刀オタクが異世界転移したので剣豪を目指します   作:かんせつ

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第百九話

王国中の歪み周囲の魔獣が活発になり数も増えているという噂が広まり、それが事実と認められたころ。

静音は突然レオから招集を受け、魔獣掃討の遠征から外れて王都に戻ってきていた。

「送り出した手前、いきなり戻ってこいっていってすまない」

「いえ・・・」

「で、単刀直入に聞こう。君には今の状態はどう映っている?」

「どう、といいますと?」

「例を挙げるならば、歴史、魔獣の研究者は共に過去の伝承、記録から魔獣の侵攻が近いと嘯いている。

確かに過去の記録というのは情報になる。だが、もし魔獣の侵攻が起きると仮定して、過去と同じとは限らないだろう?」

「つまり?」

「実際に前線に立っていた者の意見が聞きたいということだ」

「でしたら騎士団を派遣して・・・」

「騎士を派遣したところで結局はその者たちも過去の情報を優先して本当に気付くべきことを見逃すかもしれない。だが、君は元は王国の人間ではなかったのだろう?なら王国の人間が持たない目線で物事を見ることができるかもしれない」

「えぇっと・・・伝承とかそういうのをまったく知らないので、予想とかそう言うのは・・・」

「ふむ・・・」

一つ、レオが間を取ったとき、部屋の扉が開き、ウィリアムが入ってきた。

「申し訳ありません。陛下に呼ばれていたもので」

「いい。元々無理を言って来てもらったんだ」

「静音の様子からして良い意見は出ませんでしたか」

「まぁね」

「うっ・・・」

「もとより彼女は情勢に疎いのです。少しは情報を見せた方がよろしいかと」

「そうだな。じゃぁ実際に過去の魔獣の侵攻当時に生きていた君の情報を出してくれ」

「200年ほど前になりますか。あの頃はまだ私も子供で気づいたときには魔獣の侵攻が起きていた、といった感じでした」

「ふむ・・・それは聞いたことある話だ。そういえばその時君は大人のエルフの話を耳にしたと言っていたはずだ」

「はい。姿を見せる魔獣の体色が明らかに違っていたり、塵と消えるのが遅かったりと。当時の大人は不審がっていました」

「今君は前線に出ていない。シズネ、前線の魔獣に同じような点は見えたか?」

「はい。私の仲間がその点に疑問を持っていました」

「その者は、人間か?」

「はい」

「・・・」

「どうした、ウィリアム?」

「いえ、何でも」

「まぁいい。確か今日は父上を主として事前対策の会議だったな。どうだった?・・・まぁ、呼ばれた面子を考えれば想像はつくが・・・」

「不敬を知って言いますが・・・悲惨としか言いようがありませんな」

「?」

「今日集められたのはまず、戦士として経験のあるウィリアム。それから王国を主とした魔獣や歴史の研究者。そして王国の端に封土を持つ貴族たちだ。ウィリアム。ここは誰も近づかせていない。おおよそ

貴族たちは自分の領土の防衛を主張したのだろう?」

「・・・はい。歪みを研究する者たちも文派がありますからな。おそらくそれぞれを抱き込んで侵攻の原点を推測・・・憶測させどの貴族も己が封土に近い場所だと主張し会議は平行線に・・・」

「やはりな。過去に起こった魔獣の侵攻はどこも原点はバラバラだとは言え、まさかこんな愚行をするとは・・・」

「殿下は今の情勢をどこまで把握しておいでですかな?」

「大抵のことは。王国中の歪み付近の情勢は把握しているが、おそらく情報が集まる場所と言えば王宮以上の場所はそうないだろう。その点からみて、東と西の両端が変化が激しい。特に東は原因が不明だからこそより怪しい」

「東というと・・・歪みは確認されてなく、魔素が多いから魔獣が来ているんでしたっけ?」

「おや・・・そういえば君は開拓団の依頼を受けたんだっけか、その時に識者から聞いたのかい?」

「えぇ・・・その、東のことなんですけど」

「何か疑問でもできたかい?」

「その、実際の場を見たことがないのでわからないんですが、歪みがある、もしくは発生する条件にその場の空間は関係しているんでしょうか?」

「・・・いや。まず直に歪みが生まれたところを見たことがあるような人物は聞いたことがない。それに魔獣がいる場所には歪みがあるのは当然だ。だが東だけは特殊だと見るのが一般的な意見だったが・・・」

