最近。王都が騒々しくなってきたと思う。以前の活気ある騒々しさとは別の、不安が混じった物だった。
やはり隣国のレスピレル王国が軍備拡張を行っているということが原因なのだろう。
冒険者ギルドも『戦争か?』『起きたらどうする?』といった話題ばかりであった。
このような時期に遠征に出ることは難しいと全員で話し合って決めたので当分遠征に出ることは無い。
正直この軍備拡張には私が関わったことが原因だと見ている。
勇者の聖剣。確かにこれも私が関わり打ち直した。だけど本題はそれじゃないと思う。
玉鋼。これが一番の原因だろう。通常の鋼よりも優れたポテンシャルを持ち優れた武器を生み出す。
そのような物が隣国で発明されればその国の周囲は軍備拡張と見てもおかしくはないだろう。
だが進めてしまった時計の針は元には戻せない。
戦争が起こるかもしれないという背景もあってか、ナイフや包丁以外に武器の注文も多くなってきた。
誰もが予備武器を持っておこうと考えているらしい。とりあえず私たちは注文をこなすことだけを考えて鋼を打った。
さて今日も仕事をと思って鉧から鋼を取り出そうとしていたらもうあと少しで鉧が無くなりそうだった。
小さいとはいえ数十本もナイフや包丁を作り、武器も少量作っているのならばいずれは尽きる。
そろそろまた玉鋼を作らないといけない。ちょうどいいしアルたちにも教えておこうと思った。
とりあえず鉄鉱石と木炭、煉瓦を注文して備えた。ただやはり戦争がちらついている状態だからか鉄鉱石の値段は上がっていた。ただまぁ範囲内だったためそのまま注文した。
そして諸々の品が納品されて私たちはいざ玉鋼の製造に入った、最初アルたちに三日三晩眠らずに作業をすると言ったら顔を青くしていた。だから二人には普通に睡眠をとらせるつもりだ。
炉に火を入れて鉄鉱石と木炭を交互に入れていく。作業をしているとすぐに夜になった。
「アル、ミーナ。もう遅いから寝てきて」
「いや、シズネが起きてるんなら俺も起きとく」
「私も」
「うーん、心意気は良いんだけど、実際に寝ずに動いていたらだんだん仕事ができなくなって危険になってくるから寝てきて。ね?」
そうスキルの恩恵がある私と違って二人は寝ずの仕事など無理なのだ。眠らないとそれだけ危険が増すのだ。
何とか説得し二人に寝てもらうことができた。その間も私は作業を続ける。
そして二日目、三日目も順調に作業は進み、炉も解体して後は冷えるのを待つだけとなった。
そしてゆっくりと休んでから玉鋼の様子を見てみた。
玉鋼の製造法であるたたら製鉄は鉄鉱石の品質が関係なく良質な玉鋼を生み出す(だったと思う)。
一応調査してみるとちゃんと良い出来の玉鋼が取れそうだった。
とりあえず一安心。
そして次の日から私たちはまた注文の品を打ち始めた。たまにナイフや包丁、武器を作るのではなく研いでくれという注文もあるためそちらはアルとミーナに優先して仕事を回してみている。
何事も経験が必要だからだ。二人は出会ってからたくさん仕事をしたからか、スキルも結構育っているらしい。すでに私の補佐無しでもナイフなどが作れているのがその証左であろう。
二人の成長を感じながら今日もまた鋼を打つのであった。
さて肝心の戦争危機の方だが、両国の宰相が話し合ってお互いに軍備拡張を元の状態に戻すということで話がついたらしいことが王様から発表された。これで一安心とほっとしたのは誰もが当然であろう。
ただ当事国だけでなく、さらにその周辺国もまた同じ状態にあるらしいためそれを全て元の状態に戻すには時間がかかるだろう。食糧などが値上がりしていたがこれもゆっくりと元に戻っていくだろう。
工房への武器の発注は減るだろうけど平和が一番である。しかし内心では予備武器であろうと一度は武器の性能を試すであろう。その時に私たちが作った武器の方が優れていると判明すれば武器の立場は一変する。そこから話が広まって売れるようにならないかなーとは思っていたりする。
そして今日もまた注文の品を作るために三人で鋼を打つ日々であった。
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