刀オタクが異世界転移したので剣豪を目指します   作:かんせつ

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第百十話

フォロムに戻った静音は再び魔獣との闘いに身を投じていた。日に日に増える魔獣との終わりの見えない戦い。それに嫌気がさしてフォロムから離れる冒険者もいれば、稼ぎ時だとやってくる冒険者もいた。

だが出てくる魔獣は強くなるばかりで、舐めてかかった冒険者が返り討ちに遭うことも増えてきていた。

そんな中、歪みの方角からフォロムへ向かって大規模な魔獣の群れが侵攻していると情報が伝わった。

フォロムはすぐに駐在している冒険者を招集し防衛の態勢を取った。

魔獣は足の速いワイルドウルフを先頭に、ミノタウロスが戦線を支えるように続いていた。

ワイルドウルフは倒せても、数が揃ったミノタウロスには生半可な実力では太刀打ちできない。

その中で頭一つ抜けて武勇を見せる集団がいた。静音率いるアイアン・イグニスのメンバー達である。

静音を筆頭にオリオン、そしてエラムの三人が特に目覚ましい活躍を見せていた。

静音の変幻自在に現れる刀が魔獣を正面から両断し、

オリオンの強弓から放たれる剛矢が魔獣の急所を確実に貫き、

エラムの見たこともない大規模広範囲の魔法が魔獣の後方を薙ぎ払っていた。

静音とオリオンの実力は過去が証明してくれているが、エラムの魔法に至っては日に日に種類や威力が変化していて、不明なままである。

魔獣は不明だが、人間は疲労にも限度がある。だが襲ってくる魔獣も減ってきていてあと一押し、誰もがそう感じていたその時だった。

「な、何か奥にデカイ影が・・・」

誰がそう言ったかはわからない。だが戦場全体に響き渡る轟音とも呼べる咆哮が轟いた。

「ただのデカブツの咆哮じゃねぇな。何つーか複数の咆哮が重なった感じだ」

「と言うと複数の大型が出たってこと?」

「いえ、そうではないようです」

エラムが指さした方角に異様に高くそびえたつ影が三つあった。

「三つの影・・・まさかとは思うが・・・」

「嫌な方の伝説の登場のようです」

「嫌な方の伝説?」

「伝説の魔獣、ヒュドラのお出ましです」

三又に分かれた首それぞれが眼下にいる人間全体を見下ろしていた。

「っ?」

そして一瞬だが静音はヒュドラの首三つと同時に目が合った気がした。

そしてヒュドラはすぐに行動を開始した。三つの頭を地面に突き刺した。

「っ!!全員急いで全ての魔獣から離れてください!!すぐに!!」

「どうしたんだ急に慌てて」

「いいから離れますよ!!」

エラムは慌てるようにして皆に魔獣から離れるよう促した。元々伝説のヒュドラが現れたと広まった瞬間逃げ出すものも多く、残っている冒険者もエラムの慌てた様子を見てか、それとも勘からか、魔獣から離れていった。

