮がちに口をはさんできた。
【……とりあえず落ち着け。嘆くのはいい。だが他人のせいにするのだけは……】
「知るかバカ! そんな事よりオ○ニーだ!!」
チ○コの苦言をさえぎり、俺はズボンと下着を下ろしにかかった。性欲なんてものは頭になかった。ただつらい現実から逃れたかった。娼婦にすがるダメ男がごとしである。
しかし、ちょうどチ○コが全て出るかというところまで下着を下ろしかけた、その一瞬。
【バカ野郎ッ!!】
割れんばかりの大声。それと共に、まだちっとも弄っていないはずのチ○コが、下着を押しのけるようにブルンッ! と勢いよく天を向いた。それは細かくうち震え、痛いほどに膨張していた。自分の方を向いて充血した真っ赤な亀頭は、興奮ではない何かに染まっているように見えた。
言うなれば、怒り。
「な、なに怒ってるんだよ……?」
しり込みしつつ、うわ言のように問う。チ○コと会話している異様さが、不思議と気にならなかった。相手は真摯に向き合ってくれている。それが何故か、肌で分かったのだ。
チ○コは殴りつけるような勢いで答えた。
【とぼけるな! 自分の不満をぜんぶ他人のせいにして、前に進めると思ってるのか!? そうして閉じこもったまま、みすみす品を落とし続ける気か!?】
「…………」
【お前が今まで書いたキャラクターたちを思い出してみろ。曲がりなりにも本気で書いたんだろう。そいつらに、今の自分を誇れるか!?】
激を飛ばすチ○コに、俺はうなだれる事しかできなかった。今の自分の姿が恥ずかしいなんて、当の俺が一番よく分かってる。
「でも……」
なかなかそれを認められない。勇気が出ないのだ。目の前の相手のように、無理やり醜態を言い刺してでもくれない限り。
【……俺に嘘はつけないだろう。なんせ生まれた時から一緒なんだからな。お前が成長して一皮むけて、触れあう時間がグッと増えてからの事も、みんな知ってる】
「…………」
【一位が取れなくても、お前という人間の価値はちゃんとあるんだぞ。自分で自分をおとしめるなよ】
チ○コの語調がはげますようなそれに変わる。しかし、それでも俺は素直になれなかった。涙声になるのを感じながら、かすれた声でわめく。
「けど……現実に、俺は閉じ込められて……!」
【だから、一位を強要してくるこんな部屋、とっとと出てやらなきゃダメなんだよ。そんなもんが何だ、ってお前自身が言わなきゃいけないんだ】
「……俺が……」
【お前は現実にまだまだ人生があるだろ。卒業も、就職も、結婚も……。こんな場所にいつまでもうずくまっているなよ】
いつしかチ○コの勃起はおさまり、声色に情が増していた。俺がすすり泣いていると、彼はこう付け加える。
【がんばれ。お前は俺とちがって、自分の意思で上を向けるんじゃないか】
「…………」
俺は涙をぬぐい、ようやくある決心をした。
R18を書こう。今ならアダルティな作品をとことん書けると思ったのだ。自身のチ○コ……もとい性欲となら、真剣に向き合える気がしたから。
それから、また奮闘の日々が始まった。
……………………
【まず、書けそうなジャンルはなんだ? 洗いざらい教えてくれ】
「まずおねショタ、あと百合、派生して百合ふたなり、あとおにショタを少々……だな」
【……ショタおねは?】
「邪道だ」
……………………
【……実際に出す必要があったのか?】
「……精液の描写ってのも、意外としっくりこないからな。味もみておこう」
【そういえば、部屋に出現する物体は想像力に依存するんじゃなかったか。実際に舐めてもリアリティは……】
「いや、これは俺の体から出てきたからな。制限には引っかからな……まずッ!!」
……………………
「ぐぅ……前戯の描写がぁ……だるいいぃ……!」
【我慢しろ。じっくりやればやるほど、後々に気持ちよくなるんだ】
「やけに知った風だな。俺のチ○コのくせして」
【一般論だ】
……………………
…………とまあ、そんな苦しい日々を乗り越えた甲斐あって。
「お……おおおぉぉ!? よっ……しゃああああああぁぁっ!!!」
ある日ついに、R18限定の日間ランキングの頂点に、俺の作品が載る事となったのだ!!
