国からの仕事を終えてひと段落し、注文も落ち着いてきた頃。静音はアルとミーナを連れて王都を巡り歩いていた。しかし今日は何やら人が多く、かなり混雑していた。
そう。今日は年に数度ある内の一つ、魔王討伐記念祭りなのである。
場所を問わず、屋台が立ち並び、賑わっていた。
「おー。結構人がいるねー」
いつもより人が多いことにちょっと驚きつつも関心する静音と反対に、アルとミーナは静かであった。
「ん?二人ともどしたの?」
「あ、えっと・・・去年まで祭りなんて全く楽しめてなかったから・・・」
「あ・・・そっか」
そう、二人は元々孤児で孤児院すら入れない劣悪な環境の中で必死に暮らしていた。そこを運よく静音に拾ってもらい、今までの生活が嘘のような暮らしに変わっていた。そして何時かは楽しみたいと思っていた祭りに今参加しているのである。
「んじゃ今日は目一杯楽しまないとね。といっても私王都の祭りは初めてだからよくわかんないけどね・・・」
「とりあえず旨い物が食べたい!!」
「わ、私は飴が食べたいです」
「よし、探しに行こう」
そうして三人は人を避けながら目当ての物を探した。
そして三十分後。少し落ち着いた場所で手に入れた戦利品を口に運び舌鼓を打つのであった。
「むーん・・・この肉串旨い!!」
「飴、甘いです」
「うーん・・・たこ焼きもお好み焼きもあれもこれもないとは・・・異世界恨むべし・・・」
しかし一人だけ知っている世界が違う静音には不評のようであった。しかし両手には焼いた肉の串があるのはご愛敬。とりあえず肉串にかぶりつくことで落ち着いていた。
そして再び王都を巡り歩いた。
一回目は食べ物を探して巡り歩いたので気が付かなかったが、いたるところに装飾が施されていて
祭りの雰囲気を演出していた。
それに誰もが笑顔だった。魔獣の脅威があろうとも人は楽しいことがあれば笑顔になる。
しかし酒を扱っている店は例外だった。酔っ払いがあふれ、喧嘩とまではいかないが小さな諍いで争いが頻発し、それを煽ったりする人もいて阿鼻叫喚の姿だった。
まぁ、店の方もこうなるだろうと予想はしていただろう・・・多分。
それから色々と巡り歩いる間に少しづつ静かになっていった。祭りの終わりが近いのだろう。
三人も十分楽しんだので家に帰ることにした。
「二人ともどうだった?」
「楽しかった。あれもこれも静音のおかげだよ」
「ありがとうございました」
「いいのいいの。私たち家族でしょ?」
こうして一夜の輝きは夜が更けるのにつられて消えていった。
そして次の日。王都では作業員の人たちが装飾などの飾りつけを外していた。
それを後目に静音は冒険者ギルドに歩いて行った。
今日は久々の遠征の打ち合わせがあるからだった。そして冒険者ギルドを訪れるとそこはいつもの賑やかな雰囲気ではなく、物々しい雰囲気が漂っていた。とりあえず見つけたリーシャとエラムのところに行ってみた。
「ねぇ、何かあったの?」
「あぁ、どうやら近頃魔獣の動きがおかしいらしい」
「おかしい?」
「魔獣の森では森の奥深くに行かないとゴブリンすら見つからないとか、魔獣の草原も同じように奥深くに行かないと魔獣に出会えないなどといった現象が起きているようです」
そこへクランのメンバーたちも集まってきた。
「どうやら魔獣が消えた、もしくは何らかの原因があって魔獣が生まれていない可能性がある」
「魔獣が生まれていない?」
「知らないのか?魔獣も無尽蔵に生まれてくるように思うだろうが実際は違うらしい。ある研究者が提唱した説なんだが、魔獣は何らかのリソースを使って生まれてくるって話らしい。んで魔獣の森や魔獣の草原はそのリソースが豊富にあるから魔獣が多く生息するって話らしい。んで、大型の魔獣が生まれるってなるとそっちにリソースが割かれて弱い魔獣が生まれてこないとかなんとか」
「なるほど・・・つまり何かの予兆ってわけか」
「お、呑み込みが早いな。大抵こういう時は巨人とかが出現することが多いらしい」
「巨人?ミノタウロスとかよりも大きいの?」
「こういうことはそう頻繁にあるわけじゃない。だから大抵物好きな人間の手記か口伝でした伝わらないからな。んで実際十年前にかなりデカイドラゴンが出た」
「ドラゴン・・・」
「ソイツは村だろうと町だろうと、草原だろうと生き物がいる場所を見境なく破壊しつくそうとした」
「それでどうなったの?」
「王国は身分を問わず大規模な討伐隊を編成しドラゴン討伐を行った。犠牲も大きかったが無事討伐できた。んでそこで大活躍をしたのが『剣聖』ラフェ族のウィリアムだ」
「なるほど・・・」
「とりあえず物資の値段が跳ね上がるだろうから備蓄しておいた方がいいぞ」
親切なダンさんの助言を受けて私たち三人は保存食などを買いに町に出た。ギルド内の動向はダンさんたちが見てくれてくれるらしい。
一体何が始まるんだろうか・・・。
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