巨人の兵団が出現しこれが討伐されてから約一週間が過ぎた。その頃王都ではある人物についての噂が流れていた。
「じゃぁ、ここはこうで・・・」
一方静音は巨人兵団討伐を終えて休息を挟んだのち、ギルドからの特別依頼として平原の観察依頼を受けることになっていた。そのためクランメンバーを集めてギルドで会議を開いていた。
「なぁなぁ。あれが巨人を真っ二つにしたっていう娘か?」
「あぁ。参加した奴の大半が何度も目撃しているらしい。それも一度じゃなく何回もらしい」
「そんなバカな。巨人はただでさえ皮膚が硬くさらに鎧も着こんでいるんだ。それをあんな華奢な娘が切れる訳がない」
「だろうなぁ・・・。それに持っている武器も木の枝みたいに細い棒?剣・・・。わからんな」
「どうせどこかの貴族の娘が調子に乗って魔剣か何か手に入れてそれで斬ったんだろ」
「いや。あの娘、クランを立ち上げているらしいぞ」
「クランを?どうせ貴族のままごとだろ」
「いや。あのクランのリーダーは鍛冶屋だと聞いたぞ」
「鍛冶屋?なら貴族と全く関係が無いのか?」
「いや。確か剣聖様と一緒に出歩いているところを見たって奴がいたぞ」
「そういや一時期剣聖様が旅立つ前まで弟子を取ったって噂があったが・・・まさか」
「剣聖様は教練こそしたものの、弟子は取ったことが無かったはずだ。その剣聖様が見込んで弟子にとった娘とすれば・・・」
「それなら腕が立つのも自然か・・・。しかしあのクランは羽振りがいいらしいな」
「あぁ。着ている鎧こそまばらだが傷も残っているだ手入れはされている。それにあの人数で臆することなく巨人討伐に一番に名乗りを上げたということはそれだけメンバーも腕が立つということだろう」
と、こんな風に巨人兵団討伐時の静音を始めとしたクランメンバーの活躍がやや誇張されているが王都では噂のネタになっていた。とりわけ静音は使う武器が奇妙だということで一番の話に上がっていた。
そんなことはつゆ知らず。静音は着々と予定を立てていた。
依頼内容としては魔獣の草原の監視、生息する魔獣に変化は無いか・或いは異常が起きていないかの観測する研究者たちの護衛であった。ただし応戦の必要が無い限りは魔獣への手出しを禁止するとの条件があった。もし巨人が平原のリソースを吸いつくしていて回復不能になってしまっていた場合、魔獣が湧かず魔獣を狩れる狩場が無くなり、冒険者の経済が崩壊する可能性があるからだ。
「じゃぁ今回はパーティを二つにわけるってことで。一班が斥候などの周囲の偵察。二班が学者さんたちの護衛を担当で」
特に問題は無く会議は終了し、当日に備えるだけになった。
そして当日。早くに静音たちは集合場所について研究者たちの到着を待った。研究者たちも時間通りに現れて合流し、そのままフォロムへと向かった。
道中静音はこの世界について詳しくはないため、必要そうな知識が無いかと思い研究者にあれこれと来ていた。研究者も質問に対して嬉しそうに答えていた。
そしてフォロムに着いてから一日休憩を挟んで静音たちは魔獣の平原へと進んだ。
まだ町に近い草原には草食動物などが草を食んでいるのが見えた。ともかく静音たちはまずは巨人の兵団が歩き回ったであろう場所を調べることにした。色々と歩いて魔獣の死骸の残骸や地面に残ったわずかな足跡などを辿ってついに巨人の兵団が湧き出たであろう場所にたどり着いた。その場所に着くと研究者たちは水晶などが付いた杖などを取り出してあたりを歩き始めた。とりあえず様子を見るだけで静音たちは魔獣の襲来に備えた。
そして作業がひと段落したのか杖を置いて紙に何かを書き、また別の紙を取り出して見比べていた。
「あの、何をしているのでしょうか?あ、忙しかったらすみません」
「あぁ、気にしなくていいよ。これはあたりの魔素を調べているんだ」
「魔素?」
「魔素っていうのは馬車で話した通り魔獣のエネルギーとなっているであろう力の事。それから魔獣などが出現するときにも使われる物であると推測されている。それで今回のように強大な魔獣が出現したときにはこの魔素が著しく低下するんだ。そしてこれが低下したままだと他の魔獣が湧かなくなるんだけど、今は以前と同じくらいの量が計測されている。だから魔獣の枯渇という事態は起こらないだろう」
「そうですか・・・ありがとうございました」
それからも静音たちは平原を歩き回って魔素の計測や魔獣の数などを調べた。魔獣に関しては魔獣の探知魔法と遠眼鏡を使っての遠方からの観測だけしかできなかった。そもそも近づいたら襲われるからなのは常識である。
ともかくこれを数日間繰り返して満足した結果が得られたと判断した研究者たちは王都へと帰ることを提案した。そしてそのまま静音たちは王都へ帰った。その後、冒険者ギルドから正式に魔獣の平原での狩りが解禁されたのであった。
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