刀オタクが異世界転移したので剣豪を目指します   作:かんせつ

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第百五話

―――夜

エラムは拠点町をふらついていた。頭の中ではこの先起こるであろう魔獣の侵攻のことを考えていた。

(魔獣の侵攻の予兆は嫌というほど見つかっています。起こる可能性は高いでしょう。問題は、どこへ向けてでしょうが十中八九王国でしょう。ただ今回は剣聖ウィリアム、勇者ラーク。そして妖精剣王として目覚めたシズネと歴代で見ても最高戦力が揃っています。まず普通の侵攻程度だと弾けるでしょう)

ふと気づくとエラムは自分たちが止まっている宿に着いていた。受付に言ってカギを貰って自分の部屋に入る。

そして袋から今回も売らなかったエラム自身の取り分の魔石を取り出した。

(ワイルドウルフそれも生まれたての物の魔石。通常より魔力を取り込むことができるでしょう)

エラムが魔石に手をかざすと、魔石は光を放ち始め、エラムの手に操られてエラムの体の中に吸収された。

(今回は・・・まぁ、戦力が揃っているから私の出番はないでしょう。陰に隠れてこそこそと支援をしていればよいでしょう。ただ魔王も馬鹿ではないでしょう。以前あった魔族の歪み生成の潜入事件。あれは今までなかったこと。ならば今回の侵攻も恐らく、何かあるでしょう)

エラムは過去にあった魔獣の侵攻の終始を思い出していた。

焼ける森や町や村。泣き叫ぶ子供。子供を探しに戦火に入っていく母親。無謀な勇気で早まって魔獣の群れに突撃して無残にも食い散らかされた新米冒険者。昼も夜も関係なしに防壁へと攻撃を行う魔獣の大群。

―――何度、仲間を作っただろうか

                   何度、仲間を見送ったのだろうか―――

 

       ―――何度、仲間を裏切ったのだろうか―――

「そんな、裏切ってなど!!」

「エラム?」

「は、はい!?」

過去にふけっていたエラムを呼び起こしたのはドア越しの静音の声だった。

「あの、どうしたんです?」

「いや、さっきエラム店から飛び出したっきりで、ごはん食べたのかなって」

「あぁ、そうですか。大丈夫です。あの後露店で少し見繕いましたので」

「そっか。じゃぁ、おやすみ」

(やはりシズネは何かがある。意識しているのか、無意識なのか。どちらにせよ味方にすれば御しやすいでしょうし力にはなるでしょう。ですが、敵にすると、素の私では勝てないでしょう。しかしどちらになるにせよ、私のことを話さなければならないでしょう。ですが、それ自体、リスクがある)

―――なんで私は孤独なのか

                         言えば殺されるから―――

―――誰に

                天に巣くう生物全てに仇をなした存在に―――

       

         ―――なら今回も黙っているのか―――

(確かにリスクを考えれば今後も黙っている方がいい。ただ何かイレギュラーが起きると厄介なのは事実)

         ―――なら今回も仲間を裏切るのか―――

「くっ・・・」

エラムは悔しくて唇を噛む。エラムとてそんな選択肢は選びたくない。

(最後の私が消えてしまえば、完全にこの世界は支配されてしまう。それだけは避けなければならない。私たちの家族が、仲間が、同郷の、この世界に命を懸けて散っていった人たちが守り続けたこの世界を

失うわけには・・・)

またマイナスのことを考えていると、一つ。エラムの中で歯車がかみ合った。

(シズネは、どうして失われたはずのあの服装を、あの鎧の形を、あの刀を知っているのか?そしてエラムと最初に依頼をこなしたあの時感じた違和感に似た、懐かしい感覚は何なのでしょう。)

「まさか!!」

一つの推測が生まれた。

(だがそれはあり得ない。もうこの槍の所有者の名前は私だけになっている。確かに所有者になること自体嫌だった人もいて、名前を消して隠れた人もいた。しかし所有者の名前を消したとしても槍は反応する。だけど、今までシズネの隣にいても槍が反応したことは無かった。なら、シズネは一体・・・)

物思いにふけるのもこれくらいにしようとエラムはベッドに潜った。ただ、最後に一瞬懐かしい背中を思い出した。

(もうあるはずがない『桃色の闘気』初代勇者であり、今まで唯一だった妖精剣王のあの人の背中にどこかシズネは似ていました。しかし、妖精の正体は・・・そして今の人類は・・・。ならどうしてシズネは妖精剣王になれた?)

眠るために横になったはずなのに、消えぬ疑問にエラムはずっと悩まされていた。




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