全てのウマ娘に幸福を、しかしそのために何を成せばいいのか
皇帝へと語るトレーナーの言葉とは…

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ふと思いついちゃった感じで投稿


皇帝よ、天に立て

 

歓声が聞こえる。

 

興奮と期待に満ちた、観客の声。

 

”最も速いウマ娘が勝つ”、皐月賞。

 

”最も運のあるウマ娘が勝つ”、日本ダービー。

 

”最も強いウマ娘が勝つ”、菊花賞。

 

たった1度しか挑めない栄光あるレース、その三つ全てにおいて1位入賞を果たしたウマ娘だけに贈られる称号。

 

三冠ウマ娘、日本レース史上それを成し得たウマ娘は、彼女で4人目だ。

 

それをただの一度も敗北することもなく、三冠を成し遂げた時代の星。

 

シンボリルドルフは、控え室で汗を拭う。

 

表情に喜色はなく、レースで満ち溢れていた覇気が感じられなかった。

 

コンコンコンっと、控え室の扉が叩かれた。

 

誰なのかはなんとなく分かっている、しかし億劫な気分で口が開かない。

 

扉が開かれる、そこには想定通りルドルフが最も信頼するであろう人がいた。

 

「トレーナーくん…」

 

「やぁルドルフ、もうすぐウィニングライブだ。準備は…」

 

言いかけた言葉が、切れる。

 

後ろ手で扉を閉じるトレーナー。

 

ルドルフの目線に合わせるように腰を落とし、二人は向き合った。

 

「悩んでいるねルドルフ、無敗の三冠ウマ娘の残念は何処にあるのかな?」

 

柔らかな口調と声音、トレーナーの発する雰囲気も相まって時間の流れが緩やかになった錯覚すら受ける。

 

口を開けて、また閉じる。

 

それを幾度か繰り返した後に、ようやく搾り出すように話すことができた。

 

「分からないんだ、トレーナー君」

 

「私は、全てのウマ娘が幸せに暮らせる世を望み、その一助となるために走ってきた」

 

「三冠を得ることで、願いへ繋がる道が見えてくるんじゃないかと思っていた」

 

「でも分からないんだ、道が見えないんだ、どうすれいいか分からないんだ…」

 

「教えてトレーナー、私はどうすればいい…!」

 

拳を握り締め、今にも泣き出してしまいそうな心細い声で。

 

皇帝は己のトレーナーへと縋り付いた、悩める少女の素顔を曝け出して。

 

瞑目し、ルドルフの問いを受けるトレーナーは黒縁の伊達眼鏡を外す。

 

「ルドルフ、君の願いとそのために重ねてきた努力の重みを私は知っている」

 

「しかし、私には君の求める答えを出すことはできない」

 

「何故ならば、誰ひとりとしてそれをなし得た者はいないのだから」

 

肩を掴むルドルフの手が震える。

 

「―――だが、それを成すための資格が何かというならば答えよう」

 

消えかけた光が、再び灯る。

 

「幸福とはなにか、私は目標だと思っている。目指すべき頂点と憧れ、それに向かって進む事が一つの幸福であると」

 

「暗闇の荒野で輝く星こそが、ヒトとウマ娘にとっての希望なのだと」

 

失いかけていた熱が篭る。

 

「しかしそれは今はまだない、君も、私も、それ以外の誰もが未だに空白の玉座を見上げるしかない…だからこそ」

 

 

 

「―――我らが天に立つ」

 

 

 

モノクロとなった形式に色が戻る。

 

心臓の鼓動が脈打ち、全身に活力が漲っていく。

 

「これはまだ正式に通知はされていないが、君の頑張りのお陰で私もチームを持てそうだよ」

 

ありがとうと微笑むトレーナーに、ルドルフはようやく微笑みを浮かべた。

 

花開くように、頬を染めて歓喜が胸に広がる。

 

「それは、喜ばしい! 貴方の愛バである私にとってもこれ以上ない朗報だ!」

 

「これから君はチームを率いてシニアレースを挑む事になる―――その全てを勝利しろ」

 

「敗北は許されない、完全無欠の勝利を刻み、最強の皇帝として君臨するんだ」

 

「皇帝と、皇帝に続く無欠の伝説が、その足跡が、後に続く者達の道標となる」

 

窪みにピースが嵌る。

 

欠けていた何かが揃い、最強の皇帝は長い眠りからようやく目覚めた。

 

「チーム名は、【ポラリス】」

 

「暗闇で輝く指標、皇帝の願いに続く北極星がヒトとウマ娘を導くのだ」

 

「いつしか頂点を乗り越えたウマ娘が、また新たな標となって後の彼女らを導くんだよルドルフ」

 

それは希望だ。

 

時には絶望となり、逃れられぬ現実となるかもしれない。

 

しかし誰もがそうなりたいと願い、信じ、目指すための光明となる。

 

「―――ありがとう、トレーナー君」

 

折れかけた少女はそこにはもういない。

 

「勇往邁進、この眼は道を捉え迷いは消えた」

 

「行ってくるよトレーナー君、私のライブをしっかりと見ててくれ!」

 

走り去る担当の背を見送り、トレーナーもまたライブ会場へと向かうのであった。

 

何故だか口元が引きつっているが…

 

ちなみにライブは大成功、シンボリルドルフという新時代の皇帝が示す凱歌に誰もが熱狂した。

 

◆◆◆

 

「ちゃうねん」

 

トレーナー室で一人頭を抱えるトレーナー。

 

正直な所、やり過ぎたのだ。

 

中等部1年から二人三脚で頑張ってきた担当が三冠取った後なものだから、掛かっていたのだ。

 

元気づけるためだったのが、やばいスイッチを5~6個押してニトロぶち込むような結果となり。

 

気が付けば皇帝に憧れ、あるいは超えるため、さらなる躍進を求めてウマ娘達がチームに集まった。

 

「無敗伝説とか勘弁してくりぃ、負けたら俺への責任追及とか…でも賞金は美味しいし」

 

名声とそれに伴う責任。

 

無敗伝説の重圧。

 

勝利を求める中央トレセンの覇者。

 

チームポラリスのトレーナーは、知的ぶって付けた伊達眼鏡のレンズを磨く。

 

「すまない、トレーナー君。生徒会の仕事で遅れてしまった、トレーニングを始めよう」

 

ああ我らが皇帝陛下、勝ってほしいけどもう引導を渡して欲しいとか思ってるトレーナーは仮面をかぶる。

 

有能なサブトレ見つけて隠居したいなぁと願うトレーナーと皇帝は、夢へと目指して走るのだ。

 

 




いやー不敗伝説途中で終わらせたらと思うと胃腸ペインっすわ

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