刀オタクが異世界転移したので剣豪を目指します   作:かんせつ

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第百六話

「クソっ数が多すぎる!!」

「これでスタンピードじゃないって嘘だろ!?」

「スタンピードはデカ物が沸いてるのが特徴だ。ワイルドウルフの大量発生ごときでスタンピードなんて言ってたら今頃王国中がスタンピード扱いになっちまうぞ!!」

魔獣の草原にて大量のワイルドウルフが出現。記録にも無いような数が観測されたためフォロムの町の

独自判断として緊急依頼を発表。フォロムの町に在中していた冒険者を動員して出現した

ワイルドウルフ掃討戦を開始したのである。

「それにしても、なんというか・・・不思議な感覚ですね」

「不思議って、まぁ、確かに変な感じだな」

「?何か違うの?」

「なんだかな、数は多いが、一匹一匹が弱いっつーか」

「それに体色も通常とは異なっている様子。前は変異前の個体と思っていましたが、この程度の弱さのワイルドウルフは変異するような個体だとは思えませんね」

「油断しないでください。ワイルドウルフの厄介なところは数、群れの統率力です。こちらも即席ですがある程度統率された集団です。分断されないように気を付けてください」

静音たちもワイルドウルフ掃討戦に参加。数が不明な点や戦闘中のネコババを断つために報酬金は平等分配。そのため魔石はギルドが全て得ることになっている。

静音たちの討伐数は掃討戦の戦力では群を抜いていた。

「言っちゃぁ不謹慎だが、俺たち報酬金以上倒してねぇか?」

「多分そうでしょうが、この数を放っておくと町を襲う可能性だってありえます。ここは欲よりも防衛のことを考えた方がいいかと」

順調に戦闘が進む中、一角から炎の柱が上がった。

「なんだ!?」

「まずいですね、他の戦線の方たちがこちらに寄ってきています。よほど強力な魔獣が出たのかと」

「スタンピードとは分類されずともそれ相当の脅威はあるってことだな」

「おい、アンタらも早く逃げろ!!マズイのが現れやがった!!」

悲鳴を上げながらどんどん戦線を離脱していく冒険者たち。

「どうしますか?団長」

「逃げるのが一番だろうけど・・・」

「・・・逃げ遅れましたね」

こちらを襲おうとしていたワイルドウルフもろとも静音たちを狙った業火の波が押し寄せて来た。

「リーシャ、アリムス!!」

「わかっている!!」

「出番のようですね」

リーシャが地面を盛り上げて即席の壁を作成。その後アリムスが土壁に水を染み込ませて業火の波への対策とした。

「火を噴くってことは、ワイバーンか何かか?」

「どうでしょう。火を扱う魔獣は多いですからね」

「一旦攻撃は止まりましたか」

業火の波が止まったのを確認してリーシャが土壁の維持を止めて視界を確保した。そして見えた光景はあたり一面にくすぶる炎、そして焼かれたワイルドウルフの死体。そして

「炎を纏った、羊?」

「特徴はブレイズシープに一致しますね。強力な魔獣です」

「余裕はなさそうだから、端的に情報よろしく」

「炎を自在に操る魔獣です。そしてこちらの炎系統の攻撃が暴発、最悪逆に使用者が自分の炎で焼かれます」

「厄介極まる相手だね・・・」

「ですのでシズネは炎の魔力は使わないように。出現記録こそ少ないのでどうなるかはわかりませんが、危険な可能性は排除した方がいいかと」

「こっちの火が暴発するってことは油でも使うの?」

「液体を使う様子は見られたことは無いようです。暴発の原因はブレイズシープ固有の能力かそれに準ずるなにかかと」

「有効な手は?」

「強力な魔力による衝撃、もしくは全身を氷漬けにするレベルの水属性氷系統の魔法が必要かと」

「全身を覆うような炎を持ってる相手にはかなり必要そうだね・・・」

「ですので普段なら遭遇しても撤退が推奨されますが、完全に残っているのは私たちだけのようです」

「炎で重症を負って残されてる人もいるかもしれないし、いたらその人たちを見捨てることになる。ここで倒すか撃退するしかないね」

「無茶を言います」

「でも無理じゃないんでしょ?」

「有効な手としてはシズネの妖精剣王としての力ですが・・・むやみやたらに妖精を魔獣と関わらせるのは関係上マズイんですよね・・・」

「・・・あのさ、全力じゃないならファティに頼らずとも力が使えるらしいんだよね」

「・・・え?」

「色々話は省いて結論だけ言うと私の体ってなぜか妖精の力が同化しやすいんだって。んで、私の体が妖精の魔力の性質?を覚えたらある程度なら普通の属性の魔力のように自分で生成して扱えるんだって」

