刀オタクが異世界転移したので剣豪を目指します   作:かんせつ

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第九十九話

王億御前試合最終日。ついに王国最強の戦士が決まるのだ。

正直昨日の試合の後は酷かった。当然勝敗が絡むわけだから賭博も生まれるのだ。

王国最強の称号を意味する勇者。それに賭けていた人は当然少なくはなかった。

だが結果として勇者は負けた。例え自分がその場に出れない力量の人間だとしても、そんなことは関係なしに勇者への文句を言う人間は多かった。しかし笑顔が絶えない集団もいたのだ。

そう、我らがアイアン・イグニスである。

「いやー一晩経っても笑いが止まんねーな」

「ダンさん、かなりにやけてますからね」

「そらにやけない方がおかしいっての。アリムスだって普段より口調が軽いぞ?」

そう、私たちは全員がシズネに賭けたのだ。そしてシズネは勇者に勝ち、私たちは賭けに勝ったのだ。

勇者というフレーズに惹かれて大金を賭けた人もいたのだろう。かなりの額の配当金を受け取ることができた。だが賭博業者は最終日は賭けを行わなかった。それはいくら勝ち星を挙げているとはいえ『剣聖』には勝てないだろうからだろう。だがシズネはそんな予想すらひっくり返してもおかしくはないと私は思う。

「剣聖、ウィリアム!!」

その名が呼ばれただけで会場は莫大な歓声に包まれた。

勇者が再誕するまで王国最強の称号であった『剣聖』の名は伊達ではない。

「対戦者、シズネ!!」

「じゃ、行ってくるね」

シズネはそう言って闘技場に降り立って行った。シズネの登場とともに再び会場が歓声に包まれる。

「さて、君と手合わせをしたことは振り返ってみれば少ない。最初は弟子だと言っておきながらこれは恥ずべきことだ」

「いえ、ウィリアムさんは私の師匠です。最初は剣の稽古を、次は私に王国でのお役目を。いつも進むべき道を教えてくれました。師匠とは必ずしも一つのことを教えるだけとは私は思いません」

「どうやら私はとても優れた弟子を持つことができたようだ。手合わせの度に君は強くなっていた。

さて、今回はどうかな?」

「それを今から証明するんです!!」

もはや二人の間に言葉は不要だった。

「始め!!」

まず動いたのはシズネからだった。今回は前回と違って短い一本の剣だけだった。

だがリーチで見れば剣聖様の大剣が有利だ。それ以上に技量という差もあるが・・・。

「ふっ!!」

静音は一気に魔力を解放し身体能力を強化して一気に仕掛けた。例えそれだけでも足りないとしても。

ウィリアムは静音の怒涛の剣閃を簡単に捌いていった。だがウィリアム自身は驚いていた。

今までの試合では≪心眼≫に頼らずとも相手の動きを読めていた。それは長年の経験からであった。

だが目の前の静音の攻撃は≪心眼≫無しでは全く読むことができなかった。それだけ静音の技量が高いのか、それとも静音が使う特異な武器に関わることを静音が持っているのか、単に天からの御子としての力があるのか。いずれにせよ理がわからないのはウィリアムとしては戦い辛かった。

「では、こちらからもいくとしようか!!」

今度はウィリアムの方から仕掛けた。大剣と刀。大剣から打たれれば刀が最悪折れるレベルの差である。

だがそれを静音はわかっていた。だから絡め手を用意してあった。

「!!」

静音はウィリアムの攻撃を打ち合うのではなく、体を動かすことによって回避することを選んだのである。真上から、そして袈裟切り程度なら体を動かすだけで避けれる。だがすぐに理由を察したウィリアムも対抗策を取った。真横からの一振りであった。それもただの振りではなく、例え後ろに下がられても瞬時に距離を詰めて追撃をできる用意をした振りだった。

「せい!!」

「!?」

静音は誰もが予想しない動きで恐ろしい大剣の一振りを避けた。静音はその場で飛び空中で体を回転させて大剣の横振りを避けたのであった。これにはウィリアムの≪心眼≫と経験が予想した結果をひっくり返した。

条件としてまず静音は魔力の補佐があってもそんな芸当ができるほどの身体能力は生み出せないし経験もない。だから科学が中世並みのこの世界でのオーバーテクノロジーを使った。

