私はレオ王子からの剣の鍛造を引き受けたわけだが・・・。
「なぜ王子がここに?」
「うん?興味があるからだよ。王都の誰もが作ったことのない形の剣を作る君の鍛冶というのを見てみたくてね」
「他の方々のは見たことがあるんですか」
「うーん最初の方は見ていたけどどれも同じ光景でね、飽きてね」
ハッハッハと笑うレオ王子。かなりのプレッシャーがかかるのだが相手は気づいていないのだろう。
とりあえず私は炉に割った玉鋼を入れ工程を始めた。
作り方はただひたすら叩いていく鍛錬法。レオ王子もどうせ飽きるだろうと思っていたけど、当の本人は目を輝かせてみていた。一応集中させてくれるのか会話は無かった。だが時々声を上げるのは勘弁願いたい。集中力が切れるから。
「よし、できた」
私は焼き入れを終えて叩き上げた刀身を水から引き揚げた。刀身にはきっちりと波紋が浮かび上がっていた。そして今度は同じ鋼で鍔を作り、次に木を柄の部分に合わせて切り、柄の土台を作っていく。本当は柄に鮫皮を使いたいのだが持ち合わせがないので王都で買った草食獣の皮を使い、柄を仕上げた。そこで一応の完成となるのだが、今回は鞘まで作ることにした。でもこれだけの作業をすると日も暮れる訳で、レオ王子も帰り、私も泊っている宿に帰った。一応明日は鞘を作るから地味だとは言っておいた。
そして翌日。まぁ地味な鞘作りを見るようなモノ好きなんていないだろう。レオ王子もモノ好きの仲間ではなかった。
私は一人で作業を開始する。完成した刀に合わせて用意した木材に線を引いていく。それも二本。そしてそれに沿って木材を彫っていく。血や錆びのことも考慮して余裕を持って掘るが、緩いのも問題なので丁度いいサイズを上手く彫る必要があった。そして数時間後に彫る作業は完了した。次に木材同士を接着剤でくっつける。そしてくっついたのを確認したら今度は木材を鉋で削って丸みをつけていく。そしてそれが終わると塗料を塗る。今回は黒の塗料を塗った。今回は特に要望があったわけではないため鞘の装飾は行わなかった。そして刀を鞘に納めて完成となった。
「あ。そう言えば刀の性能を確認してなかった」
〈銘々無し〉
・作成者 石川静音
・分類 不明
~ステータス~
≪鋭さ≫ A
≪攻撃力≫B
≪耐久≫ S
≪重さ≫ 軽い
≪価値≫ 高価
≪魔種特攻≫
こんなモンだった。耐久が高いのは驚いたが他のステータスはちょっと上くらいかなと思った。加護も≪魔種特攻≫くらいで雫に比べれば少ないと感じた。これでいいのだろうか?と思いつつも完成した翌日に王宮にいるであろうレオ王子を訪ねた。すると私がいずれ来るであろうと伝えていたのかすんなりと通された。
「いやー待ってたよ。それでそれが俺の剣かい?」
「はい。どうぞお納めください」
「うん。確かに。で、抜いてもいいかい?」
「どうぞ」
一度抜き方を覚えれば日本刀もすぐに抜けるだろう。レオ王子もすんなりとはいかなかったが抜くことができた。
「うん。ただの鉄では見られない光沢だ。この紋様も良い・・・」
おうっと?どうやら完成品のできにトリップしてしまったご様子・・・。トリップするほどのできなのか?そして体感十分後くらいにレオ王子が正気に戻った。
「うん。これほどの剣は見たことが無い。よく作ってくれた。感謝する」
レオ王子が突然頭を下げた。
「頭をお上げください、殿下。流浪の人間に殿下が頭を下げるとは・・・」
「いや。尊敬するべき人に頭を下げないのはおかしい。尊敬に身分の違いはない」
そうキッチリと、まっすぐな瞳でレオ王子はそう言った。
「あ、ありがとうございます」
そしてレオ王子は傍にいた人に刀を渡して何か話し始めた。ちょっと驚いた声が何回か聞こえたが何も聞かなかったことにしておく。
「さて、報酬だけど・・・1000万ゴールドでどうだろう?」
「いいい、一千万!?」
「不服かい?」
「いいえ。何分田舎の出身の見故お金の価値というのがあまり実感できていたなくて・・・」
「うーんそうだな。これだけあれば最低でも20年は不自由なく王都で暮らせる金額だね」
うわーそんなに?そんなにもらちゃっていいの?
