「一体どうしたんだい。夜になったというのに・・・。君はそういうことをする人間だったのかい?」
私はこの建物の主、レオ王子を呼び出すことに成功した。
「お願いします。話だけでも聞いてください」
私は土下座してレオ王子に頼み込んだ。
「・・・君がそんなことするとは。とりあえずその恰好はやめたまえ。話を聞かせてくれるかい?」
「ありがとうございます」
そして私はここまでのことを話した。他国での貴族の有様も含めて。
「確かに、他国でそんな貴族がいたということは効いたことがある。君が言いたいことはわかる。孤児院への費用を増やせと言いたいんだね?」
「いいえ違います」
「何?なら何が目的なのかい?」
「法律で、『孤児院が子供を捨てないこと。そして発覚した場合は罪に問うこと』を組み込んでほしいのです」
「法律と来たか・・・なるほど。法で縛るのなら費用は掛からないだろう。だがそうなると孤児院の子たちは貧しい暮らしになって、君が保護した孤児だけが貧しい暮らしから脱却してしまうんじゃないかな?」
「確かにそうなるのかもしれません。ですが子供たちが働けるようになればお金は増えます。孤児院は子供たちが働ける環境を整えることも目的とさせてその収入のわずかを働けない子供たちへの生活の費用に当てさせてはどうでしょう?」
「そうなると・・・孤児院で教育を届かせるのはまだ大丈夫なのかもしれない。だが孤児院が裏で子供を捨てないとも限らない。『出かけたきりで帰ってこない』これは一番ありえそうな良いわけだね」
「それは・・・」
「君の志は良い物だと思う。だけどそれが過ぎると偽善と思われるよ。だから、君は誰とも出会っていない。何も聞いていない。ここにも来ていない。そう思うんだ」
「何か・・・何か手は・・・」
「・・・本当に引き下がるつもりはないのかい?」
「手があるなら引き下がることはできません」
その言葉を聞いてレオ王子は座っていた椅子から立って私の前に来た。
「よく言った。よく言ってくれた。まさか君がここまで求めていた人物だとは思わなかった」
「・・・え?」
「ちょっとしたことがあってね。俺も孤児に出会ったことがあるんだ。まだ子供の頃、王都の店の視察をしていた時だ。突然子供がやってきて、『王子様なんでしょ?お金たくさん持ってるでしょ?少しでもいいから頂戴』って言われてね。連れは孤児なんて捨て置けなんて言って追い払ったんだ。今でも思う。あの時知恵があれば、力があれば救えたのにってね」
「そんなことが・・・」
「だから俺は力が欲しかった。だけど力は正しく使わなければ悪用されて奸物に利用されて救えるものも救えなくなる。だが君が俺が求める人物であるならば違う。偽善と言われようと、信じてくれる人がいるならばその行いは救われる。だからともに救いの手を伸ばそう」
「私にできることがあるならば喜んで」
「話は急を要する。現に君のところに孤児が来ているんだからね」
レオ王子は紙を用意してメモを取り始めた。私が書こうと言ったのだがレオ王子が断った。
「そ、そうです」
「まず力になれるのは俺と君だけだ。ウィリアムも引っ張っては来れるだろう」
「え?」
「今、『王子なのに頼れるのはそれだけか』って思わなかった?」
「イイエ、ソンナコトハオモッテモイマセンヨー」
「いいんだ。宮廷は腹の探り合いが日常だ。信頼できるのなんて数が知れてる。とりあえず法案だがまず親は子供を捨てることを禁じている。ついでに子供が行方不明になったら必ず届け出をわかった当日に出すことも決められている。そして近隣の住民にも知っている子供が行方知れずになった時も報告するようにしてある。ここまではいいかい?」
「はい」
「それでも孤児はなくならない。親が死んで保護できる人間がいなくなった場合が特に多い。後は両親が離婚した時とかね。こういうときは孤児院が引き取るように決めてあるが、どこまでを孤児とするかの判断が必要になる。また捨てられた子供がそんなことを知るはずもないからね」