そしてその刹那。残っていた魔獣が動きを止めた。

「な、なんだ?離れるどころか今がチャンスじゃねぇか!!」

一部の冒険者が魔獣が完全に凍ったように動かなくなったのを見て魔獣に接近。

すると突然魔獣が爆発したのである。

「ひっ・・・ひぃぃぃ!!」

僅かな恐怖だろうと、未知の恐怖は伝播しやすく、瞬時に冒険者勢は潰走し始めた。

「どうする?退くなら今だが・・・」

「さすがにヒュドラを放置しているなんて選択肢はないでしょう」

「倒せる方法はあるの?」

「ヒュドラの伝説は?」

「確か『首の数だけ強く、そして一つ首を落としても再生する。それは核となる部分が絶えず体中を移動している』からだったか?」

「そうです」

「あ、オリオンの穿眼だったら」

「あぁ、確認できてる。だが移動が点々としていて狙いを定めている間に動かれると無理だな。だが、核っつーのが移動するのは頭か胴体の四か所だけっぽいな」

「そこで提案です。三人がそれぞれ頭を吹き飛ばし核の移動場所を制限し、残った胴体の核を討つ。どうでしょう?」

「どうっつたって伝説の魔獣なんぞの対処なんてわからん」

「よし乗った」

「いいのか?それで」

「こんな時に場違いな提案なんてしないでしょ」

「俺たちはどうすればいい?」

静音、オリオン、エラムの三人の行動は示されたが、残ったクランメンバーとわずかな冒険者たちは逃げずに残っていたが何をすればいいかわからないままであった。

「皆さんは近づいてくるであろう魔獣の迎撃をただし足を止めたら・・・」

「爆発するんだったな。わかった」

「あんまり言いたくはないが・・・オリオンが名のもとに過去の伝説を討つ!!」

「「「おおおおお!!」」」

元とは言え王国随一の弓手である弓聖であったオリオンの号令の下、残った冒険者は動き出した。

できる限りヒュドラへの道を切り開くべく、一条の形で魔獣の群れに突撃した。

「みんなは動き出したけど、私たちはどうするの?」

「静音は妖精剣王の魔力で、オリオンさんは放てる最大の攻撃を両方とも遠距離で用意してください」

「わかった」

「おう」

三人がヒュドラめがけて攻撃を用意し冒険者が一丸となりつつあったその時。

「っ!!先に動かれましたか!!」

ヒュドラの頭がひと際大きい魔力の塊を作り始めていたのである。

「やべぇ。似たようなものは見たことはあるが、ありゃデカすぎる。全員ヒュドラの正面から離れろ!!」

オリオンが警鐘を鳴らすも、合わせたように魔獣たちが進路を妨害し始めたのである。

「ダメ!!」

「静音っ!?」

間に合わないと悟ったのか、静音は唐突に冒険者たちの最前列へと飛んだ。

「いくよ。同調、開始」

用意していた攻撃を切り替えて、雫に魔力を流し始める。それと同時にヒュドラが作り出した魔力の塊を冒険者めがけて放った。

「っ!!」

だが静音も準備していた妖精の魔力で作り出した塊を刺すようにしてぶつけた。両者は中間地点で衝突し巨大な爆発を生み出した。余波で衝突地点付近にいた魔獣が被害を受けたが、冒険者への被害はなかった。

「た、助かった・・・」

「静音っ!!」

「ったくすっげぇ無茶しやがるな」

静音の横に遅れてエラムとオリオンが立った。両者ともに攻撃用意はできている。

「結果ですが道は開けました。今がチャンスです!!」

「おう!!」

「うん!!」

三人は攻撃方法を中距離に変更し、一気に仕上げにかかった。ヒュドラも同時に魔力の塊を生成し始めたが今度は三人が早かった。

「やぁ!!」

「我が眼が全てを見抜き、我が矢は全てを貫く!!」

「我らが同胞が練り上げし秘術、とく受けよ!!」

「え、二人してなにそれ・・・」

ともかく三人の攻撃はそれぞれがヒュドラの頭を撃ち抜いた。撃ち抜かれた痕から腐り落ちるように首が消え始めた。

「うまくいきましたね。後は胴体ごと核を・・・!?」

だがそんなに上手く事は進まなかった。

「なんだよ・・・あれは・・・」

「化け物・・・化け物だ・・・」

残ったヒュドラの胴体から突如巨大な口が出現したのだ。

「何をするかわかりません。退避してください!!」

エラムに言われなくとも再び冒険者たちは距離を取った。それとすれ違うように魔獣たちがヒュドラの胴体にできた口の中へと体を投じていった。

「こいつも魔獣を喰らいやがった・・・」

「あっ・・・首が・・・」

そして今まであった首は全て腐り落ちた。しかし再生するかの如く新たな首が生えてきた。

だが、生えてきた首は三つではなく、九又に分かれていた。

「首が増えた・・・エラム、こんなことってあるの?・・・エラム?」

「馬鹿な・・・首が再生するのはともかく、増えるなんてことは・・・」

ヒュドラの変化にエラムが謎の焦りを見せていた。

「こんなことが起こるのは・・・先祖返り・・・始祖の血!!」

「エラム、どうしたの?しっかりして!!」

「・・・すみません。ですが・・・あのヒュドラは・・・」

「何かわかったの?」

「もともとヒュドラは全く人目に現れないから伝説とされるのです。ですがあのヒュドラは・・・

伝説にすら残っていない、始祖のヒュドラに近づきつつあります」

「始祖の・・・ヒュドラ・・・」

静音の前に始祖という伝説にすら残らなかったという存在が現れたのであった。




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