「・・・剣?」

ウィリアムが気づいたのは静音の足元に一本の剣が刺さってあったのだ。そして僅かながらその剣と静音が魔力で繋がっていることが感じ取れた。

静音は事前に電気を帯びた一本の剣を地面に刺し、空中で刺した剣と雫に込める雷の魔力を強めた。

簡単に言うと電磁石を生み出したのだ。電流は流れる元にS極、流れた先にN極が生じる。

詳しい原理は静音は知らないが、電気を流せば磁石が作れることは知っていたので事前に雷の魔力でも磁石が作れることを確認してた。そして二本の剣で磁界を生み出して弾き合うようにしたのだ。

当然刺さった剣より空中に存在する雫の方が動く力は大きくなった。その力を応用して体を回転させたわけであった。

だが大衆もウィリアムからしてもそれは曲芸師のような芸当だった。そして一瞬の隙をついて静音は地面の剣を回収して距離を取った。

「おいおい、マジかよ・・・」

「ダンさん、何か心当たりでも?」

「あぁ。前に長物相手の練習がしたいって言われてよ、横からの振りに対する対処を主にやったんだが・・・」

「その時に団長が繰り出したのがあの動き、というわけですね」

「そういうこった。だが団長、自分から不利な条件に持って行ったな」

「得物のリーチは団長が不利。ですが間合いを詰めれば団長が持つ剣は取り回しが簡単なので優位に立てるはず・・・一体何を考えているのか」

「アリムスさん、楽しそうですね」

「あぁ、そう見えますか?団長はいつも予想外の行動で事をひっくり返します。魔獣との戦闘中はじっくりと見ることもできませんが、こうしてみる分だと楽しみで仕方がないのですよ」

静音が全力で戦っている中、団員たちは楽しそうにそれを鑑賞していた。

静音はさらに二本の剣を収納空間から呼び出した。だがその剣は宙に浮いていた。

静音がしようとしていることを察したウィリアムが先の驚きから立ち直って距離を詰めようとしたものの、一歩遅かった。宙に浮く二本の剣+先に静音が呼び出した剣、合わせて三本の剣が意思を持ったかの如くウィリアムに襲い掛かったのだ。

操剣術。文字通り剣を魔力で操るのである。熟練者が操れば手が増えたかの如く攻め立てることができる。

一回一回の攻撃は簡単でもそれを続けられてはウィリアムといえど厄介というか面倒であった。

「ふん!!」

ここでウィリアムは少しギアを上げることにした。ウィリアムの変化と同時に会場が歓声で沸いた。

ウィリアムが御前試合初の闘気を使ったのである。それも常人では到達できないとされ、王国ではウィリアム以外に使い手がいないとされている赤の闘気である。

これは静音としては美味しくない状況であった。

「さぁ、自慢ではないが並大抵の技は通用しないぞ!!」

闘気解放と同時にその覇気からか、操っていた剣は弾き飛ばされ、それに驚き隙を晒してしまったため、静音は一気にウィリアムに距離を詰められた。ウィリアムとしては最初の手合わせの時のように簡単に終わってほしくはなかった。だから横からの振りは封じることにして真上からの渾身の一振りを放った。

静音は何とか≪慧眼≫で予測できたため横にそれることでウィリアムの一振りを避けた。

しかし避けた後、攻撃の痕に驚愕した。振り下ろされた場所はおろか、そこから静音からして後ろ側へ一直線の位置の砂埃が舞っていた。

(まず打ち合えば雫だろうと折れる可能性が高い。だけど昨日の試合で手に入れた力なら!!)

「ファティ!!」

『準備オッケー!!』

静音の声に応えるように淡い光、ファティが現れた。そこから静音はファティと同化、妖精剣王へ移行した。

「妖精剣王、相手にとって不足なし!!」

「へ・・・妖精剣王?」

「・・・自分が使う力も知らないのか・・・?」

まさかの意気込みへの返答がまったくもって素っ頓狂なものであったため、少し気の抜けてしまったウィリアム。

「その姿に関しては後で話そう。まずはこの場を存分に楽しもうじゃないか!!」

「はい!!」

ウィリアムの構えに対し、静音は手を天高く掲げた。妖精の持つ魔力は独特なもので、使うことさえ叶えば、質量をもった物体を生み出すことができる。静音は鍛冶のスキルを使い即席の一本の剣を生み出した。その剣は刀と違って両手剣サイズであった。試合のルールに抵触しないように静音は剣を生み出してから雫を鞘にしまい生み出した剣を両手で持った。

お互いの全力を引き出した試合はさらに凄まじくなっていくのであった。




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