刀オタクが異世界転移したので剣豪を目指します   作:かんせつ

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第十一話

私の考えを王様に奏上してから一週間が経って、材料が全て揃ったということを聞いて私は再び炉の前に立った。再び私の挑戦が始まった。とはいえ鉧を作る工程は前回と一緒だ。ただ違った点があった。それは立ち上る炎だ。以前はただ燃え盛るだけの炎だったけど、今回の炎は何というか、ただ焼失させるような炎ではなく、何かを清めるような綺麗な炎だった。

そしてできた鉧は前回の鉧とは違って何か輝いて見えるような気がした。こう、宿るオーラが違うというか・・・。神木を使って、霊山の鉄鉱石で作るとこんなにも変わる者かと思った。そしてその鉧の一部を割りだして私は工房に向かった。そこには魔石がぎっしりと蓄えてあり、準備万端であった。

「さて、やりますか」

私は炉に聖なる魔石をくべて炉の温度を上昇させていく。話には聞いていたが、木炭よりも炉の温度が上がるのが早い気がした。そして私は鉧から割り出した玉鋼を炉に入れて溶かし始めた。高温で熱せられ赤くなったのを確認してから私は炉から出して聖剣を取り出す。そして熱せられた玉鋼を聖剣の刀身の上に置く。そして槌で思い切り叩き始めた。図書館で見つけた聖剣の特性、『聖なる物の力を吸収する』を利用し、聖なる鋼を打ち込み邪気を祓う。私の祓いが始まった。槌で叩くたびに少しずつ玉鋼は伸びるのではなく、聖剣の刀身の中に沈んでいった。それを確認して私の理論は間違っていないと安心した。そして叩くたびに何かが出ていくような感じがした。事実、一個目の玉鋼が全て吸収された後に聖剣を調べてみると呪いが弱まっていたと分かった

私はそのまま何度も玉鋼を聖剣に当てて叩いた。そして十数度鍛錬を終えると聖剣にかかっていた呪いが完全に消え去ったと確認できた。何度か鉧から補充の玉鋼を取り出したけどそれでも残った鉧はかなり大きかった。私はウィリアムさんを通じて文官さんに実験は手ごたえがあったと伝えてもらい、その翌々日に王都の選りすぐりの鍛冶師と聖職者が集められて、王様の前で確認が行われることになった。

「どうだ、シズネ。今回の仕事は」

「はい。貴重な素材を使わせてもらっていい経験ができました。聖剣の打ち直しなんて貴重な体験は今後何かの役に立つかもしれません」

そうしているうちに王様が来て御前披露会が始まった。まず文官と鍛冶師の人たちあらかじめ調べてある聖剣が王様に手渡された。記述によると聖剣は王様か、勇者にしか扱えないらしい。しかしこの世界のこの時代に先代勇者の活躍を直に見た人は生きてはおらず、聖剣の輝きを見た人もいないだろう。だから確固たる結果が出るかはわからなかった。

「ふむ・・・祖父から、父から伝え聞いていた通り神聖な気を放っているのはわかるな」

そして試し切りとして兵士が着る鎧の中でも特に重厚な鎧が持ってこられら。王様は鎧の前に立ち、聖剣の力を解放させた。光が集まり、聖剣は輝かしい光を放ち始めた。

「むん!!」

王様が聖剣を振るうと鎧は聖剣によって両断された。両断された面を見ればわかる通り、鎖帷子も鉄のプレートも何もかもが切断されていた。そんな芸当は雫の加護と私のスキルを振る活用しても成し遂げれないだろう。

「ふむ・・・どうやら聖剣は在りし日の力を取り戻したようだな」

王様は嬉しそうに顔をほころばせてそう言った。その発言に集まった人たちも歓喜の声を上げた。そして王様は私の前にやってきた。

「シズネよ。此度は本当に、本当によくやってくれた。礼の言葉も尽くしようがない。感謝する」

「お役に立てて光栄です」

「して、報酬の件なんだが・・・お主が作った鋼を王都の鍛冶師に使わせてみたところ、かなり良い品質で剣を作れるようでな、あれを売ってほしい」

正直王様の提案は渡りに船だった。実際あの大きさの鉧を私は持ち歩くことができないのであるからだ。

「最初の鋼は良いとして新しく作った鋼はお主が持つといいだろう。それは此度の報酬とは別じゃ。して何が良いだろうか・・・」

「それでは空間収納のスクロールはいかがでしょうか?この先シズネは何度も武器を作ることでしょう。ならばあの鋼を持ち歩く必要があります。空間収納があればいつでもあの鋼を使うことができるでしょう」

「おぉ、それが良いな。それでどうか?」

「えぇとと・・・空間収納のスクロールを知らないというか・・・」

「あぁ、まずスクロールというのはね。対象の魔法を習得している人が書き記した文でね、それを読めば他の人でも魔法を学ぶことができるという代物さ。それで空間収納はレベルに応じて自分の空間を作り、そこに物を収納できるって魔法さ」

「確かにあの鉧を保存するのには良さそうですね。しかし、あの神聖な方の鋼を貰ってよろしいのでしょうか?」

「うむ。あの鋼があればとてつもない武器を作ることは可能かもしれない。だがそれは普通の鋼で事足りるのだ。必要以上の力を持つと余計な事を招き入れるかもしれぬ。それに作り方はお主がまとめてくれた故、必要になったらいつでも作れる。よって聖なる鋼はお主に託すとする」

「では、謹んで受け取らせていただきます」

「うむ。いや、それにしてもめでたい!!」

王様は上機嫌のようだった。人類を救うとも言われる聖剣が復活したのだ。喜ばないというほうがおかしいのかもしれない




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