刀オタクが異世界転移したので剣豪を目指します   作:かんせつ

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第五十六話

平和な日常に戻ってから数日。シズネ工房の中では怪しげな行動に走っている者がいた。

「おーい、シズネ。木の人形相手になにやってるんだ?」

そう。シズネが木でできた等身大の人形に木の板に穴をあけて紐で結び取り付けようとしていた。

(うーん・・・。元の世界じゃ刀一筋だったから鎧の知識はテレビで物を見ただけだからなぁ・・・。

こんなことになるのなら鎧の方の知識も持つべきであった・・・)

シズネはどうやら武者鎧を作ろうとしている様子であった。この世界の鎧は中世ヨーロッパ風の物が主流であるらしい(ただしまだスペリア王国しか知らないため詳細は不明)。

そして試行錯誤しながら作業を続けた結果、何か見たことがあるような形に仕上がった。

「うーん。こんなもんかな?しっかしここまで苦労させられるとは・・・」

しかし一度構造を知ってしまえば後は実際に作ってみるだけだ。暇があるときにでも少しずつ進めていくとしよう。

そしてまた遠征を行うことに決まった。場所は同じく魔獣の草原。準備に一日をかけてシズネたちはフォロムの町へと向かった。

フォロムの町へ着いて休憩を兼ねて情報収集をしていると気になる情報を得た。

「おい聞いたか?近頃群れの魔獣の数が増えているって話」

「あぁ、聞いた聞いた。原因は不明だが実際に群れの大きさが大きくなっているらしいな」

「こりゃ生半可なパーティーじゃ稼ぐのは無理だな」

とりあえず情報を共有して明日に備えた。

 

次の日。騎馬の集団が魔獣の草原を気持ちよさそうに駆けていた。シズネ率いるアイアン・イグニスの集団である。揃いのバンダナを腕に巻いていた。

「団長。地面に足跡があります」

「よし。それを辿って行ってみよう」

魔獣の痕跡を元にシズネたちは魔獣を探して、見つけてはこれを倒していった。その中でも抜きん出て戦闘力を発揮したのはシズネであった。クランを率いる身故と思われがちであるが、実際は我武者羅に戦っているだけである。しかしその戦闘力はクラン最強と言っても過言ではない。雷の魔力によって瞬発力、攻撃力共に大幅に増加し大活躍を果たした。

この遠征は四日間続けられ、最終的な成果は一人当たり六万ゴールドを得て、ギルド資金も少し手に入れることができた。そして大量の魔石を何度も換金するシズネたちの姿はアラネージュの冒険者はもとより、国中に話が広がるようになっているのは当人たちは知らないのであった。

それと同時にシズネたちが装備している武器にも注目が集まった。静音からすればクランメンバーは多い方だと思っているが、実際はまだまだ小勢力である。だがその小さな集団が大量の魔石を得ている。

メンバー個々の戦闘力が高いという可能性もあるが率いているのは少女というべき人間。

ならば人は自然と武器に目が行くのである。アイアン・イグニスは大盾や大剣以外は静音が作ることができるため既に武器はシズネ工房製の物になっていた。これによって実際にアイアン・イグニスの戦闘能力は増加していた。武器が注目されるようになって工房への注文も増えてきた。

今では一日に一本以上は武器を作る日々であった。忙しいがそれ以上に達成感があった。

また高性能な武器を支給してくれるという噂も広まり、静音の下に複数のパーティーが参加を申し出てきた。一度に十数人のメンバーが増え、アイアン・イグニスの戦力は倍化した。

しかし実際は武器を格安で売ってくれるだけであり落胆する者もいたがそれ以上に他のクランよりも比較的負担が軽いことが後押しして誰も抜けることは無かった。

こうして静音は着実に力を手にしていった。

それを聞きつけ貴族が取り込みに走るのである。

以前は戦争に備えるのが理由であったが、貴族がクランや冒険者を傘下に加えるメリットは他にもある。

貴族が通常よりも安く依頼を出すことができたり、高名な冒険者を雇うことで力を誇示することができるからである。

だが静音はどんな態度で頼まれても首を縦に振ることは無かった。静音は自分たちが貴族の権力争いなどに利用されることを良しとしないからであった。『冒険者は自由であるべし』一番古い冒険者ギルドを作った人物の言葉である。実際にこの言葉を知って静音が感銘を受けたのは言うまでもない。

またアルとミーナも日々鋼を打っていたこともあり、武器も基礎的なことは二人でできるようになり、後もう少しで自立できるくらいに成長していた。それを薄々感じていた静音は二人にあることを聞いてみた。

「ねぇ。二人はこの先どうするの?」

「どうするって、何が?」

「ほら。大人になったら仕事は当然しなくちゃいけないじゃん。でもこんな小さな工房じゃやれることは限られているし」

「あの。シズネさんは路頭に迷っていた私たちに救いの手を伸ばしてくれました。工房の大きさは関係ありません。私たちは私たちができることをやってシズネさんの手助けをしたいんです」

「欲を言えば俺もいつかは冒険者として一緒に仕事をやりたいとは思っているけど、大部分はミーナと一緒だな」

「でも二人もあと少しで自立できるくらいには・・・いや。もうナイフ主流でいくなら自立できるよ?」

「そうだとしても俺たちの考えは変わらないよ」

「そう。ありがとね」

静音は二人の言葉を受けてちょっと恥ずかし気に二人の頭をなでるのであった。




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