今日もウィリアムさんと鍛錬をしているとふと、ウィリアムさんがこう言った。
「そろそろ外に出るのもいいだろう」
王都に来てから私は鍛錬以外は町を見て回ったり王様から鍛造の依頼を受けたり、レオ王子から刀の鍛造の依頼を受けたことしかなかった。
「そろそろシズネも王都での依頼を受けたらどうかね?」
「依頼・・・ですか?」
「シズネは鍛冶師としての腕を磨きたいだろうが、それでも日々の生活の資金を稼がなければならない。剣を打つにも材料の費用がいるだろう?それに工房も。レオ王子から多少なりとも報酬金を得ていてもそれはつい手に入れてしまっただけのもの。実際に使う資金は自分で稼がなければならない」
そう言えば私の滞在費ってウィリアムさんが出してくれていたんだっけ・・・。
「わかりました。依頼を受けてきます」
そう言って私は王都の冒険者ギルドに向かった。ウィリアムさんが来ると人でごった返すので一人で来た。
冒険者ギルドはどこも共通の形を取っているのか依頼が掲示板に張られていた。
しかしどれも魔石の収集ばかりで、自分で狩りに行った方がいいものばかりであった。
「おい、そこの・黒髪のアンタだよ」
ふと後ろから声がかかる。そこには女性が三人と男性が一人立っていた。
「アンタ、一人なのか?ランクは?」
「えぇ、そうです。ランクはFです」
「なら俺たちとパーティーを組まないか?俺たちはEランクのパーティーでね」
「ライト。本気でコイツをパーティーに入れる訳?」
「私も同感。Fランクなんて手伝いしかできない最底辺」
「・・・」
「いやいや。この依頼受けるなら少しでも人数はいたほうがいいだろ?だからといって他のパーティーと組むむと報酬は減るし、一人を誘う方がいいって決めたじゃんか」
ほっほーん。どうやら私は数合わせのようだ。
「受ける依頼はなんですか?」
「お、乗ってくれるのか?」
「依頼内容によります」
「聞いて驚くなよ?俺隊は王都から離れた小さな村付近にできたゴブリンの巣の討伐だ」
ゴブリン退治か・・・。
「そこに出るゴブリンって魔獣の森に出るゴブリンとどちらが上ですか?」
「それがわかんねぇんだとよ。小さな村だから鑑定士もいないし常駐の冒険者もいないから判別がつかないんだとさ。まぁ辺境に出るゴブリンは弱いと相場が決まっているから大丈夫だろ」
「そうですか・・・私は受ける依頼が無いので良ければあなたたちのパーティーに加えてください」
「よっし、話は決まりだな。俺はライト」
「ミーンよ。せいぜい足を引っ張らないようにね。Fランク」
「ウチはアリムや、とりあえずよろしく」
「・・・エラムです。・・・よろしく」
なんとも個性豊かなパーティーのようだ。
「それで出発はいつになるんですか?」
「明日の朝の予定だ。村までは往復で二日だ」
後は事務的な話をしてそれで終了となった。何はともあれ初めてのパーティーである。私は冒険者ギルドを出て早速食糧などの調達に赴いた。安いがつぎはぎの布で作られたテント、それから毛布。保存がきく干し肉と乾燥させた野菜。それから硬いパンに水。それを多く見積もって四日分は揃えた。テントや毛布などの荷物はかさばるのでその後私は泊っている宿に戻り、ウィリアムさんに早速その話をした。
「ふむ、Eランクのパーティー誘われたわけか」
「はい。リーダーの人は人が良さそうな感じで・・・」
「ふむ、これは勘だが、注意した方がいい。注意はしすぎても損はないからな」
「なぜです?」
「話を聞く限り、頑丈な鎧とまでは求めないが、盾を持っていた人物がいないのだろう?」
「え、えぇ・・・」
「ゴブリンの巣は基本洞窟だ。狭い洞窟を安全にあるためには盾が必要だ。それも無しに進むと投石。最悪矢を射かけられる可能性がある」
「で、ですがもう約束してしまっていて・・・」
