「数匹逃げたぞ!」
「金のなる木を逃すなぁ!」
静音たちは魔獣の平原に狩りに来ていた。ただ今日のワイルドウルフは妙に足が速かった。
そのため、不利を悟ったのか数匹が逃げようとしていた。
「リーシャ!!」
「任せておけ!!」
リーシャが地の魔力を使い、ワイルドウルフの逃げ道を土の壁を作って塞いだ。
「ダン、アリムス!!」
静音を筆頭に瞬発力があるダンとアリムスが続き、逃げ場を失ったワイルドウルフを仕留めた。
「ふー何とか倒せましたねー」
「しかし噂には聞いていましたが、魔獣の活発化。事実らしいようですね」
「魔獣の活発化かぁ・・・また魔族が絡んでるのかなぁ・・・」
冒険者ギルドで噂になっていた魔獣の行動の活発化。冒険者ギルドは今回は魔の歪み周囲の警戒や魔族の類の捜索の依頼などを出していた。歪み付近の観測所からも魔獣が増えているとの話もあるらしく、狩場の拠点町には静音たちのように多くの冒険者が集まっていた。
「む?」
「どうしましたか?アリムスさん」
「あぁ、エラムさん。なんか、ワイルドウルフの死骸の消え方が奇妙というか・・・」
「違和感、ですか?」
「普通は塵が風に吹かれたときのようにすぐ消えるはず。だけど今回は最後に倒された個体は僅かだけど残っていた時間が長く思えた。それにワイルドウルフ事態の体色も普段と違ったというか・・・」
「・・・変異種、もしくは変異種に変化する途中とかでしょうか?」
「・・・偶々変異中の個体が最後に残った。確かに変異するぐらいの個体なら最後まで残るかもしれないけど、さっきまで戦ってたワイルドウルフ全部が同じ体色に見えた気が」
「・・・マズイですね」
「?」
ほんの僅かなエラムの独り言。それと同じくエラムの顔は深く、真剣だった。アリムスは最後にエラムが何を言ったかを考えていたため、その顔に気が付かなかった。
拠点町に帰ってきて相場が崩れない魔石を売り払って、それぞれ休憩とした。
静音・エラム・リーシャの三人もまた腹の虫に従って食事を取りに食事処に入った。
「いやー。最近は魔獣が多くて狩りが楽だ」
「活発化してるってのを上の連中は問題視してるが俺たちにとってはまさに稼ぎ時どころか向こうから金が寄ってくるぐらいだからな」
と、少し問題視されそうな会話をしている冒険者たちがいた。実際上が問題視しているのなら何かしらの危険がある。そう、静音は苦笑いで思っていた。
「その呑気もすぐに消えますよ」
ただエラムが言った一言で静音の苦笑いも消え去った。
「え、エラム?」
「あっ・・・すみません!!」
はっとしたエラムは慌てるようにして二人から離れていった。
「エラム!!」
余りにも必死に離れようとする背中を見て二人は伸ばした手をただ空で遊ばせるだけしかできなかった。
「一体エラムはどうしたんだ?」
「さぁ・・・ただ言い方はヒドイけど、いつもお金のことに厳しかったエラムが稼ぎ時を喜ぶまではいかないけど、歓迎どころか冷ややかな一面はなんか・・・おかしいな」
「私が加わったときはすでに二人は組んでいたが、エラムはやはり経験豊富な冒険者だったのか?」
「ううん。一個上だったんだけど色々あって一緒に組むことになったんだ。それから一緒に魔法学校に通ったりして・・・」
「・・・そういえば私は私の来歴を話したことは無かったな」
「そういえば聞いたことがなかった気が・・・あ、最初にあったときより雰囲気もなんだか柔らかく・・・というか逞しくなったような?」
「・・・女性に逞しいはないだろう・・・」
「あ、ごめんね。それで、リーシャの来歴って?」
「あぁ、前は私は父に倣って騎士として勤めていたんだ」
「え?騎士の方が冒険者より安全そうだし・・・なんで冒険者に?」
「確かに冒険者よりも待遇とかも良い。だが、それ相応の振る舞いが求められた。当然冒険者より強くなければならない。だが女の私には到底その振る舞いには追い付けなかった。だから挫折して、色々あって冒険者になった訳だ」
「ちなみに最初の恥ずかしそうな性格はどこから?」
「あ・・・えぇっと・・・いざ冒険者になったのは良いものの、騎士になるまでは見知った顔の中で育ったから・・・その、人見知りしていてな・・・」
「あぁ、そういうこと。あ、結局エラムの様子で気になるとことかあったの?」
「一つな。一言つぶやいたエラムの目、あれはかなりの強者の目だった。たぶん、本当の戦いを知っていいるかもしれん。似たような目を騎士団の時に見たことがある気がする」
「・・・もしそうだとしたら、エラムもやっぱり訳ありで冒険者になったってこと?」
「もしそうだとしても、冒険者になる前から実力があったのならシズネと一緒に魔法学校に行く理由がわからん」
「それは・・・うーん、どうして?」
「多分全ての理由を纏めたら結論が出るんだろうが、他人の過去は詮索はしない方がいい。エラムが話してくれるのを待とう」
エラムの謎が一つ増えたがとりあえず忙しい日々がまた一日経つのであった。
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