「確かに十分に教育が行き届いていなかったら何もわからず露頭に迷うことになりますからね」
「学ぶところは基本金がかかる。当然教える講師の給料、建物、教材と費用がかかるからね。だから学ぶことができる子供も限られてしまう」
「しかしそれを補うだけの予算を国から出すとなると予算不足の可能性も・・・あと横領が起こるかもしれません」
「そうだね。国の予算も無限でもないし横領の可能性もある。ならさっき君が話したように個人が働き口を用意するのではなく、国が施設を作り、そこで最低限働けるように教育を行い、仕事を斡旋する。そして仕事を得ることができればその収入のわずかを施設へ納める。こうすれば将来的に国の予算も抑えられるし孤児院への負担も少なくなるだろう」
「働けるようになった子供が全てのお金を使えなくなるのは仕方と割り切るしかないですね。働けるのは施設あってのことですから」
「そうなるね。後はこれを通させるのが問題になる。主に予算の問題だね。だけど誰も反論できないだろう。すればある意味自国の民を見捨てることになるわけだからね」
「なら・・・」
「ただ色々と難癖をつけてすぐには通らない可能性が高い。そうなると救えるものも救えなくなる」
。だから・・・宰相を丸め込む」
「一体どうやって?」
「単純さ。これから死ぬしかない孤児や仕事にありつけなかった孤児院の子たちを成長させれば満足に税金を取ることができる。それを餌にすれば食いつくだろう」
「なるほど・・・」
この国の税金とはスペリア王国に住んでいる人全員が一年に一度国へ一定の金額を収めることになっている。それは農村で暮らす人だろうと貴族だろうと。冒険者だろうと旅人であろうと同様である。
基本的に国に入ろうとするとまず税金が発生する。そして定住すると定住税が取られるのだ。そして店を立ち上げれば店舗に応じて税金が発生するそして貴族になると貴族税を取られることになる。これらはその年の年始から年末までに払うことが義務付けられている。冒険者などは事前に依頼報酬金や魔石鑑定金額から税金が引かれてから支払われている。つまり税金は頭数が揃わなければ収入を得ることができないのだ。しかしここで支払うことができなかったはずの人間が払えるようになるとなるならば話は別になる。税金を払える人間が増えれば国の予算が増えるからだ。だから孤児が働けるようになればその分国の予算が増えるわけだ。そして国の予算を取り仕切る宰相がこの話を見捨てる可能性は低い。
「すぐに宰相を人をやって呼ぼう」
レオ王子はすぐに人を呼んで宰相さんを呼ぶように指示した。その間少し時間ができた。
「いやはや人の縁とは面白いものだね。ただのお抱え鍛冶師、同じ師匠を持つ兄妹弟子だったのが同志になるとは思わなかった」
「私もレオ王子が賛同してくれるとは思ってもみませんでした」
「でも納得させようとは思っただろう?」
「そうですね。納得してもらえないと困りましたね」
少しの談笑の時間が流れ、その後宰相さんが入ってきた。
「王子。火急の要件とはいかがしましたか?」
「ハイン、まずはこれを見てくれ」
レオ王子はこれまで私たちが話し合って書いたメモを渡した。宰相さんは最初は怪訝な顔をしていたけど読んでいく内に感心したように読んでいた。
「王子のお心、感服いたしました。これだけのことを考えていながら相談してくださらなかったのは悔しいですが、練りに練られたこの計画。私にも一枚噛ませてください」
「ありがとう。そう言ってくれて助かる」