「仕方がない。今回はよくよく注意して臨むことだ。次回から他のパーティーと組むのであれば編成を見てから決めるように。これは言っておかなかった私が悪いな。だが有事のことを考えて食糧を四日分揃えたのは先見の明があるな」
ポリポリと頭をかくウィリアムさん。とりあえず今日は寝て、明日を待った。
翌日。私は待ち合わせの王都の門にいた。そして予定より少し遅れてライトさんのパーティーがやってきた。
「いやー待たせて済まない。この借りはきっちり依頼で返そう」
私たちは馬車の人に運賃を払って依頼の村へと向かった。
旅路はとても居心地の良いものではなかった。
ライトさんたちは何気ない話で花を咲かせていた。どうやら今までの思い出話らしい。何も知らない私からすればなんともない話であった。私はふと元居た世界のことを思い出していた。
(あー。そういばあのゲームの発売日に転移したんだっけ。あのゲーム、面白そうだったんだけどなー・・・)
休憩を挟みながら馬車は件の村に到着した。そこで問題が起こった。
「俺たちが泊まれる場所が無いだと!?」
「え、えぇ。ですからこの村には客人をお泊めする場所が無いのです・・・。誰も使ってないボロ屋ならありますが・・・」
「俺たちをボロ屋に泊めるつもりか!!依頼を出すほど困っているというからせっかく受けて来てやったのにこの始末。一体どうしてくれるんだ!!それに・・・」
どうやらまだあるようだ。
「泊る場所はあるだけまだいい・・・。だが俺たちの食糧が無いってのはどういうことだ!!」
「お客人が来るときは森に出て狩りをして肉を得たりするのですが、ゴブリンが出てからというもの、森には出ることができず、畑で取れた保存食しかないのです・・・」
こう見ていると村人さんの方が気の毒になってきた。
「くそっ俺たちは王都からはるばるやってきたんだぞ・・・それをこの扱い・・・」
どうやら王都の冒険者というのはある一種のステータスのようだ。私はボロ屋に向かっているライトさんたちとは別にそそくさと村人さんに話をつけに行った。
「あの、すみません・・・」
「ま、まだなにかあるというのですか?」
流石の村人さんもライトさんたちの相手ですっかり疲れている様子であった。
「私の仲間がすみません。私も入ったばかりなので知らないのですが、どうもこういう経験が無い様子ででして・・・」
「そうでしたか・・・よそ様のことを言うのもなんですが、あのパーティーからは去った方がいいですよ。これからも同じことが続くでしょう・・・っと、何でしょうか?」
「えぇっと、テントを張れる場所があればと思いまして・・・」
「テントですか。それなら案内しましょう」
私は村人さんに案内されて一軒の家を訪れていた。その家の人と話を付けてくれたようで、私はその家の隣にテントを張ることができた。
「すみませんね。お一人ならお泊めすることもできるんですが、それだと・・・」
「無用な軋轢を生みますからね。私はテントで寝たことがあるので大丈夫です」
「よくできた人だ。よければこの肉を持って行ってください」
そう言って野菜をを渡してくれた。貴重である新鮮な野菜だというのにありがたかった。私はお礼を言ってテントに戻った。そして軽い夕食を食べてから私は眠りについた。
朝。私は朝食を済ませ、ライトさんたちが泊っていたボロ屋に赴いた。そこには不機嫌な三人がいた。
「おい、アンタ。アンタは昨日どこで寝たんだ?」
「えぇっと、あそこですよ」
私は昨日泊った家の隣を指で指した。
「くっそ。Fランクのくせに旅慣れてるのかよ・・・」
初対面の時とは裏腹でライトさんの顔からは笑顔が無かった、人は辛い環境にあると本性がでるとどこかで聞いたことがあるような・・・。
「まぁいい。今日はゴブリン討伐だ往くぞ」
まともに朝食を取れていなさそうだが、大丈夫だろうか?気苦労が絶えないゴブリン討伐の始まりであった。
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