静音が開けた大穴からは僅かだが絶えず魔力の粒子が漏れ出ていた。
そして魔力の粒子は地面に落ち、新たな花を咲かせるのであった。
大穴が空いてから、魔獣が襲ってくることが激減したのである。この花に近寄ることすらすることなく、
こちらが餌を用意してやっと襲ってくるほどだった。
「さて、魔獣の侵攻を謎のじゃが止めることはできたのじゃが・・・今いる数を討たねば、突然状況が変われば不利になるのは明白じゃ。こちらと同じように後ろから増援が来るかもしれんわけじゃしな」
「あの花が採った後も咲いてくれれば良いのですが、地面から離れたらすぐ枯れるというより散って消えていくともなればそのまま見ているしかないですな」
「シズネ殿、何かあの花について知らんかの?」
「えぇっと・・・どうやら私が使った魔力の塊、あれが妖精の物と似ていたようで、その私の魔力の塊と反応として現れたとしかわかりません・・・」
「ふむ・・・、穴が開いている以上、魔力はあふれ出ている。以前のような大規模な噴出は無理でしょうか?」
「場所を変える必要もありますし、それにどれほど地下の魔力の塊が残っているかは不明ですので、同じことはできないでしょう」
「では次の議題に進みましょう・・・と言っても言いにくいのですが・・・」
「軍勢の厭戦気分じゃな」
「・・・はい。大穴発生前から軍勢の中で厭戦気分が蔓延し始め、大穴発生以降それが爆発したというところです」
「大方魔獣との戦闘も無しに待機していることへの不満といざ戦闘になったとしてもシズネ殿の奮戦以上の 武功は挙げれないという不満からじゃろうな」
「えぇっと・・・私何かマズい事でも・・・?」
「いや。シズネ殿はこれ以上ないほど王国に尽力してくれている。じゃがそれを快く思わぬ者もいるということだけなのじゃ。じゃがシズネ殿がそれを着にする必要はない。ワシらからすればシズネ殿の働きあればこそ今ワシらが戦えていることも同義。これからも何かあれば力を貸してくれ」
「はい、喜んで」
「では次の議題を・・・」
といった具合で淡々と会議は進んでいった。だが次はエラムの厳しい問診が待っていた。
「えっと、私何かした?」
「いえ。ただあなたの状態は適度に観察しなければならないので」
「それって誰かからの命令?」
「いえ、私の目的のためです」
「エラムって謎多いよね~一個くらい話してくれてもいいんじゃない?」
「話せるほど軽いものは持ち合わせていないので」
「それでも何か困ってるのなら助け合うのが仲間ってものじゃない?」
「別の方面でもこちらに染まりつつありますね」
「?」
「精神的にはやはり変化が著しい・・・体質に関してもまた変化あり・・・」
「えぇっと・・・私の身体の変化って、以前言っていた精神云々とか妖精とかのこと?」
「・・・それもありますが、言ってしまうとこれまた問題なので黙って診させてください」
「えぇ・・・別に、病気ってわけじゃないんだよね?」
「判別し辛いですね」
「えぇ!?不安をあおらないでよ」
と言っても魔獣が襲ってこなければやることが無いのも事実だった。いくら報酬がもらえるとはいえ、溜まって待機していろと言われれば不満がたまるのもわかる。飲酒も制限され娯楽も少ない。
こんな状態ではいつ雇われ冒険者たちが帰りかねないのも事実だった。
「大穴、開けたのマズかったかな・・・?」
「あれが無ければ王国の消耗は大きかったでしょう。少しのマイナスよりも得たプラスのことを考えれば良いほうです」
「うーむ・・・私も工房が恋しくなってきたよ・・・アルとミーナは大丈夫かな・・・?」
「その二人を危険な目に合わせないためにもここで踏ん張るんです」
「そうだよね、がんばらなくっちゃ。あ、エラム。大穴周辺に咲いている花、何か知らない?」
「妖精花ですよ。一度妖精郷に行ったことがあるあなたなら気づいていたと思っていたのですが・・・」
「あ、そういえば雰囲気に似ているかも。妖精花って妖精郷以外でも咲くことってあるの?」
「いえ、今回のようなことが無ければ咲くことは滅多にないでしょう。あれが妖精の副産物である以上、目にしたことがある人物はごくわずか。知っている人は少ないでしょう」
「妖精花ってどのくらい咲くの?」
「大穴から魔力が溢れているだけ咲くので、残量にもよりますね。穴ができた分、オリオンさんも見やすくなったでしょうし一度見てもらうのはどうでしょう」
「わかった、頼んでくる!!」
そういって駆け出して行った静音の背中を一人悲しくエラムは見ていた。
「あなたは戦いを知らなかったはず。命を賭けるほど団結することも知らないはず。それなのに今はそれを実行している。この変化に気づかないのですか?」
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