時間は昼を少し過ぎた頃。私は図書館で本を読んでいた。題名は『基礎魔術』。魔法と対をなす技術、魔術についての本だ。私はクランの成長のための手段を探していた。そして鍛冶についても同じであった。
聞いた限りだと魔法が使用者の魔力を使うのに対して魔術は触媒となる物の魔力を使うらしい。
つまり道具や武具に魔力を仕込むことができるのであれば、もっと突き詰めるのなら再充填ができるのであれば依頼を受けないときに出る余剰魔力を効率的に使うことができるのではないか。そう考えたのだ。
そして魔法・魔術は剣技にも応用できる。鋭い魔力の塊を飛ばすのだ。ただこれはこの世界では魔法が使える剣という意味での魔剣でしかできない芸当らしい。この魔剣を作ることができれば、飛躍的に戦力が上がることだろう。
本によると魔術に必要な物は魔力が入る受け皿だけであるらしい。これは極端に言えばそこらに落ちている石でもいいらしい。ただし物によって貯蓄できる魔力の量は変わるのは当然だろう。
そして受け皿には魔石を使うことができるらしい。ただし、採取したばかりの魔石には魔獣本来の魔力が蓄積しているため、これを抜き取る必要があるようだ。
武器に仕込むのであれば刀身、もしくは柄が一番だろう。刀身はともかく柄ならばすぐに改造することができる。続いて木材などの情報を読んでみると、以前聖剣の打ち直しに携わった時に知ったことで聖域の木材は聖なる力を秘めているとあった。そして同じように魔力が濃ゆい、魔獣が生まれる歪みの周囲から採れる木材は魔術の触媒に適しているらしい。柄にこの木材と魔獣の皮をなめした物、加えて魔力が濃いところで取れた鉱石や魔石を使えば魔術の触媒になりえるのではないだろうか。
とりあえず情報をメモをとって私は王都の素材屋巡りを開始した。その結果、魔獣の森の木材、それもかなり樹齢が高い物とミノタウロスのなめし皮に小さいながらも多くの魔力を蓄積できるというゴーレムの空魔石、魔獣が多く住む場所から採れた鉱石を手に入れることができた。空魔石というのは魔石から魔獣の魔力を抜き取った物である。
早速私は工房で時雨用の柄を作り始めた。アルとミーナは物珍しそうな顔でのぞき込んでいた。
工程はいつものとちょっと違う。木材から柄を切り出して柄にするところは変わらないのだが、今回は頭の留め具の裏に魔石を仕込むのだ。魔力伝導のために頭の留め具の金属は魔力を帯びた鉄を使う。細かな作業が続いたがようやく完成した。
手に取って実際に魔力を込めるイメージをしてみると、魔力が吸われていく感触を覚えた。どうやら時雨に魔力を充填することはできたようだ。
今度は切っ先に火が付くのをイメージしてみた。すると時雨の切っ先に小さな炎が生まれた。今度も成功したらしい。
「シズネ。それ、どうなってんだ?」
興味津々のアルとミーナに色々と語ってみたけれど、二人にはまだ早かったらしい。
ともかく魔剣と言われる物を私は作ることができたらしい。
後は魔力の斬撃波である。これは訓練場で確かめるしかなかった。とりあえず夜になったのでさっさと寝ることにした。
次の日。私は訓練場で斬撃波の練習をしていた。昨日寝る前に時雨に魔力を充填していたので少しはできるだろうと思っていた一発目。
鋭い雷を帯びた衝撃波が的を斬り裂いたのであった。
「あっれぇ・・・?これって高度な技術じゃなかったっけ?」
読んだ本には結構難しいと書かれていたが・・・まぁできたのならいっか。ということで今度はどれだけ撃つことができるのかやってみたところ、二十数発撃てることが分かった。これはかなり戦力アップに繋がるだろう。ウキウキの気分で私は訓練場を後にした。
で、店に帰ってみるとそこには注文書の束ができていた。どうやら本格的にウチのナイフの性能が知れ渡ったのか色んなところから注文が殺到していたらしい。硬いものから柔らかい物、様々な物を取り扱う素材屋、肉屋、魚屋。注文先は様々であった。私たちは本格的にナイフを打っていった。一日に打てて数本。注文量は数十本。終わらなさそうな作業が続いた。まぁ嬉しい事ではあるのでいいのだが。
怒涛の注文を全て終わらせることができたのは一週間が経った頃だった。
今回は一本一本に盛り土を行って波紋を描いた。これは『このナイフはシズネ工房製だぞ』というのを見せつけるためであった。我ながら欲にまみれた行いだったと終わってから思った。だがまぁ、ウケは良かったようなので安心した。これでうちの店やクランが知れ渡ってくれればいいなーと思う。
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