フォロムの町に帰ってきてからは事態は悪くなる一方だった。強大な魔獣と遭遇したことでクランの士気は低下。リーシャさんやガンさんといったタンクの武器が大きく凹んだということもあり草原でも狩りは続行不可能であった。早々に王都に引き上げることになった。フォロムの町にも鍛冶屋はあるが大規模な修復は行うことができないらしい。
ただ悪いことばかりではなかった。ミノタウロス・レイダーの皮や角は通常の個体の物よりも硬く、また強力な魔力を宿しているらしく高値で買い取ってもらえるらしい。魔石も二万ゴールドくらいにはなるから一日換算ですればまぁ稼げた方なのかもしれない。
ともかく私たちは王都へと帰ったのであった。
王都に帰ってきてからはウチの工房に剣を注文してきた人が一人いたので注文を受けて剣を打った。
アルとミーナも接客の仕事も鍛冶師としての力量もすくすくと育っていた。なんでも私が遠征に出ている間も鉄塊めがけてハンマーを振り下ろして練習していたらしい。二人の努力はキラキラと輝いていた。
それからは冒険者ギルドでクランのメンバーと話したりして意気消沈していないことを確認したりしていた。
リーシャさんたちの武器も数日後には修復されて戻ってきた。そうして平和な時間を過ごしていたけど、平和とは長く続かない物であった。
ある日、冒険者ギルドに行くとそこはいつもの賑やかな騒がしさは鳴りを潜め、慌ただしい喧噪に包まれていた。
「ガンさん。何かあったの?」
「お、団長。良いところに来たな。どうやら西の町の近くでスタンピードが起きたらしい」
「スタンピード・・・魔獣の大量発生、であってるっけ?」
「そうだ。西には魔獣の歪みはないから偶発的に自然発生が重なったんだと思うが、当事者の町ならともかく、救援要請を受けた王国冒険者ギルドの総本山がここまで慌てるとは穏やかじゃねぇな」
数時間後。緊急依頼として西の町、ラローレンへの救援任務がギルドより通知された。参加は自由とあったが魔獣の大量発生ともなると冒険者としては稼ぎ時ではある。とりあえずクランのメンバーを集合させて話し合った結果、参加することに決まった。スタンピードは収入だけでなく、ギルドの評価も上がりやすいとのこと。ただ多くの冒険者が集まるため、魔石の取り合いなども発生するらしい。だから今回はエラムやナルミさん、シーンさん、ルークさんといった遠距離組は基本ポーターの役割に徹してもらうことになった。そして急いで物資を買って、私たちはラローレンの町へと向かった。
ラローレンについて一日を休養に当てて次の日。私たちはラローレンの冒険者ギルドを訪れていた。そこは人が慌ただしく働いていて、冒険者たちも険しい表情で座っていた。
何とか話を聞くことができて手に入れた情報によると現れた魔獣は百を超えるとのこと。ただ数百匹とかという多さではないらしい。ただ物資を買う間に調べた方でも情報はあった。魔獣の自然発生が重なると数だけでなく、強い魔獣やその地域に通常は生まれない魔獣も生まれることがあるらしいのだ。現に確認されているので草原のミノタウロスやワイルドウルフ。ゴブリンやオーク、トロールなども確認されているらしい。数も強さも揃っているらしい。ただこれに魔王が関与しているか、これが不明なままでギルドはあわてているのだろう。数時間ギルドにいるとどうやら明日、魔獣の群れに対して攻撃を仕掛けるとのこと。私たちも色々と話を聞いた後、解散。明日のために休むことにした。
次の日。ラローレンの町から多くの冒険者が出発した。これだけの冒険者を馬車で送るには数が足りないため自分で持ってきた冒険者以外は徒歩だった。私たちも先頭の冒険者たちに続いて歩いて行った。
そして歩いていくにつれて何か重苦しい空気になっていった。これが魔獣が集まると発生するという
『魔の渦』らしい。ただ魔獣が人の生活圏を脅かそうとしている証拠らしい。
「おい、何かこっちに来るぞ!!」
前の方が騒がしくなった。そして冒険者たちが散り散りに分かれていった。どうやら敵襲らしい。私たちも固まって動くことになる。そして前線に立ってみるとその魔獣の数の多さに少し後ろに下がりたい気分であった。
「来るぞ!!」
その声と同時にゴブリンやワイルドウルフが吠え、走ってくるのが見えた。
「みんな。まずは無事に帰ることを一番に」
「了解です」
「腕の一本でも取られたらそれで終わりだからな」
私も時雨を構え、腰には雫をいつでも抜けるようにしていた。私たちのいるところにも多くのゴブリンが走ってくる。
「いくぞ!!」
