オリオンがクランに加入してから数日後。元とはいえ弓聖が王国に戻ったということで、冒険者ギルドから魔獣の平原への抑えとしての派遣が決まった。
最初はオリオン本人が「自分だけでいい」と言っていたものの、クランメンバーが口をそろえて仲間だからと言い、クラン全員での遠征になったのである。
「まー仲間を思う気持ちもあるけど、オリオンさんの実力も見たいしねー」
とは静音の言である。
「あー、嬢ちゃん・・・じゃなかった、俺もシズネって呼ぶからシズネも俺のこと呼び捨てでいいぞ」
「なにその・・・まぁ、いいや。オリオンってどこを旅してたの?」
「回れるところを回った。だから色んな国や部族の技術なんかも会得したぜ」
「ほー。じゃぁオリオンはクランなんかより師範になった方がよかったんじゃない?」
「師範なんてもんになったら下々まで見ないとだろ?」
「まぁ、そうなるだろうけど」
「だがクランだったら教えるのも自由だし、いざとなったら逃げだせる」
「オリオン最低・・・」
「ま、まぁ、逃げ出しはしないさ・・・」
冗談を交えつつ、フォロムへの道行を終えた。情報収集と休息に一日を使い、いざ魔獣の平原へと踏み込んだ。
「んー・・・」
「どうしたの?オリオン」
「なんだかな。寒気というか・・・ここにはあんまり来たことがないからわからんが、他の歪みがある場所と雰囲気がだいぶ違うというか・・・」
「言われてみれば僅かですが、以前よりも違和感はありますね」
「アリムスも?」
「俺ぁわからん。頭を使うのは苦手だからな」
「こういうのは野生の勘が利くと言いませんか?」
「エラムの嬢ちゃん中々にヒドイこと言ってくれるなぁ・・・」
「待った。先にデカブツがいるな」
「ん~?見えないけど・・・」
「下だ!!」
オリオンが叫ぶや地面から巨大な魔獣が現れた。
「・・・大サソリ、にしては巨大かつ体色が違いますね」
「あぁ、大サソリ自体は見たことがあるが、こいつはまた違う奴か?」
「ともかくまずは様子を見つつ攻撃をするよ!」
しかし陣形を組む前に大サソリが動いた。巨大な鎌腕を突き出してきた。
「大サソリの腕には強い毒がある。こいつぁ専門の解毒師じゃねぇと解毒は無理だ。だから決して当たるなよ!!」
「弱い属性とかある?」
「生態上砂漠の寒さと暑さには強いですが、それ以外は通るかと」
「よしきた!!」
静音は雫をしまい、代わりにそれぞれお緑と橙の色の刀を取り出した。
「一気に行くよ!!」
緑色の刀からは風の刃が舞う暴風が、橙色の刀からは激しい雷が生み出され、
二つは混じり合って雷を纏った風の刃を伴う暴風を発生させた。
雷と暴風の奔流は大サソリに直撃しさらに後方の地面すら抉った。大サソリは雷と風の刃に切り裂かれ、そして傷から感電し致命傷を負った。
「・・・大サソリばっかに注意を向けるな!!ワイルドウルフの群れが来るぞ!!」
どういった経緯があったかは不明だが、ワイルドウルフの群れが接近しつつあることをオリオンが伝える。そして大サソリは一瞬の隙をついて地面へと消えた。
「寸でのところで逃がしたか」
「いいえ。逃げてはいませんね。これはまさか・・・」
ワイルドウルフが近づいてい来ると異変が発生した。地面から大サソリの物と思われる腕が現れてワイルドウルフを掴みそして地面へと引きづり込んだのである。
「一体何を・・・」
「・・・喰らっているんです」
一度に二匹ほどのワイルドウルフを掴み喰らう大サソリ。回復できたのか、再び姿を現した。
だがその姿は体色は黒色が増し、鎌腕は膨張し巨大化。体全体も禍々しいオーラを纏っていた。
「たった数匹のワイルドウルフでこうなるとは・・・」
「こんな生態見たことないぞ」
「大型の魔獣が弱ったら近くの魔獣を喰うのは見たことあるが、ここまで変化するたぁねぇ・・・」
「今ので近寄って来ていたワイルドウルフは逃げたみたいだし、今度こそ追い詰めれば・・・」
クランの弓手や魔法使いが攻撃をしてみるも、並大抵の攻撃は受け付けないのか、弾かれていた。
「どうやら全体的に強化されているようですね」
「だが・・・後ろの方は強化されてないみたいだ」
オリオンの眼には大サソリの背部が変化してないのを確認した。
「どうやって背後を取るか、そしてその背部でも結構硬いんでしょ?」
「あぁ。だが俺の矢なら貫ける」
「後はオリオンをどう背後に回ってもらうか」
「シズネ。先ほどの攻撃はどの程度続けられますか?」
「ん~二本とも魔力は半分くらいになったからさっきと同じ程度・・・あ七金星出せばもう少し続けれるかも」
「ではシズネが暴風で気を引いている間に」
「俺が後ろに回り込んで一撃喰らわせればいいんだな」
「よし、行くよ!!」
静音はさらにもう一本の刀を取り出した。先ほどの二本の刀を大サソリに向け、そしてその二本の間に呼び出した刀を操剣術で配置。二本の刀の魔力をもう一本の刀の魔力で増幅させ、先ほど以上の雷の暴風を生み出した。大サソリは学んだのか、巨大化させた鎌腕を構えて防御の姿勢を取った。
しかし雷と風の刃が次々と鎌腕を切り裂いて傷を増やしていった。
「すげぇな。こりゃ先が楽しみだ」
余裕を持ったオリオンがそう評しつつ大サソリの背後を取った。
「シズネ!!攻撃中止だ!!」
「わかった」
静音の暴風が止むと大サソリは構えをゆっくりと解いた。だがすでに背後でオリオンが渾身の一射を構えていた。
「さぁ、我が一矢、受けてみやがれ!!」
膨大な魔力を集めたオリオンの矢が放たれた。大サソリが反応する前に大サソリの背部を貫き、頭をも撃ち穿った。オリオンの弱点を見抜く穿眼による技であった。
大サソリは頭を貫かれてはどうすることもならずただ倒れるだけであった。
だが倒れた大サソリの死骸は塵となって消えるどころか、生き返ったかの如く蠢いていた。
「ど、どうなってるんだ?」
謎の現象に恐怖するのは当然である。ただエラムだけが静かに、鋭く睨みつけ、杖を構えていた。
「シズネ、そろそろ来ます。とりあえず広範囲攻撃を用意してください」
「え?わ、わかった」
静音が緑と橙の刀をしまい、赤い刀を取り出して構えた直後。
「オォォォォォン!!」
大サソリの骸からワイルドウルフの面影を持った生物が多数現れた。
「な、なんですか、これは・・・」
「シズネ!!」
「うん!!」
禍々しい狼が現れた直後、静音も分かったのか、一気に魔力を増幅。赤い刀を振るって大サソリの骸があったところへ膨大な爆炎の波を放った。
生まれたばかりの狼の魔獣もうめき声すら上げる暇なく炎によって消えていった。
炎が収まるころには大サソリの骸も狼の魔獣も姿を消していた。
「一体、今のは何だったんだ?」
「長年旅していたが見たことがない現象だったな」
(ただ、あのエラムって嬢ちゃんだけは察していた。ただでさえ何も、名前すら見えないってのに一体何を隠しているんだ?)
ただ終わり際にオリオンの眼がエラムを捉えていたが何も得るものがないということを得ただけであった。
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