欲望の獣   作:魔女っ子アルト姫

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轟家との欲望。

体育祭の振替休日。翔纏の姿はとある病院の中にあった、目的は当然―――焦凍のお母さんのお見舞いの付き添い。

 

「俺は此処までだな、頑張れよ焦凍」

「有難うな翔纏……行ってくる」

 

面会の手続きを済ませて病室の前まで付き添った翔纏はそのまま後を任せた。此処からは紛れもない家族の時間、それでも焦凍の意志で廊下で待つ事にした。壁に寄り掛かりながら焦凍を待つ。

 

「どんな気持ちだろうな」

 

自分の両親というか家族全員に溺愛されて育ったような自分には正直分からない、家族に疎まれた事も無ければ喧嘩をした事すらほぼない。だけどそれでも今回のお見舞いは焦凍にとって凄い勇気を出した行為である事は分かっているつもりでいる。そんな勇気を肯定し応援するために今自分は此処にいる、それが報われると信じて。

 

それから時間が経過するが静かに待ち続ける。10分、20分、30分と経過する中で病室の扉が開けられてそこから焦凍が顔を覗かせた。

 

「翔纏。母さんがお前と話したいらしい」

「えっ俺と?」

 

突然かかったお呼びに応えるように焦凍に手招きされて病室へと入っていく。そこに居たのはベッドから身体を起こしながら此方を儚げな笑みを浮かべている女性、焦凍のお母さんの轟 冷。此方を見て笑いながら頭を下げて来た。

 

「初めまして轟 冷です。焦凍と仲良くしてくれているみたいで……」

「獣王 翔纏です、いや俺も焦凍とは友達というかなんというか……」

「そこは親友で良いだろ」

「ハッキリ言うわね本当に君は」

 

本当に焦凍の天然は……と呆れていると冷は微笑ましそうな笑みを浮かべた、それは翔纏にとっては見慣れた類の物。心からの嬉しさの笑みだと分かる。

 

「今日焦凍が来てくれた事は本当に、嬉しかったんです。その切っ掛けを作ってくれたのが幻さんと翔纏君だと聞いて心から嬉しかったんです。この子にはそんな風に頼れるお友達が本当に出来たんだなぁ……って。親友って言える程に大切なお友達が」

「改めてそう言われると照れますね……」

「これからも焦凍と仲良くしてあげてください」

「此方こそ、仲良くさせて貰います」

 

そのような会話をした翔纏。冷の体力を考えてこの日はこれにて引き上げる事になった。

 

「良かったな、お母さん喜んでくれたじゃないか」

「ああ来てよかった」

 

表情を分かりやすく変える事はないがそれでも心なしか嬉しそうにしている事が見て取れる、矢張り今日来れた事は様々な意味で焦凍にとっては良い事になったのだろう。心の中にあった楔へのケジメ、心の整理、これからの路を歩む上で絶対に必要だった。

 

「それじゃあ……これからどうしようか」

「なあっ翔纏、お前さえ良ければ俺の家に来ないか?」

「えっ焦凍んち?」

「ああ、姉さんに紹介したい」

 

何故だろうか、ワクワクしているように見える。先日獣王家に焦凍を招いたからそのお返しのつもりなのだろうか、是非とも家に来て欲しいオーラが滲み出ている。

 

「でも突然お邪魔して邪魔にならないかな……ほらっウチは色々と特殊だったけど」

「大丈夫だ、翔纏の事は前から話してたし会いてぇって言ってた」

「ああじゃあ……お邪魔にならないなら」

「こっちだ」

 

即座に切り替えて案内を始める焦凍、なんだか嬉しそうに振られている尻尾が見えるような気がしてならない。取り敢えずその背中を追いかけていく事にした、足取りも軽く歩いて行く姿を追いながらしばらく歩くと到着したそこは見事な立派な日本家屋。自分の家は西洋建築なので何処か新鮮な気分になる。

 

「如何しようどうしようやっぱり私も今からでも行くべきかな……あっ……しょっ焦凍お帰りそのお母さん如何だっ……えっお客さん!?」

 