誰がそう声を発したかはわからないが、戦闘が始まった。私も寄ってくるゴブリンを手当たり次第に薙ぎ払っていった。前に遠征で言われて気づいたのだが、私は一刀で並みの魔獣なら倒せるらしい。普通の冒険者は武器の性能や当人の技量で変わるが私たちのいるランク帯では数度攻撃しないと倒せないらしい。
これは私の授かりものである時雨と鍛冶スキルによって作られた時雨のおかげでなんだろう。
だが今はこうして楽に魔獣を倒すことができた。
「うーん・・・囲まれてきたな・・・」
どうやら戦闘が始まって少し経つと私は囲まれてしまっていたらしい。流石に囲まれるとリーチに優れる時雨でもこれを打開するには足りなかった。
「慣れてないけど、するしかないか」
私は右手に時雨を持ち、左手で雫を抜刀し手に持つ。いわゆる二刀流の構えを取る。そこからは両手の刀を振るい、寄ってくる魔獣を近いものから休むことなく斬り続けていった。少しずつではあるが寄ってくる魔獣が減っていった。残っているのが見えるのは大型のミノタウロスやオーク(初めて見た)等であった。
「はぁ・・・はぁ・・・シズネ、突出しすぎですよ・・・」
そこへ息を切らしたかのようにエラムが出てきた。
「うん?私みんなとはぐれたと思ってた」
「違います!!シズネは段々魔獣の方に歩いて行ってたんです。シズネが魔獣を相手にしてくれていたおかげで危険なく魔石は拾えましたが・・・」
エラムはむんと袋を見せてくれた。
「もうパンパンですよ。収納空間にしまっておいてくれないですか?」
「うん、わかった。それよりもみんなは無事?」
「どこかの向こう見ずと違って無事ですよ」
「そっか。ならよかった」
私はエラムに連れられてみんなの元へ戻った。
「団長。勇戦、かっこよかったですよ」
「だが心配するこっちの身にもなってもらいたいもんだ」
少しお小言を頂戴したけど、まだ戦いは終わっていなかった。私たちも大型の魔獣と戦闘を開始した。ミノタウロスは数度戦ったことがあるので私たちは楽に倒すことができた。そうして少しずつ戦場の剣戟の音は消えていき、最後には人間の勝鬨の声に変わっていた。
「ふー・・・なんとか勝てましたね」
「すんげー数がいたが、まぁ、寄ってくるやつはウチの団長のおかげで大分抑えられたがな」
思い思いに感想を口にする。周囲に魔獣がいないことを知ると冒険者たちはラローレンの町に帰っていった。私たちも町に帰ることにした。余談ではあるが、牙や皮が残る魔獣は今回のような大量発生の時は問題が起きるのを避けるために冒険者の剥ぎ取りは禁止されており、魔石と報酬が収入になるらしい。
「魔石の換金はこちらでーす。魔石に応じて報酬もお渡ししまーす」
帰ってきた冒険者ギルドはごった返していた。魔石の換金、そして今回は得た魔石によって報酬を受け取れるらしい。私たちも換金の列に並んだ。
「では次の方ー」
「はい。お願いします」
私はどんと魔石の袋を収納空間から取り出した。
「・・・え?あ、すみません。では集計いたしますね。クランなどには所属していますでしょうか?」
「はい。所属しています」
「では普段の行動場所とクラン名をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「活動場所は王都。クラン名はアイアン・イグニスです」
「王都、アイアン・イグニスですね。少々お待ちを」
どうやら換金に時間がかかっているらしい。
「えぇっとお待たせいたしました。合計21万4300ゴールドになります」
「アイアン・イグニス、21万4300ゴールド、首3位です!!」
「え?」
魔石の換金額を受け取るのと同時になぜか私たちの収入が公表されたのだ。
「ね、エラム。どゆこと?」
「あぁ、そいつはな。こいうとき誰が一番活躍したかで問題になるだろ?だからギルドが魔石の換金額に応じてそれを決めるんだ。で、どうやら俺たちが3位らしいな」
と、冒険者経験の長いダンさんが説明してくれた。
「しかし他の大手も参加しているはず。まだ換金していないのでしょう」
しかし待てど待てども3位が私たちから動くことは無かった。報酬が配られる段階になるまで私たちは3位のままだった。そして報酬金が30万ゴールドだった。
「おー・・・稼ぎとしては遠征と変わらないかな?」
「そうですね。ただギルドへの評価のほうが大事ですので」
報酬金は今回は規定に決めていなかったため、新しく決めたこと『報酬金+換金額を総額で人数割りにする』ということで一人頭5万ゴールド程度になった。とりあえずギルドからも感謝状を受け取ることになった。これでクランの評価も上がってほしいところだ。
戦いが終わった次の日。少し町を観光して、次の日に王都へ帰った。
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