刀オタクが異世界転移したので剣豪を目指します   作:かんせつ

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第七十三話

新たに複数人が属性の魔力を手に入れた静音たち。その力を試すべく魔獣の草原に遠征に来たのだが思わぬ 事態に遭遇していたのであった。

「白いワイルドウルフ?」

「そうだ。どういう訳で生まれるのかはわからんが通常の個体よりも二回りもデカくおまけに統率力も高い。奴が現れただけで一帯のワイルドウルフは軍隊のように変貌しやがった。今じゃ他の魔獣はワイルドウルフに狩られるだけの獲物になっちまってる」

「そんなことが・・・」

と、ワイルドウルフの変種が現れて魔獣の草原の環境は一変しているらしい。ともかく静音はこの話を持ち帰ってメンバー全員で話し合うことに決めた。

「なるほどねぇ。話くらいは聞いたことはあるが実際に出会っちまうとはねぇ」

「しかし今の自分たちには新たな力があります。それに草原の浅いところは何度も通った地。いくら統率が取れていても問題ないでしょう」

「しかし変化した奴らがどんな戦い方をするのかがわからない現状迂闊に戦うのは危ないと思う」

「リーシャさんの意見に賛成だな。何も情報が無いのは危険すぎる」

「ですが遠くまで遠征に来て手ぶらで帰るというのも・・・」

会議は混迷を極めた。しかし結局実際に戦ってみようという結論に至った。そして次の日。

王都から移動で使った馬をそのまま利用し、草原を移動し魔獣を探す。

ところどころに生き物の骨の残骸と思われる物が散乱しているのが見受けられた。

しかし今回相手にするのは未知の魔獣。採取するという隙は見せられなかった。

そしてさらに進むこと少し。ようやくワイルドウルフの群れと遭遇した。しかしワイルドウルフの変化はすぐに実感することになった。こちらを見つけるやワイルドウルフは共鳴するように吠えだした。

「威嚇のつもりか?」

「いや、これは・・・」

そして対面しているワイルドウルフの咆哮の後、少し遅れて遠くからもワイルドウルフの咆哮が聞こえた。

「こりゃ遠吠えだな。まさか奴ら、どんな相手でも物量で押しつぶしているのか!?」

そう。ワイルドウルフは変種の誕生によりまとまりを見せ、そして物量によって勝利を得ることを覚えたのだ。一個の群れではやれることは限られている。しかしその群れが幾重にも集まれば草原という広さも相まって非常に有利となる。故に草原の他の魔獣たちは集いに集ったワイルドウルフの大群によって食い荒らされることになっていたのだ。

そんなことはまだおぼろげにしか感じていない静音たちは目の前のワイルドウルフと戦いを繰り広げていた。しかしワイルドウルフの変化は遠吠えだけではなかった。

「なんですかね。まるで襲う気は無いように見えますが・・・こちらを獲物と判断したのであれば襲ってくるはずなんですが」

「うーん。これも何かの変化なのかな?」

ワイルドウルフ自体の戦いの姿も変わっていた。積極的に襲うのではなく、相手の出方を伺いそれに合わせて動いていたのだ。そして危険はさらに静音たちに向けて迫っていた。

「うん?何かが変だ」

変化に気付いたのは馬の番をしていたカイであった。彼は元々山の近くの農家育ちで斥候としての技術を少しながら会得していた。そして山の生き物を狩る狩人でもあったため目も良かった。

彼の目からするとシズネたちと戦っていたワイルドウルフの動きが突然、変化してたのに気が付いたのだ。ワイルドウルフはゆっくりとある方角へと退いていた。そしてその方角は戦いの最初にワイルドウルフの遠吠えが聞こえた方向であった。

カイはすぐさま地面に耳を付けた。

「やっぱり!!」

そしてすぐに異変に気が付いた。

「急いで馬を連れていくぞ!!」

「どうしたんだカイ。そんなに慌てて」

「正体はわからないけど無数の足音が迫ってきている。もしかしたらワイルドウルフの大群かもしれない!!」

「だが連れて行くってどこに・・・」

「団長たちのところだよ!!」

カイは独断で全員の馬を連れてシズネの下へと急いだ。

「団長!!」

「カイ君!!馬を連れてきてどうしたの?後ろに魔獣でも出たの?」

「ともかく皆さん急いで馬に!!無数の足音が迫ってきています」

「大丈夫。無数の群れだろうと前にもたくさん戦ったから・・・」

「いや、すぐさま退いた方がいい。奴らの戦い方、今更ながらまるで足止めのように感じた。

おそらく本隊がいて、それが今迫ってきているのかもしれん。ただでさえ獰猛なワイルドウルフが本性を抑えてまでこんな戦いをしていた。無数の本隊が来るとワイルドウルフと言えど戦いにならんと思う」

「わかった。退こう。みんな馬に!!」

静音はとりあえず安全策ということで退却を選んだ。

「シズネ。後ろを・・・」

そして戦闘域から離脱した静音たちの後ろには視界を埋め尽くすほどのワイルドウルフがいた。馬とワイルドウルフでは速度に差があるため追撃は無かったものの、すぐ後ろに無数の群れが牙を向き、獰猛な雰囲気を出していたのには背筋が凍る気持ちだった。

こうしてワイルドウルフの巨大な群れに静音たちは敗走したのであった。




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