刀オタクが異世界転移したので剣豪を目指します   作:かんせつ

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第百二十話

静音率いる別動隊は夜間行軍の末、魔獣との距離を5、6里ほどまで縮めていた。

「さてシズネ殿。いかがしますか?」

そう尋ねるのはガロムスが着けてくれた補佐官のレイネンスだった。

「よく風を見るとこちらが風上。いずれ近づけば近づくほど魔獣に気づかれるでしょう」

「では一旦休憩にしましょう。そこからは・・・」

「戦闘になりますな。しかし防壁が無い状態でとなれば士気は下がりましょうな・・・」

そのマイナスをどう抑えるか。静音は手段は持ち合わせているものの、使い方をまだ見つけれてはいなかった。

戦士たちは思い思いに休憩してはいるが、酒だけは禁じていた。当然酔ったままで戦場になど出れるわけもなく、指示も聞いてくれるかわからないからである。

だが休憩も終わりに差し掛かった時、運の悪いことが起きた。

「た、大変です!!魔獣の群れが・・・え、何・・・この数は!?」

どこかのパーティーの魔法使いが魔水晶で魔獣の動きを見ていたらしいのだが、伏せていた魔獣の数について思わぬ形で広まってしまったのだ。

「お、おい・・・防壁もないのにどうやって・・・」

「まさか肉壁とか言わないだろうな?」

不安が広まる一方、静音は手遅れになる前に始めることにした。

「レイネンスさん。魔獣との距離は?」

「既に一里以内です」

「わかりました。みなさん!!壁は私が用意します!!」

「用意ったってこの広さにか?」

「みなさんには討ち漏らしを倒してもらいます!!」

「なら誰が前線に立つんだよ」

「それは私たちです。ファティ、お願い」

『ワカッタ!!』

ファティが空へと飛ぶと手から一種の空間の穴を生み出した。

「え・・・嘘だろ!?」

その空間からは妖精が次々と現れたのである。しかもただの妖精ではなく、武装した妖精であった。

その装いは静音が着ている武者鎧の本格版。さらに手に持つのも静音と同じ刀。

鎧には以前倒しアーマー・インセクトの甲殻を使い、刀には貴重な聖なる鋼のみで鍛えた物を用意した。

とも妖精が嫌う鉄は使わずに自然由来の素材で作られた品であった。

その武者妖精がおよそ20人ほど地面に降り立った。

『シズネー。ドウスレバイイ?』

「みんな等間隔に横に並んで。あ、幅は得物の届く範囲でお願い」

『ワカッタ』

武者妖精たちが等間隔に並ぶと一種の戦列が生まれた。

「これが・・・隊長の言っていた壁?」

「えぇ。みなさんはこの後ろで戦ってください」

「ま、まぁ、危険が無いならそれに越したことは無いが・・・大丈夫なのか?」

「えぇ。大丈夫です」

「シズネ殿!!」

そう話している間に嫌でもわかるぐらいの足音が聞こえて来た。

「では他の人の指揮をお願いします」

「シズネ殿は?」

「無論、最前列にて」

「・・・ご武運を」

静音は最初から妖精の魔力を展開。そして今回は妖精たちにもブーストをかけることにした。

どうやらファティ達は鎧などを動かす場合にはどうしても出力が落ちるらしい。そこで静音が足りない分を補うことにした。

そして静音の妖精の魔力と本来の妖精たちの魔力が同調すると、武者妖精たちが輝き始めた。

その光景を見て、一人涙を落とす人物がいた。

(懐かしい・・・やはりあなたはいつだろうとどこだろうとあなたらしく魅せてくれる・・・)

「エラム・・・涙なんて流してどうかしたのか?」

「いえ・・・ふと静音の後ろ姿が昔お世話になった人と重なったので」

「そうか」

そんなことは知るはずもない静音は雫を天に掲げ妖精剣を生み出し妖精剣王となっていた。

「さぁ、どこからでもかかってこい!!」

静音の響く声とともに近づいてきた魔獣たちも一斉に襲い掛かってきた。

だが、所詮は烏合の衆。これまで幾度も戦い続け、そして格別の力を得た静音の前に生まれたばかりの魔獣たちでは到底歯が立つわけがなかった。

突出した静音が巨大な妖精剣を振り回して魔獣を次から次へと切り払い、静音を避けて近づこうとする

魔獣は武者妖精たちによって切り刻まれ、なんとかそれを突破できたとしても万全に構えていた戦士たちによって残さず討たれていった。

時々武者妖精たちの隙間から見える静音の一騎当千の働きを見て感化され前線に行こうとするのをレイネンスが抑えていた。だがただ抑えていたわけではなかった。前線に行こうとする数が一定を超えたのを見計らって静音と打ち合わせた通り、前列に行くことを許可した。その中には当然アイアン・イグニスの

メンバー全員もいた。

人と妖精が協力して魔獣を討つ。誰もが頭によぎる伝説のおとぎ話。それを今、自分たちが体験している。これほど奮い立つのは初めてだった。

感化された戦士たちの活躍あってか、戦闘から4時間後には魔獣の別動隊は全て討たれた。

「あれほどの魔獣の数をこれだけの手勢で・・・妖精とその絆と信頼が力となってくれた。まさに伝説の再来だ・・・」

勝利に湧き上がる戦士たち。その中で武者妖精たちは別のことを気にしていた。

『シズネー。終ワッタラちゃんトお菓子モラエルンダヨナ?』

「うん。期待していてね。でもまた戦ってもらうかもだから、はい」

一応先に用意できていたお菓子を静音は妖精たちに振舞った。

そしてこの場にいる全員が魔獣侵攻から初めての完全な勝利に沸き立っていた。




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