契約云々から少し時が過ぎた今日この頃。遠征から帰ってきてクランの口座を確かめてみると既にクランハウスが買えるぐらいの資金が溜まっていた。これは規約の徴収分だけでなく、クランのみんながクランハウスのためにと少しずつお金を納めてくれていたからだ。これでクランハウスを買い、みんなで集まれる場所ができるのだ。早速会議にかけてクランハウスを買うことを決めた。
場所は任せるとのことだったのでとりあえず経済に詳しいエラムを引き連れて不動産屋に向かった。
「クランハウスねぇ・・・言っちゃぁなんだが嬢ちゃんたち。王都に腰を据える気かい?」
「?」
「シズネ。クランハウスを買うということはそこから動かないという意味でもあるんですよ。買うのに膨大なお金がかかりなおかつ売るときは勝った時のお金の半分も帰ってこない。もしなにかあって拠点を移すことになると損をするんですよ」
「あー、会議の時になんとなく言ってたね」
「大抵王都にいるクランは拠点を持たずに金の流れに乗って動いているのが多い。クランハウスを買うなんて稀中の稀だな」
「そんなにですか」
「ただ買うメリットもある。大衆に聞かれることなく会合などを開く場所ができたり、食住の費用を抑えたりとな」
「うむむ・・・どうしよう。エラム」
「私たちは魔獣の平原で稼ぐことが多いので王都に拠点を持っても良いと思いますよ。それにどこか良い稼ぎどころができたとしてもそこへ遠征をすればいいだけの話ですから」
「よっし。店主さん。良いところないかな?」
「そうだな・・・」
といった感じで話を詰めようとした矢先、ふと思い出したことがあった。
「エラム、そういえばさ。ウチの家の横って空き家じゃなかったっけ?
「?あぁ、そう言えば人が出入りしてるところを見たことは無いですね」
「すいません。ここの隣ってどうなってます?」
「ん、ちょっとまってな・・・。あったあった。えぇっと、空き家だな」
「広さはどんな感じです?」
「そうだな。ここは以前は貴族屋敷が立ち並んでいたはずだ。広さは・・・三階建てで部屋は各階に10ずつある。厨房もそれなりの大きさだ。それに広間もあってクランハウスにはもってこいだな」
「じゃぁ、お値段はどれくらいですか・・・?」
「えぇっと・・・400万ゴールドだな」
「うん、いまの持ち手は422万ゴールドだから支払えるね。エラム。ここでいいかな?」
「ウチの横ですし何かと便利そうですから良いかもですね」
「じゃぁここを買います」
「あいよ。んじゃ金はこの口座に振り込んでくれ。あ、掃除とかはまめにやっているから綺麗だと思うよ」
こうしてクランハウス購入となった。そして口座にお金を支払って無事売買契約成立。実際にみんなでクランハウスを見に行った。
「ここがクランハウスか」
「元貴族の屋敷ともあって大きいですね」
「で、横がボスの鍛冶屋と。こりゃ便利そうだな」
「誰がボスじゃい」
それから実際に中に入って思い思いに探検してみた。
「どうだった?」
「家具も備え付けで掃除もしてありすぐに使えそうですね」
「こりゃ下手な安宿よりよっぽどいいぜ。すぐに引っ越そうか」
「んー女の立場としては一つの階を女専用にして男禁制にしてほしいかな」
「あー確かにね。じゃぁ二階をそうしようか」
と、あれこれ決めてそして数日後にはみんなクランハウスに引っ越してきた。
「で、あとは飯をどうするかだが・・・」
「あーそれなら問題ないよ。ここを買った時に別で料理人を探して雇ったから。多分今日来るはずなんだけど・・・」
そう言っているとドアの呼び鈴が鳴った。
「はーい。今開けますねー」
そこにいたのはちょっと体つきのいい女性だった。
「ここがアイアン・イグニスのクランハウスでよかったんだね?」
「はい。今日からよろしくお願いしますね。エマさん。ん、そちらの方々は?」
「あぁ助手がいるって言ってたじゃん?ウチの娘さ」
「ミーネと言います」
「エリーと言います」
「うん、よろしくね」
「んじゃ二人は買い出しを頼むね。アタシは厨房の様子を見て来るから」
こうしてエマさんたち親子が料理人としてクランに加入した。で、厨房を吟味するエマさん。
「どうですか?」
「いいね。大抵の物は作れそうだ。それに広いから三人全員が動いても問題なさそうだ。良いところを引いたようだね」
とりあえず好印象のようだ。
それから夜になってその日はクランハウス購入記念ということで豪勢な食事になった。エマさんたちが腕を振るって作ってくれた。みんな競い合うように料理を食べ、料理は全て食い尽くされたのであった。
「うん。良い食べっぷりだね。こりゃぁ作り甲斐がありそうだ」
とりあえずクランハウスは購入できたのでクラン資金は別のところに回そうということになったのであった。
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