玄関を開けるとそこには白髪が少しだけ混ざっている赤い髪をしている冷に似ている女性が玄関で何やらうろうろしていた。そんな女性は焦凍の帰宅に驚いたような声を上げるが直後に後ろに連れてきている翔纏に気付くと更に驚いてしまった。

 

「ただいま。姉さん友達連れて来た」

「えっお友達!!?焦凍がっ!!?もっもしかして翔纏君!!?」

「ああ、俺の親友の翔纏」

 

何処か胸を張るようにしながら後ろにいる親友(翔纏)を見せ付ける、それを見て聞いて弟が話してくれた初めての友達だと理解してぱぁっと光を散らすような笑みを浮かべる。

 

「翔纏、俺の姉さんの冬美姉さんだ」

「獣王 翔纏です。突然来ちゃってすいません」

「ううん何時でも大歓迎よっ!!初めまして轟 冬美です、さあさあ入って入って!!直ぐにお茶とか用意するからね!」

「ああいえ本当にお構いなく……」

 

冬美は焦凍が初めての友達を連れて来たのが心から嬉しいのか遠慮の言葉を意に介さずに客間へと通しながら台所へとお茶菓子の準備をしに行ってしまった。

 

「お待たせ、コーラとかジュースないからお茶になっちゃうけど大丈夫かしら」

「あっ大丈夫です」

「良かったっこっちはお茶に合う最中よ」

 

出される緑茶に最中、そしてそのまま焦凍の隣に座ってニコニコとし続ける冬美。

 

「もうお友達を連れてくるなら早く言ってくれたらもっと確りしたおもてなし出来たのに」

「ごめん。でも連れて来たかったから」

「全然大丈夫よ」

 

と仲良さげなやり取りをする二人に姉弟なんだなぁという事を実感する、焦凍からお姉さんがいるという事は聞いていたし仲も良い事も知っていた。矢張り他の家の姉弟もこんな感じなんだなと思う中で自分の家族のそれがかなり過剰な事も思い知る。

 

「姉さん俺より喜んでないか」

「だってだって焦凍がお友達を連れて来たのよ?それを喜ばない姉がいない訳ないじゃない!!」

「……確かに翔纏の姉さんもすげぇ喜んでたな」

「翔纏君にもお姉さんが?」

「ええ、先日の体育祭の帰りに」

 

それから翔纏は冬美を交えた状態で雑談に興じる事となった。翔纏にとっても初めての友達の家への訪問ゆえに気分も高めだった、唯話をするだけだったがそれだけでも酷く楽しい時間を過ごす事が出来た。気付けば昼過ぎになってしまう程に話し込んでしまっていた。

 

「あらっいけないもうお昼の時間じゃない!!お昼の支度しないと」

「あっそれじゃあ俺そろそろ帰りますよ」

「折角だから食べていってちょうだい翔纏君」

「いやそこまでお世話になるのは……」

「いいからいいから!!さぁって腕を振るうわよ~♪」

 

と嬉しそうに台所に向かって行く冬美を見送る二人。そんな姉の様子を見続けていた焦凍は笑いながら言った。

 

「姉さんの料理は美味いから食っていってくれ、気に入るぞ」

「う~ん……初めてなのにそこまでお世話になっていいものか……」

「俺と姉さんが良いって言うんだ、大丈夫だろ」

 

結局、翔纏は押しに負けてしまい昼食を御馳走になるのであった。

 

「冬美さんって綺麗な人だな……ちょっと羨ましいかも」

「そうか、姉さんに言っとく」

「いやなんでだよ!?そこは秘めておけよ!!?」

「多分姉さん喜ぶだろうし……俺も愛水さんの事綺麗って言ったら普通に喜んでたぞ」

「そうでしょうけど少しは秘めておこうと思わない!?」




ヒロイン如何するかな……。

今のところ翔纏と関りを持った候補は……ジロちゃんに梅雨ちゃん、そして今回の冬美さんか……。
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