「・・・そんな馬鹿な。そんな体質を持つような遺伝子はとっくに・・・」

「エラム?」

「今はそれどころじゃありません。具体的はどの程度なら使えそうです?」

「うーん、試合の時の七割ぐらいかな?」

「十分なラインです。なら私たちで奴の隙を作り、そこをシズネが叩く。これでいきましょう」

いざ作戦が決まったが、静音が妖精の魔力を使用し始めた瞬間、ブレイズシープが目の色を変えたようにこちらに莫大な炎を纏って突撃して来た。

「めちゃくちゃすぎるだろ!?」

何とか避けれたものの、ブレイズシープが大地を踏みしめるたびに地面が爆炎を生み出し、さらに完全にブレイズシープが走り去った後にさらに大きく爆発したのである。

そして執拗に静音めがけて突撃を繰り返すのである。

「まだ何もやってないのにどうして私ばっかり」

静音は唯一使える雷の魔力で身体能力を強化して避けているが今の状態では攻撃どころではなかった。

しかしその間にターゲットにされていないメンバーたちが遠距離で攻撃を開始。

しかしブレイズシープが炎のは単なる炎ではないのか、あまり効いている様子ではなかった。

しかし鬱陶しかったのかブレイズシープの目が静音からそれた。

そしてブレイズシープは大きく息を吸い込むと途端にほかのメンバーめがけて息を吐いた。

「なんだ・・・?」

「ただの呼吸、ではないようですが・・・先ほどから変な臭いがしますが炎のせいでしょうか?」

「・・・この臭いは油のような・・・まさか!?」

何かに驚愕したのかエラムの目が大きく開かれた。

「ダンさん!!急いで私たちの周囲を風で吹き飛ばしてください!!」

「なんだ、急に・・・」

「急いで!!」

見たことがないエラムの勢いに驚くが、エラムの言を信じてダンは風の魔力を最大限に利用してメンバー周囲から外へと吹く暴風を発生させた。

その瞬間、辺り一面が爆炎で包まれた。

「みんな!?」

自分ばかり狙われるため、あえて囮となっていた静音だけがその光景を目にし恐怖に震えた。

しかしもう一度暴風が吹き、爆炎を払って、そこにはメンバー全員が無事で立っていた。

その光景を見てブレイズシープは忌々しそうに、静音は安堵していた。

「シズネ!!大変でしょうけど、雷の魔力も追加で使わないようにしてください!!」

「どういうこと?」

「奴が扱う炎の素がわかりました」

分散したメンバーが攻撃をしている間にエラムが静音の下に走った。

「奴の炎は油を利用しています」

「でも液体なんて出していたようには見えなかったけど・・・」

「気化です」

「気化・・・でも油の沸点って」

「おそらく体内で発火するよりも早く加熱し気化させているのでしょう。その当の奴自体がその原理を知っているのかは知りませんが、十中八九気化した油類が使われています」

「また厄介な・・・。でもみんなの攻撃で隙はできた!!」

静音が雫を掲げ、一気に自身にある妖精の魔力をフル回転させる。それに気づいたのかブレイズシープがこちらに向けて突撃の構えを見せる。

「リーシャさん!!奴の進路をできるだけ土壁で防いでください!!」

「心得た!!」

リーシャがブレイズシープと静音たちの間に何重もの土壁を作成。ブレイズシープの突撃が始まるが、幾重にもある土壁、さらに側面から集中砲火を受けて徐々に突撃の勢いは薄れていく。

そして雫に溜まった妖精の魔力が最高潮を迎えるころには完全にブレイズシープの突撃は止まっていた。

「これで決める!!」

突き出した雫から莫大な魔力の塊が発生。その余波はブレイズシープに衝突してもなお、後ろの地面を抉るほどの威力であった。妖精の魔力の塊はブレイズシープの纏う炎をたやすく突破して本体に直撃。

ブレイズシープはそのまま爆発するようにして散っていった。

「倒した、のかな?」

別段煙が出たわけではないので、ブレイズシープが立っていた場所は普通に目視で観察できた。

「大き目の魔石が見えます。まず討伐できたようです」

「よかったぁ・・・」

今まで戦ってきたどの魔獣より強力だったかといえばわからない。その時々で私の実力が違ったからである。

「いやぁ、普通はデカイ討伐隊を組まないと倒せないって噂には聞いていたが、ウチには伝説の妖精剣王がついてるからな」

「えぇ、やはりシズネさんはこれ以上ない安心感をもたらしてくれますね」

メンバーが口々に静音の力を称える一方、静音自身はその言葉一つ一つから重圧を受けるのであった。




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