刀オタクが異世界転移したので剣豪を目指します   作:かんせつ

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第百十六話

「通すな!!一匹たりとも後ろに通すな!!」

「言われなくても!!」

王国全土に招集がかかってから数日後。静音たちは戦場にいた。ここにいるのは誰もが命を賭して王国を守るべくして集まっている。中には稼ぎ時だと言っている者もいたが肝心の雇い主である王国が滅んではタダ働きとなる。故にその者らも王国を守ろうとするであろう。

だが、戦闘前に静音はエラムから一言、忠告を受けていた。

「え?それは力を出し惜しみしろってこと?」

「端的に言えばそうなりますね」

「どうしてさ。こんな大事な時にそんなことしたら・・・」

「そんなことをすれば余計に死者が増えますよ」

「どうして・・・」

「例え手に届かぬ栄誉でも、身近にそれを得れる者がいれば、自分もと思い無謀な賭けをするからですよ」

「要するに目立つな、ってことか・・・じゃぁオリオンにも?」

「あの人はそこまで目立ちません。何せ今回は武器ごとに分けられるのですから。逆にあなたはいつも突出する。遠距離の役割を持つ人は後ろに配置される点からして今回あなたは余計に目立ちやすいのですよ」

「うっ・・・とりあえず抑えるけど、危なくなったら・・・」

「とっておき以外は使ってください」

「・・・もうバレてるの?」

「ともかく私も後ろの配置になります。できるだけ妖精の力は使わないでください。魔族が紛れ込んでいたら厄介ですので」

「何かあるの?」

「ただあなたが妖精の力を持っているということが知られるのがマズいんです」

「?」

「ともかく、リーシャさんを、クランメンバーを頼ること。頭に入れておいてください」

そんなことで静音は今クランメンバーと息を合わせて戦線の維持に努めていた。波状攻撃を仕掛けて魔獣の圧倒的物量による攻撃を凌いでいた。

そんなか戦場に角笛が鳴り響いた。

「この合図は」

「大規模遠距離攻撃が来る合図だ。打合せ通り・・・」

「魔獣を怯ませつつ退却だったね!!」

静音は雫と時雨それぞれに炎と雷の魔力を回充填させた。ダン、リーシャも準備は整っている。

「いくよ!!」

「おう!!」

「ああ!!」

雷と炎と風の奔流。そしてそれを受けた魔獣の屍を超えて見えたのは積み上げられた即席の土の壁。

他の近接戦士たちはあらかじめ持たされた魔爆石を投げて魔獣の隙を作って退却していた。

そして近接戦士たちが退却したところをまず矢の雨が降り注ぎ、その後に魔法の嵐が吹き荒れた。

様々な魔法が魔獣へと落ち、魔獣を粉砕していった。その光景を見てある者は恐怖する。

「これだけ倒したってのに、魔獣には心が無いのか?」

そう。心、考える脳があれば恐怖し進むことを躊躇するはずである。しかし魔獣は関係なしとばかりに

ただ進んでくる。それが誰もが恐ろしいと思っているのだ。

そして合図の角笛が鳴り響いた。

「よし。突撃だ」

そして近接戦士たちが雄たけびを上げて再び魔獣の群れを押しとどめるべく突撃を開始する。

それが日が落ちるまで続いた。誰もが汗を流し、荒い呼吸をして、沈む夕日など見ずに魔獣と相対していた。そんな中ひと際大きい鳴り物が鳴り響いた。

「総撤退の合図だ。皆、退けー!!」

戦場に続いて野太い声が響いた。それを合図に防壁には斜路となる板が何枚も立てかけられて近接戦士はそこから防壁内へと撤退した。全員が防壁内へと入ったのを確認してから斜路の板は外されて、近寄る魔獣は遠距離攻撃を持つ者らが迎撃していた。

「水をどうぞ」

補給班が水などを渡している中、静音に声がかかった。

「いやはや、ご苦労さんだったな。嬢ちゃん」

「あ、ガロムス司令官さん」

「綺麗な引き際、そして結束力。お前さん達のクランは優秀だなぁ」

「ありがとうございます」

「近接戦士の活躍もそうだが、あのエラムって嬢ちゃんは一際離れしていたな」

「エラムが・・・」

「あ奴は魔獣の攻撃順路をすぐさま予測し最善の攻撃を提案しておった。どこか軍にでもおったのか?」

「いえ。同じ冒険者ですよ」

「そうか。ではお前たちも打合せ通りに」

「はい。移動を開始します」

静音たち冒険者は馬車に乗って一つ後ろの防壁へと移動し始めた。その間、王国軍の兵士たちが遠距離で抗戦し時間を稼いでいた。

「司令官、こちらも準備整いました」

「よぉし。全員馬車に乗りこめー!!」

ガロムスの合図で防壁にいた兵士たちが瞬く間に馬車に乗って撤退した。

あっさりと防壁を捨てたのには訳があった。夜の休憩の時間を稼ぐには一つ工夫が必要だった。

「引っかかってくれるといいんだがのう。魔爆罠に・・・」

魔爆罠。ほとんどの戦士たちが後ろの防壁に移動した後、工兵が周辺の地面に魔爆石を撒いていた。

魔爆石はなぜか魔獣だけに反応し爆発する石である。故に撤退後の時間稼ぎに罠として仕掛けたのである。そして魔獣には防壁は案外高く、魔獣は攻城兵器など持ってないので防壁を上るのにも苦労する。

そんな中で足元が爆発すれば少しは足止めできるだろうという考えである。

さらなる後方では新たな防壁が日夜かけて作成中であり、王国はこの野戦築城を使った防衛戦術で魔獣の侵攻に対処していくのであった。




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