王都から帰ってきて一日が経った。今日は注文していた材料が工房に順々に運び込まれていった。朝からずっと材料店の人にあれこれと指示を出して昼を迎えた。私は昼食を取ったらすぐに運び込まれた粘土と煉瓦で炉を作り始めた。煉瓦を積み、その上から粘土をペタペタと塗っていく。流石に大きさのせいもあってかそれだけで一日が終わってしまった。
そして次の日。今日は炉に木炭と鉄鉱石を入れていった。炉の下半分は木炭で埋めて、その上からは鉄鉱石と木炭を交互にサンドしていく。こっちも量はあり、さらに重い。しかし手は一つ。これも一日を費やしてしまった。日が暮れようとしているわずかな時間と光を頼りに完成していた炉に鞴を設置していく。これで炉の準備はできた。
そして次の日。忙しかった昨日一昨日とは違って今日は別途でぐーたらしていた。これも訳があるんだよ?
これから三日間寝ずに炉の火と格闘しなければならいのだ。だからそのための鋭気を養っているのだ。けっして怠けてなどいないのだ。
そして勝負の日、一日目。私は炉に火を入れ作業に入った。一人でえっさほっさと木炭と鉄鉱石を運んでは炉に放り込む。それをずっと繰り返す。
≪ここからはまったく同じ工程を第九話に書いてありますので気になった方はそちらをご覧ください≫
ずっと炎を見て作業をしていて三日が経った。後は炎が炉の下部分に置いた木炭を使って燃焼し終えるのを待つばかりであった。次第に炎が弱まってくるとこれまで頑張ってきてくれた炉を壊し始める。炉の一部分を壊すとそこから煌々と赤紫の光を放つ物体が見えてきた。これが玉鋼だ。それも自分の力で作った初めての物だ。後は炎が完全に消えるのを確認してから私は休むことにした。
次の日。気だるい体を動かして私は炉のところへ向かった。そこには炎が消えてなお熱気を放っていた玉鋼があった。その空間に対して私は空間冷却の魔法を発動させる。玉鋼を作る前にあらかじめどれだけの範囲を冷やすことができるか確認してあるので絵問題はなかった。できるだけ長時間発動させるために色々と創意工夫を凝らしてみた。そして何とか一日を費やして何とか熱気を抑える程度には冷やすことができた。でもまだ近くによると熱があることがわかる。まだまだ闘いは終わりそうになかった。
次の日も私は玉鋼に対して空間冷却の魔法をかけ温度をゆっくりと冷やしていた。そしてまた一日を費やして魔法をかけているとようやく触れても大丈夫なくらいになっていた。私はこれで一工程が終わったと思い、家に戻り眠った。
次の日。私は鏨とハンマーを持って鉧から鋼を採掘していた。今回は太刀ではなく長巻を作るつもりだった。ゴブリンなどと戦って分かったのが太刀では槍を持った相手や自分より巨大な相手と戦う場合、、肉薄しなければならないのだ。ならばこちらもリーチを伸ばして対抗しようという考えの下始めたのであった。
玉鋼は聖剣鍛錬に使った聖なる玉鋼がまだ十分にあったがあれは使うと色々と問題が起きそうなので玉鋼から独力で作る必要があったのだ。
そして一応の必要量よりちょっと多いくらいの鋼を採掘し終えるとそれを工房に運んだ。
私は炉に火を入れて採ってきた鋼の破片を炉に入れて熱する。十分に熱せられたとみるとそれを取り出してハンマーで叩いて伸ばしていく。煎餅のようにしたらそれを水で急速に冷却する。それを採ってきた鋼全てをこの形にしていく。それが終わると煎餅状になった鋼を割っていく。ここですぐに割れる物と何度か叩かないと割れない物に分かれる。それを分別していく。すぐに割れる物は炭素量が多く硬く、割れにくい物は炭素量が少なく柔らかいという。
それを分別し終えるとまずは刀の表面を形成する皮鉄を作っていく。これには硬い方の鋼を使う。
割れた鋼をパズルのように組み合わせて塊を作り、これを紙で包んで固定させる。それを炉に入れて熱する。十分に熱せられたら取り出して叩いて欠片の鋼を一つの塊にしていく。そして再び炉に入れて熱する。
次に折り返し鍛錬に入る。十分に熱した鋼を取り出して叩いて伸ばし、半分あたりで割れ目を付けて半分に曲げて重ねる。そしてそれを熱して再び叩いて伸ばして割れ目を付けて曲げて重ねる。それを今回は
15回繰り返した。長巻ともなると元々の塊も大きくかなりの重労働である。本来ならこれはお弟子さんたちと叩いてするのだが、私には転移したときに貰った≪材料さえあれば好きな武器を作ることができる≫のスキルによって一人でも作業をすることができていた。
折り返し鍛錬が終わるとあらかじめ頼んでおいた特製の台に合わせて叩いていく。この台は台座にVの字の枠が取り付けてあり、これで心鉄を包む皮鉄の形を作ることができるのだ。
皮鉄の鍛錬が終わる頃には日も暮れて来ていたので作業を中断する。
