刀オタクが異世界転移したので剣豪を目指します   作:かんせつ

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第五十四話

私は今王都近辺の草原を馬に乗って駆けている。いつかは体験してみたいと思っていた馬での遠乗りがこの世界ではできるのだ。遮る物のない広々とした草原。草原を馬で駆るのはとても気持ちがいい。

何時までも、どこまでも駆けていたい気分である。

しかし私には仕事があるのだ。だけど気晴らしには丁度いいと思った。

また馬をレンタルして来ようと思った。

「シズネ、どこに行ってたんだ?」

「ちょっと馬で遠乗りにね」

「いいなー。今度は俺も連れて行ってくれよ」

「そうなるとお店を開けないからなぁ・・・。今度店を臨時休店にしてみんなで行ってみようか」

「やったー!!」

「さて、と・・・。うわぁ・・・まだまだあるなぁ」

日々増える注文の数。剣にナイフに包丁に。種類も形も用途も様々。たまにこういう性能が欲しいという注文もあって色々とすることが多く大変である。ただし苦労が増えるとともに収入も増えているのは確かであった。

そんな忙しい日々の中、来客があった。

「ふむ。ごぢんまりしておるのう」

入ってきたのはかなり裕福な身なりの人物と護衛の人が数人だった。

「えぇっとどのようなご用件で?」

「ふむ。貴様がアイアン・イグニスのリーダーか?」

「はい。そうですが?」

「貴様のような小娘が先の魔獣大量発生の時に活躍したという娘とでもいうのか?」

「?」

「まぁ良いわ。貴様らに吾輩の家来として召し抱えてやろうではないか」

「家来・・・ですか?」

「そうだ。聞くところによると貴様のクランの名前は日々増し、頭数も揃っていると聞く。そんな貴様らに栄誉を得る機会を与えてやろうではないか」

「・・・」

確実にこの貴族らしい人間は私たちを取り込みたいらしい。ただこの人の顔には覚えがあった。

工房組合の取りまとめ。おおよそ正攻法で私の工房を取り込めないからこうして仕官という形を取って私たち、私の工房を取り込もうとしているのだろう。

最近は商品の売れ行きがいいのに反比例してガラの悪いお客さんも増えていた。工房組合の手の者と思われる人間もこっそりと店を伺っているのを遠目から見たことがある。

ならば私の答えは一つである

「申し訳ありませんが、その話。お断りさせていただきます」

「ふむ、うん?なんだと!?」

「私たちは弱小のクラン。そのような者が高貴なお人への務めなど果たすことはできません。どうかお引き取りを」

「えぇい!!調子に乗りおって小娘が!!」

「おやめください!!」

激情する貴族。しかし取り巻きと思われる護衛の人たちが止めに入ったのには意表を突かれた。

それから貴族の人はそのまま連れていかれた。

その数日後。私はレオ王子に呼ばれたので王宮を訪れていた。

「やぁ。呼び出してすまないね」

「いえ。しかしどのようなご用件で?」

「最近宮廷の権力争いが水面下から出ようとしている」

「水面下からとは穏やかではないですね。行った何が原因で?」

「正直まだ不確かな情報だが、レスピレル王国が軍備を強化しているという噂がある」

レスピレル王国。魔獣の草原を西ではなく北に進むとある国である。ネルミヤ王国とは違い、スペリア王国と共に魔獣の草原の管理には携わってはいない。それよりもスペリア王国とは確執があると聞いたことがある。

「レスピレル王国とは数十年前に戦争があったと聞き及んでいますが・・・まさか」

「そう。そのまさかだ。スペリア王国はレスピレル王国とは違い土地は肥え領土も広い。そんなところに勇者の聖剣が復活した。第三者の視点から見ればスペリア王国の力は増しすぎた。それを快く思わないのだろう」

「しかしそれが貴族の権力争いと何の関係が?」

「貴族は戦争となれば手勢の軍を率いて戦わねばならない。故に貴族は手勢を多く求める」

「それで・・・」

「隣国が軍備を整えつつあるならばそれに備えてこちらも軍備を整えなければならない。そうなるとどちらも軍備を整えて戦争に向けて進んでしまう。そして集めた手勢は自らの力を示す物にもなる。どこの貴族もこぞって王都だけでなく国中のクランに声をかけているだろう」

「あの、私のところにも貴族の方が・・・」

「ふむ・・・どんな人物だい?」

私は昨日訪れた人物の特徴を教えた。

「ふむ。君の考えているとおりソイツは工房組合の取りまとめの長でもある。最近君の工房の売れ行きがいいから一石二鳥を狙って取り込もうとしたのだろう」

「どうすれば・・・」

「君は人を見抜く力がある。よく観察し状況を見極めるのが大切だ」

「金言、ありがとうございます」

「もし俺が王子でなければ君を直属の家臣にしたいところだ」

「恐れ多い事でございます」

「君たちはいずれ大きくなるだろう。その時が楽しみだ」

こうしてレオ王子との談笑は終わった。ただし人と魔獣が戦うこの世界で人間同士の争いが起きようとしている可能性がある。そう考えると私はなんとも言えない気がした。




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