【やったな、おめでとう】
「ありがとう! お前のおかげだ!!」
飛びはねて喜ぶ俺の動きに、ズボンの中のチ○コがシンクロする。こんなに喜んだのはいつぶりだろう。思わずそう思うくらいの感動だった。
自分の力で、ついに目的を果たしたのだ。あふれでる涙をぬぐい、感極まった俺は言った。
「うっしゃあ! 脱出を祝してオ○ニーだッ!!!」
これまで苦楽を共にした相棒を愛撫すべく、素早く下半身を露出する。しかしいざ握ろうとしたその時。
チ○コがふと、寂しげにこう言った。
【いや……どうやら、時間切れのようだ】
「へ?」
【頑張れよ。楽しかったぜ】
どういう事だ、と言いかけたその瞬間。
「あっ」
フゥッ……と意識が遠くなる。見慣れたあの部屋の景色が薄らいでいくのが、視界にボンヤリと映った。
***
「……はっ」
……あれ、俺なにしてたんだろう。そうだ、Web小説みて寝ちゃったんだっけ……。うわー、もう夜じゃん。なんでこんなにボーッとすんだろ。
重たい体を起こし、どうにか立ち上がる。何があったのか知らないが、とにかくダルい。ただ寝てただけで、こんなに疲れるもんかな。
首をかしげていると、部屋のドアの向こうからドスドスと足音がする。ああアイツだ、と思う前に戸が開けられた。
「明留、もうご飯だって。さっさと降りてきて」
「……姉ちゃん、いい加減ノックしてよ」
「嫌よめんどくさい。いいから早くしてね」
いつも通りのぶっきらぼうな家族の態度。いつもと目覚めの感覚が違うのは、思い過ごしだろうか。……何かあった気がするのだが、どうも思い出せない。
「……夢でも見たのかな」
……それから後日、俺は一つ奇妙な事に気づいた。小説投稿サイトで、俺のアカウントでもってブックマークした作品がいくつかあるのだが、その数が大幅に増えていたのだ。
「……あの居眠りに関係あるのかね……」
変だとは思ったが、深く詮索はしなかった。けっきょく異変は一度きりだったし、面白い作品が見られるならそれでいいと思ったのだ。
特に、R18のブクマに見知らぬ作品が増えていたのはありがたい。今こうして新鮮な気分でオ○ニーできているのも、そのおかげである。しかも何故だかあの不思議な眠り以来、やけに精神が安らいでいるのだ。
「あっ、ああ、もう……」
今日も今日とて、俺は無心で快感にひたっていた。ふとそんな時。
【何事もほどほどにしておけよ。それが人生を楽しむ秘訣だ】
「……へっ、だだっ誰!?」
突然きこえてきた野太い声に、とっさに部屋をキョロキョロ見回す。周りには誰もいなかった。当たり前だ、俺の部屋だからな。
しかしそうなると、一体だれの声だったんだろう……。
とその時、廊下からまたドスドスいう足音が。
「明留! アンタよごれたバッシュ玄関に出しっぱなしにしてたでしょ!? さっさと片付けてよ!」
「わっバッ、姉ちゃん、ノックしろって!!」
――
…………ほどほど、知らず知らずそれを色んな事に実践するようになって、俺の人生は少し変わった。前のように小説の順位に執着する事もなくなった。
……原因はまだ分からない。だが、他にたくさんの楽しみがあるこの世界が、何故だが無性に愛しく思えるのだった。
最初は金玉もしゃべる予定でした。「ざーこざーこ、ざこ作者♥️」ってな感じで