そして次の日。今度は刀の中心を形作る役目の心鉄を作る。これは柔らかい鋼を使う。
工程は皮鉄の時と同じことを繰り返し行う。
そしてできた心鉄を皮鉄で包み合わせてまた炉に入れて熱する。そして十分に熱せられたと思うと炉から出して叩く。ここからは鍛錬と違って刀の形を作るために伸ばしていく。今回は長巻なので結構長く伸ばした。刃の大きさもさることながら、柄の長さもかなりの長さになる。そして十分に伸ばしたら今度は部分的に熱していき、そこを叩いて刃の形を整える火造りを行う。入念に叩いて刀の形を形成していく。
火造りが終わるとここで一旦炉とはおさらば。まだこの状態の刀身は叩いて伸ばしただけでその跡とも呼ぶべき斑があり、面は平らではない。これを鉄ヤスリで磨いて面を綺麗にしていく。
ヤスリで磨いた後は粘土や炭、砥石の粉に水を混ぜて作った焼刃土を塗る土置きをしていく。まずは刀身全体に土を塗っていき、次にこの後に行う焼き入れで波紋を作るためにちょっと分量を変えた焼刃土を紋様を描くように重ねて塗っていく。
土置きが終わるとまた炉と格闘することになる。といってもこれが最後なのだが。刀身を熱し、十分に熱せられたと確認するとそれを水につけて急速に冷却する。これで完全に炉での作業は終わった。
っそいて気がつけば日も暮れていた。今日はここまでで終わることにした。
夜が明けて次の日。今日はまず刀身を磨いていく。まだ焼き入れが終わった段階では波紋や地鉄の色は出て来てない。これを研ぐことによって波紋などが出てくるのだ。何度も砥石を変えたり研ぎ方を変えたりして三日ほどかけてゆっくりと磨いていく。そして三日目にしてようやく波紋が浮き出てくれた。そして作業が終わるころには始める前は無骨な鉄の棒だったものがピカピカに光を反射し綺麗な波紋を持つ刀身に仕上がった。
そして刀身を磨き終えた次の日。今日は刀の持ち手、柄や鍔を作っていく。別段見た目は重視するわけでもないので簡単に済ませる。まず刀と一緒に作った鎺をはめる。これは銅を熱して加工したもので鍔などの柄の上部分の留め具になる。次に同じく刀と一緒に作った鍔をはめる。次に二枚の木を合わせて柄の握りを作る。それを鉋で削って柄の形に整える。そして次にちょっと硬い熊の皮を柄の部分に巻いていく。そしてその上から紐で結んで柄の端っこを留め金で留める。これで刀の部分は完成した。そしてすでに紐暮れ始めていたのでここで作業を中断する。
次の日。今日は鞘を作る。といっても今回は太刀と違って刀身がかなり長い長巻のため、鞘は刀身に合う溝を彫っただけのものにする。角材から刀身が入る部分を彫っていく。この時峰の部分は全部彫ってしまう。これで上から入れるように納刀できるようになる。そして彫り終わった鞘を刀身に合わせて実際に納刀できるか、そしてきっちりはまるか試してみる。今回もスキルの補正があってか上手く作ることができた。これの上からなめした牛の革を巻いて鞘を保護する。これでようやく全てが完成した。
実際に納刀、抜刀を繰り返し、振り回してみる。太刀より長い分遠心力に頼って降るためかなり力を使う。とりあえずやってみた感じ不具合は無いように思えた。実際に木を切ってみても綺麗に斬ることができて刃も鋭くできているように感じた。
玉鋼の製造からおよそ十日の日数をかけてようやく完成した。食事の時と休憩の時以外はエラムとリーシャさんと話していなかった。そして今日は自信作の長巻を手に二人のところへ向かった。
「ようやく完成したか。鍛冶は時間がかかると聞くが同居人が忙しなく動いているのを見ているだけというのは中々居心地が良い物ではなかったな」
「それが完成した剣ですか」
「そうそう。自信作だよー」
実際に抜いてみて二人に見せてみる。
「これは・・・シズネが使っている剣には模様が浮かぶ者なのか?」
「ピカピカで綺麗ですね。それに持つところも剣と作りが違うような・・・」
「切れ味のほどはどうなんだ?」
「特に力を入れずに木を斬ることができたよ」
「切れ味も抜群。美しさもかなり上のレベルになるだろう。貴族相手に売り込めばかなり儲けれるかもしれないぞ」
「うーん・・・。作り手としては使われてこそだからなぁ・・・観賞用は、まぁ頼まれたら作るくらいかな?」
「しかし槍のように長いな。これなら大型の魔獣でも相手取れそうだな」
「うん。一日休んだら依頼を見てみよう」
こうして久しぶりの談笑に花を咲かせるのであった。
ありがとうございました。コメントで意見や感想を頂けるとと幸いです。
刀の製法には色々と文句が出そうですが知りうる限りの知識を使って書いたつもりです・・・。
どうかご容赦のほどをよろしくお願いいたします・・・。
そして投稿し忘れていた十三話も同じく投稿しました。そちらもよろしくお願いいたします。