「はい、それで構いません」
OKしちゃった。してしまった。20年も不自由なく暮らせる金額を得てしまった。
「そう言えば君王都の外から来たんだってね?なら銀行の手続きもまだだろう?手続きが済んだら報酬を君の名義にしておく」
後は事務的な会話を交わす程度でレオ王子との会談は終わった。その後私は嬉々とした表情で王宮を出た。
そして翌日の朝。王様からの使いということで使者が私のところに来た。なんでも急用だから早く来るようにだと。私は急いで支度をして用意されていた馬車に乗って王宮へ向かった。そして玉座のまに通されたのだが。そこに現れた王様のオーラが違った。初対面、聖剣鍛造の報告の時とは全く違う圧のある雰囲気だった。
「シズネよ。これから儂が答えることに正直に答えよ。嘘偽りは許さぬ」
王様の顔はとても厳しく鋭い目つきで気圧された。
「お主、レオに剣を打ったな?」
「はい・・・」
「それはどちらが提案した?」
「れ、レオ王子から・・・」
「ふむ・・・嘘ではないな。別に罪を問う訳ではない」
その言葉で私は一息つくことができた。
「レオはな、幼少の身より剣を学んできた。故にそれ相応の剣を求めておるのだ、そして王国中の鍛冶師に剣を作らせては試し切りに魔獣狩りに出かけるのだ」
そう言って王様は語りだした。
「王の嫡子が軽々と王都の外に出るのは到底容認できぬ。盗賊や強い魔獣に襲われる危険があるからだ。あやつは剣を信じるがゆえに周りから見れば軽率な行動をとってしまう。あやつは次代の王たる身。危険な目に合ってほしくないのだ」
跡継ぎの問題。それに私は踏み込んでしまったのだろうか?
「してお主がレオに打った剣であるが。確かめさせたところ、聖剣に匹敵する剣だと分かった」
うん?今なんと?
「せ、聖剣?」
「うむ。魔種への攻撃力上昇。これは聖剣特有の能力だ。耐久も最高の値を出していた。特異な能力は見受けられなかった故あれは準聖剣といった立ち位置にあるであろう」
うわぁ・・・聖剣を打っちゃったよ・・・。つまりあの鉧の玉鋼を使えば何本も作れるってことか・・・。
「お主、件の鋼を使ったな?」
「は、はい・・・」
「ふむぅ・・・聖剣復活に用意させたものがここまで影響を及ぼすとはな。よってお主に王級鍛冶師の位を授けることにした」
「王級鍛冶師?」
「うむ。王級鍛冶師とは王が認めた王国随一の鍛冶師の位である。今は確か・・・三人おったか」
突然ですが王国随一の鍛冶師になっちゃいました。
「そして件の鋼はお主本人と王国が認めた者以外の者へ打つ剣への使用を許さないことにした」
「つまりあの鋼は基本使用禁止ということですか・・・」
「お主が使う剣であれば問題ない。練習に使用するのも良しとする。しかし他の者に安易に打つことは許さぬ。あの剣が件の鋼を使って作られる剣の最底辺なのか、最高位なのかはわからぬがあれ相当の剣が出回るとなると邪な者が使わぬとも限らぬ」
まあそうだろうな。打った剣が国を脅かすなんて背筋が冷える思いだ。とりあえず私は王級鍛冶師の証の印章を貰い、王様との会談は終わりだった。王宮から出た私を待っていたのはウィリアムさんとレオ王子であった。
「あ、シズネ。父上から呼び出しがあったんだってね。巻き込んでしまって済まない・・・」
「レオ王子。だから簡単に頭を下げないでください」
「事の発端は俺にあるんだ。謝るなら頭を下げるのが当然だろう?」
「そ、そうですが・・・」
「してシズネ。どうだった?」
ウィリアムさんが心配そうに聞いてくれた。
「えぇっと・・・王級鍛冶師?を貰ってきました」
「「え?」」
あっと驚いた顔をする二人。当の私でさえ王様の前でそんな顔をしないようにしていたのだ。
「い、いや。めでたい。この王国に三人しかいない王級鍛冶師を与えられるなんて、鍛冶師の名誉ここに極まれりだな」
「そうですね。これはめでたいことだ。いずれシズネに私の剣も打ってほしいくらいだ」
どうやら相当良いことだそうだ。
「それでだ、シズネ。俺はこの打ってもらった剣の試し切りに行きたい。ウィリアムは付いてきてもらうことになったのだが、君も同行してもらえないか?」
「えぇ。邪魔になるかもしれませんが、それでいいのでしたら」
「いいや、邪魔にならないとも。付き人は近衛から出されるだろうけどまぁお目付け役だな。ちょっと肩ぐるしいかもしれないが、まぁ頼むよ」
こうしてレオ王子の試し切りに同行することになった。出発は明後日とのこと。
だから私はその日に銀行に行き、自分の口座を作り、その後王宮の人に口座を作ったことを伝え、報酬を貰った。20年不自由なく暮らせる金額・・・宝くじでもあたったのだろうか。そんな感覚だった。
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