工房の炉の数を増やしてから、工房の回転率は上がっていた。しかし爆発的な人気を叩き出したとしても
物が行き届いてしまえば物を欲しがる人も減っていくのは当然である。
とりあえず怒涛の注文ラッシュをしのいだ三人は久々にゆっくりとした昼を過ごしていた。
そんななか、シズネ工房に来客があった。
「失礼します。シズネ様はおられますか?」
「はい。シズネは私ですが?」
「王子がお呼びです。私と共に来てもらえますか?」
「わかりました。じゃぁ、二人とも店をよろしくね」
そうして静音は店を出たのだが、当の話を聞いた二人は状況が呑み込めないでいた。
「なぁ・・・王子様って、レオ王子様だよな?」
「そのはずだよ。王子様に呼ばれるって・・・」
「「シズネ(さん)って何者?」」
そんな悩みを抱える二人のことなど知らずに静音は王宮に来ていた。
「やぁ。呼び出してすまないね」
「今日は一体何があったんでしょうか?」
「いやぁ、君の店。最近羽振りが良いみたいじゃないか」
「えぇ。最初から来てくれたお客さんの口伝で広まったのか・・・。ただやっとゆっくりした日が戻ってきてくれましたね」
「それはそうかい。では本題に入ろう。俺はつい先日対魔獣府の取りまとめ約に任じられてね。それで最近議題に上がったのが『魔獣に対して効率が良い武器』でね・・・」
「つまり?」
「君が玉鋼を王国に伝えてから戦争が示唆されるくらいには王国の武器の技術は上がった」
「私、咎められてます?」
「いいや。それで先日君は加護を付与することを新たに商品として出したそうじゃないか」
「よくご存じで」
「それで聞きたい。エンチャントの法則など何かわかったことはあるかい?」
「はい。簡単に申し上げれば使う素材によって決まる可能性が高いかと。例を挙げるのであれば長く使った物を使えば耐久を後押しするエンチャントが付くなど」
「なるほど・・・つまり魔獣が嫌う物を使えば魔獣に対抗できるエンチャントができる可能性があるというわけかい?」
「さぁ・・・そもそもエンチャントの法則を解明しようとしている学者さんなどがおられるはずでは?」
「確かにそう言った人物や集団はいる。だが君のように確立させたという人物はまだいなかった。つまり君が一番乗りの可能性が高い」
「そ、そうなんですか・・・」
「話を元に戻すけど、君に仕事を頼みたい」
「仕事、ですか?」
「対魔獣府に所属する兵士たちの武器の改良を頼みたい」
「それは国からのということで捉えて良いんでしょうか?」
「そうだね、そうなる」
「まだ立ち上がったばかりのウチに任せるのは他の店の不評を買うのでは?」
「商業は実力が一番だ。実力を示している君なら問題ないだろう。それに君は王級鍛冶師なんだしね。
国が実力を認めている者に仕事を頼むのはおかしくはないだろう?」
「・・・わかりました。しかし何人分の物を用意すればいいのでしょうか?」
「そうだね・・・所属しているのが約300人。使う武器は様々だが、剣士が大半を占めている。
弓などの遠距離攻撃を用いる者は今回は除外するとする。だから大体150人分くらいだな」
「えぇ・・・。簡単に剣士とおっしゃられましたが、ウチは片手剣くらいしか作れない小さな店ですよ?」
「ふむ・・・。こちらとしてはこの機に全員玉鋼製で揃えたかったのだが・・・仕方あるまい。できる範囲で頼みたい。エンチャントの方はどうだい?」
「素材と時間さえあれば・・・。ただし、まだ魔獣に対して有効なエンチャントの法則は見つけていないので時間がかかるかと・・・」
「ふむ。ならそちらの方は研究援助ということで資金を回そう。そうすれば何とか見つかるだろう」
「わかりました。お引き受けいたします」
「そうか。それは良かった。肝心の報酬だけど君が売っている相場の3割増しでどうだい?」
「結構多いですね」
「人の命を金で助けられるのなら安い方だ。では必要な書類は後で作って持って行かせる。結果を待っているよ」
こうしてレオ王子との談話もとい商談は終わった。正直やっとゆっくりした生活に戻れると思ったけど、まぁ仕事が無いよりはましか。
とりあえず私はこの話を二人にもしてみた。すると二人は驚きで言葉も出ないありさまだった。
事情を聴いてみると私が王族にコネを持っていることを知らなかったらしい。
取り合えず仕事が増えたことを話して協力してもらえることになった。
そして数日後、山のような書類が届いた。必要な武器の種類と数。それから援助金に関する物だった。
これから忙しくなりそうだ。
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