ワイルドウルフの群れに追い散らされた静音たち。帰ってまずは体を休めて、翌日作戦会議となった。
「うーん。こうも見事にまとまられると対処は困難だよ・・・」
「大量のワイルドウルフが軍のように統率の取れたとなると厄介だな」
「ここは親玉を目指すのはどうでしょう?」
「親玉さえ潰せれば確かになんとかなるかもしれんが、どうやって親玉を探す?」
「昨日の撤退時にワイルドウルフの黒い体毛があふれる中に白い体毛をわずかながら見ることができました。親玉はおそらく本隊と行動しているのではないでしょうか?」
「本隊を探す・・・これは馬に乗って駆けていれば見つかるだろうけど・・・本隊が襲われたら普通増援が来るよね?」
「そうだな。やるなら最高火力で一気にカタをつける必要があるな」
「うーん。白いワイルドウルフがそんなに強くないと良いんだけど・・・」
とりあえず方針は固まり、次の日に出発となった。
次の日。再び魔獣の草原を駆ける静音たち。
草原は静かで、生物とう生物がまったく存在していなかった。そして進んでいると衝撃の事態が起こっていた。
「ワイルドウルフが・・・仲間を食っている・・・」
ワイルドウルフが共食いをしていたのだった。
「一体何があったんだ・・・」
「わからねぇ・・・。だが希望的観測から言えばもしかしたら白いワイルドウルフが出て既に何日も経っているとして、周囲の生物、魔獣関係なく食い荒らし食糧が尽きたとすれば膨大に膨れ上がった群れが共食いに走るのも道理ってやつだろう」
「ともかく好機なのには変わりないですね」
「うーん飢えている獣ほど恐ろしい物は無いって聞くけど・・・」
「例え末端が飢えていようと大事な本隊は飢えていないでしょう。飢えているので会ったら末端は既に食われているはずです」
「よし、一気に駆け抜けるよ!!」
静音の号令の元、一気に草原を駆け抜けた。駆ければ駆けるほど、あたりに散乱している骨が多く見られるようになった。そしてついにお目当ての魔獣と遭遇した。
「ワイルドウルフの群れ・・・前方の群れは共食いをしていませんね」
「となると本隊の可能性が高いな。打合せ通りリーダーが白いワイルドウルフを仕留める。
そして俺たちはリーダーに近づこうとするやつらの排除だ」
「みんな、行くよ!!」
静音の号令の下全員武器を抜きワイルドウルフの群れへと進んだ。ワイルドウルフも静音たちを見て咆哮を上げる。しかし前回のように遠吠えは起きなかった。
「遠吠えが起きない・・・?」
「例え貢献できたとしても獲物は本隊が優先して食らう。そうなると群れは働き損ですからね。応じないのも無理ないかと」
「チャンスだ!!一気に攻めたてるぞ!!」
メンバーが奮起してワイルドウルフを戦う中、静音は群れの中心に向けて疾走してた。
「いた。白いワイルドウルフ!!」
目の前に白いワイルドウルフが見えた。白いワイルドウルフも静音を見て低く吠え戦闘態勢に入った。
「やぁぁぁ!!」
まずは挨拶替わりに炎の魔力を混ぜた斬撃波を放つ。しかしこれは簡単に避けられる。
そして白いワイルドウルフは発達した前足を叩きつけてきた。静音はこれをなんとか避けて起きざまに
叩きつけたばかりの前足を切払った。しっかりとした踏み込みが無かったため傷は浅かった。
「一気に勝負をつける!!」
静音は一気に雷の魔力をフル稼働させる。
その時だった。ただ魔力をフル稼働するという静音の意思を体は上手く伝えることができずに、結果として雷の魔力だけでなく、炎の魔力まで同時に稼働、フル稼働の域に達してしまった。
雷の魔力によって体が活性化し、炎の魔力によって体に熱が籠り力があふれ出す。
握る時雨は雷と炎が混じって迸っていた。あまりの形相に白いワイルドウルフは一歩下がってしまった。
そのわずか一歩が白いワイルドウルフの運命を決めた。
炎の魔力によって力が増し、雷の魔力によって活性化した静音の足は例え十歩先の位置にも瞬時に間合いを詰めることが可能だった。そしておよそ目には見えないほどの速さで持って白いワイルドウルフが見せた一瞬の隙をついて肉薄。渾身の一振りで白いワイルドウルフの頭を切り落とした。
戦闘が一息ついたからか静音が纏っていた魔力は霧散した。
「みんなー。親玉討ち取ったよー!!」
親玉を失ったワイルドウルフの群れは統率を失い、隙をさらし、そこをメンバーによって簡単に討ち取られていった。残ったのはワイルドウルフの骸と一回り大きい白いワイルドウルフの骸だった。
周囲の安全を確認してから採取に移った。
「それにしても見事な毛ですねぇ」
「あぁ。稀に出るから毛皮は多分高値で買い取られるだろう」
「それもいいですがここは討ち取った実力を示すべくシズネが身に着けてはどうでしょうか?」
「私が?」
「初日に集めた情報によると白いワイルドウルフ討伐は実感した通り難易度が高いのです。それを討ち取ったともすればクランの名前が広がることは間違いありません。しかし人はおよそ見た目で判断する物です。ですので白いワイルドウルフの毛皮をシズネが身にまとうのがいいかと」
「うーんそういうのはとりあえず帰ってから決めようよ」
ともかく付近の採取を終えると、ワイルドウルフの群れの脅威が薄れた草原中を巡ってワイルドウルフが食い荒らした骸から使えそうな骨などを追いはぎしてからフォロムの町に帰ったのであった。
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