「何時かは忘れましたが、一人の研究者が歪みは必ずとも地面の上にできるものではないと証した者がいたと小耳にはさんだことがありましたな」

「どれくらい前のことだ?」

「4,50年ほど前ですか。ですがすぐに有識者が否定したはずです・・・が、今思えば少し固定観念に囚われていたのかもしれません」

「まさか本当に地面の下に歪みがあるから東にも魔獣が出現していると?」

「あの・・・東に迷宮とかは無いんでしょうか?」

「迷宮・・・いや、もともと東の土地は生産性も薄く、伝承に残っていることもないから研究する者もほとんどいないはずだ。それに調査すら最近行われて開拓地が増えたところだ」

「もし、地面の上にしか歪みが生まれないとしても、地下にある迷宮の地面の上に歪みがあるとしたらどうでしょうか・・・?」

「否定はできないな。なるほど。一般常識を知らない君ならではの発想だ。あぁ、貶しているわけではない。ふむ・・・となると東にも歪みがあると仮定した方が情報統制しやすいか」

「しかしそうなると領土防衛を主張しなかった東側の貴族も声を上げてしまう可能性がありますが・・・」

「そこだ。過去の魔獣の侵攻は何も一路に限定されていない。一路からの断続的な侵攻。同時に多方面からの侵攻。時間差での多方面からの侵攻。予想できる例は全て悲しいが踏襲している」

「北の情勢はどうなっていますか?何分最近は王都にいるよう言われている身でして」

「北か。戦線国には大きい異常は出ていないと聞く。こちらで起こっているほどの魔獣の活発化は確認されていないが、まったく活発になっていないというわけでもない。山脈の方は・・・元々手が付けられない土地だから情報はほぼ無い」

「西から魔獣の群れが出たとして、東に出れば目的はここになりますか」

「そうなるだろう。魔獣にどれほどの知性があるかはわからないが、歪みを生み出せる可能性を持つ魔族がいる以上油断はできん」

「東西で行動を起こし最上位の戦力を持つ王国を封じ、北を動かして本命の戦線国を落とすとされると厄介ですな」

「あの、戦線国って?」

「あぁ、王国の北。大河を超え大森林地帯を抜けた先に一つの小国がある。対魔獣の勢力がお互いに支援して作った戦うための国。そしてその先に・・・」

「魔王の領域があるんだよ」

「魔王の・・・」

「王国南西を本拠とするエルフ、そして西から扇状に国が多数ある。逆に東にはほとんど国がない。だが特に北西に位置する国からすれば魔王の領域に壁がないと支障をきたす。そして北西を魔王に取られると勢力を増やされるのは明らかだ。故に多数の国々が魔王の視線をそらすために戦線国を作ったというわけだ」

「逆に戦線国が落ちれば反魔獣の壁が減るのは当然だ。特に北西は顕著だ。だから様子見もあまりできないわけだが・・・」

「・・・北を動かされるととウィリアムさんが言っていましたが、北には戦線国以外に何かあるんでしょうか?」

「あぁ。戦線国から南東。こちらからいう北東の位置に確認されている歪みで最も大きいものがある」

「最大の歪み・・・」

「そしてその土地は特に荒廃が激しく気温の変化も激しくとても人が住める環境ではない。故に調査すらできなく静観するばかりというわけだ。だが最大の歪みがあるということは一定数以上の魔獣が生まれている可能性がある」

「だから様子見ができないわけですか」

「現状、今王国が東西から挟まれたらまず王国の動きは封じられる。西側からの援助もまず元の西の歪みに近寄らならなくてはならいから頼りにはできないし、事前に求めることも理由が薄くて無理だ。だからもし最悪北の大歪みにまで動かれるとマズイわけだ」

その言葉で部屋の雰囲気は静まり返った。

「だが収穫がなかったわけではない。ウィリアムの記憶にある識者の説とシズネの説が正しければ東の対処の理由は増えて楽になる。二人とも、足労感謝する」

レオのその言葉で今日の話は終わりになった。




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