「明日の朝主だったものに召集をかけ昼には緊急の会議を開きましょう。会議での反対は起きないでしょう。反対さえ起きなければ後は私の方で万事上手く運ばせましょう。一週間以内には王都で施設を整えましょう。建物はもう使われていない教会や訓練場を抑えれば大丈夫でしょう。講師については学校への採用待ちをしている修学済みの者がいるかもしれません。いなければいずれ講師希望の人間の体験講師という体で雇えば問題ないでしょう。地方の町については一か月ほど時間を頂くことになるでしょう。町によっては孤児が0という巡視報告がある町もありますし、そうでなくとも孤児自体が少ない町もありますので商会などへ保護の協力を取り付けることにしましょう」
「あの・・・農村についてはどうなるんでしょうか・・・?」
「あぁ、農村ほど孤児がいないところはないでしょう。まず農村は寄合によって成り立っていますのでまず親を失った子供が出たとしても他の誰かが面倒を見てくれます。それに月に一度の≪真偽判断≫のスキルを持った巡査官を派遣し孤児の有無や子供の生活環境を調べさせてありますので問題はありません。それに教育の面でもまず計算などができなければ作物で収入を得る時に騙されて損をしたりすることがあるのでまず農民であれ簡単な計算や読み書きは習います。それを子へ孫へと伝えていくのでこちらも問題ないでしょう」
「よかった・・・」
「では王子、私はこれからやるべきことがありますので失礼してもよろしいでしょうか?」
「うむ。仕事を増やしてしまってすまないな」
「いいえ。民の幸福を願うことを我らが王は是としております。そのことであれば粉骨砕身をいといません。では失礼いたします」
そうしてハインさんは退室していった。
「シズネ君も戻った方が良いだろう。訪ねてきた孤児のこともあるしね。とりあえず教育を受けているのであればすぐに君のところで雇うと言い。もしそうでないのであればハインの元へ連れていくといい。手を打ってくれるだろう」
「わかりました。では・・・」
「あぁ、流石に君は会議には出られないだろうから会議が終わる夕方、また訪ねて来てくれるかい?」
「わかりました」
そうして私もレオ王子の屋敷から出た。
しかしレオ王子が同じ考えを持っていてくれたことは幸運だった。私は急いで自分の家へと帰った。
「遅かったな、シズネ。一体どこに行ってたんだ?それにやけに嬉しそうだな」
「えへへーそう見える?あ、あの子たちは?」
「夕食を食べさせて待たせてある。それでお前の足掻きはどうなった?」
「うーん、ほとんど成功したかもね。後は子供たちが計算とかできるかで変わってくるかな?とりあえず話してくるね」
そうして私は二人のいるリビングに行った。
「ちょっとごめんね。せっかく訪ねて来てくれたのに待たせてしまって。ちょっと色々とバタバタしててね」
「いいんだ。温かい食事を貰えたんだから。それで雇ってもらえるの?」
「うーんとね、ちょっと私の質問に答えてくれるかな?」
私はアルとミーナに小学生の低学年から中学年あたりならわかるような問題を出した。結果二人は父親から計算や読み書きなどを習っていたらしい。
「うん、これだけできるなら大丈夫かな。ウチは色々と特殊でね?店、開いたばかりなんだ。だからお客さんも0人。でもお給料は出せるから大丈夫。後は住むとこはどうしてるの?」
「いつも馬小屋に寝泊まりさせてもらってた」
「うーん・・・確かまだ部屋は二つ空いてたよね。なら二人ともここに住み込みで働かない?」
「・・・いいの?」
「うん。問題ないよ」
「あ、ありがとう!!俺、お姉さんのためならどんなことでもやる!!」
「私も頑張ります!!」
「やるのは構わないけど法に触れることはやめてね?」
「あ、お姉さんの名前、聞いてないや」
「私はね、シズネっていうの。これからよろしくね?アル、ミーナ」
これが色んなことを引き起こしたアルとミーナとの出会いであった。
ありがとうございました。コメントで意見や感想を頂けるとと幸いです。
まだ続きを書きたい衝動に駆られているので今日か明日に続きが上がる予定です。
勢いで書いてあるので今日の分で誤字脱字があったらすみません・・・。