王都では悲報と朗報の両方が混じり合い特殊な活気を生み出していた。
フォロム付近に現れたという伝説の魔獣、ヒュドラ。元弓聖オリオンが立ち向かうも、
数多の試練にさらされ行く手を阻まれた。だが妖精剣王がこれを見事討伐した。というのが王都に流れている噂である。
民は口々に英雄譚を喜ばしいように話すが、王国上層部は頭を抱えていた。
本格的に魔獣の侵攻が見えてきているからである。それどころかヒュドラが出てきている時点でもう始まってしまっているのかもしれないという意見まで出てきている。
先兵として伝説の魔獣が出てきている以上、今回の侵攻は予想だにしない規模になるという恐怖があった。
ただヒュドラの頭が増えたという事実はほとんど伝わっていなかった。戦っていたのが静音のクランとわずかな冒険者たちだけで、そういう人物は自ら喧伝するような気質は持っていないからであった。
「ねぇ、エラム」
「・・・なんでしょうか?」
「始祖って何?」
王都の噂など知らず、静音たちはフォロムの町で先日の戦いの疲れを癒していた。ただ静音は気になることがたくさんあったため、その発言をしたエラムに聞いてみたわけであった。
「・・・あなたはまだ知らなくていいことです」
「まだ?よくある含みのある言い方だけど・・・じゃぁエラムがやろうとしていた広範囲の攻撃は?」
「それは話せません。話すだけでも危険ですので」
「呪いかそういった類を使うの?」
「まぁ、似たようなものです」
「・・・エラムっていくつ?」
「この流れで答えるとでも?」
冗談を交えつつ質問してみるも、まったく相手にされなかった。ただエラムの反応は嫌そうではなく、ただばつが悪そうな感じであったのがまた疑問を膨らませるのであった。
ただ別の変化もあった。静音の刀たちが意思を持ったかのように動くのであった。
雫と七本の星刀がそうであった。逆に時雨はなぜかまったく反応を見せてくれないままであった。
静音からすればどの刀も心を込めて打ったはずであるのに時雨だけ何もないということに悲しさを感じていた。まぁ、反応をよこせということ自体業があるような考えにも見える訳なのだが・・・。
ただ刀たちが意思?を持ってから刀の性能も上がっていた。これは静音の考えていなかった嬉しい誤算であった。それにヒュドラ戦で使った妖精のように変化したこと。これは一体どういう原理なのか不明なままであった。
ただ何かを知ってそうなエラムは答えてくれそうにないため、ファティを呼んで妖精郷に連れて行ってもらった。
『なるほど・・・妖精剣王に』
「それで実際はどういったものなのか知りたくて。でも伝説としか伝わっていなくて・・・」
『私たちの間でも妖精剣王は伝説として残っています。ただこれは伝わっていないでしょう。初代勇者。この者が最初の妖精を生み出し、妖精剣王と呼ばれるようになったと』
「え!?勇者が妖精を生み出したんですか?」
『はい。そう伝わっています』
静音の認識では妖精は自然から生まれたと思っていたのが実は勇者が生み出したという事実。これはさらに静音を困惑させた。
「一体どうして私が妖精剣王・・・初代勇者と同じ力を・・・?」
『それは・・・あなたも妖精に縁があった、としか考えようがありませんね』
「縁、ですか」
『過去にも勇者と呼ばれた人が妖精と触れ合うも、妖精剣王と化すことはありませんでした。一体どういう理由なのかは不明なのですが、そう落胆することは無いでしょう』
「そうですか・・・。いきなり訪れたのにその上色々とありがとうございました」
収穫はあったが、別の謎もまた得てしまった。
眠りから目覚めた静音。ただ今日は妙な胸騒ぎがしていた。朝の空気を吸ってもいつも味わう新鮮さが無い気がしていた。
「静音」
「あ、エラム」
後ろから声をかけられるも、声をかけたエラムの顔は今までに見た中で最大に真面目な顔付きだった。
「始まりますよ」
「・・・聞きたくないけど、何が?」
「魔獣の侵攻です」
災厄とされる魔獣の侵攻の開始。それがエラムの口から告げられたのであった。
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