静音たちが経営に手を付け始めていた頃。ラークと共に修行の旅に出ているウィリアムたちにも変化があった。最初こそ魔獣に後れを取っていたラークであったものの、今では一人前に魔獣を相手取ることができていた。そして国をまたいで様々な魔獣と戦っていた。そして今は立ち寄った国で一休みしていた。
「ウィリアム様。あ、手紙を読んでらっしゃるんですか」
「あぁ、二人の弟子にだね」
国をまたいでも手紙は届く。しかし当然検閲が存在しているわけで特にウィリアムのように剣聖と名の通った者の手紙ならまず他人に見られる。まぁ見られて困るような内容はまず書かないのであるのだが・・・。
「ふむ・・・静音は一躍有名になったようだな。殿下の手紙に書いてある。成長している証だな」
懐かしむように、そして嬉しそうにウィリアムは手紙を読んでいた。そしてそのまま手紙をしまい、返事を書き始めた。ウィリアムがここまでやってきたことは魔獣退治以外に花を咲かせれるような話題は無かった。
しかしスペリア王国から出たことが無いであろう静音に対して様々な国の魔獣の情報は有益だろうと色々と書いていた。レオに対しては修行をさぼってはいないか?などと少し窘めるような形で書いていた。
それが終わるとウィリアムは手紙を郵便に出して、そのままラークと共に昼食を取った。
「ウィリアム様。これからどうするんでしょうか?」
「ふむ・・・そうだな。ここで強い魔獣が出たのであればそれの討伐に行こうと思うのだが、そう都合がよく魔獣が出る訳もなし。近くにある魔獣の歪みあたりで修行といこうか」
「わかりました!!」
元気よく返事をしたラーク。そしてそのまま二人は魔獣の歪みがある場所へと向かった。
「さて、着いたものの、魔獣は・・おぉ、いたぞ。しかしワイルドウルフか。まぁ大丈夫だろう。ラーク」
「はい!!」
二人を視認したワイルドウルフが獲物を狙うかのように走り寄ってくる。それに対しウィリアムは剣に手を伸ばすことなく、そしてラークが前に立つ。
「聖剣よ、わが敵を討ち倒せ!!セイントスラッシュ!!」
聖剣から放たれた巨大な光の斬撃が地面を抉りながらワイルドウルフを飲み込んだ。
斬撃が通り過ぎた後にはワイルドウルフの姿は無く、討伐された証として魔石が転がっているだけであった。そのまま魔石を拾って二人はさらに歩いた。
「ふむ・・・あまりここの歪みは魔獣を生み出さないのか?魔獣と遭遇しないな」
「前に歪みによって魔獣の数に差があるとおっしゃっていましたね」
「そうだ。スペリアの魔獣の草原の歪みに慣れているせいか、どうも数が物足りないと感じてしまうのだよ」
「うーんいつかは王国に戻って修行をしたいものです」
「確かに修行の旅と言っても離れすぎるとよくないものでもある。そろそろ王国に報告がてら戻るのもいいだろう」
「ほんとですか?やったー」
「気を緩めるな。前を見るんだ」
ウィリアムが指さした方向に魔獣がいた。それは全身毛むくじゃらの巨人のようだった。
「巨人のような大きさだが、あれが話に聞いていた魔獣・トロールか。数は二体。それぞれ一体を相手取るとしよう」
「はい!!」
トロールは全身が分厚い毛でおおわれており、また兜のようなものを被り、斧のような物を手にしていた。そして二体を分断してウィリアム・ラークの両者がそれぞれ相対す。
「ふん!!」
まずウィリアムの大剣が斧を振りかざしたトロールを斧ごと弾いた。そしてそのまま気を高めながら跳躍し、渾身の一撃を放つ。
「グラウンドブレイク!!」
付近を揺るがすような重い一撃がトロールの頭めがけて放たれた。そのまま上半身は潰れ、見るも無残な様になり、絶命。そのまま体は塵と消えた。
一方ラークは長い腕から振り下ろされる斧をしっかりと避けながら戦っていた。そして待ちに待った勝機は訪れた。振り下ろされた斧が今回は地面に刺さったのである。ラークは地面に刺さった斧を抜こうとするトロールの右腕を瞬時に斬り落とした。悲鳴とも呼べる咆哮を上げるトロール。さらに生まれた隙を逃さずラークはトロールの胴体を何度も斬りつけた。そして力が抜けて膝をついたところで降りてきた首を切り落とした。こうして現れた二体のトロールは討ち取られた。
(ふむ。ラークは十分に成長しているな。情報だけの相手でも実際に戦うとなるとまず様子を伺い相手の手の内を知る。そして十分に隙を作りその瞬間に勝負を決める。戦い方としては万全な戦い方だ。これなら強大な魔獣とも十分に戦えるかもしれん。王に良い報告ができそうだ)
魔石を拾うラークを見てそう分析したウィリアムであった。そして二人はそのまま町へと戻り魔石を換金し、一日休みを取り、スペリア王国へと向かうのであった。
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