依頼が終わって王都に帰ってきて数日。私はウィリアムさんに稽古をつけてもらっていた。
長巻も使うようになったため実践的な訓練を積みたかったのだ。道具は使ってない兵士さんの槍を用いて大体の鍔の位置に紐を巻き付けて刃と柄を分けていた。
ウィリアムさんは相変わらず訓練用の木剣を使っている。本来の獲物は大剣なのにかなり使い慣れているようだった。だって速いんだもん。超速いんだもん。
こちらが少しでも攻めを緩めたら怒涛の如く剣閃が襲ってくるのだ。
「ここまでにしようか。疲れただろう?」
かれこれどれだけの時間、稽古に費やしたのだろうか?とりあえずのどが渇いたので水を飲む。
「しかしシズネの作る武器は変わっているな。あんなにか細いというのに切れ味は恐るべき鋭さを持ち、そして硬い。まるで手品でも見せられているようだ」
実際にウィリアムさんに長巻を使ってもらったところ恐るべき威力をたたき出したのだ。人類が到達できる最高点と言われる赤い闘気を合わせるとこの王国で使われている鉄鎧を鎖帷子ごと一刀両断してしまったのだ。それを見た時はなんと恐ろしい物を作ってしまったのかと思ってしまった。
「それにしても不思議なことはまだある」
「?」
「あれだけ経験を積んだんだ。初めの段階の白の闘気を使えるようになっていてもおかしくはないのだがね」
かれこれ色々と依頼で討伐をこなしてきたのだが私には一向に闘気の兆しが見えていなかったのだ。言われてはじめて気づいた。
「闘気ってあるとそんなに変わるんですか?」
「あぁ。今までは切断できなかったものでも切断できたり、打った武器の破壊力が上昇したり。段階が上がれば肉体の運動自体に影響してくる」
「ほえー・・・早く使えるようになりたいなぁ・・・」
「シズネの刀が強すぎて成長を阻害している・・・そのようなことは無いか」
とりあえず当面の目標は闘気が使えるようになることにした。
「やぁ、やってるね」
そんなところにレオ王子がやってきた。
「これは殿下」
「む?シズネ。槍なんて使ってどうしたんだい?」
レオ王子、こういうところにはすぐ気づくんだ・・・。
「えぇっと・・・新しい武器を作ったのでそれの練習を兼ねて・・・」
「へぇ・・・新しい武器ね。見せてくれないかい?」
「はい」
私は長巻を出して見せた。
「うん?こんな長さじゃ鞘から抜けないんじゃないかい?」
「はい。なので鞘の上の部分自体をくりぬいて上から抜刀するようにしてみたんです」
「なるほど・・・おぉ、これまた美しい刃だ」
レオ王子は知る人ぞ知る剣マニアなのだ。
「なるほど。これなら大型の魔獣や攻撃範囲が大きい魔獣に対しても戦えるという訳か。しかし何も知らない者から見ればただの鉄の棒にしか見えないかもな。戦場ではいい目くらましになるかもね」
そう言われて私は嫌な感じがした。自分の道具が生き物、それも人間を殺す。そのことを考えると胸が痛くなる。
「と言っても君の考え通り戦道具にはしないさ。君が作るのは魔獣を狩る道具であり、人を殺める道具ではないのだろう?」
レオ王子もまた私の心中を察してくれる人物であった。
「お心遣い、ありがとうございます」
「でもこれには良い方の鋼を使っていないようだね。良いのかい?戦いの道具で手を抜くと後々厄介なことになるかもしれないよ?」
「あの鋼は私だけで作った物ではありません。有事の際にのみ使うつもりです」
「そっか。君がそう考えているのならそれでいい。さて、休憩も済んだようだし、俺も混ぜてもらおうか」
そこからはレオ王子も混ざって稽古を再開することになった。ウィリアムさんほどではないがそれでもレオ王子も強い。私にはいい経験になったと思う。
稽古が終わった後、少し雑談をすることになった。
「シズネ。君のところの工房、いつ開くつもりなのかい?」
「うーん・・・依頼とかで店を開けることもあるので継続的に開くのは難しいですね・・・」
「なら弟子を雇ったらどうだい?王国級鍛冶師、それも全く見たことがない剣を作る鍛冶師の弟子募集ならすぐに集まるだろう」
「うーんそうですね。ちょっと考えてみます」
「しかしシズネ。君が作る武器は誰でも扱えて性能も良い。それを安易に作るというのも考え物だと思うがね」
「そうなんですよね・・・やっぱ普通の剣を打つ方が良いんでしょうか・・・」
「信頼できる冒険者などを見極める目が必要になるだろうね。名の売れた冒険者が求めてきたら打つとか」
ウィリアムさんもレオ王子も色々と案を出してくれた。それらを踏まえて色々と考えてみようと思う。とりあえず一日使って考えてみる。経営といっても仕入れ、お弟子さんの給料、商品の値段と色々とある。考えることは山ほどあるかもしれない。元高校生が考えれる物ではない。しかし私にはこういうことに詳しい人の伝手が無いのだ。だから自力でなんとかしなければならない。そこでふと気づいた。
「ケミルさんに聞いてみよう」
私の始まりの地。ゲーンの鍛冶師、ケミルさんがいたのである。
ありがとうございました。コメントで意見や感想を頂けるとと幸いです。